読者です 読者をやめる 読者になる 読者になる

wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

「軍学共同反対 共謀罪を考える 大学人シンポジウム」(4/9)を視聴しよう

 今晩(2017年4月10日)配信した「メルマガ金原No.2778」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
軍学共同反対 共謀罪を考える 大学人シンポジウム」(4/9)を視聴しよう

 昨日(4月9日)午後1時30分から、明治大学リバティタワー1階1011教室において、安全保障
関連法に反対する学者の会が主催し、首都圏大学・市民有志連絡会、軍学共同反対連絡会、明治大学教職員組合が共催する「軍学共同反対 共謀罪を考える 大学人シンポジウム」が開催されました。
 ちなみに、シンポジウムのタイトルには、「軍学共同反対」と「共謀罪を考える」の2大テーマしか表示されていませんでしたが、第2部の後半では、佐藤学さん(学習院大学教授)が、教育学者の視点から「森友学園問題の本質」と題した講演をされています。しかも、当日使われたパワーポイント資料の表題には、「戦後最大の教育スキャンダル」というサブタイトルが付されていました(※シンポジウムのチラシ)。
 実際、ところどころ視聴しただけですが、佐藤先生による講演の時に、一番会場が盛り上がっていたような(?)気がします。
 盛り上がれば良いというものではありませんが、森友学園問題は、国有財産が政治家や官僚によって非常に恣意的に処分されたという側面に光を当てるのが本筋であるにせよ、教育スキャンダルという側面も決して
忘れてはならないと思います(第2、第3の教育スキャンダルが出番を待っているようですし)。
 非常に盛り沢山な内容なので、視聴の便宜のため、各登壇者の発言を検索しやすいように目安の時間を記載しましたのでご活用ください。
 
20170409 UPLAN【第1部】軍学共同反対―大学と学問の危機に抗して(2時間05分) 
 
軍学共同反対 共謀罪を考える 大学人シンポジウム】
冒頭~ 総合司会 中野晃一氏(上智大学教授)
1分~ 開催挨拶 広渡清吾氏(日本学術会議前会長)
【第1部 軍学共同反対―大学と学問の危機に抗して】
11分~ 報告1「日本学術会議における審議過程」 小森田秋夫氏(神奈川大学教授)
43分~ 報告2「軍学共同の問題性」 池内 了氏(名古屋大学名誉教授)
1時間11分~ シンポジウム
 1時間11分~ 石田英敬氏(コーディネーター・東京大学教授)
 1時間13分~ 香山リカ氏(立教大学教授)
 1時間27分~ 田中義教氏(大学有志の会、法政大学)
 1時間40分~ 飯尾俊二氏(大学有志の会、東京工業大学
 1時間52分~ フロアーからの発言・質問、小森田秋夫氏、池内 了氏
 
20170409 UPLAN【第2部】高山佳奈子共謀罪の危険性」 佐藤学森友学園問題の本質」(53分)

【第2部 安倍政治を糺す】
1分~ 講演1「共謀罪立法の危険性」 高山佳奈子氏(京都大学教授)
24分~ 講演2「森友学園問題の本質-戦後最大の教育スキャンダル-」
       佐藤 学氏(学習院大学教授)
49分~ まとめ 中野晃一氏

「テロ対策」が嘘だと自信をもって言えるようになるために~共謀罪緊急学習会を受講する意義

 今晩(2017年4月9日)配信した「メルマガ金原No.2777」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「テロ対策」が嘘だと自信をもって言えるようになるために~共謀罪緊急学習会を受講する意義

 本日(4月9日)午後1時から、和歌山県御坊市の日高教育会館において、「“共謀罪”とは何か?・その狙いとは」と題した緊急学習会の講師を務めてきました(※チラシ)。
 主催の「憲法9条を守り・いかす日高連絡会」は、憲法9条を守る御坊・日高共同センターと御坊・日高地方の地域9条の会との連絡会ということで、開会前に会長さんと少しお話をしたところ、日高郡内の市町には全て9条の会があり、熱心に活動していることが分かりました。
 今日も、午前中にスタンディングアピールをした上で、午後から学習会に取り組んでいただいたのでし
た。
 共謀罪に反対する運動は、当面、安保法案の時よりもはるかに短期決戦と考えねばならず、悠長に学習会などやっている場合ではないという意見があるかもしれませんが、私の見るところ、安保法案の時よりも、さらに法案の中身自体についての理解が進んでいないように思われます。そして、そういう事情は、法案に賛成する側にしても同じようなものであり、どちらも、実際の法案自体は横に置いた上で、賛成とか反対とか声を上げているものの、中身がよく分かってないので、どうしても発言自体が自信なげになり
がちです。
CIMG7046 そういった状況の中、4月6日の衆議院本会議での安倍首相の答弁が、いくら官僚が用意した(多分オールルビ付きだと推測します)答弁用原稿の棒読みであろうが、何十回でも「テロ対策」のために必要という見え透いた嘘を繰り返そうが、嘘を嘘と見抜いている人は多くなく、「嘘も100回言えば本当になる」というたとえのとおり(ちなみに、ナチスドイツ宣伝相ゲッベルスがこう言ったというのは「嘘」
に近いらしいですが)、それがそのまま通用することになりかねません。
 自信をもって、「テロ対策は嘘だ」と言えるようになるだけでも、緊急学習会の意義はあるだろうと思
います。
 なお、3月3日の和歌山県平和フォーラムなど主催による学習会と同様、主催者に無理を言って、『一からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる』(全48頁・頒価200円)をテキストとして用意してい
ただきました。
 以下に、はなはだ不十分なものであり、とても公開するようなものではないという自覚はあるのですが、「短期決戦」という覚悟を決める以上、このようなレジュメでも、何かの役に立つこともあるかもしれ
ないと考え、今日の学習会のために書いたレジュメをご紹介します。ちにみに、これは、3月3日の学習会用に書いたメモをふくらませたものであることをお断りします。
 ちなみに、本稿は、本メルマガ(ブログ)における共謀罪シリーズの第19回となります。
 

