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辺野古訴訟判決(9/16福岡高裁那覇支部)の「骨子」をとりあえず読む

 今晩(2016年9月18日)配信した「メルマガ金原No.2573」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
辺野古訴訟判決(9/16福岡高裁那覇支部)の「骨子」をとりあえず読む

福岡高等裁判所那覇支部 平成28年(行ケ)第3号
地方自治法第251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
原告 国土交通大臣 石 井 啓 一
被告 沖縄県知事 翁 長 雄 志
 
 一昨日、福岡高裁那覇支部で判決が言い渡された事件を正式に表記すると以上のとおりとなります。ご存知かとは思いますが、石井啓一国土交通大臣は、自民党ではなく公明党の方(衆議院議員)です。
 「ひどい判決だ」という話はあちこちから聞こえてきますが(実際、そうだろうとは思いますが)、一応読んでからでないと、何がどれだけ「ひどい」のかも分かりませんしね。
 裁判所の判例検索サイト(これが検索しにくい)で探してみましたが、(多分)まだ掲載されていないようです。
 ということで、当事者である沖縄県公式WEBサイトの中の「知事公室辺野古新基地建設問題対策課」を開いたところ、被告側が受領した判決正本をスキャンしたらしい「判決文」が6分割されたPDFファイルとして掲載されていました。

 
 最終ページ(書記官による「これは正本である」という認証欄)の直前を確認してみると、別紙を含めてトータル358ページ、本文だけでも180ページ以上、これはなかなか読み通すのは難しい。
 沖縄県の当該ページには、「判決文」そのものだけではなく、「判決骨子」(2ページ)と「判決要旨」(13ページ)も掲載されていました。これは、耳目を集める重大事件の判決に際し、裁判所自身が作成する要約版であり、とりあえずこれを読んでみることにしましょう。
 「判決骨子」は、沖縄県ホームページから私が転記しました。
 それから「判決要旨」も全文を紹介したいと思いましたが、自分で転記するのは時間がかかり過ぎるので断念しました。すると、具合良く、沖縄タイムス+プラスに「判決(要旨)」が掲載されているのに気がつき、これをコピペさせてもらって紹介しようと思ったのですが、念のために県ホームページに掲載されたPDFファイルと照らし合わせてみると、読者に分かりやすいようにという配慮からでしょうか、書き直しが随所に見られました。もちろん、内容的な変更ではなく、元号を西暦にしたり、「被告」を「知事」と言い替えたりというようなことが大半ですが、文章表現を手直ししている箇所も結構あります。従って、裁判所が作成したとおりの「判決要旨」になっていませんので、「判決要旨」を引用しようという方は、沖縄タイムスからではなく、原文のPDFファイルから引用されるように助言したいと思います。
 従って、今日のところは判決要旨の全文転載は諦めて、リンクするにとどめます。
 時間に余裕が出来たら、全文をご紹介したいと思います。
 
【判決骨子】 
平成28年(行ケ)第3号 地方自治法第251条の7第1項の規定に基づく不作為の違法確認請求事件
                      
判  決  骨  子
1 事案の概要

 本件は、原告が、被告に対し、普天間飛行場代替施設を辺野古沿岸域に建設するために受けていた公有水面埋立ての承認の取消しを取り消すよう求めた是正の指示に従わないのは違法であるとして、その不作為の違法の確認を求めた事案である。
2 当裁判所の判断
(1)
知事が公有水面埋立承認処分を取り消すには、承認処分に裁量権の逸脱・濫用による違法があることを要し、その違法性の判断について知事に裁量は存しないので、取消処分の違法性を判断するに当たっては、承認処分の上記違法性の有無が審理対象となる。
(2)公有水面埋立法(以下、「法」という。)4条1項1号要件の審査対象に国防・外交上の事項は含まれるが、これらは地方自治法等に照らしても、国の本来的任務に属する事項であるから、国の判断に不合理な点がない限り尊重されるべきである。
(3)普天間飛行場の被害を除去するには本件埋立てを行うしかないこと、これにより県全体としては基地負担が軽減されることからすると、本件埋立てに伴う不利益や基地の整理縮小を求める沖縄の民意を考慮したとしても、法4条1項1号要件を欠くと認めるに至らない。
(4)承認時点では、十分な予測や対策を決定することが困難な場合は引き続き専門家の助言の下に対策を講じることも許されるなどの点に照らすと法4条1項2号要件を欠くと認めるには至らない。
(5)よって、承認処分における要件審査に裁量権の逸脱・濫用があるとは言えず、承認処分は違法であるとは言えない。仮に、承認処分の裁量権の範囲内であってもその要件を充足していないという不当があれば取り消せると解したとしても、承認処分に不当があると認めるには至らないし、仮に不当があるとしても、知事の裁量の範囲内で埋立ての必要を埋立てによる不利益が上回ったに過ぎず、承認を取り消すべき公益上の必要がそれを取り消すことによる不利益に比べて明らかに優越しているとはいえないなど、承認処分を取り消すことは許されない。よって、被告の取消処分は違法である。
(6)その他、被告がする是正の指示が違法であるとの主張は、その前提とする地方自治法の解釈が失当である。
(7)遅くとも本件訴え提起時には、是正の指示による措置を講じるのに相当の期間は経過しており、被告の不作為は違法となった。また、地方自治法の趣旨及び前件和解の趣旨から、被告は是正の指示の取消訴訟を提起するべきであった。
                                              以上
 
【判決要旨】
 県PDF 判決要旨
 
 沖縄タイムス+プラスを閲覧したついでに、同紙から、以下の2つの記事をご紹介しておきます。
 
沖縄タイムス+プラス ニュース 2016年9月17日 12:03
辺野古違法確認訴訟 裁判長の説明

(抜粋引用開始)
 なお、この場で2点だけ説明致します。
 まず1点目は、協議と判決との関係。協議は政治家同士の交渉ごとでまさに政治の話。訴訟は法律解釈の話。両者は対象とする問題点は同じでも、アプローチがまったく違うもので同時並行は差し支えないと、考えた。
 2点目。裁判所が被告に敗訴判決に従うかを確認した理由に関係する。国は敗訴しても変わらない。国は何もできないことが続くだけ。
 これは弁護士の方はよくご存じだと思うが、平成24年の地方自治法改正を検討する際に問題になった。
 不作為の違法を確認する判決が出ても、地方公共団体は従わないのではないか。そうなれば判決をした裁判所の信頼権威を失墜させ、日本の国全体に大きなダメージを与える恐れがあるということが問題になった。
 そういう強制力のない制度でも、その裁判の中で、被告が是正指示の違法性を争えるということにすれば、地方公共団体も判決に従ってくれるだろうということで、そういうリスクのある制度ができた。
 それで、その事件がこの裁判にきたということになる。そういうことで、そのリスクがあるかを裁判所としてはぜひ確認したいと考えた。もしそのリスクがあれば、原告へ取り下げ勧告を含めて、裁判所として日本の国全体に大きなダメージを与えるようなリスクを避ける必要があると考えた。もちろん代執行訴訟では、被告は「不作為の違法確認訴訟がある。そこで敗訴すれば、従う。だから、最後の手段である代執行はできない」と主張されまして、それを前提に和解が成立しました。
 ですから当然のこととは思いましたけれども、今申し上げたように理解があるということでしたので、念のため確認したものの、なかなかお答えいただけなくて心配していたんですけども、さすがに、最後の決断について知事に明言していただいて、ほっとしたところであります。どうもありがとうございました。判決は以上です。じゃあ終わります。
(引用終わり)
※多見谷寿郎裁判長による法廷での「主文読み上げ」及び「説示」が再現されており、なかなか興味深いですね。再現の正確性については沖縄タイムスを信用するしかありませんが。とりあえず、「説示」部分のみ引用しました。
 
沖縄タイムス+プラス タイムス×クロス 2016年9月18日
【木村草太の憲法の新手】(40)辺野古訴訟判決 県の主張に応えていない

(抜粋引用開始)
 
9月16日、福岡高裁は、辺野古の埋め立て承認処分の取消を違法と判断した。判決は、次のように述べる。
 「全ての知事が埋立承認を拒否した場合、国防・外交に本来的権限と責任を負うべき立場にある国の不合理とは言えない判断が覆されてしまい、国の本来的事務について地方公共団体の判断が国の判断に優越することにもなりかねない。これは、地方自治法が定める国と地方の役割分担の原則にも沿わない不都合な事態である。よって、国の説明する国防・外交上の必要性について、具体的な点において不合理であると認められない限りは、被告はその判断を尊重すべきである」
 この言いようは、あまりにもひどい。米軍基地が嫌悪施設だと認めつつ、「みんな嫌がるから、地元の話など聞いてられない」という開き直りだ。これでは、安全保障に関する事柄は全て、自治体の意向を無視して、国が勝手にできることになってしまう。
 今こそ、憲法が、地方自治を保障する意味を見直さねばならない。国地方係争処理委員会は、話し合いによる解決を求めていた。この判決は、それすら無視している。
 この判決を基礎にするならば、国は、話し合いの場を設けるインセンティブがなくなる。何もしない方が、国の主張が通りやすいからだ。沖縄が納得するだけの十分なコミュニケーションを促すには、何をすべきなのか、そういった視線も必要だ。
 また、沖縄に基地が集中しているのを知りながら、「仕方ない」と国民が思っていたのでは、地域間の不平等は解消されない。米軍基地による恩恵を受けているのは、日本国民全体だ。「本当に沖縄でなければならないのか」を、一人一人が考えていかねばならない。
(引用終わり)
 
 最後に、地元沖縄2紙の社説にリンクしておきます。
 

「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「北朝鮮は脅威なのか、どう対応すべきか」(2016/5/20)

 今晩(2016年9月16日)配信した「メルマガ金原No.2571」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ「北朝鮮は脅威なのか、どう対応すべきか」(2016/5/20)

 久々に、「「自衛隊を活かす会」シンポジウムから学ぶ」シリーズをお届けします。とはいえ、シンポが行われたのは4ヶ月も前の5月20日のことであり、シンポの内容がテキスト化されてホームページにアップされた7月19日からでも2ヶ月が経っています。
 思えば、5月20日からの2ヶ月間といえば、参院選和歌山選挙区に弁護士のゆら登信さんを野党統一候補に擁立して突っ走っていた時期で、いつもなら定期的に閲覧してチェックしていたはずの「自衛隊を活かす会(自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会)」ホームページを巡回する余裕もなくなっていた時期でした。
 それからさらに2ヶ月が経過して、ようやく元のペースを取り戻しつつあるというところでしょうか。
 今日(9月16日)は、福岡高裁那覇支部が、国(国土交通大臣)が沖縄県知事を相手に提起した不作為の違法確認請求事件について、国勝訴の判決を言い渡した件を取り上げようかと思ったものの、肝心の判決文が読めていない今の段階では意見の述べようがありませんので、これはいずれまたということにして、5月20日の「自衛隊を活かす会」シンポジウム「北朝鮮は脅威なのか、どう対応すべきか」をご紹介することにしました。
 いつものように、シンポジウムの概要をご紹介した後に、動画とテキストにリンクした上で、テキストの(ごく)一部を抜粋してご紹介します。
 なお、シンポの開催日から当然ですが、去る9月9日の北朝鮮による「5回目の核実験」は、議論の前提となっていません。
 
5.20 シンポジウム
北朝鮮は脅威なのか、どう対応すべきか
日時:2016年5月20日(金)17:00~19:45
会場:参議院議員会館 101会議室
主催:自衛隊を活かす:21世紀の憲法と防衛を考える会(略称:自衛隊を活かす会)
登壇者
安倍政権に拉致問題の解決を期待できるのか
 蓮池 透 元拉致被害者家族会事務局長
弾道ミサイル防衛について、邦人救出について
 渡邊 隆 元陸将・東北方面総監
北朝鮮問題に日本はどう対応すべきなのか
 柳澤 協二 自衛隊を活かす会代表・元内閣官房副長官補
討論参加
 伊勢﨑 賢治 東京外大教授・自衛会を活かす会呼びかけ人
 加藤 朗 桜美林大学教授・自衛隊を活かす会呼びかけ人
 
シンポジウム・動画
北朝鮮は脅威なのか、どう対応すべきか|自衛隊を活かす会(2時間41分)
 
 
安倍政権に拉致問題の解決を期待できるのか
蓮池 透(拉致被害者家族会元事務局長)

(抜粋引用開始)
 私は仮にこれから日朝間が交渉を再開した場合には、過去の問題とセットでやるしかないと考えています。つまり過去の清算ということですが、それによって北朝鮮側に見返りがあるということで乗ってくる
という、そういう考え方です。
 見返りに対してはアメリカから小泉政権時代以上の干渉があると私は思っていますので、アメリカから
の干渉を蹴飛ばしてまで日朝間の交渉を進めることが出来るのかを考えると今のような安倍政権が対米従属の姿勢を見せている以上、それは叶わないなと感じて残念です。やはり「北の脅威」と言いますが、私は北の脅威を煽って――拉致問題も脅威の一つです――、そういうツールにされているような気がします
 最近、安倍さんは核・ミサイルと拉致問題を包括的に解決するとおっしゃっていますが、今までの六者協議の結果を見ればわかるとおり、セットではなかなかうまくいかないと思います。日朝間固有の問題として拉致問題を早く――早くしないと皆さん死に絶えてしまいますので――、やってもらいたいと思いま
す。
 北の核はアメリカを向いていると思うので、私は日本に対してはノドンで十分だと思います。日本海
に並んでいる原発を狙えば立派な核兵器になるわけですから。
 その問題は国会でも話題になりましたが、「そういう仮定の話にはお答えできない」という答弁でした。私は東京電力に勤めておりましたので、当時「原発にミサイルが飛ん出来たらどうするんだ」という質問がありまして、当時の通産省から答えを考えるように言われて――すぐ通産省は電力会社に投げてきますので――、いろいろと答えを考えたんですが、実際にミサイルが飛んできて命中したらアウトです。なんとかうまく乗り切る方法はないのかということで、結局出た結論は「日本は法治国家だからありえない」という答えでした。それがいろいろな質問に対する標準模範解答としてずっとまかり通ってきた現実が
あります。
 いろいろ申し上げてきましたが、北朝鮮の非核化は難しいと思います。来週、オバマ大統領が広島に行きますが、北朝鮮側は欺瞞だとか偽善だとか言っていましたけれども、私はその辺はちょっと一理あるのかなと思います。自ら核兵器を廃絶しようとする姿勢を見せないアメリカが核の被害地であるヒロシマを訪れて、誤りだったとか謝罪だとか無しに、プラハ演説の延長として最後の花道を飾るということでは、私はあまり意味がないように思います。そこに同行してパフォーマンスをする安倍首相の姿を見たくはあ
りません。
 時間がなくなりましたが、私はこのままだと難しいと思います。なんとか北朝鮮とパイプをつなぐような民間外交とか議員外交とか、そういうものに頼るしかないという段階に来ています。もう家族としてや
れることはありません。
 後は政府がどうするかです。民間外交や議員外交を否定しているのであれば、どうするのか、本気になって欲しいと思います。金正日の料理人と言われている藤本健二さんが金正恩氏と面会して3時間も話をしたということがありましたが、そういうことが出来るのは藤本さんだけだと思います。藤本さんは総理大臣の親書を持って行って渡したいとおっしゃっていましたが、そういう道を使うのも一つの方法なので
はないかと思っています。
 金正恩委員長は粛清を繰り返していますから、ボトムアップするシステムは今の北朝鮮では全く機能していないのではないかと私は考えています。自分が気に食わなければすぐに粛清してしまうようなタイプですので、小泉政権時代に対応したミスターXというような全権を担った外交官の出現はなかなか難しいと思います。そういう厳しい状況の中でどうやってこの拉致問題を解決していくのか、私は難しいと考え
ています。
 最後に、「私は立法府の長である」とか、「日本の最高責任者である」とか、自衛隊を「我が軍である」というようなことを安倍首相は口にされておりますが――単なる勘違いとおっしゃる方もおりますけれ
ども――、私は確信犯的な、或いは本当にそう思っておられるのか、これは本当に独裁政権に近づいてきた、だんだん日本の世相も北朝鮮と同じように窮屈で息苦しくなってきている。そういう状態では拉致問題の解決はできないと考えています。
(引用終わり)
 
弾道ミサイル防衛について、邦人救出について
渡邊 隆(元陸将・東北方面総監)

※「弾道ミサイル防衛」と「邦人救出」について、豊富なパワーポイント資料などをもとにした説明がな
されており、ざっと一読しましたが、そのどれかを切り取ってご紹介する気になれませんでしたので、是非リンク先で全文をお読みください。
 
北朝鮮問題に日本はどう対応すべきなのか
柳澤 協二(元内閣官房副長官補、自衛会を活かす会代表呼びかけ人)