2017年4月9日(日)午後1時00分~ 日高教育会館(和歌山県御坊市
憲法9条を守り・いかす日高連絡会 憲法連絡会・緊急学習会

            “共謀罪”とは何か?・その狙いとは
 
                               弁護士 金 原 徹 雄  
 
1 3月21日に国会に上程された共謀罪法案
(1)2月28日に自民・公明両党に示された法案には「テロ」の「テ」の字もなかった。
 ところが、与党からの指摘を受け、共謀罪の構成要件を定めた「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」第6条の2に、4箇所も「テロリズム集団その他の」という文言を追加する修正を加え、閣議決定の上、3月21日に衆議院に提出した。
 
テロリズム集団その他の組織的犯罪集団による実行準備行為を伴う重大犯罪遂行の計画)
第六条の二 次の各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団(団体のうち、その結合関係の基礎としての共同の目的が別表第三に掲げる罪を実行することにあるものをいう。次項において同じ。)の団体の活動として、当該行為を実行するための組織により行われるものの遂行を二人以上で計画した者は、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、当該各号に定める刑に処する。ただし、実行に着手する前に自首した者は、その刑を減軽し、又は免除する。
一 別表第四に掲げる罪のうち、死刑又は無期若しくは長期十年を超える懲役若しくは禁錮の刑が定められているもの 五年以下の懲役又は禁錮
二 別表第四に掲げる罪のうち、長期四年以上十年以下の懲役又は禁錮の刑が定められているもの 二年以下の懲役又は禁錮
2 前項各号に掲げる罪に当たる行為で、テロリズム集団その他の組織的犯罪集団に不正権益を得させ、又はテロリズム集団その他の組織的犯罪集団の不正権益を維持し、若しくは拡大する目的で行われるものの遂行を二人以上で計画した者も、その計画をした者のいずれかによりその計画に基づき資金又は物品の手配、関係場所の下見その他の計画をした犯罪を実行するための準備行為が行われたときは、同項と同様とする。
 
 もちろん、「テロリズム集団」は単なる例示であり、意味があるのは「その他の」の方である。
(2)本レジュメ起案時は、4月6日に審議入りすることで、自民・公明両党が合意に達したと伝えられている段階である。
 
2 資料の説明
①「一からわかる共謀罪 話し合うことが罪になる」(全48頁)
 (以下、本レジュメで「テキスト」と呼称)
 編集・発行
  「秘密保護法」廃止へ!実行委員会(平和フォーラム 新聞労連 ほか)
  「解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会(許すな!憲法改悪市民連絡会 憲法会議)
  盗聴法廃止ネットワーク(盗聴法に反対する市民連絡会 日本国民救援会
 ※上記3団体に、
  「日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)」
  「共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会」
 が加わって「共謀罪NO!実行委員会」が作られ、統一署名が呼びかけられている(後記)。
②「対象の犯罪と罪名一覧」
 「組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案」別表第3と第4を新聞社でまとめたもの(対象犯罪数277)
 
3 共謀罪の「これまで」を振り返る(テキスト15、26頁)
 2000年11月:国連越境組織犯罪防止条約 採択
 2003年 3月:第1回 国会上程
 2004年 2月:第2回 国会上程
 2005年10月:第3回 国会上程
 2006年4月~6月:与野党修正案提出
 2006年 9月:第一次安倍晋三内閣成立
 2009年 7月:第3回法案が衆議院解散にともない廃案に
 2012年12月:第二次安倍晋三内閣成立
 2017年 3月:第4回 国会上程 
 
4 共謀罪が出来たなら~最も重大な3つの問題点
(1)日本の刑事法体系が破壊される(テキスト6頁)
①陰謀(共謀)→予備→未遂→既遂
・陰謀(共謀)罪は例外中の例外
・刑法77条「内乱の予備又は陰謀をした者は、一年以上十年以下の禁錮に処する。」
・他に、外患陰謀罪、私戦陰謀罪、爆発物取締罰則等 
・ところが、広汎な犯罪について共謀(計画)を罰することになると、未遂は処罰されないのにその前々
段階の共謀(計画)は処罰されるというような犯罪が続出するという不合理な事態が現出する。
 ※例:横領罪(刑法252条/5年以下の懲役) 未遂処罰規定なし
②未遂罪との均衡がくずれる
 刑法43条「犯罪の実行に着手してこれを遂げなかった者は、その刑を減軽することができる。ただし、自己の意思により犯罪を中止したときは、その刑を減軽し、又は免除する。」
 実行に着手までしながら、自らの意思で中止した場合(中止未遂)には、必要的にその刑が減軽または免除されるのに、その前々段階の共謀(計画)の段階で検挙されれば、自ら(抜け駆けで)実行の着手前に自首しない限り、減軽・免除の利益を受けられない(共謀罪法案第6条の2第1項ただし書)という不均衡が生じる。  
③日本の刑事法体系の思想(テキスト6頁)
 罰すべきは「意思」ではなく「行為」である。
 具体的な「法益侵害」またはその「具体的危険」が発生したことが刑罰権行使の根拠とする。
(2)「捜査」のあり方が一変する(テキスト7頁)
・共謀(計画)罪は、2人以上の者の意思の合致によって成立する。
・どうやって捜査するのか?盗聴(通信傍受)、おとり捜査が常態化する恐れがある。
・既に昨年、通信傍受法・刑事訴訟法が「改正」され、通信傍受できる対象犯罪が拡大されており(同年12月施行)、また、従来のように通信事業者の施設内でその立会いの下でやらねばならないという制約も撤廃されている(こちらの施行はまだ)。共謀罪が成立すれば、これも盗聴(通信傍受)の対象とされる可能性が非常に高い。
(3)人権が蔑ろにされる息苦しい社会となる(テキスト5、21、28頁)
・犯罪構成要件が曖昧過ぎる。
・刑罰法令の人権保障機能が失われる。
・思想・良心の自由、表現の自由などの人権体系の根幹をなす優越的権利が危機に瀕する。
・現在よりも、一層の「監視社会化」が進んだ息苦しい社会が到来することは疑いない。法案(第6条の2第1項ただし書)による密告奨励の自首規定はそれを助長する。
⇒昨年の参院選大分県警(別府署)が野党統一候補陣営を隠しカメラで盗撮していたことを想起せよ。
 
5 国連越境組織犯罪防止条約の批准に共謀罪は不要(テキスト15頁)
・そもそも条約はマフィアや蛇頭などの国際的組織犯罪集団の効果的な取り締まりのために締結された条約であってテロ対策は無関係。
・日本は全てのテロ対策条約(全部で13)を批准済み。
国連越境組織犯罪防止条約を批准済みの187カ国のうち、批准のために新たに共謀罪を作ったのはノルウェーブルガリアの2カ国のみと政府も答弁している。
・現行法のままで条約批准は可能。必要であれば留保宣言付きで批准すればよい。 
 海渡雄一弁護士レジュメから引用
 「越境組織犯罪条約については、日本政府は異常なほど律儀に条約の文言を墨守して、国内法化をしようとした。むしろ、一部の法務警察官僚は、批准を機に過去になかったような処罰範囲の拡大の好機ととらえた節がある。もしかすると、アメリカ政府との間で、アメリカ並みの共謀罪を作るという合意があったのかもしれない」
 
6 戦争する国づくりの集大成としての共謀罪(テキスト11頁)
 2006年 教育基本法「全面改悪」(第一次安倍政権)
 2013年 秘密保護法(以下、第二次安倍政権)
 2015年 安保法制(戦争法)
 2016年 盗聴法(通信傍受法)拡大
 2017年 共謀罪
 国が常時市民を監視し、萎縮させ、戦争に協力させるための体制作りの集大成としての共謀罪。 
 
7 共同の取組で共謀罪阻止を
(1)「共謀罪NO!実行委員会」結成(2017年3月~)
 呼びかけ団体
 ●「秘密保護法廃止」へ!実行委員会(新聞労連、平和フォーラム等)
 ●解釈で憲法9条を壊すな!実行委員会(憲法会議、許すな!憲法改悪・市民連絡会等)
 ●日本マスコミ文化情報労組会議(MIC)
 ●共謀罪法案に反対する法律家団体連絡会
 ●盗聴法廃止ネットワーク(日本国民救援会等)
(2)3月~5月 緊急統一署名に取り組もう!
 「共謀罪NO!実行委員会」
 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」
 が共同で呼びかける。
(3)和歌山でも
和歌山県平和フォーラムと和歌山県地方労働組合評議会が「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」の枠組により、共謀罪に反対する共通チラシを作成・配布している。
・3月9日(木)18時~19時、JR和歌山駅前で、上記両団体などが参加する緊急行動(統一署名も)が行われた。
・国会での審議入りを踏まえた早急な運動の拡大が求められている。
                                             以 上
 

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2017年2月6日
レファレンス掲載論文「共謀罪をめぐる議論」(2016年9月号)を読む
2017年2月7日
日弁連パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」(五訂版2015年9月)を読む
2017年2月8日
「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」(2017年2月1日)を読む
2017年2月10日
海渡雄一弁護士with福島みずほ議員による新春(1/8)共謀罪レクチャーを視聴する
2017年2月21日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介
2017年2月23日
日本弁護士連合会「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む
2017年2月24日
「安倍政権の横暴を許すな!」連続企画@和歌山市のご案内~3/3共謀罪学習会&3/25映画『高江―森が泣いている 2』上映と講演
2017年2月28日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.3
2017年3月1日
ついに姿をあらわした共謀罪法案(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案)
2017年3月3日
「共謀罪」阻止の闘いは“総がかり”の枠組みで~全国でも和歌山でも
2017年3月4日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.4

2017年3月6日
共謀罪に反対するのも“弁護士”、賛成するのも“弁護士”
2017年3月8日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.5~「テロリズム集団その他」のまやかし

2017年3月9日
3月9日、和歌山で共謀罪に反対する街頭宣伝スタート~総がかり行動実行委員会の呼びかけで
2017年3月17日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.6~立憲デモクラシーの会が声明を出しました
2017年3月21日
閣議決定された「共謀罪」法案~闘うための基礎資料を集めました
2017年2月6日2017年3月31日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.7~4/9日高教育会館(御坊市)で学習会がありま
2017年4月7日

教育勅語に関する安倍晋三内閣の立場を再確認する~初鹿明博衆議院議員の質問主意書に対する答弁書を読んで

 今晩(2017年4月8日)配信した「メルマガ金原No.2776」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
教育勅語に関する安倍晋三内閣の立場を再確認する~初鹿明博衆議院議員質問主意書に対する答弁書を読んで

 明治23年10月30日に発布され、翌31日に官報に掲載された勅語、いわゆる教育勅語が、これほど耳目を集めることになるとは思いませんでした。きっかけはどの辺なのでしょうか。やはり「森友学園
問題」からでしょうかね。
 実際、最近、私がメルマガ(ブログ)で教育勅語に触れたのは、まず、3月19日に行われた「『森友
10万人デモ』安倍退陣に追い込もう! 緊急集会クライマックス」(国会正門前)における鈴木邦男さん(一水会最高顧問)によるスピーチを文字起こしした時でした(鈴木邦男さんの「愛国」スピーチ@3/19国会正門前~全編文字起こし/2017年3月25日)。
 
鈴木邦男氏スピーチ文字起こしから抜粋引用開始)