(抜粋引用開始)
 北朝鮮の核は日本にとって脅威なのかどうかですが、私は一貫してアメリカ向けのカードだとおっしゃ
る蓮池さんと同じ意見です。
 例えば、2006年7月5日――私が官邸にいる時――、に北朝鮮はミサイルを何発か撃ちました。その日はアメリカ時間で言えば7月4日の独立記念日でした。その時はスカッドとノドン、失敗しましたがテポドン2の3つのミサイルを撃っていますので、撃った意味は何かと言えば、スカッドで在韓米軍基地を叩く、ノドンで在日米軍基地を叩く、テポドン2でグアムかハワイの米軍を叩くというデモンストレーショ
ンをやったということだと思います。
 そして2006年10月9日、小泉さんから第1次安倍政権に変わっていましたが、最初の核実験と称するものをやるわけです。ミサイルと核とセットになっている。私はこれは面白い、わかりやすいなと思ったの
は、ミサイルは7月4日、アメリカ独立記念日に撃って、核は10月9日、コロンブスがアメリカ大陸を発見したアメリカ国民の祝日を狙ってやっているわけですね。非常にアメリカ向けのメッセージということがわかりやすい、父親金正日の時はそういうやり方をしていたということです。息子の金正恩も、サンフランシスコもハワイ、グアムも、横須賀も我々のミサイルの射程内にあるということを言っています。アメリカ向けにはそういうカードがあった。
 2010年秋には韓国の延坪島ヨンピョンド)に大砲を撃ち込んでいます。韓国向けには大砲でいいんですね。大砲を向けて「ソウルが火の海になるぞ」と言う、ソウルに届く大砲を持っているわけですから、
それをカードに使っているわけですね。
 日本はどうか。日本向けにはノドンではないのです。日本向けのカードは拉致の問題だと思うんですね

 拉致の問題をカードとして扱うようになったのが2002年9月の小泉訪朝だったわけですが、実はその後、アメリカは日本に対して、北朝鮮ウランの濃縮をやっているようという情報を国務次官補のケリー(ジェイムズ・アンドリュー・ケリー)がリークするとか、そういう形でちょっかいを出してくるわけです

 日本側も小泉訪朝団で金正日が事実を認めて謝罪したのがすごく大きな転機になっていると思うんです。ところがアメリカは日本だけ先走られても困る。日本側にしてみれば、北朝鮮から非常に多くの方が亡くなったという回答を受けて、それはやはり国内向けにも納得できないという要素があって、そこでもっとたくさんの拉致被害者が一気に帰って来れば、状況はかなり変わっていたと思うのですが、そういう形
で拉致については日本が独自に北朝鮮に働きかける状況になったわけです。
 日本の立場から見ても持っているカードは核実験に対する経済制裁ではありません。やはり、拉致の問題を通じて、ありていに言えば北朝鮮にどういう「ご褒美」を渡すことが出来るのか、相手を軍事的にや
っつけて強制するのでなければ、ご褒美を与えて相手の意志を変えるしかないわけですね。
 核の方は、アメリカはどうやったって北朝鮮が核を作っていることを認める、認めたからご褒美を出すというわけにはいきません。今、日本はアメリカと同じ立場に立ってしまっているわけです。それは一般論として誤りではありませんが、しかし核とは別に拉致というイシューがあるわけで、拉致の問題をイシューとしてどう解決していくのかということを考えるという意味で、日本はカードを持っているわけです
ね。
(略)
 私が北朝鮮の立場で考えて、なぜ日本にミサイルを撃ち込むかといえば、それは恐怖があるからですね。日本を無力化しなければ、日本から自分達に対する攻撃が加えられるという恐怖です。誰が攻撃するのかと言えば在日米軍です。在日米軍がひとっ飛びで北朝鮮を爆撃しに来る。だから本当に北朝鮮がアメリカと戦争をする気になれば、まず一番近い敵をやっつけますよ。中国だって同じ理屈です。だから、アメリカと一体化すれば安全になるという安保法制の基本的な思想が、ミサイル防衛に関する限り、北朝鮮
関する限り、それは多分違うということです。
 北朝鮮が日本全土を占領しに来る、或いはどこかの島を取りに来るという動機はないのです。なぜ北朝鮮が日本を攻撃するか。それは、攻撃しないと自分がやられるという恐怖が募った時に、それがありうる
わけです。
 だから、トランプさんも折角、「守って欲しければ金を出せ」と言っている時に、ちょっと待てと。本当にアメリカ軍がいるからミサイルが飛んでこなくて済んでいるのか、アメリカの基地があるからミサイ
ルが飛んでくるかもしれないのか、ということを我々も冷静に考えなければいけないと思っています。
 最終的に言えば、この北朝鮮問題で他国の生存や承認を巡る戦争に組み込まれて、乗っかっていってしまったら、こういう類の戦争は無制限な際限のない暴力の応酬ですから、どちらかが滅びるまでやるんですね。だから同じ戦争の論理で入っていってしまうのは、私は100%間違った戦略であると言わざるをえな
いと思っています。
 そういうことを考えれば、どこかで日本自身が進んでなんとかして、核・ミサイルと拉致をデカップリング、分離してやらないと交渉の余地はないのです。そうでないと自らで自らの手を縛るようなことになってきます。その意味で、今の方向性に凝り固まっている現政権で拉致問題の解決があるかと言えば、全くありえないと私は思っております。
(引用終わり)
 
コメント 伊勢﨑 賢治(東京外大教授・自衛隊を活かす会呼びかけ人)
(抜粋引用開始)
 最後に追加もう1点だけ。メディアの話ですが、覚えていらっしゃいますでしょうか、2010年に韓国の哨戒艇「天安」の沈没事件がありました。韓国の哨戒艇が韓国の近海で沈んで46名の水兵が亡くなりました。あの時――後で意見が分かれるのですが――、海底から北朝鮮のものと思われる魚雷の破片が海底から見つかりました。ここで、スワっ報復だと世論が沸騰するわけです。ところが、韓国社会が粘りを見せたんです。一部の専門家達から哨戒艇の爆発の跡を見たら、どう見ても爆発物によるものではない、何かがぶつかった跡であるという意見が出されました。この原因は未だ決着に至っておりません。ある意味、意識的にうやむやにしたのです。日本の自衛隊の関係者に聞くと、キッパリと北朝鮮がやっていることになっているのですが。水兵が46名も死んでいるのにです――アメリカの原潜と衝突したという説もあるの
ですが。
 もし北朝鮮糾弾の世論が野放図になれば、停戦が破られて戦争状態になるということで、客観的な意見を求める世論が、好戦世論を抑えた。そして、北朝鮮の脅威を煽りに煽った当時のハンナラ党が、統一選
挙で負けてしまうのです。戦争回避の世論の胆力が見事に備わっている、本当に天晴れだと思います。
 こういう「胆力」が日本に備わっているかというと…。
 僕の東京外国語大学のゼミで、この事件を各国のメディアはどう報道したかという比較研究調査をしました。面白いですよ。アメリカ、韓国、中国、日本の、それぞれの右・左、リベラルと保守のそれぞれの主要新聞のヘッドラインを定点観測したんです。この事件をどう報道したか。もちろん中国に右・左があるかどうかは疑問ですが、しかし少なくともアメリカと韓国、日本にはリベラルと保守の両方のメディア
があります。報道の仕方、ヘッドラインを比較したんですね。
 実は、4カ国の中で、最も好戦的、つまり「ゼッタイ北朝鮮に決まっている」と決めつけて「報復やむなし」という報道をしたのは、日本のメディアなのです。韓国のメディアが一番、保守も含めて冷静でした。日本の問題ではないのに日本のメディアだけが突出して舞い上がっていたんです。その日本メディアの中でもどこが一番、舞い上がっていたか。北朝鮮が犯人と決めつけて、報復やむなしと報道したかとい
うと、朝日新聞です。産経ではありません。
 これを我々はどう考えるか。「胆力」の無さは、日本人の弱点だと思います。
(引用終わり)
 
コメント 加藤 朗(桜美林大学教授・自衛隊を活かす会呼びかけ人)
(引用開始)
 胆力というお話がありましたので、まず、邦人救出ということであれば、今日ここにいらっしゃる皆さんは、ほぼ安保法制に反対していらっしゃると思うので、そもそも邦人救出などということは皆さんの頭の中にはないだろうと思います。だから自力で帰ってきて下さいと。その胆力が必要だということです。
間違っても自衛隊に救出を求めるなんていうことはやめて下さい。それだけのことです。
 それから2点目、弾道ミサイルです。おそらく北朝鮮が日本に核ミサイルを撃ってくることはないと思います。柳澤さんがおっしゃる通り、これはアメリカに対するカードですから。でも万が一、日本に対して弾道ミサイルが撃ち込まれたらどうするか。犠牲を引き受けて下さい。そんなに死にませんから。せいぜい40~50人が犠牲になる程度です。なぜこんなことを言うかというと、湾岸戦争の時にイラクからサウジアラビアに対して大変な数のスカッドミサイルが撃ち込まれましたが、そんなに死んでいません。もっと言えば、1985年のイラン・イラク戦争の時にイラクがイランの首都のテヘランに1カ月近くにわたってスカッドミサイルを何十発も撃ち込んだことがあります。これでも全部あわせても200~300人ぐらいしか死ん
でいません。
 だから皆さんは、何かあったら平和憲法のために殉ずるんだという覚悟を持てば、その胆力さえ持てば、なんということはありません。試されているのは皆さんの胆力です。本当に。憲法に殉ずることが出来
るかどうかという胆力だけです。
 北朝鮮の問題に関して言うと、我々が持っているカードはありません。金正恩が日本に対してほとんど何も言っていないのは、北朝鮮にとって日本はもうパッシング(passing)なんですよ。日本は北朝鮮に影
響力はありません。経済制裁は効いていないんです。
 では、これから効くものは何かと言うと、和解のために払う経済褒賞です。経済協力や韓国と同じぐら
いの金額を出すぞというぐらいです。
 さて皆さんは、我々がかつて韓国に対して行ったことと同じぐらいの経済援助に耐えられるかどうかということです。これも皆さんの胆力です。おそらく数十兆円規模になると思います。それぐらい大変な額
だったはずです。それに耐えられるか。
 要するに一言で言うと、憲法9条を守るということは、ひとえに我々の胆力が試されるということだろ
うと思います。
(引用終わり)

谷口真由美さん(大阪国際大学准教授)講演10/13「がんばる女性へのメッセージ」@和歌山市あいあいセンターのご案内

 今晩(2016年9月15日)配信した「メルマガ金原No.2570」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
谷口真由美さん(大阪国際大学准教授)講演10/13「がんばる女性へのメッセージ」@和歌山市あいあいセンターのご案内

 昨日に引き続き、和歌山での行事のご案内です。昨日は、橋本市に和歌山地家裁の支部設置を求める「日弁連地域司法キャラバン in 伊都橋本」(9/24橋本市産業文化会館「アザレア」大ホール)への参加を呼びかけましたが、今日は、和歌山市の男女共生推進課が企画した「男女共生特別講座」(10/13和歌山市男女共生推進センター6階ホール)をご案内するものです。
 講師は谷口真由美さん。大阪国際大学准教授で、国際人権法や日本国憲法ジェンダー法などを専攻する研究者であると紹介すれば、非常勤講師として出講している大阪大学で受け持つ日本国憲法の講義において、「DJマユミの恋愛相談」が学生に大人気というニュースを思い出す人がいるかもしれませんね。
 最近の記事を1つご紹介しておきます。
 
 
 さらに、「全日本おばちゃん党」代表代行と紹介すれば、ヒョウ柄の(?)衣服を身にまとい、歯に衣着せぬ本音トークで正論を主張する精力的・魅力的な女性を思い出してもらえるかもしれません。
 同党が大きな話題を集めたのは、3年前の参院選のさらに前年、2012年の秋以降だったでしょうか、2013年には私もメルマガ(ブログ)で取り上げていました。
 
 
 そのようなことから、私が関与している団体、たとえば青年法律家協会和歌山支部が憲法記念日の前に開催している講演会の講師候補者として折衝したこともあったやに聴いているのですが、日程が合わなかったとか。他にも、一度谷口さんのお話を聴いてみたいという人(特に女性)が私の周囲にたくさんいたりします。
 10月13日に男女共生特別講座「がんばる女性へのメッセージ」の講師として谷口真由美さんが来和されるということは、知り合いの女性のFacebookページでつい先日(9月10日)知ったばかりであり、今日の昼間、私自身がFacebook簡単な紹介の投稿をしたところ、即座に3人の女性から熱烈歓迎のコメントが寄せられるなど、(一部の人かもしれませんが)相当な人気です。
 会場のキャパの関係から、事前申込みが150名に達し次第受付終了となりますので、「聴いてみたい」という方は、すぐに申し込みされることをお勧めします(9月13日から受付が始まっています)。
 和歌山市男女共生推進課のページに告知がアップされていますが、それよりも、チラシが詳細情報満載で、「これだけで充分!」という充実ぶりです。そこで、以下にチラシの文字情報を転載します。
 
チラシから引用開始)
男女共生特別講座
がんばる女性へのメッセージ
 
おはよう朝日です」や「サンデーモーニング」のコメンテーターでもお馴染みの谷口真由美さん。「おばちゃん」目線で今の政治や社会にツッコミをいれ、年齢や性別に関わらず、全ての人が生きやすい社会づくりを訴える谷口さんのお話を聞いてみませんか。

講師
谷口 真由美 さん
大阪国際大学准教授・全日本おばちゃん党代表代行) 
テレビでも活躍中!

 
大学教員のかたわら、“庶民目線の政治”を訴えるために、おばちゃんたちの底上げと、オッサン社会に愛とシャレでツッコミをいれることを目的に、「全日本おばちゃん党」をFacebook 上で立ち上げる。おばちゃん目線でオッサン政治をチェックしながら、問題提起を続けて、世界のメディアからも注目を集めている。
1975 年 大阪市生まれ。
1997 年 大阪国際大学政経学部卒業(国際人権法)
1999 年 和歌山大学大学院経済学研究科修了修士(経済学)
2004 年 大阪大学大学院国際公共政策研究科修了博士(国際公共政策)
2013 年 法政大学現代社会法研究所客員研究員
専門:国際人権法、ジェンダー法、日本国憲法
<主なメディア出演>
朝日放送おはよう朝日です」木曜日コメンテーター
TBS「サンデーモーニング」コメンテーター
テレビ大阪「ニュースリアル」コメンテーター

日時
平成28年10月13日(木)19:00~20:30
 
場 所 和歌山市男女共生推進センター 6階 ホール   
     (和歌山市小人町29番地 あいあいセンター内)
対 象 和歌山市在住または通勤、通学の方(性別問いません♪)
定 員 150名(定員になり次第締め切り)
参加費 無料
申込方法 電話・メール、または直接男女共生推進課へ
※メールには、「講座名」「住所」「氏名」「電話番号」「一時保育の有無(お子さんの名前と年齢)」を記入
9月13日(火)より受付開始

一時保育あり
講座中、お子さんをお預かりします。1歳~就学前のお子さんが対象です。お申込は開催日の1週間前までです。(定員あり)

申込み・問い合わせ
和歌山市小人町29 あいあいセンター5階
和歌山市男女共生推進課
電話 073-432-4704(8 時30 分~17 時15 分)
メール
danjokyousei@city.wakayama.lg.jp
休館日 月曜日(月曜日が祝日の場合、その次の平日)
※あいあいセンター地下駐車場の駐車台数には限りありますので、出来るだけ公共交通機関をご利用ください。
(引用終わり)
 
 私はこのチラシを読んで、谷口さんが和歌山大学大学院修士課程(経済学研究科)に2年間在籍していたことを初めて知りました。同大学教育学部附属中学校出身の私とも、まんざら無縁というわけではない(?)。
 
 ところで、チラシにもあるとおり、「全日本おばちゃん党」は、Facebook上のヴァーチャル政党(?)であり、私も同Facebookページに「いいね」しているのですが、あまり頻繁な記事の更新は行われておらず、最近は、大きな節目の際に、大阪弁の(私は大阪人ではないので多分そうだろうとしか言えませんが)声明がアップされる程度のようです。
 試みに、昨年9月19日の「声明」をご紹介しておきましょう。
 
【安全保障関連法成立に抗うおばちゃん党の声明】
(引用開始)
飴ちゃん舐めても おばちゃん舐めたらアカンで。
シルバーウィークが過ぎようが来年になろうが、与党とそのツレが無茶苦茶なことをしたこと、おばちゃんらは忘れへんで。言うとくけど、おばちゃんらはしつこいで。昔のことでも、嫌なことはよう覚えてるから、これも覚えとくで。賛成した人ら、自分らがした恐ろしい行為、あとからジワジワしっぺ返し来るで。
何べんでも言うとくわ。
#うちの子もよその子も戦争には出さん
(引用終わり) 
 
 なお、全日本おばちゃん党のFacebookの他に、谷口真由美さん個人のFacebookページもあることに気がつきました。
 ただし、自己紹介には「Facebookは基本的にプライベートなことが多く、プライベートでお付き合いしている方以外は「お友達」になりません。例外はありますが、原則私とリアル社会でお付き合いの無い方はお友達申請ご遠慮ください。」とあり、それもそうだろうなあ、と思いました。
 けれども、それにしては結構読める記事が多いなと思い、基本的なプライバシー設定を確認してみると、「谷口真由美さんの友達の友達」まで閲覧可という設定になっていました。谷口さんと私には共通の「友達」が10人いますので、いろいろと皆さんにご紹介したい投稿も読めることは読めますが、公開設定ではないので、引用は遠慮しておきます。特に7月6日に書かれた「知憲」の重要性を強調した文章は是非読んで欲しいなあ。谷口さんと共通のFB友達が1人でもいれば読めると思うので、FBをやっておられる方は一度是非アクセスしてみてください。
 