 だって、今、教育勅語、憶えてる人いないですよ。僕も知りません。(歴代の)天皇の名前も知りませ
ん。右翼でしたらみんな知ってると思うかもしれませんが、知らないです。というのは、10年、20年前くらいまではね、結構、右翼の人たちも、「我々は右翼なんだから、きちっと教育勅語を奉読しなくちゃ」と、そういう人もいました。だから、どんな集会に行っても、教育勅語奉読というのをやってました。でもそれはね、右翼の先輩である野村秋介さんが止めさせたんです。なぜ止めさせたかというと、これ義務で、俺たち愛国者だから、俺たちは右翼だから、やらなくちゃいけないんだということでやってる。そうすると、若い人が読むと、つっかえるんですね(笑)。難しいから、読めないんです。それで、「なんだこれは」と思って野村さんが言ったのは、「義務でやるなんて止めろ。心がこもってないんなら止めろ」と、そういうことで止めさせました。多分、僕なんかがそんなこと言ったら殺されるでしょうけど、野村さんだからね、全部止めたんです。
(略)
 で、教育勅語もそうですけど、子どもたちに教育勅語を暗唱させてどうするんですか。その子どもたち
がどうなったかを、きちんと誰かルポしてみたらいいんじゃないですかね(笑)。
(引用終わり)
 
 次に私がメルマガ(ブログ)で教育勅語を取り上げたのは、家庭教育支援法案(まだ国会上程されていないようですが)について考えた時で、この法案の直接的な根拠は2006年版・新教育基本法の第10条「父母その他の保護者は、子の教育について第一義的責任を有するものであって、生活のために必要な習慣を身に付けさせるとともに、自立心を育成し、心身の調和のとれた発達を図るよう努めるものとする。/2 国及び地方公共団体は、家庭教育の自主性を尊重しつつ、保護者に対する学習の機会及び情報の提供その他の家庭教育を支援するために必要な施策を講ずるよう努めなければならない。」にあるのですが、その淵源を遡れば、どうしても教育勅語に行き着くということで、その全文を引用しました(「家庭教育支援法案」を考えるための基礎資料のご紹介~(付)「和歌山市家庭教育支援条例」を読む/2017年3月29日)。
 
(引用開始)
朕惟フニ我カ皇祖皇宗國ヲ肇ムルコト宏遠ニ德ヲ樹ツルコト深厚ナリ我カ臣民克ク忠ニ克ク孝ニ億兆心ヲ一ニシテ世々厥ノ美ヲ濟セルハ此レ我カ國體ノ精華ニシテ敎育ノ淵源亦實ニ此ニ存ス爾臣民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ恭儉己レヲ持シ博愛衆ニ及ホシ學ヲ修メ業ヲ習ヒ以テ智能ヲ啓發シ德器ヲ成就シ進テ公益ヲ廣メ世務ヲ開キ常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ以テ天壤無窮ノ
皇運ヲ扶翼スヘシ是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
斯ノ道ハ實ニ我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ子孫臣民ノ倶ニ遵守スヘキ所之ヲ古今ニ通シテ謬ラス之ヲ中外ニ施
シテ悖ラス朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ咸其德ヲ一ニセンコトヲ庶幾フ
明治二十三年十月三十日
御名御璽
(振り仮名付き)
朕(ちん)惟フニ(おもうに)我カ(わが)皇祖皇宗(こうそ こうそう)國ヲ(くにを)肇ムルコト(はじむること)宏遠ニ(こうえんに)德ヲ樹ツルコト(たつること)深厚ナリ(しんこうなり)我カ(わが)臣民(しんみん)克ク(よく)忠ニ(ちゅうに)克ク(よく)孝ニ(こうに)億兆(おくちょう)心ヲ一ニシテ(しんをいつにして)世世(よよ)厥ノ(その)美ヲ(びを)濟セルハ(なせるは)此レ(これ)我カ國體(こくたい)ノ精華ニシテ敎育ノ淵源(えんげん)亦(また)實ニ(じつに)此ニ(ここに)存ス(ぞんす)爾(なんじ)臣民(しんみん)父母ニ孝ニ(ふぼに こうに)兄弟ニ友ニ(けいていに ゆうに)夫婦相和シ(ふうふ あいわし)朋友相信シ(ほうゆう あいしんじ)恭儉己レヲ持シ(きょうけん おのれをじし)博愛衆ニ及ホシ(はくあい しゅうにおよぼし)學ヲ修メ業ヲ習ヒ(がくをおさめ しゅうをならい)以テ智能ヲ啓發シ(もってちのうをけいはつし)德器ヲ成就シ(とっきをじょうじゅし)進テ公益ヲ廣メ(すすんでこうえきをひろめ)世務ヲ開キ(せむ/せいむ をひらき)常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ(つねにこっけんをじゅうし こくほうにしたがい)一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ(いったんかんきゅうあれば ぎゆうこうにほうじ)以テ(もって)天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ(てんじょうむがいのこううんをふよくすべし)是ノ如キハ(このごときは)獨リ(ひとり)朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス(ちんがちゅうりょうのしんみんたるのみならず)又(また)以テ(もって)爾(なんじ)祖先ノ遺風ヲ顯彰スルニ
足ラン(そせんのいふうをけんしょうするにたらん)
斯ノ(この)道ハ實ニ(じつに)我カ皇祖皇宗ノ遺訓ニシテ(いくんにして)子孫臣民ノ倶ニ(ともに)守スヘキ(じゅんしゅすべき)所(ところ)之ヲ古今ニ通シテ謬ラス(あやまらず)之ヲ中外ニ施シテ悖ラス(もとらず)朕爾臣民ト倶ニ拳々服膺シテ(けんけんふくよう して)咸(みな)其德ヲ(そのとく
を)一ニセンコトヲ庶幾フ(こいねがう)
明治二十三年十月三十日
御名御璽(ぎょめい ぎょじ)
(引用終わり)
 
 ただ、その後、高橋源一郎さんによる卓抜な現代語訳の存在を知り、それもご紹介すべきだったかなと思います。
 全文転載するのもいかがかと思うので(一種の文芸作品でもある?)、高橋さんのtwitterにリンクした上で(3月14日に8回に分けて投稿されています)、その一部のみ引用します。
 