 上記JCASTニュースでも紹介されていましたが、今年の6月に、谷口真由美さんの最新刊『憲法って、どこにあるの?』が集英社から刊行されました。版元のホームページにこの新刊の特集が組まれており、著者インタビューもあって読み応えがあります。

 さらに、谷口さん個人のFacebookページの昨晩の投稿で気がついたのですが、この本のプロモーション動画(憲法ミニ講座)が公開されていることが紹介されていました。
 谷口さん自身、Facebookで「でもたぶん、恥ずかしいからもう見ません。もしよろしければ、私の代わりに見てください(笑)」(この程度の引用はいいでしょう)と仰っていますので、4本に分割された動画をご紹介して本稿を終えることにします。
 ただし、10月13日の講演は、男女共生講座「がんばる女性へのメッセージ」ですから、その中に「憲法講座」の要素が含まれるのかどうか、行ってみた上でのお楽しみというところでしょうか(私は、憲法に全然触れないはずはないと思いますけどね)。
 
憲法って、どこにあるの?』谷口まゆみの憲法ミニ講座 1(2分28秒)

憲法って、どこにあるの?』谷口まゆみの憲法ミニ講座 2(2分16秒)

憲法って、どこにあるの?』谷口まゆみの憲法ミニ講座 3(2分41秒)

憲法って、どこにあるの?』谷口まゆみの憲法ミニ講座 4(3分04秒)



(付録)
『大阪のおばちゃん』 作詞・作曲:ヒポポ大王 演奏:ヒポポフォークゲリラ婦人部
 

谷口真由美チラシ 

日弁連「地域司法キャラバン in 伊都橋本~地家裁支部の設置を目指して~」(9/24)開催のお知らせ

 今晩(2016年9月14日)配信した「メルマガ金原No.2569」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
日弁連「地域司法キャラバン in 伊都橋本~地家裁支部の設置を目指して~」(9/24)開催のお知らせ

 日本弁護士連合会が全国各地で開催する「地域司法キャラバン」。来る9月24日(土)に、和歌山県橋本市で開催されます。テーマは「地家裁支部の設置を目指して」というものです(※チラシ)。
 まずは、開催概要をご紹介します。
 
地域司法キャラバン in 伊都橋本
~地家裁支部の設置を目指して~
 
日時 2016年9月24日(土)13:30~16:30(開場13:00)
会場 橋本市産業文化会館「アザレア」大ホール
    (和歌山県橋本市高野口町向島135番地)
参加費無料・事前申込不要
内容
1.開会挨拶
2.地域司法の充実の必要性と当該地域の現状の報告
3.基調報告『最高裁協議の経過と得られた成果について(仮)』
4.報告『徳島県内の家庭裁判所(出張所)の運用について(仮)』
 (和歌山家庭裁判所妙寺出張所の活性化に向けて)
5.パネルディスカッション『地元密着の家庭裁判所を求めて(仮)』
6.質疑応答(他の地域からの会場発言)
7.パネリストからのコメント、まとめの発言
8.閉会挨拶
主催 日本弁護士連合会
共催 和歌山県橋本市かつらぎ町九度山町高野町、裁判所橋本支部設置推進協議会、近畿弁護士会連合会、和歌山弁護士会
お問い合わせ 
日本弁護士連合会法制部法制第一課
 TEL:03-3580-9893  FAX:03-3580-9899
和歌山弁護士会 〒640-8144 和歌山市四番丁5番地
 TEL:073-422-4580  FAX:073-436-5322
 
 開催趣旨については、主催者である日本弁護士連合会と、開催地弁護士会である和歌山弁護士会のホームページにそれぞれ掲載されたものをご紹介しましょう。
 
日本弁護士連合会
(引用開始)
 日本弁護士連合会では、この度、和歌山県伊都橋本地域における司法基盤に関する意見交換会「地域司法キャラバンin伊都橋本~地家裁支部の設置を目指して~」を開催いたします。
 開催地である和歌山県伊都橋本地域は、1990年の裁判所支部統廃合により、和歌山地家裁妙寺支部が廃止され、本庁管轄となったため、現在、同地域には家庭裁判所妙寺出張所及び簡易裁判所が置かれているのみとなりました。このため、市民の司法アクセスの利便性が相当程度低下しており、地域において司法が果たすべき役割との観点からも重要な課題となっています。
 そこで、地元においていかなる活動をすべきか等について意見交換を行いますので、ぜひお集まりください。
 なお、日弁連では、本年11月5日に第27回司法シンポジウムを開催予定であり、本意見交換会は、そのプレシンポジウムとの位置付けで開催します。同シンポジウムは、「いま、司法が果たすべき役割とは―法の支配の確立をめざして―」をテーマに据え、権利の実現に果たす司法の役割や地域におけるネットワークづくりへの司法の関与の可能性等について取り上げる予定ですので、こちらにつきましても、ぜひご参加ください。
(引用終わり)
 
和歌山弁護士会
(引用開始)
 伊都橋本地域は1990年(平成2年)の裁判所支部統廃合により和歌山地家裁妙寺支部が廃止されました。このため、現在は家庭裁判所妙寺出張所と簡易裁判所が置かれているのみとなっており、同地域の住民の司法アクセスは大きく阻害されている状況にあります。
 和歌山弁護士会は、これまでも伊都橋本地域の司法アクセス改善に重点的に取り組んできました。今般、日弁連、近弁連、そして地元自治体である和歌山県、伊都橋本地域の1市3町(橋本市かつらぎ町九度山町高野町)及び裁判所橋本支部設置推進協議会と共催のうえ、「地域司法キャラバンin伊都橋本~地家裁支部の設置を目指して~」を橋本市産業文化会館「アザレア」で開催することになりました。
 今回のキャラバンでは、伊都橋本地域の司法の現状を把握し、日本各地の取り組みを紹介するなどして、家裁妙寺出張所の活性化、さらには同地域への将来的な地家裁支部の設置に向けた検討を行います。
 伊都橋本地域の住民の皆様はじめ、たくさんの方々のご来場をお待ちしております。
(引用終わり)
 
 開催趣旨にも書かれているとおり、かつて和歌山県紀の川上流域には、伊都郡かつらぎ町妙寺に和歌山地家裁妙寺支部が設置されていましたが、1990年の裁判所支部統廃合のうねりの中、支部が廃止され、家裁出張所と簡裁だけが残されることになりました。 このため、橋本市及び伊都郡内の各町の住民が、地裁管轄の事件を提起しようとすれば、車を走らせても1時間~2時間(橋本市の中心部からなら約1時間半)はかかる和歌山市の本庁まで出向かねばならず、非常な不便を強いられることになりました。
 また、家裁出張所があるとはいえ、調停期日が開かれる日程が非常に限られているなど、利用者の司法アクセスに対する障害となってきました。
 和歌山弁護士会では、2度にわたってとりまとめた地域司法計画の中で、伊都橋本地域に新たな支部を設置すべきことを強く主張してきました。
 以下に、「第2次和歌山地域司法計画」の該当箇所(14~16頁)を、少し長くなりますがご紹介したいと思います。
 これをお読みいただければ、9月24日に開催される日弁連の地域司法キャラバンの目指すところが、端的にご理解いただけるものと思います。
 会場の「アザレア」大ホールはキャパ680人の広い会場です。是非、伊都橋本地域の多くの方に来場いただき、支部設置要求の気運を一層盛り上げていただければと思います。
 なお、引用箇所に記載されているデータ(法律事務所の数など)は、同地域司法計画公表(2012年10月)後の変動を反映していないことをお断りしておきます。 
 
第2次和歌山地域司法計画  2012(平成24)年10月  
和歌山弁護士会
(引用開始)
第3 和歌山の司法の現状と課題
2 裁判所
(4)現状の分析と今後の課題
(イ)裁判所の適正配置
a はじめに
 和歌山県内の弁護士数はここ10年間で著しく増加しました。県内でのいわゆるゼロワン地域も解消し、地家裁支部のない橋本市にも弁護士法人非常駐支店を含めると3事務所が開かれ、県民の弁護士へのアクセスはかなりの程度改善されたといえます。
 しかし、市民間の法的紛争は、地域に弁護士がいればそれで適切に解決されるというわけではなく、最終的な公権的紛争解決機関としての裁判所が地域に存在することが不可欠です。
 憲法32条は、国民に裁判所において裁判を受ける権利を保障しています。しかし、国民の居住する身近な地域や生活圏内に裁判所が存在してはじめて、裁判を受ける権利が実効的に保障されるのであり、裁判や調停のために何時間もかけて裁判所に行かなければならないような状況では、もはや「裁判を受ける権利」は絵に描いた餅と同じです。
 見方を変えれば、裁判所を含めた司法機関は、道路や上下水道と同じように国民生活を送る上で不可欠なインフラというべきであり、地域の実情にあわせた適正な配置が必要です。
 その視点で、和歌山県内を見渡しますと、1990(平成2)年まで和歌山地家裁妙寺支部が設置されていた伊都橋本地域に支部を新設(復活)することの必要性を指摘しなければなりません。また、串本簡裁地域の管轄を田辺支部から新宮支部に変更することの要否についても検討する必要があります。
b 和歌山地家裁橋本支部(仮称)新設の必要性及び家裁妙寺出張所の活性化
 1990(平成2)年まで設置されていた伊都郡かつらぎ町妙寺の和歌山地家裁妙寺支部が、地家裁支部統廃合により廃止されて和歌山地裁本庁管内となり、現在は妙寺簡裁と家裁出張所が置かれているのみという状況です。
 家裁出張所は、当初は月2回、和歌山家裁の審判官や書記官が出張して調停などが開かれていましたが、現在は月1回のみとなっているため、利便性が相当程度低下しています。特に、弁護士が代理人につく事件においては、期日がほとんど入らず現実的に利用されていないと言っても過言ではありません。
 伊都郡及び橋本市地域は、和歌山県の東北部に位置し、北は大阪府、東は奈良県と接しており、紀ノ川に沿って国道24号線とJR和歌山線が東西に走っており、また、大阪難波から高野山まで南海高野線が走っています。 
 橋本駅からは、南海高野線で、難波まで特急で45分程度なのに対し、和歌山地家裁本庁のある和歌山市までは、JR和歌山線を利用しても1時間5分程度かかります(しかもほぼ1時間に1本しかありません。)。橋本市北部の林間田園都市から公共交通機関を利用したとすると、乗換えがスムーズにできたとしても橋本駅で乗り換えて1時間20分程度かかり、高野山からでは2時間もかかり、隣の奈良地家裁五條支部のある五條市や大阪地家裁堺支部のある堺市に行くよりも遙かに時間がかかるという状況です。自家用車を利用したとしても、高野山からでは約2時間、橋本市中心部からでも1時間30分はかかります。
 伊都橋本地域の大部分は、通勤や日常生活においても大阪エリアであり、日常生活において和歌山市に出ることはあまりないのが現状です。
 このような状況において、伊都橋本地域の住民が紛争解決のために裁判所を利用することのハードルは非常に高い状況になっています。特に、本人の出席が必要な離婚などの家事調停においては、その不便さは顕著です。
 今、橋本市など地元自治体、地元経済団体も、地元のバランスのとれた発展、地域作りのためには地域に地家裁支部が必要であることから、橋本市や橋本商工会議所などを中心に「裁判所橋本支部設置推進協議会」の設立準備が進められており、地家裁支部の新設運動が起こりつつあります。国の財政状況などを考えれば、多くの困難も予想され一朝一夕に実現できるものではないかもしれませんが、県民に対する司法サービスの充実に責任を負わなければならない和歌山弁護士会としては、地域住民とともに、和歌山地家裁橋本支部(仮称)の新設実現のための運動を、粘り強く展開しなければならない決意で取り組んでいきたいと考えております。
 また、地家裁橋本支部が新設されるまでの措置として、和歌山家裁妙寺出張所の期日を増やし住民が利用しやすい裁判所にすべきです。前述のように、この地域に現在ある和歌山家裁妙寺出張所は現在毎月1回、本庁から裁判官と書記官が文字通り出張してくるのみで、普段は単に受付業務しかなされていません。これでは、調停期日も十分に確保できず、現状では地域住民は現実的に非常に利用しにくい状況にあります。少なくとも週に1回は調停が行えるようにし、妙寺出張所を活性化すべきです。
(引用終わり)

地域司法キャラバンin伊都橋本 

再放送を見逃すな!~『武器ではなく 命の水を~医師・中村哲とアフガニスタン~』と『沖縄 空白の1年~“基地の島”はこうして生まれた~』

 今晩(2016年9月13日)配信した「メルマガ金原No.2568」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
再放送を見逃すな!~『武器ではなく 命の水を~医師・中村哲アフガニスタン~』と『沖縄 空白の1年~“基地の島”はこうして生まれた~』

 私のメルマガ(ブログ)では、しばしば興味深いドキュメンタリー番組の放送情報を掲載しています。とはいえ、BSやCSにまで手を広げる余裕はなく、地上波で視聴できる番組枠、NHKスペシャル、ETV特集、NNNドキュメント、テレメンタリー、映像(毎日放送)などが主なものですが。
 けれども、放送が終わってしまった後になって、「そんな番組が放送されていたのか!」と気がついてがっかりすることもあり、また、もっとひどい場合には、番組情報をメルマガ(ブログ)で紹介していながら、録画予約するのを失念してしまうこともあったりします。

 そういう時に頼りになるのが「再放送」です。
 実は、1週間以内に、上記のようなうっかり視聴・録画し損なった番組の再放送が2本もあるのです。
 
 まず、1本目は、そういう番組が放送されること自体気がついていなかったというもので、一昨々日(9月10日)の夜、EテレのETV特集で放送された『武器ではなく 命の水を~医師・中村哲アフガニスタン~』です。
 その再放送時間と番組案内をご紹介します。
 
再放送 NHK(Eテレ) 
2016年9月17日(土)午前0時00分~1時00分(金曜深夜)
ETV特集『武器ではなく 命の水を~医師・中村哲とアフガニスタン~』
「アメリカ同時多発テロから15年。今も戦乱の続くアフガニスタンで干ばつと闘う日本人がいる。医師・
中村哲(69)。「武器や戦車では解決しない。農業復活こそがアフガン復興の礎だ」。中村は白衣を脱ぎ、用水路の建設に乗り出した。15年たったいま、干ばつの大地には緑がよみがえり、人々の平穏な営みが再び始まろうとしている。戦乱の地アフガニスタンに必要な支援とは何か。15年にわたる中村の不屈の歩みを通して考える。」
 
 ペシャワール会現地代表の中村哲先生は、私の知る限り、以下のとおり、和歌山で3回講演されており、私はその全てを聴講しています(もっとも、2回目は会場に人が溢れ、私はずっとロビーにいたので、聴講したことになるのかどうか)。
 
2005年12月1日 和歌山市民会館小ホール
「氷河の流れのように~憲法9条に守られて~」
主催:9条ネットわかやま創立総会実行委員会
 
2008年4月19日 和歌山市民会館市民ホール
中村哲医師講演会 アフガン最前線報告」
主催:和歌山県平和フォーラム
※あの会場に400人以上はとても入りきれませんでした。
 
2010年10月29日 和歌山市民会館小ホール
「アフガン最前線報告~アジアの同朋としての同じ目の高さをもって~」
主催:9条ネットわかやま、憲法9条を守る和歌山弁護士の会
 
 ところで、中村哲さんのアフガニスタンでの活動の映像化ということでは、日本電波ニュース社製作の『アフガニスタン 干ばつの大地に用水路を拓く 治水技術7年の記録』(谷津賢二監督、2012年、73分)というDVDが発売されています。
※ダイジェスト版

 
 そして、どうやら今回のETV特集も、谷津賢二さんが作られた作品のようなのです、谷津さんのFacebookによれば。
 
 ということは、今回の番組は、NHKと日本電波ニュース社の提携作品なのだろうか?という疑問を抱いたので、日本電波ニュース社のホームページをのぞいてみたところ、「テレビ番組」というコーナーに、この番組の情報が掲載されていました。
 NHKの番組案内より詳しいので、こちらも引用します。
 
(引用開始)
Eテレ(NHK教育)  
2016年9月10日(土)23時00分~24時00分
ETV特集「武器ではなく 命の水を~医師・中村哲アフガニスタン~ 」
 アメリカで起きた同時多発テロから15年、世界では終わりの見えない「対テロ戦争」が続く。いったい
われわれはどこで道を間違えてしまったのだろうか。アフガニスタンで献身的な復興支援を続ける医師・中村哲(69)の活動を通して「平和に至る道」を考えるドキュメンタリー。
対テロ戦争」の標的として最初に攻撃されたアフガニスタン。実は当時、現地では100年に1度と言
われる大干ばつが続いていた。農業は壊滅的打撃を受け、飢えと渇きが多くの人々の命を奪った。今もなお国民の3分の1にあたる760万人が食糧不足に苦しんでいる。この干ばつと闘い続けているのが、1990年代からアフガニスタンで医療支援に従事してきた中村哲だ。「武器や戦車では問題は解決しない。
農業の復活こそが、アフガン復興の礎だ」。そう考えた中村は2003年、白衣を脱ぎ、アフガン東部の乾いた大地をうるおす用水路の建設に乗り出した。過酷な自然との闘い。米軍による誤射。現地の人々とともにあらゆる苦難を乗り越え、27キロに及ぶ「マルワリード用水路」は完成した。周辺の村落では緑が蘇り、いま再び平穏な人々の営みが始まろうとしている。15年にわたる不屈の歩みを描いた記録。
ディレクター:髙橋泰一   
撮影:谷津賢二、柿木喜久男、大月啓介
編集:櫻木まゆみ
AD:菊地啓  
プロデューサー:谷津賢二
(引用終わり)
 
 つまり、民放の番組をテレビマンユニオンが制作するようなもので、制作費はNHKから出ているけれど、実際に番組を作ったのは日本電波ニュース社ということなのかもしれません。
 
 ところで、DVD『アフガニスタン 干ばつの大地に用水路を拓く 治水技術7年の記録』について想田和弘監督が書かれたレビューが、想田監督のFacebookに再掲載されていますのでご紹介しておきます。
 
 以上のような、日本電波ニュース社とNHKの関係など、番組を視聴する上では別にどうでもいいことに違いありません。問題は番組の中身なのですから。
 けれども、中村哲先生にしても、PMS現地スタッフの人たちにしても、いきなり馴染みのない日本の
テレビ局のスタッフがやって来ても、一朝一夕に信頼関係を築けるものではなく、邪魔になるだけでしょう。長年取材を続け、PMSの活動方針などを充分に理解している日本電波ニュース社のスタッフであればこそ作れた番組なのだろうと思います。
 
 想田監督の上記Facebook投稿へのコメントで、谷津賢二さんが以下のように述べておられましたので紹介します。
 
「想田さん、いろいろありがとうございます。ETV特集は多くの方々に観ていただけ、本当に嬉しいです。しかし15年間を1時間にまとめるのは、どだい無理なので、伝えきれなかった事がたくさんあります。まだまだ中村医師の映像記録は続けるつもりです。」
 
 それから、同じコメント欄に、今秋、新しいDVD『アフガニスタン 用水路が運ぶ恵みと平和』が発売予定で予約受付中という情報が掲載されていました。
 送料・税込み3,000円。前作の朗読は菅原文太さんが担当されていましたが、今作はなんと吉永小百合さん!期待したいですね。
 
 ということで、このメルマガ(ブログ)を読んでくださった皆さん。テレビがない、テレビを見る習慣がない(私もかなりそうですが)という人は仕方がありませんが、視聴可能な方は是非ご覧いただきたいと思い、ご紹介しました。
 
 もう1本の再放送は、NHKスペシャルです。しかも、私自身がこのメルマガ(ブログ)でご紹介していたにもかかわらず、本放送を録画・視聴するのをついうっかり失念してしまっていたものです(放送予告・2016年8月のNHKスペシャル/2016年7月31日)。
 
 5本もまとめて紹介したのがよくなかったのか、簡単録画予約するためには、番組表が掲載される放送1週間前になってから、などと思っているうちに、つい録画するのを忘れてしまっていたものです。
 再放送時間と番組案内を紹介します。
 
再放送 NHK(総合TV) 
2016年9月19日(月)午前1時45分~2時34分(18日深夜)
NHKスペシャル『沖縄 空白の1年~“基地の島”はこうして生まれた~』
「1945年8月15日、本土の人々が太平洋戦争の終わりを告げる玉音放送を聞き、悲嘆に暮れる中、沖縄では、人口のおよそ9割が「収容所」に入れられるなど、全く別の「戦後」がはじまろうとしていた

 今回NHKは、アメリカ軍の占領直後―――「1945年6月から1946年にかけて」の映像や、米
軍の機密資料、未公開の沖縄の指導者たちの日記等を入手した。資料を詳細にみていくと、この時期、アメリカの占領政策は揺れており、まさに沖縄が「これからどうなるか」が決められていく期間でもあったことが分かってきた。沖縄はこの時期、アメリカでもなく日本でもない、“空白の状態”に置かれながら、次第に「基地の島」へと変貌させられていったのだ。戦後、本土が平和と繁栄を謳歌する一方、その代償として重い負担を背負った沖縄。「空白の1年」を通して、沖縄の戦後の歩みと今を考える。」
 
 沖縄県東村高江での米軍(海兵隊)ヘリパッド新設工事のために全国から機動隊員を動員して強権的に工事を進める日本国政府。辺野古もまたしかり。外国軍隊の便益のために自国民を恫喝、弾圧することを厭わない政府の在り方の根源はどこにあるのか?そういう問題意識をもって視聴したいと思います。

ビデオニュース・ドットコム 加藤紘一氏追悼無料放送「日本の針路が大きく間違っているようなこの感覚は何なのだろう」(2004年4月30日)のご紹介

 今晩(2016年9月12日)配信した「メルマガ金原No.2567」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
ビデオニュース・ドットコム 加藤紘一氏追悼無料放送「日本の針路が大きく間違っているようなこの感覚は何なのだろう」(2004年4月30日)のご紹介

NHKニュース 2016年9月10日 18時05分
加藤紘一 自民党元幹事長 死去

(抜粋引用開始)
 
自民党の元衆議院議員で、官房長官や党の幹事長など、政府や党の要職を歴任した加藤紘一氏が9日、東京都内の病院で肺炎のため亡くなりました。77歳でした。
 加藤氏は、山形県鶴岡市出身で、東京大学を卒業後、外務省を経て、昭和47年の衆議院選挙で旧山形2区から立候補して初当選し、13回当選しました。この間、第2次中曽根改造内閣で、防衛庁長官として入閣し、その後も、宮沢内閣の官房長官や、党の幹事長、政務調査会長など、政府や党の要職を歴任しました。
 自民党内では、総理・総裁の有力候補とされ、平成10年には派閥を宮沢元総理大臣から引き継ぎ、会長に就任しました。
 また、加藤氏は、小泉・元総理大臣、山崎・元自民党副総裁と近かったことでも知られ、3人の盟友関係は「YKK」とも呼ばれました。
 こうした中、平成12年秋の臨時国会で、内閣支持率が低迷していた当時の森総理大臣の退陣を求めて、野党側が提出した森内閣に対する不信任決議案に賛成する意向を示しながら、採決直前に方針を変更した、いわゆる「加藤の乱」を主導し、加藤派は分裂しました。
 平成14年には、みずからの事務所の元代表が所得税法違反の罪で起訴されたことを受けて、自民党を離党し、衆議院議員を辞職しましたが、翌15年の衆議院選挙に無所属で当選した後、自民党に復党しました。そして、平成24年12月の衆議院選挙で落選した後、3女の鮎子氏を後継に指名し、政界を引退していました。
 その後、加藤氏は体調を崩し、9日、東京都内の病院で肺炎のため亡くなりました。
(中略・・・金原注:この後、加藤氏を知る人のコメントなどが続きます。森元首相、古賀元幹事長、野中元幹事長、川崎元厚生労働大臣山崎元副総裁など)
言論の自由 訴え続けた
 加藤紘一氏は生前、自身の靖国神社をめぐる発言を理由に山形県の実家が放火されましたが、講演や著書で暴力に屈することなく、言論の自由の重要性を訴え続けました。
 加藤氏は小泉純一郎氏が総理大臣だった当時、近隣諸国との関係から総理大臣が靖国神社に参拝することに反対していました。小泉氏は総理大臣として最後の参拝を平成18年の8月15日に行い、加藤氏は、参拝後の記者会見でも「かつて日本と戦いを交えた国は、挑戦的な行動だと受け止めざるをえないので、できれば参拝を控えてほしかった」と述べていました。そして、その日の夕方に加藤氏の山形県鶴岡市の事務所と棟続きの実家が右翼団体の男に放火されて全焼し、この男は警察の調べに対し、「小泉総理大臣の靖国神社参拝に関して加藤氏が慎重な発言をするなど、その政治姿勢に不満があった」と犯行の動機を供述しました。
 この事件をめぐっては、政界だけでなく、弁護士やジャーナリストなどから「言論を封じるテロを断じて許さない」という批判の声が上がりました。放火された実家に住んでいた加藤氏の高齢の母親は、事件当時、外出していて無事でしたが、加藤氏は事件当初、強いショックを受けた様子でした。それでも、加藤氏は講演などでテロに屈しないという態度を貫き通し、言論の自由の重要性を訴え続けました。
 事件後に出版した著書、「テロルの真犯人」の中でも「代議士として国民の負託を受けている以上、発言を曲げることはあってはならないし、これからも、語るべきことは語っていくつもりでいる」と述べたうえで、「昭和初期の、五・一五事件二・二六事件の例を挙げるまでもなく、テロは自由な言論の最大の敵である。ここで私の心がくじけたら、この国の将来に対して大きな禍根を残すことになる」と、テロに屈しない覚悟を強く示していました。
新華社通信 功績を称賛
 加藤氏の死去について、中国国営の新華社通信は、日本時間の10日夜、記事を配信しました。この中で、加藤氏について、「長年にわたって、日本の侵略の歴史を反省するよう呼びかけ、これを美化するような言動を批判してきた。政治家を引退したあとも、安倍政権による自衛隊の集団的自衛権の行使を可能にする安全保障法制を公然と非難し、正義の声を発し続けた」と称えています。
 そのうえで、加藤氏が日中友好協会の会長を務めるなど、日中間の友好交流のために力を尽くしてきたことを紹介しました。
(引用終わり)
 
 元衆議院議員の(と今となっては言うべきなのでしょうね)加藤紘一氏が一昨日(9月9日)死去したことを伝える報道の中で、以上のNHKニュースは、最も詳しいものの一つだったでししょう。
 加藤紘一氏の訃報を伝える際、どのマスコミでも必ず触れるのは「加藤の乱」ですが、靖国神社参拝に関する発言をきっかけとした右翼による鶴岡市の実家への放火をめぐる対応に、記事のうちの相当な分量を割くという見識に対しては、素直に敬意を表したいと思います。
 
 さらに、加藤氏の政治家としての姿勢を伺える映像として、ビデオニュースドットコムが追悼のために無料公開したマル激トーク・オン・ディマンド 第162回「日本の針路が大きく間違っているようなこの感覚は何なのだろう」は、是非じっくりと視聴したいと思います。
 
マル激トーク・オン・ディマンド 第162回 2004年4月30日
日本の針路が大きく間違っているようなこの感覚は何なのだろう


加藤紘一氏 (自民党元幹事長)
 マル激トーク・オン・ディマンド 第162回
 対米協調が全てに優先されるかのような外交政策を愚直なまでに貫く小泉政権だが、肝心のアメリカが戦争の大義だった大量破壊兵器を見つけられなかったり、軍によるイラク人捕虜の虐待事件を起こしたり、かと思うと、戦闘が終わったはずなのに未だにファルージャで市民を巻き込んでの掃討戦を展開したりと、どうも様子がおかしい。そのアメリカと一蓮托生の道を選んだ日本の選択は本当に正しかったのか。この道で日本の国益は本当に守れるのか。日本には他の選択肢はないのか。加藤の乱と秘書による金銭スキャンダルで一度は失脚し、出直しを迫られた自民党の元幹事長にして総理候補加藤紘一氏をゲストに招き、現在の日本外交の針路の問題点を根本から考えてみた。また、今井・郡山両氏の会見と彼らの発言に対する世論の反応を受けて、なぜ今回のような醜いバッシングが起きたのかを再検証した。」
 
 12年前の収録ですが(神保さんも宮台さんも若い!思えば、宮台真司さんは「東京都立大学」の「助教授」だった)、イラク戦争開戦の翌年、日本人人質3人に対して「自己責任論」なる醜悪な(上記の文章のとおり)バッシングの嵐が吹き荒れた当時、しっかりした見識に基づいた意見を述べることを躊躇しなかった保守政治家の姿を見ることができます。
 「対米協調が全てに優先されるかのような外交政策を愚直なまでに貫く小泉政権だが」
「アメリカと一蓮托生の道を選んだ日本の選択は本当に正しかったのか。この道で日本の国益は本当に守れるのか。日本には他の選択肢はないのか。」という問いは、「小泉政権」を「安倍政権」に置き換えてもそっくりそのまま、いや、現在の自民党には加藤紘一氏がいないのですから、もっと悲痛な問いかけと思えます。

治安維持法と自民党改憲草案~石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演レジュメで学ぶ(9/8国賠同盟近畿ブロック会議より)

 今晩(2016年9月11日)配信した「メルマガ金原No.2566」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同じ内容で掲載しています。
 
安全維持法と自主草案~石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演レジュメで学ぶ(9/8国家補償同盟近畿ブロック会議より)

 龍谷大学法科大学院教授の石埼学(石崎・まなぶ)先生といえば、昨年5月28日、300人の学生を対象に行った日本憲法講義「平和主義と安保法制」がIWJによって中継されました、翌日、それを私がメルマガ(ブログ)でご紹介したこと、また、今年の4月2日、私も運営委員を務める「守ろう9条紀の川市民の会」の第12回総会で記念講演をされ、当日のうちにレジュメの骨子のみ、取り急ぎ私のメルマガ(ブログ)で紹介させていただいたこと、さらにその3日後には、レジュメの中4問検討されていた【設問】の詳細解私が試みたりしたことなどをご記憶の読者もおされることと思います
 。
 
 そのようなことで、和歌山にもご縁が生まれました石埼学先生が、昨々日(9月8日(木))、また和歌山市において講演させていただきました。であり、国家賠償同盟近畿ブロック会議のプログラムの一部としての記念講演であったため、一般には広報しませんでした
 。平日の昼間(午後1時から和歌山ビッグ愛12階にて)ということで仕事の予定が入っておりますその代わりに
 私としては、「九条の会・わかやま」事務局の南本勲(みなもと・いさお)さんが、和歌山でいつも主要な憲法講演会にはカメラとマイク持参で参加しております、会議録「九条の会・わかやま」に講演要旨を頻繁に3回連載で紹介してご協力いただいております当事者事例となっております、その上、南本さんは国家賠償同盟です和歌山県本部の役員でもあるのですから、今回も南本さんからの会議録「九条の会・わかやま」が届くのを待ってば良いと安心していたところ、何と、国家賠償同盟のクローズの会議での講演という性格からか、会議用紙「九条の会議・わかやま」への掲載予定はないのですが、思いました
 
。条紀の川市民の会」第12回総会で講演された「戦争法は廃止、憲法9条が輝く日本を大切そう~今、私たちにできること~」の講演要旨を掲載した会議録「九条の」 「会・わかやま」をご紹介します(ホームページ掲載版)。
 第1回(296号)
 
 かなる上は、レジュメを入手して勉強しかないと思い、南本さんにレジュメの残部があったら譲って欲しいと連絡しようとしていたところ、石崎先生が、講演の内容をより広く市民に知っていただきたい気持ちがおありだということをFacebookタイムライン知り(Facebookになって友達教えていただきましたので)、私から、石崎先生のレジュメを私のブログ(その前のメルマガ金原)に掲載したいとお願いしたところ、すぐにご承諾いただき、レジュメのデータを返信していただきました。 そして、講演会主催者の国家賠償同盟和歌山県本部からも、メルマガとブログへの掲載について了解いただきましたそこで、以下に、石埼先生の8日に行われた講演会用のレジュメを全文掲載します。ここ
 
 まで、うかつにも講演のタイトルをご紹介していませんでした。賠償同盟(安全維持法犠牲者国家賠償要求同盟)の会議での講演にふさわしい「日本を安全法時代に回帰させ得る~自主草案が目指すものは何か~」というものです。
 自主慎重案(の危険性)を論じる講演会は全国各地であまた行われていますが(私もそのような学習会の講師を何度も務めました)、今回の石埼学先生の講演のようなその意味でも、このレジュメを全文公開
 する意義は大きく、掲載をご快諾いただいた石埼学先生、そしてレジュメの公開にご同意いただきました国補償同盟和歌山県本部の皆様に、深く感謝申し上げます。
 
(注)印刷される場合にはPDFファイルからどうぞ。
 

2016安全維持法国家賠償同盟近畿ブロック(2016年9月8日和歌山市
                    石埼学(龍谷大学法科大学院教授・憲法学)
 
       日本を安全に維持する時代に回帰させ得る~勝手に草案
         が目指すものは何か~
 
はじめに
・現行憲法の平和主義の放棄は、暫定草案前文、9条2項、9条の2等から明らか

→本報告では、平和主義の放棄などについては立ち入らず、慎重草案のうち、安全維持法と関係しそうなところを中心にする。
 
・任意草案(「日本憲法改正草案」自由民主党平成24年4月27日決定)の性格について。
→この草案通りの本気をめざしているわけではない(憲法改正審議の上も無理) →現在が実現しようと
国家している像・価値観を示している。例えば「活力ある経済活動子どもの国を成長させる」という前文の文言や職業選択の自由の条項からそれを争う文言(公共の福祉等)を削除していることが(草案22条1項)
→正面からの憲法改正だけではなく、現行憲法の下での法律の制定・改正廃等この草案が示す国家像・価値観を実現しようとしている点にも注意(9条予告の安保関連法律制定が典型的)。
 