高橋源一郎訳「教育勅語」①
高橋源一郎訳「教育勅語」②
高橋源一郎訳「教育勅語」③
高橋源一郎訳「教育勅語」④
高橋源一郎訳「教育勅語」⑤
「もちろんのことだけれど、ぼくが制定した憲法を大切にして、法律をやぶるようなことは絶対しちゃい
けません。よろしいですか。さて、その上で、いったん何かが起こったら、いや、はっきりいうと、戦争
が起こったりしたら、勇気を持ち、公のために奉仕してください」
(原文)常ニ國憲ヲ重シ國法ニ遵ヒ一旦緩急アレハ義勇公ニ奉シ(以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ)
高橋源一郎訳「教育勅語」⑥
「というか、永遠に続くぼくたち天皇家を護るために戦争に行ってください。それが正義であり「人とし
ての正しい道」なんです。そのことは、きみたちが、ただ単にぼくの忠実な臣下であることを証明するだ
けでなく、きみたちの祖先が同じように忠誠を誓っていたことを讃えることにもなるんです」
(原文)以テ天壤無窮ノ皇運ヲ扶翼スヘシ/是ノ如キハ獨リ朕カ忠良ノ臣民タルノミナラス又以テ爾祖先
ノ遺風ヲ顯彰スルニ足ラン
高橋源一郎訳「教育勅語」⑦
高橋源一郎訳「教育勅語」⑧
高橋源一郎訳「教育勅語」あとがき
「とまあ、サクっと訳したので、若干間違いあるかもしれませんが、だいたい、いい線いってると思いま
す。自分で読み返して思ったんですが、これ、マジ引くよね……。」
 
 ここまでだけでもなかなか賑やかなことですが、事態を一層紛糾させたのは・・・というか、事態がどうなっているのかを白日の下に明らかにするきっかけとなったのが、民進党衆議院議員初鹿明博氏の質問主意書教育勅語の根本理念に関する質問主意書」に対し、3月31日、内閣によってなされた答弁の内容が明らかになったことによります。
 
朝日新聞デジタル 2017年3月31日 13:12 
教育勅語、教材で用いること否定せず 政府が答弁書

(引用開始)
 政府は31日、戦前・戦中の教育勅語を学校教育で使うことについて、「勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切である」としたうえで、「憲法教育基本法等に反しないような形で教材として用いることまでは否定されることではない」との答弁書閣議決定した。民進党の初鹿
明博衆院議員の質問主意書に答えた。
 勅語については、太平洋戦争後の1948年、衆参両院が排除・失効の確認を決議している。
 また、稲田朋美防衛相が国会答弁で「親孝行や友達を大切にするとか、そういう(勅語の)核の部分は今も大切なもの」と述べたことの是非について、答弁書は「政治家個人としての見解」とし、政府として
の見解を示さなかった。
(引用終わり)
 
 この後、週明けの4月3日以降、松野博一文部科学大臣菅義偉官房長官らが、この答弁書の線に沿った発言を繰り返しただけではなく、昨日(4月7日)の内閣委員会では、義家弘介文部科学副大臣が、さらに踏み込んだ発言を行いました(意図的なのか、ただのばかなのか、判断に迷いますが、おそらくは前者の可能性の方が高いような気がします)。
 
朝日新聞デジタル 2017年4月7日13時43分
朝礼での教育勅語の朗読「問題のない行為」 文科副大臣

(引用開始)
 義家弘介文部科学副大臣は7日の衆院内閣委員会で、幼稚園など教育現場の毎日の朝礼で子どもたちが教育勅語を朗読することについて、「教育基本法に反しない限りは問題のない行為であろうと思います」
と答弁した。
 民進党泉健太氏が、学校法人「森友学園」(大阪市)が運営する幼稚園の従来の教育方針に触れたう
えで、「朗読は問題のない行為か」とただした。
 泉氏が「『教育基本法に反しない限り』とは何か」と重ねて問うと、文科省の白間竜一郎審議官が「どういう教育を行うかは一義的にそれぞれの学校で創意工夫しながら考えることであり、問題があるかどう
かは法令等に照らし、所轄庁である都道府県が適切に判断される」と答えた。
 教育勅語をめぐっては、中曽根内閣だった1983年5月の参院決算委員会で、瀬戸山三男文部大臣(当時)が島根県の私立高校が学校行事で教育勅語を朗読していたことについて、「教育勅語を朗読しない
、学校教育において使わないことで今日まで(全国の学校に)指導してきた」と述べていた。(南彰)
(引用終わり)
 
 こうなったら、とにかく初鹿議員の質問主意書とそれに対して閣議決定を経て答弁された内閣の見解とをしっかり読み込むことがどうしても必要だと思います。
 今週始めに衆議院ホームページを確認したところでは、初鹿議員の質問主意書しか掲載されていなかったのですが、今日閲覧したところ、ようやく内閣答弁書も掲載されていました(もっとも、まだPDF版だけですが)。
 
 
 
 以下には、分かりやすくするため、初鹿議員の質問主意書の内容を紺色で全文転載した上で、各項目に対する内閣答弁書の内容を、各質問項目の直後に対応させて掲載します(茶色で表記)。
 
質問主意書及び答弁書から引用開始)
教育勅語の根本理念に関する質問主意書
 
 教育ニ関スル勅語(以下、教育勅語と言う)は終戦後、昭和二十三年六月十九日に、衆議院で「教育勅語等排除に関する決議」が、参議院で「教育勅語等の失効確認に関する決議」が決議され、国権の最高機関である国会によって、教育の指導原理性が否定されました。
 この事実を踏まえて、以下政府に質問します。
 
一 衆議院の排除決議において、教育勅語の根本理念が「主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる」として、この排除と指導原理的性格を認めないことが宣言されています。政府は教育勅語の根本理念が「主権在君」並びに「神話的国体観」に基づいているという決議の考えを現在も踏襲しているのでしょうか。
 