【余談 北川宗藏先生と父】
1953年の北川先生の逝去のお祝いに私の父が和歌山大経済学部に入学。すぐに、複数の先輩に勧められて、北川先生のご著書で経済学を学んだ」とのこと。 私も、政治や経済のこともよく父を介して、北川先生の影響を受けている可能性あり(?)。
 
一自主憲法改正草案批判
法と道徳の混同
・法と人権の区別は近代法基本原則。
→ 正義、思想、宗教等の価値観に国家は関与せず、それらは市民社会に生きる覚悟の個人が自由に取選択を捨てると言っているが近代国家の基本原則である。
→今度憲法(1889年)の制定者はこの基本原則は、暫定的に守っていた(「国体」を憲法ではなく教育)一歩に書いたことなど―樋口陽一小林節『「憲法改正」の真実』集英社新書、2016年、特に142-145頁の樋口発言を参照)
。曲がり余曲折があるもの、近代国家の教育として絶対問題があることは事実(山住正己『教育チップ』朝日新聞社、1980年を参照)
。 )10月30日)続きの「派義書」(解説書)
の中には、これを近代的な解釈を実施したものもあっただ(山住・前掲書、106-110頁)。 →「国体」についても、その具体的な意味は誰もよく解っていないのだ(山住・前掲書、129-146頁)。と印象づけることが、逆に国民を指名を中心とした体制を整えこむそして威力を発揮したのではなかショック」(山住、前掲書、145頁)。
 
・安全案前文では、「国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、・・・和を尊び、家族や社会全体が共に助け合って国家を形成する」等の「正義」が示すされ、それらの正義―全部というわけではないが―に対応する条項が本文にある(例、9条の3の猶予保全における国民の協力、24条1項の家族の互助の義務など)。
 
最高法規たる憲法にこのような憲法を書き込むことは論外である。
→無視案が戻ろうとする「旧体制」は「実は、明治憲法以前だ」(樋口・小林、前掲書、34-35) →覚悟
案には「国家と歴史と文化、国民と国家と社会が、いずれも渾然一体となった秩序が適切に控えているようであり、だからこそ国家は→正義、思想、宗教等の価値観には国家は関与せず、それらは多少の個人が自由に取って選択してよいという近代国家の基本原則に戻る。 → 相当案だから
現行憲法13条の「個人」を「人」に書いて個人主義を否定するのは自由の立場に立って当然(ただし選択肢24条3項には「個人の優先」との文言があるがミスか・・・)。
 
・ 権利条項
に「公益及び公の秩序に反してはならない」との禁止案がある(12条、13条、21条2項)が、これらの「公益及び公の秩序」に前述の正義観が読み取られているうる。
 
2 歪んだ権利概念
・「権利は、共同体の歴史、伝統、文化の中で徐々に生成されてきたものです。覚悟、人権規定も、国家の歴史、文化、伝統を踏まえたものであることも」 (自主の「日本憲法改正草案Q&A増補版」(同党HP)13頁、Q14)。
→天賦人権説の否定。「人権は、人間そのものによって当然にあるものである。わが党」憲法改正案でも自然権としての権利は、当然の前提」との記述もある(Q&A 37頁、Q44)。 →優先順位
の国家観が「日本は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇をく国家」(前文)というものだから、人権が、天皇ではない別の神や建造物主から与えられるものでありと考えたと言おう
。 「秩序」に「天皇を戴く国家」の価値観・倫理
が読み取られるうると理解するのは邪推ではらせよう。天皇を戴く国家」の価値観・正義観が「公益及び公の秩序」に読む優先順位がある以上、安全維持法に近い法律が→なお現行憲法が「絶対に」禁止している拷問(36条)から
「に」を削除している(慎重案36条)点にも注意。 「に」という文言を削除することにより、例外的に拷問が許される場合があるという解釈ができるようになる。
 
・「彼らの共通の思いは、明治維新以降、日本が素晴らしい時期は、国家が丸となった、終わるまでの10年ほどのあいだった、ということなのです。普通の感覚で言えば」 、この時代こそがファシズム期なんだけどね」(樋口・小林、前掲書、32頁、小林発言)。
 
二自主憲法改正草案と安全維持法
1 「国体」概念の法律への挿入
・「国体」という概念が「法律上の文言に採用されたのは、安全維持法がほぼ最初である」(奥平康弘) 『安全維持法小史』岩波現代文庫、60頁)
。担当者は「
平等に分けた」。であるはずの「国体」概念が1925年の治安維持法(第1条)に挿入された。
 
→1928年の緊急勅令による目的遂行罪の改正、1941年の新治安維持法昭和16年法54号)による①国体のための罰則強化、②特別な刑事訴訟の改正(同法第二) 2章)、③予防拘禁制度の導入(奥平・前掲書、241-242頁)等、安全維持法は次第に改悪されていき1941年の新法では、古い法律の体になっていない(公権力保持に対して)限定が無いに等しい)ものと化するが、そもそもは1925年法が「国体」という法律用語としても定義しかねる概念を取り入れるのか根本的な問題だろう。
 
【北川宗藏先生の1944年の検挙について】
・捜査の端緒は「ゼミナールの学生たち」との「今でいうコンパのようなものをした時、みんなで書いた寄せ書き」のようだが、特高が押収したのは「講義ノートのすべて、たくさんの本」だけのようなものである(『命燃えて北川宗藏生誕100年』2004年、23ページ。21ページ、112ページも参照)。今月の刑罰を受けていることとも合わせて考えると1941年法支援結社(2条)、準備結社(3条)又は集団結成(4条)の「目的違反ノ為ニスル行為」で有罪となった可能性も捨てきれないが、資料からは当の「支援結社」等らしきものが見当たらず、構成要件としては5条承認ではないかと考えられるもの、「一年以上」の懲役を定めるた4条または5条だとしたら、刑が重たいようにも思われる(治安維持法犠牲者国家賠償請求同盟和歌山県本部『和歌山県治安維持法犠牲者(第2版)』2013年、36頁→以降
デタラメ。弁護活動も適度に行われたとは考えられない。
 
・「自主の改正草案に近いことが、教育チップには出てきますね。父母に孝行せよ、兄弟、友、夫婦相和し、朋友を信じて、としている」(樋口・小林、前掲書) 、142頁、小林発言)。
 
・賢明な解決策は、教育ネームに似た善意を、あろうことか憲法典に意見をしている。
 
2 緊急勅令による治安維持法改正
大日本帝国憲法の勅令:「天皇ハ公共の安全ヲ保持シハ災害厄ヲ回避為クルノ緊急必要ニ由リ帝国議会閉会ノ場合ニ於テ法律」
→同憲法には、戦争・内乱等に際して、武力組織の発動を前提とする戒厳(同憲法14条)および非常に大権(同憲法31条)の定めがあるが、緊急勅令は、以上「段階以前の非正常な状態において、立法上、暫定上の例外措置」(小林直樹『国家緊急権』1979年、148頁)
→次期の帝国議会での「承諾」が必要(8条2項)であり、有効性は法律と同等
 
・1928年の緊急勅令(昭和3年勅令129号)
→1925年の安全維持法改正内容。
① 国家変革目的(1条1項)と私有財産制の否定目的(1条2項) )とは別個とし、②前の人の目的で結社を組織した者等を放棄を含む厳罰とした。③また結社の目的善罪を改正した。
憲法憲法8条1項の権利を満たしている当然の厳しい批判があった。 「予期せぬ突発事件が発生した場合」と当時の支配的な憲法学説が示していた二憲法のいずれも欠けていた(奥平、前掲書、113頁)。
→1929年3月議会の承諾があった。
 
・2015年の安保関連法律制定過程を思い起こさせる(政府や政府による無理な憲法解釈に基づき、かつ多くの憲法学者の間違い憲との指摘を無視しての法律制定という意味で)。
 
・緊急勅令制度は、自主決議99条の内閣の決定「法律と同一の有効性を有する政令を制定することができる」と類似している

→「緊急ノ必要」ではなく「特に必要がある」(慎重案98条1項)のほうが要件として緩い可能性があり、また警戒案ほうには「議会閉会ノ場合」という要件がない。
→ 将来憲法の緊急事態条項(98条、99条)は、今回憲法のそれと比べても、要件があいまいかつ温かいのではないのか。
 
三 日本憲法憲法改正審議
1国会による発議までの流れ
憲法改正憲法の発議
憲法改正憲法(制定19年(2007年)法律51号、2007年5月14日制定、2010年5月18日)本日全面施行)により改正された国会法)
(a)議員が憲法改正案の原案を発議するには、衆議院議員100人、参議院議員50人以上の賛成が必要であること(国会法68条の2)
(b)憲法改正原案の発議は、「内容に関して関連する事項ごとに区別して」行うべきこと(法68条の3)
(c)衆参両院に設置される「憲法審査会」(法102条の6)が憲法改正法案等の発議権を付与する(法102条の7)。
 
・衆参いずれかの本会議に提案された憲法改正草案が「憲法審査会」でまず審議され、その後、本会議で特別多数で議決される(両議院で)。
 
・国会による発議
憲法の改正には、「各議院の総議員の三分の二以上の賛成で」国会が議決し、国民に提案する(憲法96条1項前段)必要がある。
 
cf.「総議員」の意味: 現在議員とする説と法定議員とする説がある。
 
国民投票による過半数の賛成
・国会から提案された憲法改正案について、「特別の国民投票又は国会の決定選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成」でもって国民の承認がなされる(憲法96条1項後段)。
・国民の憲法改正の承認が得られた場合、その時点で憲法改正が確定する。
 
cf.憲法改正案に対する賛成の投票が、有効投票総数の二分の一を超えた場合に憲法96条1項の「国民」の「承認」があったものとすること等を定める(憲法改正手続法126条1項)。
 

憲法改正草案の発議は、
「内容に関して関連する事項ごとに区別する」して」行うべきこと(国会法68条の3)
→とりあえず、これは法律上の定めであり、国会の議決で改正可能(憲法には容認しない)。
 

2. 自主のめざす限りにおいて多くの国民の賛同が得られそうな状況に現在はない。学者は現在でも間違っ憲と考えているが、2014年7月1日の閣議決定憲法9条解釈を変更し、したがってそれに基づいて安保関連法を整備し、海外における武力行使を合憲として確立した安部政権→にとってのためのモチベーションはさほど高くないのではないか
。国民の協力を義務化するため、緊急事態条項の憲法への挿入は臨時ではない。
 
3. 慎重(明文マナー)だけではなく、霧状の国家像を具体化するための法令の整備等への警戒が進んでいる
。以上
                                          ​
 

(付記その1 参考サイト)以下、蛇足ながら、石埼先生

 レジュメをさらに深く学ぼうという方のために、インターネットで参照できる以下の資料をご紹介しておきます
  。 (法律第46号)
(付記その2 北川宗藏先生について)
 本レジュメの中の2箇所(【余談 北川宗藏先生と父】と【北川宗藏先生の1944年の検挙について】)に登場する「北川宗藏先生」について、いさか説明を付け加えていただきましたよいかと思いました、和歌山大学経済学部出身で、石崎先生のお父様の8年間ということで南本勲さんに資料を送っていただきましたメールに添付して送っ
 いただいた資料は、北川宗藏氏についての評伝というか研究書というか、『北川宗蔵 一本の道をまっすぐに』(中村福治著/創風社/ 1992年)という本からの、それと、南本さんが資料を博捜して作成された「和歌山県の安全維持法犠牲者より」と「特高月報より」の中の北川宗藏氏関係の部分でしたいずれも、貴重なものですが、これを一々ご紹介する余裕もありませんので、『北川宗蔵 一本道をまっすぐに』掲載の略年譜を参考に、ごく簡略
 な記載を記載するとともに、南さんが書いた「和歌山県の安全維持法犠牲者より」(北川宗藏の項)の中から、3度継続安全維持法関係での取り調べや検挙について説明された箇所を引用させて○
北川宗藏氏略歴1904年鹿児島県六日町出身。鹿児島
市立商業学校を経て、26年3月、神戸高校等商業学校卒業。27年4月東京商科大学本科入学、30年3月卒業。年3月 和歌山高等学校商業学校(和歌山大学経済学部前身)に講師として着任。 33年3月同校教授。 同年6月安全維持法暫定で最初の調べ。経済専門学校(和歌山高等商業学校後身)教授参加。同年8月日本共産党党。49年7月和歌山大学教授、図書館長。53年8月19日商学博士。同年12月2日脳腫瘍にて没82年~89年『北川宗蔵著作集(海道進編/千倉書房)全7巻編集。
○『和歌山県の安全維持法犠牲者(第2版)』)』(2013/11/11 )より
(記載引用開始)
北川宗藏(きたがわ・そうぞう) 本籍:鹿児島県鹿児島市六日町
 1933年(昭和8年)6月27日、和歌山高等学校学生の安全法予イベントに関係維持て、和歌山高商教授・岩城忠一、同校学生・内田穰吉らとともに和歌山警察署で調べてみる
 。検挙(1942年3月15日)の余波を受け、和歌山地方裁判所検事局で事情聴取を思想
 の浸透を図り、和歌山高商機関紙、神戸商大機関紙、神戸商大新聞、関西学院新聞等に唯物弁証法に依拠した論文を執筆、掲載し、学生や一般大衆の啓蒙に努め、また、自己の和歌山高商の教え子で神戸商大に進学した堀田順次、上田宇一、高良武士らと度々出現して意識の啓蒙指導を行ったこととされる。
(引用終わり)

司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述

 今晩(2016年9月10日)配信した「メルマガ金原No.2565」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述

 去る9月2日(金)午後2時から、東京地方裁判103号法廷で第1回口頭弁論が開かれた安保法制違憲・国家賠償請求訴訟では、原告訴訟代理人(弁護士)5名及び原告5名による意見陳述が行われ、その原稿が「安保法制違憲訴訟の会」ホームページで公開されています。
 私は、その内、まず寺井一弘弁護士以下、5名の訴訟代理人の陳述を全文ご紹介しました(司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述/2016年9月6日)。

 今日は、その続編として、同日行われた5人の原告による意見陳述をご紹介することとします。
 陳述されたのは、以下の5人の方々です。肩書きなどは、陳述書を読ませていただいた上での私の心覚えのメモに過ぎません。
 今回陳述された5人は、堀尾先生をはじめとして、皆さん、様々な活動をしてこられた方々ですが、それぞれ参考サイト(私が勝手にセレクトしました)を1つずつご紹介しておきます。
 
 
菱山南帆子さん 祖母が八王子大空襲の被災者 平成元年生まれの市民運動家
※参考サイト
「あらしを呼ぶ少女」菱山南帆子さんが歩んだ道~講演に笑いと共感(レイバーネット日本)
 
辻仁美さん 安保関連法に反対するママの会
※参考サイト
辻仁美氏(安保関連法に反対するママの会から) スピーチ 「みんなのための政治を、いま。市民+4野党党首 有楽町大街宣」 2016.6.19 @有楽町イトシア前(YouTube
 

河合節子さん 
東京大空襲被災者(母と2人の弟を喪う) 東京大空襲訴訟原告
※参考サイト
知って下さい東京大空襲YouTube) 紙芝居(絵・文・上演:河合節子さん)

 
新倉裕史さん 米軍横須賀基地近隣住民 非核市民宣言運動・ヨコスカ
※参考サイト
基地の街で「対話」40年 横須賀の新倉さん、平和運動を本に(東京新聞)
 
 私が選んだ参考サイトを読んだり視聴したりしてくだされば分かると思いますが、今回陳述された5人の皆さんは、様々な体験や属性を背景としながら、日本国憲法の基本理念である恒久平和主義を、日々の実践を通して「不断の努力によつて、これを保持し」てきた方々です(憲法12条)。
 そうであればこそ、憲法を踏みにじった安保法制法の制定は、自らの生き方を否定されたに等しく、立ち上がらざるを得なかったということだと思います。
 そして、そのような思いは、この5人の皆さんほど目立った活動はしていなくても、憲法の平和主義を大切なものと思ってきた大方の国民が共有するところだろうと思います。
 
 それでは、5人の原告の皆さんの陳述をご紹介します。
 一読して共感していただければ、是非、これを周りの方々に知らせてください。このブログをシェアしたり、自分のFacebookタイムラインに貼り付けたり、あるいは「安保法制違憲訴訟の会」ホームページに掲載されたPDFファイルを印刷したり、いろんな方法を活用して、共感の輪を少しでも大きく拡げていきましょう。よろしくお願いします。
 
 なお、第1回口頭弁論終了後の記者会見と報告集会の動画を再掲しておきます。
 
20160902 UPLAN【裁判所前広報・記者会見・報告集会】安保法制違憲・国家賠償請求訴訟第1回口頭弁論(2時間24分)

冒頭~ 裁判前の東京地裁前での集会
40分~ 記者会見
1時間10分~ 報告集会
司会 杉浦ひとみ弁護士
1時間10分~ 寺井一弘弁護士 あいさつ
1時間24分~ 黒岩哲彦弁護士 第1回口頭弁論の裁判の様子
1時間35分~ 伊藤真弁護士 裁判の法的な展開について
1時間43分~ 原告・堀尾輝久さん
1時間48分~ 原告・菱山南帆子さん
1時間51分~ 原告・辻仁美さん
1時間56分~ 原告・河合節子さん
2時間00分~ 原告・新倉裕史さん
2時間04分~ 福田護弁護士 訴訟の今後の展開  
2時間13分~ 質疑応答 
 

原告意見陳述  堀 尾 輝 久
 
私が本件の原告になることを決意した理由
 
1 私の成育史
 私は1933年福岡県小倉生まれ。1937年、4歳の時日中戦争がはじまり、父は戦場へ。6歳の時、中国北部で戦病死した。靖国に祀られ、我が家は「誉れの家」となった。学校では戦争は「東洋平和のために」と教え込まれ、やがて私は当然のように軍国少年になっていた。
 敗戦は12歳、小倉中学1年の夏。終戦の安堵と将来の不安。教科書の墨塗り体験は、それまでの価値観を自分の身体で否定する、否定される体験であり、翌年配られた「新しい憲法のはなし」は新鮮な驚きであった。戦後改革、憲法教育基本法のもとでわたしの青年期は始まる。
 大学では比較的に自由な法学部政治学科に入ったものの、なじめず、さらに人間の問題を深く考えたいと思い、人文科学研究科の大学院で教育哲学・教育思想を専攻した。
 
2 研究者として、教師として
 戦争と平和の問題は、なぜ自分は軍国少年であったかの問いとして、学部生の時からの関心事であった。法学部では、丸山真男ゼミで「日本におけるナショナリズムファシズム」、尾高朝雄ゼミでカントの「永久平和論」を読み、大学院では現場教師の平和教育実践に触発される。私の研究も戦後改革への関心から憲法教育基本法の成立過程を精査して、『教育理念』(東大出版1976)として上梓。その後も、新資料に基づき憲法9条の押し付け論を批判し、その世界史的意味を考察してきた。(「戦争と教育そして平和へ」『総合人間学会年報』4 号2010、「憲法9条幣原喜重郎」『世界』2016.5 月号)
 また人格形成を軸とする人間教育にとって、平和は条件であり、目的であると考え、平和主義を教育思想の中軸に据え、さらには自分の生き方として捉えるようになってきた。(『人間形成と教育』岩波1991、『地球時代の教養と学力』かもがわ2005)
 東京大学では、教育学、教育思想の講義とともに「平和と教育」ゼミを続け、中央大学では国際教育論を講じ、現在も総合人間学会で「戦争と平和の問題を総合人間学的に考える」研究会を主催している。
 この間憲法に対する確信も深まり、憲法9条の精神を守るだけではなく世界に拡げることをこそ憲法は求めていると考え、同じ思いの先輩方を引き継いで、国際憲法学会や9条世界会議、パリでの国際平和教育会議にも参加してきた。今は「9条を持つ地球憲章を!」の国際的な運動をすすめるため、世話人の一人として準備をしている。私の研究・教育活動の軸には平和への希求と9条の理念があったのだと改めて思う。
 
3 精神的打撃
 この間の経緯と現在の状況は私の精神のありようにとって厳しいものがある。安倍内閣のもとでの教育基本法制定(2006年)は衝撃的であり、教育学研究の根拠を奪われる思いであった。しかし憲法がまだ生きている、と思い直してきた。
 しかし、安保法体制が進めば、マスコミと教育は国民馴化のための手段となり、社会から、学校から自由の雰囲気が消えていき、再び軍国少年少女が育てられるのではないか。貧困と格差は経済的徴兵の温床となるのではないか。そのような事態こそ、人格権としての幸福追求の権利を制約し奪うことになろう。
 このような憲法が侵される事態は堪え難い苦痛である。それは研究者としての苦痛であるとともに、平和主義を自分の生き方として選びとってきた私にとっての人格権の侵害そのものと言うべき苦痛である。
 長らく教育研究に身をおき、平和の思想史と平和教育の実践的研究に携わり、前文・9条に誇りをもって生きてきた者として、さらに「9条を持つ地球憲章」を創る仕事に取り組もうとしている者として、この事態は、私の研究の根拠を、さらには私の生き方を国家権力によって否定され、奪われる思いである。
 これまで教育関連の裁判においては、学者として意見書を書くことはあっても、自ら原告になることはなかった。しかし今度ばかりは、自ら原告となる道を選んだ。それほどの苦痛を受けているということである。それは個人としての苦痛にとどまらず、教育研究者として未来世代に責任を負うものとしての憤り( 公憤) でもある。
 戦前戦中そして戦後を生きてきた人間の一人として、 未来世代の権利を護る責任をもつ世代の一人として、法の前に立ちたいと思う。
                                        以上
 

原告意見陳述  菱 山 南 帆 子
 
 私は、1989(平成元)年生まれです。両親が共働きだったため、一人っ子の私は、日中祖母の家に預けられることが多かったです。祖母は、戦争のことを私によく話してくれました。戦争で祖母の兄弟や家族が亡くなり、祖母自身も戦火に逃げ回ったそうです。祖母は1945年8月2日の八王子大空襲を経験しています。八王子の街の約80%が焼かれて何もなくなったということです。「火に追われ必死に逃げ回っているのは、今の私ではなくてあなたくらいの子どもだったのよ」と言われ、私は自分自身が火に追われ逃げる様子を想像し、親を亡くすことを想像するようになりました。心から怖いと思いました。祖母は、戦争の話をした後、いつも「今は二度と戦争をしないという憲法ができたのよ」と本当にうれしそうに話してくれました。私は八王子の街を逃げ回らなくてもいいし、親を亡くして独りぼっちになってしまうこともないと子ども心に安堵しました。私は、「憲法があって良かった!」と心から思ったのです。
 
 小学校6年生の秋にアメリカの9.11がありました。私は、なんでこんなテロを起こしたのか疑問を持ちました。私は、アフガンの人たちがアメリカを憎む原因を考え、また、9.11で犠牲になられた人たちの苦しみを想像しました。アメリカが始めた、いわゆる「正義の戦争」はアフガンの人たちから見たら「正義」ではなく「悪」ではないだろうか。そして、なぜテロを起こしたのかと考える中で、「貧困」や「差別」がもとにあり、「戦争」は憎しみの連鎖にしかならないということは、12才の私にも分かりました。
 中学1生だった2002年12月、イラク戦争が始まる直前に、初めて母と一緒にイラク戦争反対の集会に日比谷野外音楽堂に行きました。同じ思いの人が集まり、思いを共有することに感動しました。それから私は一人で集会などに参加するようになりました。
戦争で人の命や生活が失われるということに焦りを感じで、何かしなければならない、という思いに突き動かされていました。
 当時は、ツイッターフェイスブックスマートフォンもなかったため、情報源は「ビラ」でした。私は学校内で友だちに伝えようと「ビラ」を作り学校内で撒きました。
 イラク戦争が始まった3月20日以後は、寝袋をもってアメリカ大使館前で泊まり込んで訴えたりしました。
 私はそれまで、おまわりさんは優しい人たちと思っていましたが、大使館前に座り込んでいる私たちを時には暴力を持って排除しようとしたのを見ました。
 私は、こんなふうに運動に関わる中で大人の人たちの話から、戦後の運動の歴史や、憲法というものの中味、憲法9条だけでなく13条や24条など私たちにとってとても大切なことを書いた条文がたくさんあることを知りました。
 中学3生から高校2年までの長期休みの時は沖縄の辺那古の海に行きました。そこで、体を張って基地を建設させない運動を続けている人たちを知り、私も仲間に入れてもらいました。ここでも国の人が住民を海に突き落とすという姿を見ました。
 私は、祖母が安堵した平和を守る憲法を、このままの姿で守りたいのです。
 戦争の加害者になって心の傷を負う人を作りたくない。
 安倍政権の憲法破壊をやめさせ、のびのびと安心して生きられる社会を残したい。
 安全保障法制によるアメリカとの一体化する政策は、自衛隊をこれまでの中立者から明確な敵兵と豹変させることであり、日本を一気に危険な状態へと陥れます。本裁判提起後である、7月2日、バングラデシュの首都ダッカで、テロ事件が起こり7名の日本人が犠牲となりました。私たち日本人は、安全保障法制を制定したことによって、ISのようなアメリカやその同盟国を標的とするテロリストにとっての、標的となりました。私たちの身には現実のテロの危険が迫っています。
 また、私たちの国家の基本法である憲法をかくも違法な手続きで破壊した安全保障法制は、私たちに憲法97条が定める「この憲法がさだめる基本的人権は侵すことのできない永久の権利として信託されたものある」ことを、改めて私の心に呼び起こしました。私が祖母から教えられた戦争を行わないかけがえのない憲法9条が、安全保障法制によって破壊されてしまったことは私の心に大きな傷跡を残しました。
 安倍政権が強引に成立させた安全保障法制によって、私が、平和の為には最善のものと考えている憲法9条が歪められています。私の中には、主権者としての意識、政府が憲法に従うべき立憲主義という考え方が、15年以上前に私の中に育まれ、これまで蓄積されてきました。しかし、安全保障法制によって私の考えがドンドン破壊され続け、絶望的な気持ちになっています。
 私は祖母から思いを託された者として平和憲法を踏みにじる安保法制を認めることはできません。自分が平和の中で安心して暮らしてきたことを、そのまま次世代に渡すために、安全保障法制を違憲とする原告となります。
                                        以上
 

原告意見陳述  辻  仁 美
 
 私は二人の子どもを育ててきました。娘は、この春、大学を卒業して社会人になりました。息子は大学2年生です。
 私は3.11の原発事故までは政治に特に関心を持ったことはなく、いわゆるノンポリでした。
 3.11以来、政府の出す情報がおかしいのではないかと思うことが重なり、放射能のことや食の安全に関しても、自分で考えて行動しなければと思うようになりました。当時子どもたちは高校生と中学生でしたので、子どもを守るための市民活動をするようになりました。その延長線上に、昨年7月に参加するようになった「安保関連法に反対するママの会」の活動があります。ママの会は「だれの子どももころさせない」を合言葉にしています。
 国民の8割が時期早尚と言っていたのにもかかわらず、国会で十分に審議が尽くされないまま、また立法事実のないままに安保法制が強行採決されたとき、私は、とうとう日本が海外に出かけて行って戦争できる国になってしまったのだと絶望感にさいなまれました。
 私たちの国は「政府の行為によって再び戦争の惨禍がおこることのないようにすることを決意したのではなかったのですか?」
 安倍首相は安保法制の成立を受けて「国民に丁寧に説明していく」といいましたが、安保法制が施行されたいまも、丁寧に説明してくれたことはあったでしょうか。
 政府への不信感から、私は、安保法制が施行されてから子どもを持つ母として不安でたまらなくなりました。
 原発だらけの日本へのテロ攻撃の心配も現実となってきています。今年3月22日のベルギーのテロ事件を知って、ますますその心配が高まっていたところ、今年の7月初めにはバングラデシュのダッカで明らかに日本人がターゲットになったテロ事件が起きました。ベルギー事件以上に、ダッカ事件は私に恐怖をもたらしました。安保法制によって、日本は外国から見れば、明らかに平和主義を捨てたとみられていることがはっきりしたからです。このようなことは国の内外を問わず、これからは私たちに起きるのだと思い知らされました。
 これで「安保法制は国民の生活や安全を守るために必要不可欠」なんていえるのでしょうか?
 先月、私は、沖縄の東村・高江のアメリカ軍ヘリパッド建設工事に反対している人々の応援に行きました。参議院選挙が終わるのを待っていたかのような、突然の工事の再開、そして7月22日に行われた本土の機動隊員によるあまりの横暴な強制排除の映像を見て激しいショックを受けました。だから私は、いてもたってもいられず、高江に行ったのです。
 そこで、私が自分の目で見て感じたこと、それは「権力の暴走した実際の姿」でした。本土の各地から動員された若い機動隊員たちが、非暴力で抗議行動をする現地の人々を羽交い絞めにして暴力的に排除する姿がありました。彼らは、法律を無視し自分たちのしたい放題の規制をしており、ここは本当に日本なのだろうかと恐ろしくなったほど、現場はまさに「無法地帯」でした。
 戦争できる国になるということは、こういった暴力が許される社会であり、それを現場で担わされるのが若者なのだと実感しました。大学生の半分が利息付の返済が必要な奨学金を借りているという現実に照らすと、息子のような若者を使って、数年先、本土でこの光景であるかもしれないと思うと身震いがしました。
 私たち普通の市民は、安保法制のもとであっても、この国で生きるしかありません。この社会が、言いたいことも言いにくくなって徐々に息苦しい社会に変化してきていることも実感しており、押し寄せる圧迫感と不安や恐怖と闘う毎日になっています。権力の暴走を止めるのが憲法であるはずなのに、憲法にその機能がなくなってしまったら私たちは何をよりどころに暮らしていけばいいのでしょうか。
 
 沖縄滞在中に、戦跡を訪ね戦争被害の体験者のお話も聞き戦争とはどういうものかわかりました。戦争をしない国を次世代へ繋いでいくことこそが今を生きる私たちの使命なのではないか。そのように思いました。私たちの国はいったいどこに向かおうとしているのですか?
 私は、子どもたちには世の中に役に立つ人に育てようと、しっかりと教育をしてきたつもりです。
 しかし、子ども達を戦争に加担させるために産み育ててきたのでは、断じてありません。武器輸出解禁や自衛隊海外派遣などのニュースは私を不安にさせます。平和に生きる権利を侵害されたと感じます。高江での体験で、さらに不安が増しました。精神的にも肉体的にも大きな負担と苦痛を与えられていると感じます。裁判所におかれては、どうぞ、この思いをお受け取り下さいますようにお願いいたします。
                                        以上
 

原告意見陳述  河 合 節 子
 
 戦争によって家族を殺され、傷つけられた被害者の一人として、この安保法制が強引に成立させられたこと、施行されたことで、私が受けた被害を訴えます。
 昭和20年3月10日の東京大空襲は、2時間あまりの間に東京下町の約10万人が焼き殺され、約100万人が罹災したというすさまじい戦争被害でした。私は、母親と2才、3才の幼い弟を焼夷弾の火炎の中で、失いました。父親は、大火傷を負いながらも、生き長らえましたが、住居、生活用品、食物すべてを失いました。家族全員を奪われた人々も沢山いました。家族も生活のすべも失った者たちが、その後を生きることは、本当に大変なことでした。   
 大火傷を負った父は、病院に収容されましたが、薬もなく火ぶくれになった皮膚に、油を塗る程度の劣悪な医療環境の中で、やっと命を取りとめました。しかし、眼瞼や唇は反り返り、耳たぶも融けてなくなり、顔中ケロイドの状態になりました。
 当時、誰もが貧しく、なにがしかの被害を負った生活でしたが、それでも父のケロイドの顔面は人が目を背けるようなひどい様子でした。父が奇異の目にさらされながらも、働いて、幼い私を育てることは、どんなに大変だったかと思います。父はそんな被害を受けながらも、妻や子を守ってやれなかったことに苦しんでいました。父の辛さ切なさが分かる年齢になり、私自身も胸のつぶれる思いです。
 戦時中、兵士も戦いましたが、一般市民も戦争にまき込まれました。自分達の住む街が戦場になったのです。近代戦においては、国のすべての住人が標的となりました。
 私の人生は、母や弟たちを失い、父を苦しめ続けた、そんな戦争の傷跡の中で形作られてきたのです。
 国内外に膨大な被害をもたらして終わった戦争の結果、「私達は、もう二度と戦争はしない」と決め、現在の憲法が制定されました。私に大きな重荷を負わせた戦争を「やってはいけないことだ」と国が認め、「二度と戦争しない」と私たちに約束してくれたのです。二度と私のような苦しみを子どもや孫たちが負うことはないと、その約束と引き換えに大きな心の痛みや苦しみをこらえて生きてきました。
 私は、いわゆる東京大空襲の被害者として国を相手に裁判を起こす原告になり、約7年間裁判をしました。でも、司法は、この戦争被害についての救済の必要性を判断せず、立法府にゆだねました。
 ところが、国の立法機関は、司法に指摘されたかつての戦争の後始末をするどころか、その反省さえ忘れてしまいました。
 この安保法制に、私達戦争体験者は70数年前の異常な日々のくらしの記憶を呼び覚まされ、更に、自分や家族の頭上に、火の玉となって戦争が降ってくると、怯えて暮らすことになりました。
 この法制の成立によって、再びかさぶたをはがされるように、生々しい心の傷としてすべてが蘇ってきます。亡くなった母の顔や、小さかった弟たち、そして苦しんで苦しんで私を育ててくれた父のあのケロイドの残った面影、すべてが今現実のものとして蘇ってくるのです。
 戦争する国になることは世界を平和にはしません。恨みが恨みを招き、やがてその恨みは自分たちの元に返ってきます。私は、9条の戦わない平和な日本を家族の犠牲と自分の人生の犠牲の引き換えに70年手にしてきました。この先人の犠牲を無にするようなことは絶対にやめてください。
 裁判所は私たちの被害をしっかり受け止めてください。
                                        以上
 