答弁書
一について
 お尋ねの「決議の考えを現在も踏襲している」の意味するところが必ずしも明らかではないが、御指摘
の「教育勅語等排除に関する決議」は、「教育勅語・・・その他の教育に関する諸詔勅・・・の根本理念が主権在君並びに神話的国体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ国際信義に対して疑点を残すもととなる。よつて憲法第九十八条の本旨に従い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めない」ことを宣言したと承知しているが、教育に関する勅語については、昭和二十三年六月十九日の衆議院本会議において、森戸文部大臣(当時)が「教育勅語その他の詔勅に対しましては、教育上の指導原理たる性格を否定してきたのであります。このことは、新憲法の制定、それに基く教育基本法並びに学校教育法の制定によつて、法制上明確にされました」と答弁しているとおりであると考えている。
 
二 松野博一文部科学大臣は、記者会見において「憲法教育基本法に反しないように配慮して授業に活用するということは、これは一義的にはその学校の教育方針、教育内容に関するものでありますし、また、教師の皆さんに一定の裁量が認められる」と発言し、その後の国会質疑でも同様の答弁を繰り返しています。
 衆議院の決議を踏まえれば、教育勅語は「民父母ニ孝ニ兄弟ニ友ニ夫婦相和シ朋友相信シ」などの現在
でも守るべき徳目が記載されているとはいえ、根本理念が基本的人権を損ない、国際信義に疑点を残すものであり、教育勅語の本文をそのまま教育に用いることは憲法上認められないと考えますが、政府の見解を伺います。
 
答弁書
二について
 お尋ねのような行為が憲法に違反するか否かについては、個別具体的な状況に即して判断されるべきも
のであり、一概にお答えすることは困難である。
 
三 衆参の決議を徹底するために、教育勅語本文を学校教育で使用することを禁止すべきだと考えますが、政府の見解を伺います。
 
答弁書
三について
 お尋ねの「禁止」の具体的に意味するところが必ずしも明らかではないが、学校において、教育に関す
勅語を我が国の教育の唯一の根本とするような指導を行うことは不適切であると考えているが、憲法教育基本法(平成十八年法律第百二十号)等に反しないような形で教育に関する勅語を教材として用いることまでは否定されることではないと考えている。
 
四 教育勅語について、稲田朋美防衛大臣は「教育勅語の核である、例えば道徳、それから日本が道義国家を目指すべきであるという、その核について、私は変えておりません」「私は、その教育勅語の精神であるところの、日本が道義国家を目指すべきである、そして親孝行ですとか友達を大切にするとか、そういう核の部分ですね、そこは今も大切なものとして維持をしている」「教育勅語に流れているところの核の部分、そこは取り戻すべきだというふうに考えております」と教育勅語に共感する答弁を行っています
 閣僚が教育勅語に共感、共鳴、賛意を示す事は、衆議院の排除決議で指摘した国際信義に疑点を残すこ
とに繋がると考えますが、政府の見解を伺います。
 
五 国際社会において信頼される道義国家であるためにも、国際社会に疑点を残す考えを表明している稲田朋美防衛大臣は罷免すべきだと考えますが、政府の見解を伺います。
 
 右質問する。
 
答弁書
四及び五について
 御指摘の答弁は、稲田防衛大臣が政治家個人としての見解を述べたものであると承知しており、当該答
弁に係るお尋ねについては、政府としてお答えする立場にない。
 稲田防衛大臣については、本年三月二十七日の参議院予算委員会において、安倍内閣総理大臣が「今後
ともしっかりと職責を全うしてもらいたい」と答弁しているところである。
(引用終わり)
 
 長々と引用してきましたが、明らかに従来の政府の立場を踏み越え(少なくとも中曽根内閣当時とは異なり)、教育現場での教育勅語の使用を許容するというメッセージを発しているということで、昨日の衆議院内閣委員会での義家弘介文部科学副大臣の答弁も、単なる戯れ言や口が滑ったという類いの発言ではなく、3月31日付答弁書の射程範囲内での答弁だったと理解すべきなのだろうと思います。
 いやあ、とんでもないことになっていますが、これを「とんでもない」と思う国民が多数派になるのは夢のまた夢なのでしょうか?
 
 最後に、初鹿博明議員の質問主意書に引用されている、衆参両院の決議をご紹介しておきます。
 
昭和23年6月19日 衆議院本会議
教育勅語等排除に関する決議

(引用開始)
 民主平和國家として世界史的建設途上にあるわが國の現実は、その精神内容において未だ決定的な民主化を確認するを得ないのは遺憾である。これが徹底に最も緊要なことは教育基本法に則り、教育の革新と振興とをはかることにある。しかるに既に過去の文書となつている教育勅語並びに陸海軍軍人に賜りたる勅諭その他の教育に関する諾詔勅が、今日もなお國民道徳の指導原理としての性格を持続しているかの如
く誤解されるのは、從來の行政上の措置が不十分であつたがためである。
 思うに、これらの詔勅の根本理念が主権在君並びに神話的國体観に基いている事実は、明かに基本的人権を損い、且つ國際信義に対して疑点を残すもととなる。よつて憲法第九十八條の本旨に從い、ここに衆議院は院議を以て、これらの詔勅を排除し、その指導原理的性格を認めないことを宣言する。政府は直ち
にこれらの詔勅の謄本を回収し、排除の措置を完了すべきである。
 右決議する。
(引用終わり)
 
第2回国会 昭和23年6月19日 参議院本会議 
教育勅語等の失効確認に関する決議

(引用開始)
 われらは、さきに日本国憲法の人類普遍の原理に則り、教育基本法を制定して、わが国家及びわが民族を中心とする教育の誤りを徹底的に払拭し、真理と平和とを希求する人間を育成する民主主義的教育理念をおごそかに宣明した。その結果として、教育勅語は、軍人に賜はりたる勅諭、戊申詔書、青少年学徒に
賜はりたる勅語その他の諸詔勅とともに、既に廃止せられその効力を失つている。
 しかし教育勅語等が、あるいは従来の如き効力を今日なお保有するかの疑いを懐く者あるをおもんばかり、われらはとくに、それらが既に効力を失つている事実を明確にするとともに、政府をして教育勅語
の他の諸詔勅の謄本をもれなく回収せしめる。
 われらはここに、教育の真の権威の確立と国民道徳の振興のために、全国民が一致して教育基本法の明
示する新教育理念の普及徹底に努力をいたすべきことを期する。
 右決議する。
(引用終わり)