原告意見陳述  新 倉 裕 史
 
 神奈川県横須賀市の南部、長沢に暮らしている新倉裕史と申します。住まいは、在日米海軍横須賀基地から約10キロメートルの距離にあります。
 父親が米軍基地で働いていたため、基地の存在は幼いころから身近に感じていました。慣れ親しんでいた基地ですが、成人するにつれてその存在に疑問を持つようになり、現在、小さな市民運動に参加し、基地の存在と市民の平和な暮らしについて、考え続けています。
 安保法制が成立しました。基地の街に暮らす市民として、安保法制の成立は、大きな不安材料です。本日、この場で証言する機会を頂きましたので、基地の街の住民が抱いている不安について、証言できればと思います。
 
 最初に、米海軍横須賀基地に配備されている米艦船が、実際にしてきたことについて報告します。
 横須賀基地を母港とする空母機動部隊は、湾岸戦争イラク戦争で、先制攻撃の中軸を担ってきました。イラク戦争では横須賀母港の2隻のイージス艦が、巡航ミサイル・トマホークを発射して戦争が始まっています。先制攻撃のあと横須賀母港の空母キティーホークの艦載機が5000回以上の攻撃を行いました。
 イラク戦争の犠牲者は19万人。その7割の13万4000人が戦闘に巻き込まれて死亡した一般市民といわれています。アメリカ軍兵士の戦死も4500人を超え、除隊後の自殺者や戦争後遺症に苦しむ元兵士の多さが深刻な問題となっています。
 開戦理由とされた、フセイン政権による「大量破壊兵器の保有」も、「テロリストをかくまっている」も事実ではなかったことが、米国自身の調査で明らかになっています。
 今年7月には、同盟軍であったイギリスの独立調査委員会(チルコット委員会)も、「侵攻は法的根拠を十分に満たしていたと言うにはほど遠い」と調査報告書を発表しました。
 
 基地の街に暮らす市民として心に重くのしかかるのは、こうした国際法に反した先制攻撃による軍事力の投入が「平和」を遠ざけ、より大きな混乱を作り出りだしているという現実です。歴史学者のエマニュエル・トッドは「ISを生んだのは、アメリカのイラク侵攻だ」(朝日、2015.2.19)と指摘します。欧米諸国が過去数十年にわたって繰り返してきた空爆や地上戦が、夥しい数の中東の市民を犠牲にしてきたことが、今日の「テロの脅威」を呼び込んでいます。
 こうした現状を冷静に見れば、安保法制の成立によって、私たちが暮らしている横須賀の米軍と自衛隊が、より同盟化を強め、一緒になって、新たなテロを生み出すことにつながる軍事行動を起こすことになりはしないかと、心から心配しています。
 
 米軍基地自身が、随分前から「テロ」を現実問題と考えていることを、私たちは知っています。
 2001年9月11日、アメリカで発生した「同時多発テロ」に関連して、在日米軍基地がとった対応をみれば、そのことは明らかです。
 9.11「テロ」の直後、米陸軍相模補給廠の入口には土嚢が積まれ、その上部には機関銃が据え付けられました。重武装の兵士が構える銃口は市民に向けられていました。
 横須賀基地の正面ゲートでは、基地で働く人々の通勤時には、弁当の中身や着替えの下着までがチェックされ、人権侵害の指摘が新聞記事になりました。
 9.11の2日前の「星条旗新聞」は、1面で「テロに注意、韓国と日本の米軍基地が攻撃の対象に」という警告記事を掲載していました。
 そして、空母キティーホークは、テロを恐れて横須賀基地から避難しました。このとき、横須賀の海上自衛隊の2隻の護衛艦は、集団的自衛権の行使というべき、米空母の警護をすでに行っています。14年前のことです。安保法制の成立によって、こうした軍事行動がより日常的になれば、米軍自身が自覚している横須賀基地への「テロ」の脅威は、さらに増すものと思います。
 行政も、「テロ」問題を現実的な問題として扱っています。
 横須賀市の「国民保護計画」(2011年3月)は第1編「総論」、第5章「市国民保護計画が対象とする事態」のなかで、「基地等の機能発揮阻止のため、これらの攻撃が想定される」と位置づけています。
 さらに横須賀市の「国民保護計画」は、こうした攻撃には、「武力攻撃原子力災害」が含まれ、「米海軍の原子力艦が横須賀基地へ寄港することから、原子力艦の武力攻撃原子力災害に対しても対処を定める必要があるという特殊な地域特性を持っている」(第3編、第4章)と書きます。
 
 2008年から横須賀に配備された原子力空母は、一時寄港ではなく、横須賀基地で定期修理も行い、平均的な滞在日数は200日前後。加えて、原子力潜水艦の寄港もあり、年に300日近くは、横須賀基地に原子力艦が停泊しているのが現状です。こうした原子力艦が攻撃され、原子炉が破壊されれば、取り返しのつかない惨事となります。
 その被害は、首都圏全域に広がると、原子力資料情報室のシミュレーション結果は警告します。
                                        以上
 

(付記その1 東京・差止訴訟 第1回口頭弁論について)
 「安保法制違憲訴訟の会」が、4月26日に東京地方裁判所に提起したもう1つの訴訟(安保法制違憲・差止請求訴訟)の第1回口頭弁論が9月29日(木)午後2時から、今回の国賠請求訴訟と同じ、同地裁の103号法廷で開かれます(同地裁民事第2部に系属)。
 まだ、第1回口頭弁論の進行予定などは聞いていませんが、原告の志田陽子さん(武蔵野美術大学教授・憲法学)による意見陳述はきっとあるに違いない、と密かに期待しているのです。
差止請求訴訟「訴状」
第1回口頭弁論フライヤー
 
(付記その2 マガジン9に掲載された原告の声)
 マガジン9の中に、「注目!安保法制違憲訴訟」というコーナーが設けられ、ほぼ月に1本のペースで新たな原稿が追加されていっています。
 これまでお2人の原告が原稿を執筆されています。こちらも是非お読みください。
2016年6月29日 UP
脱線国家を、道に戻そう~志田陽子(安保法制違憲訴訟原告)
2016年7月13日 UP
隣人として~崔 善愛(安保法制違憲訴訟原告)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2015年9月27日
安保法制違憲訴訟を考える(1)~小林節タスクフォースへの期待と2008年名古屋高裁判決

2015年9月30日
安保法制違憲訴訟を考える(番外編)~法律の公布ということ
2015年10月3日
安保法制違憲訴訟を考える(2)~『今、改めて「自衛隊のイラク派兵差止訴訟」判決文を読む』を弁護士にこそ推奨したい
2015年10月27日
安保法制違憲訴訟を考える(3)~「5党合意」は違憲論にどんな影響があるのか?(検討用メモ)
2015年11月25日
珍道世直さんの新たな闘い~「閣議決定・安保法制違憲訴訟」を津地裁に提起
2015年12月2日
安保法制違憲訴訟を考える(4)~伊藤真弁護士(安保法制違憲訴訟の会)による決意表明(11/19@国会前)と小林節氏の現時点(11/21@和歌山県田辺市)での見解
2015年12月23日
「安保法制違憲訴訟の会」による記者会見(12/21)と原告募集のご紹介
2016年3月29日
安保法制施行の日に「安保法制違憲訴訟」を思う
2016年4月21日
いよいよ4月26日「安保法制違憲訴訟」を東京地裁に提起~4/20決起集会から
2016年4月27日
安保法制違憲訴訟(4/26東京地裁に提訴)の訴状を読んでみませんか?
2016年6月4日
安保法制違憲訴訟を地方から起こす~「安保法制違憲訴訟おかやま」の動き
2016年6月18日
「安保法制違憲訴訟おかやま」提訴(6/17)~これで全国6地裁に(付・動画4本雑感) 2016年7月27日
安保法制違憲訴訟~昨日(7/26)の信州訴訟(長野地裁)で8番目
 

(付録)
『世界』 作詞・作曲:ヒポポ田 演奏:ヒポポフォークゲリラ
  

有識者共同声明「沖縄の人権・自治・環境・平和を侵害する不法な強権発動を直ちに中止せよ!」への賛同をお願いします

 今晩(2016年9月9日)配信した「メルマガ金原No.2564」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
有識者共同声明「沖縄の人権・自治・環境・平和を侵害する不法な強権発動を直ちに中止せよ!」への賛同をお願いします

 本日(9月9日)午後、参議院議員会館において、「普天間辺野古問題を考える会」が主催して、「〈共同声明〉沖縄の人権・自治・環境・平和を侵害する不法な強権発動を直ちに中止せよ!」の発表・記
者会見が行われました。
 広くインターネットを通じて賛同署名を求めているところから、昨年4月1日に発表された
声明「辺野古米軍基地建設に向けた埋立工事の即時中止を要請する!」に続く第2弾という位置付けであろうと思います。
 また、この間、昨年の10月26日には、有識者24名の連名による声明「私たちは、翁長沖縄県知事による辺野古米軍基地建設の埋め立て承認取り消しを断固支持します!」も発表されていますから(※記者会見動画)、これも一連のものと考えれば、今日の声明は第3弾という見方もできるでしょう。
 
 以下に、沖縄タイムスの記事から一部引用します。
 
沖縄タイムス+プラス 2016年9月9日 18:46
辺野古新基地・高江ヘリパッド中止を 有識者らが抗議声明

(抜粋引用開始)
 声明は、復帰後も続く米兵がらみの事件事故や高江などでの機動隊による強圧的な排除を批判し「これ
以上、基本的人権のじゅうりんを続けさせてはならない」と訴えた。
 さらに「沖縄の自治と自立の侵害は許されない」「貴重な自然環境を破壊してはならない」、米軍基地の強化による「沖縄、日本、アジアの平和を脅かしてはならない」と、4つの観点を指摘し、「沖縄に対
する安倍政権の強権発動に強く抗議し、直ちに中止するよう求める」としている。
 会見には賛同する8人の学者が出席。宮本氏(金原注:宮本憲一大阪市立大学名誉教授)は「沖縄で起こっていることは平和、環境、人権、自治の問題で沖縄だけの問題ではない。日本人全体が政権を批判し、沖縄に平和をもたらさないといけない」と強調。先週訪ねた高江で機動隊に拘束された香山リカ立教大教授も「東京だったら大問題になることが沖縄では見逃されている。人権問題、沖縄への差別と認識し問
題にするべきだ」と話した。
 宮本氏らは昨年4月にも辺野古新基地建設の即時中止を求める声明を発表し、全国から8千人以上の賛
同署名を集め政府に提出。今回も10月10日までに署名を集めて政府に要請する。
 声明文や賛同署名は以下のURLから。
 
http://goo.gl/51odu3
(引用終わり)
 
 上記沖縄タイムスの記事の末尾で紹介されているURL(Change.org)から賛同署名が出来ます。私も署名を済ませました。ご協力いただける方は是非よろしくお願いします。
 以下に、共同声明を全文転載します。
 
有識者共同声明>
 
沖縄の人権・自治・環境・平和を侵害する不法な強権発動を直ちに中止せよ!
 
 私たちは、沖縄の辺野古米軍基地建設をめぐる問題に重大な関心を寄せ、昨年(2015年)4月1日付けで「<緊急声明>辺野古米軍基地建設に向けた埋立工事の即時中止を要請する!」を公表し、全国から寄せられた8000名を超える賛同署名と併せて、同年4月27日、内閣府に直接提出した。以来、1年以上が経過しているが、その後も安倍政権は、私たちの要請を完全に無視したまま、辺野古米軍基地建設に向けた強権的な対応を取り続けている。
 
 他方、今年6月の沖縄県議会選挙、さらには7月の参議院選挙において、辺野古米軍基地建設に強く反対する沖縄県民の総意が、再三にわたり、きわめて明確な形で示されている。とりわけ参議院選挙における沖縄選挙区では、辺野古米軍基地建設に反対する候補が大差で当選し、沖縄担当の現職大臣を落選させた。これで、衆参両院とも沖縄の選挙区選出での辺野古基地建設賛成議員は一人もいなくなった。名護市長選挙、沖縄県知事選挙の結果とも合わせ、沖縄県民の意思は、これ以上明らかにしようがないほど、明らかである。
 
 にもかかわらず、参議院選挙の直後、安倍政権は、県外からの機動隊500人を投入して、米軍北部訓練場がある東村高江でのヘリパッド(オスプレイ着陸帯)建設工事の再開を強行し始めた。高江は人口150名ほどの小さな集落で、既設の2ヶ所を含め、6カ所ものヘリパッドに囲まれることになるため、地元では粘り強い反対運動が展開されてきたところである。すでに完成したN4というヘリパッドには頻繁にオスプレイが飛来して低空飛行が繰り返され、夜間の10時過ぎにも実施される飛行訓練によって地元住民の安眠が奪われ、暮らしが脅かされている。加えて、生活道路である県道70号の封鎖、反対運動のテント撤去、立木無許可伐採、金網設置などが矢継ぎ早に強行され、あたかも「緊急事態条項」を先取りする無法な工事が強権的に進められている。高江の工事は、辺野古基地建設と同じく、1996年の日米SACO合意での北部訓練場返還に伴い計画されたものだが、東村議会、沖縄県議会の反対決議にもかかわらず強行されたことは、「地方創生」といいながら地方自治を無視する安倍政権の尊大な態度を鮮明に表しており、辺野古工事強行への布石ともとれる。こうした態度と行為は、沖縄県民が示した明瞭な意思を無視し、それに挑戦し、侮辱するものである。およそ民主主義にもとづく法治国家にあるまじき強権発動だといわざるをえない。
 
 私たちは、日本およびアジアの未来にかかわる重大な問題として、この間の事態を深刻に憂慮している。とりわけ、以下に述べる4つの観点から、沖縄に対する安倍政権の強権発動に強く抗議し、このような対応を直ちに中止することを求め、ここに、改めて<有識者共同声明>を公表するものである。
 
1.これ以上、基本的人権の蹂躙を続けさせてはならない
 
(1)沖縄では、1972年の日本復帰以降に限っても、米軍基地関係者による刑法犯罪事件が6000件近くも多発してきた。これに追い討ちをかけるように、去る2016年5月、米軍属による残虐な女性暴行殺人事件が新たに発覚した。米軍基地の存在が、沖縄の人々の安全と基本的人権を脅かしている。翌6月19日には、那覇市内で県民大会が開かれ、6万5000人もの人々が集まり、今後、このような痛ましい事件がなおも引き起されることがないよう、強く抗議している。
 
(2)この間、辺野古米軍基地建設反対、および、高江ヘリパッド建設反対の抗議行動を行う市民に対しても、県外から動員された機動隊員による強圧的な排除行為によって多数の怪我人が続出している。これ以上、こうした沖縄での基本的人権の乱暴な蹂躙を続けさせてはならない。
 
2.沖縄の自治と自立の侵害は許されない
 
(1)2015年10月13日、翁長沖縄県知事は、「第三者委員会」による検証結果報告書を受けて、「公有水面埋立法」にもとづく仲井真前知事による辺野古埋立承認の取消しを発表した。これは、同法および「地方自治法」にもとづく翁長県知事の当然の権限行使である。ところが、これに対し、防衛省沖縄防衛局が「私人」になりすまして「行政不服審査法」にもとづく「承認取消し」の取消しを求める審査請求、および、「承認取消し」の効力を止める執行停止の申立てを行い、国土交通大臣が即座に執行停止を決定するという異例の事態になった。その後、国と県が争う3つの訴訟と「国地方係争処理委員会」を舞台とした攻防が続いてきたが、一時的な和解・協議のあと、去る7月22日、安倍政権は、さらに翁長沖縄県知事を相手取って違法確認訴訟を起こすに至っている。この判決が9月16日に予定されているが、裁判所には、戦後憲法で保障された地方自治の本旨、および、国と地方の対等な関係と国による違法・不当な関与に対する地方の不服争訟権を明示した1999年の「地方自治法」改正の主旨を踏まえた適正な判断が求められている。
 
(2)去る8月3日に安倍政権の第3次改造内閣が発足したが、その後の記者会見で、続投となった菅官房長官は「基地問題の進捗が沖縄関係予算に影響する」と述べ、新たに沖縄担当となった鶴保大臣もそれに同調する発言を行った。これは、いわゆる「リンク論」だが、地方自治と地域の自立的発展を保障すべき財政規律を根幹から揺るがすものである。ちなみに「沖縄振興法」では「沖縄の自主性を尊重しつつ総合的かつ計画的な振興を図る」とされており、同法の趣旨にも反する暴言である。
 
3.貴重な自然環境を破壊してはならない
 
(1)辺野古米軍基地建設に向けて埋立が進められようとしている辺野古岬・大浦湾は、沖縄県環境保全指針で「自然環境の厳正なる保護を図る区域」(ランクⅠ)とされ、ジュゴンをはじめ絶滅の恐れがある多様な生物種が生息する海域であり、世界自然遺産候補にもなっている。ちなみに、すでに世界自然遺産となっている知床で確認されている生物は約4200種であるのに対し、辺野古岬・大浦湾で確認されている生物は絶滅危惧種262種を含む5800種以上である。国際自然保護連合(IUCN)は2000年ヨルダンのアンマンで開いた世界自然保護会議で、「沖縄島およびその周辺のジュゴンノグチゲラヤンバルクイナ保全」勧告を採択している。このようなかけがえのない貴重な自然環境は後世に残すべきものであり、無謀に破壊する愚行を絶対に許すことはできない。
 