共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.8~三重県議会、宮崎県議会が「慎重な検討を求める意見書」を採択

 今晩(2017年4月7日)配信した「メルマガ金原No.2775」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.8~三重県議会、宮崎県議会が「慎重な検討を求める意見書」を採択

 共謀罪シリーズの第18回をお送りします。
 3月21日に閣議決定され、その日のうちに国会に上程された共謀罪法案組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案)が、昨日(4月6日)、いよいよ衆議院本会議で審議入りしました。
 今日は、その関連のニュース、動画の他、同じく昨日(4月6日)日比谷野外音楽堂で行われた「話し合うことが罪になる共謀罪法案の廃案を求める4・6大集会&デモ」の動画をご紹介しました。
 そして、声明の部では、宮崎県議会が3月22日に採択した「テロ等準備罪」の新設について慎重な検討を求める意見書」をご紹介しました。自民党が優に過半数を超える議席を有する地方議会において、いかにして「慎重な検討を求める意見書」が採択(それも全会一致!)されるに至ったのか、その間の事情は詳らかにしませんが、いずれにせよ注目したいと思います。
 
【その1 ニュースの部】
東京新聞 2017年4月7日 朝刊
「共謀罪」審議入り 首相「テロ対策」前面 野党「市民も処罰の恐れ」

(抜粋引用開始)
 犯罪に合意したことを処罰する「共謀罪」の趣旨を盛り込んだ組織犯罪処罰法改正案は六日、衆院本会
議で審議入りした。安倍晋三首相は「東京五輪パラリンピックを控え、テロ対策に万全を期すことは開催国の責務」などと共謀罪の必要性を強調。野党は「テロ対策は口実」「憲法が保障する思想・良心の自
由などを侵害する」「一般市民も処罰の可能性がある」などと追及した。(山田祐一郎、木谷孝洋)
 共謀罪は組織的犯罪集団の活動として、二人以上で犯罪を計画(合意)し、誰か一人が何らかの準備行
為をした場合、全員が処罰される。自民、民進、公明、共産、日本維新の会の五党が質疑に立った。
 心の中で考えたことが処罰されるとの指摘について首相は「内心を処罰するものでない」と繰り返し、
その根拠として、合意だけでなく準備行為がなければ処罰できないことを挙げた。
 しかし、処罰対象は犯罪の手前の段階の「合意」であり、捜査では外側から分からない心の中を調べることになる。また準備行為は、資金や物品の手配、下見と、曖昧で危険性がない行為であり、捜査機関の
判断次第でどんな行為も準備行為とみなされ、捜査につながる恐れがある。
 公明党国重徹氏が「市民団体が座り込みを計画しただけで組織的犯罪集団に当たるのか」と指摘すると、金田勝年法相は「目的が重大な犯罪の実行にあるとは考えられず、対象になることはない」と答えた。だが、普通の団体でも目的が犯罪の実行に変わったとみなされれば、組織的犯罪集団に認定される可能
性がある。目的が変わったかどうかを判断するのは捜査機関になる。
 政府は今回、共謀罪を「テロ等準備罪」と呼び、テロ対策を前面に押し出す。民進党逢坂誠二氏は「テロ対策を口実にして法案の成立を画策するのは姑息(こそく)な手口だ」と批判。これに対し、首相は
「テロ対策に『これで十分』ということはない。できる対策は全て尽くす」と説明した。
(略)
 本紙は、組織犯罪処罰法改正案の審議で注目する三つのテーマと九つの論点を設定しました。今後、政
府・与党と野党がどのような議論を交わすのか。継続的にチェックしていきます。
(金原注)東京新聞が設定した「三つのテーマと九つの論点」は以下のとおりです。
「心の中」の処罰(違憲の恐れ)
①計画段階の捜査で人権侵害の恐れ
②何が「合意」に当たるのか
③何が「準備行為」に当たるのか
一般人の処罰
④何が「組織的犯罪集団」に当たるのか
⑤冤罪、誤認逮捕の恐れ
「テロ対策」なのか
⑥なぜ対象犯罪が277なのか
⑦テロを防止できるか
⑧国際組織犯罪防止条約はテロを対象にしているのか
共謀罪なしで条約締結できないのか
(引用終わり)
 
【その2 動画の部】
平成29年4月6日 【衆議院】 「本会議」(2時間06分)
 
20170406 UPLAN 話し合うことが罪になる共謀罪法案の廃案を求める4・6大集会&デモ(2時間28分)

開会の挨拶
 
24分~ 海渡雄一さん(共謀罪NO!実行委員会)
政党挨拶
29分~ 有田芳生さん(民進党参議院議員
36分~ 田村智子さん(共産党参議院議員
41分~ 福島瑞穂さん(社民党参議院議員
48分~ 山本太郎さん(自由党参議院議員
55分~ 伊波洋一さん(沖縄の風参議院議員
発言
1時間01分~ 吉岡 忍さん(ノンフィクション作家/日本ペンクラブ専務理事)
1時間08分~ 青木初子さん(沖縄・一坪反戦地主会関東ブロック)
1時間14分~ 佐藤学さん(安全保障関連法に反対する学者の会)
1時間18分~ 山口二郎さん(立憲デモクラシーの会)
1時間22分~ 高山佳奈子さん(京都大学教授・刑事法)
行動提起 
1時間28分~ 福山真劫さん(戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)
共催:共謀罪NO!実行委員会、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会
会場:日比谷野外音楽堂
1時間32分~ 国会請願デモ
 