(2)ヘリパッド建設工事が強行されている東村高江は、「やんばるの森」の一角にあり、沖縄島北部の国頭山地に広がる亜熱帯の豊かな自然環境を有している。そこには、ヤンバルクイナをはじめ、琉球列島にのみ生息し進化してきた固有種が多数見られ、独特の自然生態系が形成され、生物多様性保全においてもきわめて重要な地域である。このような貴重な自然環境を破壊する愚行は、直ちに中止すべきである。
 
(3)上記の埋立工事と建設工事に関する「環境アセスメント」は、きわめて杜撰な手続きにもとづく「欠陥アセス」であり、到底、正当なものとは認めがたい。本来の適正な手続きにもとづく環境アセスメントのやり直しが不可欠であり、少なくともそれ以前には、すべての工事を中止するのが当然である。
 
4. 沖縄、日本、アジアの平和を脅かしてはならない
 
(1)現在、日米安全保障条約にもとづく在日米軍基地の74%が、国土面積の0.6%にすぎない沖縄に集中している。しかも、その7割が海兵隊の基地である。なぜ、沖縄に海兵隊を集中させる必要があるのか。これまで日本政府は「抑止力」「地理的優位」「一体的運用」などを根拠に挙げてきたが、それらはいずれも説得力に欠ける。実際、2012年12月、当時の森本敏防衛大臣は、退任時の記者会見で、「(普天間の移設先は)軍事的には沖縄でなくても良い」と発言している。
 
(2)辺野古米軍基地建設、および、高江ヘリパッド建設は、世界一危険な普天間飛行場の代替移設や米軍北部訓練場の一部返還に伴う再編等を建前としている。だが、実態的には、沖縄での米軍基地の一層の増強と永久固定化が進みつつある。こうした在日米軍基地強化の動きは、沖縄、日本、そしてアジアにおける軍事的な緊張をさらに高め、私たちが強く求めている平和を根底から脅かすものとなる。これからの21世紀には、戦争放棄を掲げた戦後日本の平和憲法の原点に立ち返り、在日米軍基地の縮小、とくに沖縄での過重な基地負担の根本的な解消に向けた国民的な議論と合意づくりを早急に推し進め、沖縄県民の意を体してアメリカ政府と交渉していくことが求められている。
 
2016年9月9日
 
有識者共同声明>への賛同呼びかけ人(連名)(50音順)
 
青木克明(広島医療生協副理事長),青井未帆(学習院大学教授),姉歯曉(駒澤大学教授),東幹夫(長崎大学名誉教授),阿部治(立教大学教授),有本信昭(岐阜大学名誉教授),淡路剛久(立教大学名誉教授),碇山洋(金沢大学教授),池享(一橋大学名誉教授),池内了名古屋大学名誉教授),池田清(神戸松蔭女子学院大学教授),石川康宏(神戸女学院大学教授),礒野弥生(東京経済大学教授),伊藤武彦(和光大学教授),稲村充則(埼玉協同病院医師),井上隆義(岩手大学名誉教授),井上博夫(岩手大学名誉教授),井上真(東京大学教授・早稲田大学教授),井原聰(東北大学名誉教授),今井晋哉(徳島大学准教授),今岡良子(大阪大学准教授),五十子満大(元東京都立大学教員),岩井浩英(鹿児島国際大学教授),岩佐和幸(高知大学教授),岩橋法雄(琉球大学名誉教授),上園昌武(島根大学教授),上間陽子(琉球大学教授),宇民正(元和歌山大学教授),内橋克人(評論家),内山昭(成美短大学長),浦田賢治(早稲田大学名誉教授),遠藤誠治(成蹊大学教授),大江健三郎(作家),大田直史(龍谷大学教授),大矢正人(長崎総合科学大学名誉教授),岡田健一郎(高知大学准教授),岡田知弘(京都大学教授),岡田正則(早稲田大学教授),岡田洋一(鹿児島国際大学准教授),岡本茂樹(医療法人おかもと小児科クリニック院長),岡本祥浩(中京大学教授),小沢隆一(東京慈恵会医科大学教授),大島堅一(立命館大学教授),大西智和(鹿児島国際大学教授),賀数清孝(琉球大学名誉教授),片山和希(名古屋経済大学准教授),勝俣誠(明治学院大学名誉教授),加藤節(成蹊大学名誉教授),紙野健二(名古屋大学教授),亀山統一(琉球大学助教),加茂利男(大阪市立大学名誉教授),香山リカ立教大学教授),河上茂(日本科学者会議東京支部幹事),川瀬憲子(静岡大学教授),川瀬光義(京都府立大学教授),川原紀美雄(長崎県立大学名誉教授),菊地裕幸(鹿児島国際大学教授),君島東彦(立命館大学教授),草刈英榮(千葉大学名誉教授),栗田禎子(千葉大学教授),河野仁(兵庫県立大学名誉教授),古関彰一(独協大学名誉教授),小原隆治(早稲田大学教授),小林武(沖縄大客員教授),小林芳正京都大学名誉教授),小淵港(愛媛大学名誉教授),小堀勝充(医療生協さいたま熊谷生協病院院長),小森陽一東京大学教授),齋藤純一(早稲田大学教授),斉藤隆仁(徳島大学教授),斎藤正美北見工業大学教授),榊原秀訓(南山大学教授),坂本恵(福島大学教授),桜井国俊(沖縄大学名誉教授),桜田照雄(阪南大学教授),佐々木寛(新潟国際情報大学教授),佐々木雅幸(大阪市立大学名誉教授),佐藤保彦(日本科学者会議埼玉支部幹事),塩崎賢明(立命館大学教授・神戸大学名誉教授),重松公司(岩手大学教授),重森曉(大阪経済大学元学長),白藤博行(専修大学教授),菅野礼司(大阪市立大学名誉教授),鈴木勝久(横浜国立大学名誉教授),関耕平(島根大学准教授),宗川吉汪(京都工芸繊維大学名誉教授),高石光雄(埼玉協同病院院長補佐),醍醐聰(東京大学名誉教授),高作正博(関西大学教授),高塚龍之(岩手大学名誉教授),高橋哲哉東京大学教授),高原孝生(明治学院大学教授),高山新大阪教育大学教授),高山進(三重大学名誉教授),武井隆明(岩手大学教授),武田晃二(岩手大学名誉教授),武田真一郎(成蹊大学教授),立花敏(筑波大学准教授),田中稔岩手大学名誉教授),谷口正厚(沖縄大学名誉教授),種倉紀昭(岩手大学名誉教授),千葉眞(国際基督教大学教授),辻忠男(埼玉協同病院部長),蔦川正義(佐賀大学名誉教授),槌田洋(元日本福祉大学教授),鶴田廣巳(関西大学教授),寺西俊一(帝京大学教授・一橋大学名誉教授),土井妙子(金沢大学教授),徳田博人(琉球大学教授),鳥畑与一(静岡大学教授),豊島耕一(佐賀大学名誉教授),長尾演雄(横浜市立大学名誉教授),中川武夫(中京大学名誉教授),中川直哉(電気通信大学名誉教授),中杉喜代司(弁護士),中西新太郎横浜市立大学名誉教授),中野晃一(上智大学教授),中道一心(同志社大学准教授),中村寿子(阪南大学非常勤講師),中本正一朗(元地球科学技術総合推進(機構主任研究員),中山智香子東京外国語大学教授),名嶋義直(琉球大学教授),西川潤(早稲田大学名誉教授),西谷修立教大学教授),西山勝夫(滋賀医科大学名誉教授),野底武浩(琉球大学教授),長谷川公一(東北大学教授),原科幸彦(千葉商科大学教授・東京工業大学名誉教授),樋浦順(岩手大学名誉教授),土方直史(中央大学名誉教授),人見剛(早稲田大学教授),藤井伸生(京都華頂大学教授),保母武彦(島根大学名誉教授),本多滝夫(龍谷大学教授),前田耕治(京都工芸繊維大学教授),前田定孝(三重大学准教授),前田哲男(評論家),増澤誠一(日本科学者会議東京支部幹事),増田剛(埼玉協同病院院長),増田善信(日本科学者会議会員),松田正久(愛知教育大学前学長・名誉教授),松野周治(立命館大学名誉教授),松本滋(兵庫県立大学名誉教授),間宮陽介(京都大学名誉教授),丸山重威(ジャーナリスト・元関東学院大学教授),宮入興一(愛知大学名誉教授),三宅明正(千葉大学教授),宮﨑礼二(明海大学准教授),宮田惟史(駒澤大学准教授),宮本憲一(大阪市立大学名誉教授・滋賀大学名誉教授),三村和則(沖縄国際大学教授),三好永作(九州大学名誉教授),村上博(広島修道大学教授),村上祐(岩手大学名誉教授),森明香(高知大学助教),森原康仁(三重大学准教授),森裕之(立命館大学教授),諸富徹(京都大学教授),矢ヶ崎克馬(琉球大学名誉教授),八幡一秀(中央大学教授),山川充夫(帝京大学教授・福島大学名誉教授),山口裕之(徳島大学准教授),山崎健新潟大学名誉教授),山下英俊(一橋大学准教授),山下竜一(北海道大学教授),山田昌樹(秩父生協病院院長),雪田慎二(埼玉協同病院副院長),除本理史(大阪市立大学教授),吉尾寛(高知大学教授),横田茂(関西大学名誉教授),横山英信(岩手大学教授),和田春樹(東京大学名誉教授),渡邉知行(成蹊大学教授)(計171名,2016年9月8日現在)
 
金原注:声明の末尾の一文「沖縄県民の意を対してアメリカ政府と交渉していくことが求められている。」の「対して」は、明らかに「体して」とすべきものと考えられますので、私の判断で修正しました。

あれから1年、9月19日の過ごし方~和歌山では午前10時に和歌山城西の丸広場に結集を!

 今晩(2016年9月8日)配信した「メルマガ金原No.2563」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
あれから1年、9月19日の過ごし方~和歌山では午前10時に和歌山城西の丸広場に結集を!

 まもなく、あれから1年が経とうとしています。今年の9月19日を、全国各地の皆さんはどういう風に迎えられるのでしょうか?
 ・・・と書き出せば、当然、「和歌山ではこのような企画を用意しており、私も参加予定です」と続くことが期待されると思いますし、実際、そうしようとは思っているのですが、あまり書くことがないのですよね。
 ただ、今のところ、うちうちのMLに何人かが見るに見かねて(?)書き込んだり呼びかけたりしているだけで、実際の中身がどうなるのか、はたして何人参加できるのかさっぱり分からない状況で、私もメルマガ(ブログ)で呼びかけるのは躊躇していたのですが(開催できずに中止となっても困る)、「もう待っている時間はない」と判断し、とにかく「9月19日の午前10時、和歌山城西の丸広場に集まれる人は集まってください!」と呼びかけることにしました。
 
 まだ、公式チラシも出来ておらず(最後までないかもしれません)、一部の団体が「部内用」に作った暫定チラシしかないのですが(それも一部修正の必要が指摘されています)、今にいたってもそれしか紹介できる材料がないので、その文字情報を転記させてもらいます。
 
採決強行から1年
違憲立法・安全保障法制(戦争法) ただちに廃止!
和歌山アピール行動
日時 2016年9月19日(祝・月)午前10時~正午
場所 和歌山城 西の丸広場
内容(検討中)
・呼びかけ団体によるスピーチ他
・アピール行進
呼びかけ団体(予定・順不同)
 9条ネットわかやま
 安全保障関連法制の廃止を求める和歌山大学有志の会
 戦争をさせない和歌山委員会
 ワカケン
 平和と憲法を守りたい市民の声
 安保関連法に反対するママの会@わかやま
 憲法9条を守る和歌山弁護士の会
 憲法九条を守るわかやま県民の会
 
 呼びかけ団体(予定)をご覧いただければ分かると思いますが、昨年の9月23日に「安保法制(戦争法)廃止を求める9・23和歌山集会」を呼びかけた9団体の枠組(今回は誰も参加できないということで名前を出すことを遠慮したところもありますが)で開催を目指すものです。
 けれども、もともと、9団体の緩やかなネットワークで始まった枠組みであり、実行委員会形式にして事務局を設けるというようなこともしていませんでしたから、「9月19日をどうする?」ということも、ごく一部の個人が問題意識を持って提案し、ようやく「そうだ、やらなければ」と目が覚めたという状況でしょう。
 しかも、三連休の最終日という日程と、声をかけ始めた時期が遅かったこともあり、既に他の用事が入ってしまっている人も少なくないようです。
 ということで、はなはだぱっとしないお知らせで、私が書くのをためらっていた理由もご理解いただけることと思います。
 けれども、「やらないわけにはいかない」ということについては、大方のご賛同が得られるものと思いますので、何とか時間の都合のつく方は、9月19日(月・祝)午前10時に西の丸広場で会いましょう!

CIMG4554 誰がスピーチするのか、何時にアピール行進に出発するのか、デモコースはどうするのか、私の知る限
り、多分何も決まっていません。
 そういうことも含めて、とにかく「10時に西の丸広場にお越し下さい」と言うしかありません。
 もちろん、集まる理由は、憲法違反の安保関連法は絶対に認めず、廃止に追い込むという私たちの決意を、目に見える形で社会にアピールすることに尽きます。
 参院選とその後の一種の選挙疲れのために、「9月19日をどうするか」という検討が出遅れてしまったことは否めません。これは今後の教訓ですね。

 最後に、このメルマガ(ブログ)を目にした和歌山の人々にもう一度訴えたいと思います。既に他の用事が入ってしまっていれば仕方がありませんが、今からでも日程調整が可能な方は、是非とも9月19日は西の丸広場に集ってください。よろしくお願いします。
※上に掲載した写真は、昨年9月23日に実施した「安保法制(戦争法)廃止を求める9・23和歌山集会」後のアピールパレードの1コマです。この写真に写っている人のうちの何人が9月19日に来てくれるかなあ。 
 
(付記その1 東京では)
 9月19日(月・敬老の日)15:30~17:00、国会正門前において、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」が呼びかける「強行採決から1年!戦争法廃止!9.19国会正門前行動が実施されます。
 チラシには、以下の3つのアピールが掲載されています。
「戦争法強行採決から1年、私たちはあきらめない!忘れない!戦争法は廃止を!」
南スーダンPKOでの「駆け付け警護」「宿営地共同防護」は戦争だ!」
「沖縄の高江オスプレイパッド建設中止、辺野古新基地建設計画は断念を!」

(付記その2 名古屋では)
 愛知県では、昨年の4月、「安倍内閣の暴走を止めよう共同行動」が結成され、安保関連法が成立した後も、その枠組を維持して行動を続けており、9月19日には「安倍内閣の暴走を止めよう!あいち集会 9・19戦争法強行1周年 大集会&大デモ」が開催されます。公式ブログから引用してみます。
(引用開始)
2016年9月19日(祝・月)
 13:30~ 白川公園にて大集会  
 14:30~ 名古屋市内中心部を大デモ
1年たって危機は倍増
怒りも倍増
私たちは屈しない
改憲阻止への怒りは
ますます燃え上がっている
安倍政権打倒!改憲阻止!
 辺野古新基地反対!高江を守れ!
 本当の自由と民主主義~人間らしい暮らしを取り戻そう
 抗議の声を上げましょう~みんなが集えば止められる
主催:安倍内閣の暴走を止めよう共同行動 
(引用終わり)
 愛知県で「大集会」とか「大デモ」が呼びかけられると、本当に1,000人単位の、文字通りの「大集会」や「大デモ」になるという実績を知っているだけに、9月19日にも期待が高まりますね。
 なお、公式ブログに掲載された「安倍内閣の暴走を止めよう共同行動実行委員会」のチラシを眺めてみると、囲みの呼びかけが2つあることに気がつきます。
 1つは、9月3日に行われた猿田佐世弁護士(新外交イニシアティブ事務局長)の講演会「沖縄と日本の外交」の案内です。この講演会の模様はIWJによる中継録画がアップされており、全編視聴できます。
 その開会挨拶で中谷雄二弁護士が話されているのを聞いて知ったのですが、「安倍内閣の暴走を止めよう共同行動」では、昨年の4月に発足した当初から、戦争法阻止とともに、辺野古新基地建設反対を掲げてきたということでした。
 9月19日の行動のための国会前と名古屋のチラシには、いずれも高江ヘリパッド建設・辺野古新基地建設に反対するアピールが書かれていますよね。
 戦争法制と沖縄の問題は一体であって分離はできない以上、これは当然の視点なのですが、今までの和歌山での安保法制反対運動にこの認識が不足していたことは否めません。これもまた、教訓としなければと思いました。
 そして、チラシに掲載されたもう1つの呼びかけは、「各地で学習会・ミニ集会を開きませんか~弁護
士が交通費+薄謝で出向きます!」というもので、連絡先は自由法曹団会員事務所となっています。
 これも、私がかねてから絶対に必要と考えていることなので、「我が意を得たり」という思いです。愛
知県での反応はどうなのか、気になります。
 

(付録)
『この島~憲法9条のうた~』 作詞・作曲:烏野政樹 演奏:m&n(現 Crowfield)