【その3 声明の部】
宮崎県議会 議員発議案第3号
「テロ等準備罪」の新設について慎重な検討を求める意見書

(引用開始)
 東京オリンピックパラリンピック競技大会の開催を三年後に控えており、テロ対策は最重要課題の一つである。テロ行為を防止するためには、国際社会と緊密に連携することが必要不可欠であり、こうした協力関係を構築する上で、既に187の国と地域が締結している「国際的な組織犯罪の防止に関する国際
連合条約」を締結することは極めて重要である。
 今般、同条約に基づく国内法の整備の一環として、「テロ等準備罪」の新設が検討されているが、現行法においてもテロ行為等の準備行為を処罰する規定が存在しており、現行法の規定に加えて、テロ行為等
の準備行為の処罰を一般化する必要性や合理性が明らかにされなければならない。
 また、「テロ等準備罪」については、一般市民が対象とならないよう、犯罪の主体を「組織的犯罪集団」とする、対象となる罪を絞り込む、構成要件に準備行為を加えるなどの対応を図るとされているが、様
々な懸念があると指摘されている。
 犯罪の主体について、政府見解は、正当な活動を行っていた団体であっても、その目的が犯罪を実行することに一変したと認められる場合には、「組織的犯罪集団」に当たり得るとしており、取締りの対象に
なる可能性があると指摘されている。
 よって、本県議会は、国に対し、「テロ等準備罪」の新設について、幅広い観点から慎重に検討するこ
とを強く要望する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。
  平成29年3月22日
                              宮 崎 県 議 会
衆議院議長 大島理森 殿
参議院議長 伊達忠一 殿
内閣総理大臣 安倍晋三 殿
法務大臣 金田勝年 殿
内閣官房長官 菅 義偉 殿
(引用終わり)
 
 以上は、3月22日に宮崎県議会が採択した意見書です。実は、都道府県レベルの議会では、3月2日に三重県議会「「テロ等準備罪」の新設について慎重な検討を求める意見書」を採択しており、宮崎県議会と表題が一緒であるばかりか、実は本文もほとんど一緒です。一字一句比較した訳ではありませんが、三重県議会にあった「加えて、「テロ等準備罪」の新設は、未遂に至らない段階の行為の処罰範囲を拡大することから、捜査機関による監視等の範囲の拡大につながるおそれがあることも懸念されている。」が、宮崎県議会で無くなっていること、執行先に、三重にはなかった菅義偉内閣官房長官が宮崎では付け加わっていることくらいでしょうか。
 明らかに、宮崎県議会が、先行する三重県議会の意見書を参考にしたものと思われます。
 それにもかかわらず、なぜ私が先行した三重県議会ではなく、宮崎県議会の方を引用したのかというと、三重県議会は、自民党ではなく、民進党系の「新政みえ」が最大会派であるという珍しい(?)
県議会であるのに対し、宮崎県議会は、定数39名の内、
  宮崎県議会自由民主党  22名
  自由民主党県民クラブ     1名
  自由民主党 青の国      1名
という具合に、自民党過半数議席を占めている状況の中、何と「全回一致」で、この「慎重な検討を
求める意見書」が採択されたということに注目したからです。
 どういう事情なのかよく分かりませんが、とりあえず「宮崎県議会、素晴らしい」と言うべきなのだろ
うと思います。
 
NHK WEB NEWS 4月6日 16時58分
「テロ等準備罪」 36地方議会が撤回などの意見書

(引用開始)
 共謀罪の構成要件を改めて「テロ等準備罪」を新設する法案が衆議院本会議で審議入りしましたが、6
日までに全国36の地方議会から法案の撤回や反対、それに、慎重な審議を求める意見書が国会に送られ
ています。
 衆議院の事務局によりますと、6日までに長野県千曲市福島県会津若松市、北海道江差町、東京都国立市など全国12の都道県にある合わせて36の地方議会からこの法案について意見書が衆議院に送られ
ているということです。
 このうち、29件は「国民を監視し萎縮させ、民主主義を奪う法案だ」などとして撤回や反対などを求めています。残りの7件は国民が抱く危惧を払拭(ふっしょく)し、十分慎重な審議を求めるなどとして
いるもので、この中には、三重と宮崎の県議会レベルの意見書が含まれています。
 一方、法案に賛成し、積極的に成立を求める内容のものはないということです。こうした意見書は今後
、正式に受理され、法案が審議される法務委員会に参考として送られることになっています。
 宮崎県議会は、先月22日、慎重な検討を求める意見書を全会一致で可決しています。意見書では「東京オリンピックパラリンピックを3年後に控え組織的なテロや犯罪を防ぐための国際組織犯罪防止条約を締結することは極めて重要だ」とする一方で、「テロ等準備罪」について、「さまざまな懸念があると指摘されている」としています。そのうえで、「国に対し幅広い観点から慎重に検討することを強く要望
する」としていて、全会一致で可決されました。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2017年2月6日
レファレンス掲載論文「共謀罪をめぐる議論」(2016年9月号)を読む
2017年2月7日
日弁連パンフレット「合意したら犯罪?合意だけで処罰?―日弁連は共謀罪に反対します!!―」(五訂版2015年9月)を読む
2017年2月8日
「共謀罪法案の提出に反対する刑事法研究者の声明」(2017年2月1日)を読む
2017年2月10日
海渡雄一弁護士with福島みずほ議員による新春(1/8)共謀罪レクチャーを視聴する
2017年2月21日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介
2017年2月23日
日本弁護士連合会「いわゆる共謀罪を創設する法案を国会に上程することに反対する意見書」(2017年2月17日)を読む
2017年2月24日
「安倍政権の横暴を許すな!」連続企画@和歌山市のご案内~3/3共謀罪学習会&3/25映画『高江―森が泣いている 2』上映と講演
2017年2月28日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.3
2017年3月1日
ついに姿をあらわした共謀罪法案(組織的な犯罪の処罰及び犯罪収益の規制等に関する法律等の一部を改正する法律案)
2017年3月3日
「共謀罪」阻止の闘いは“総がかり”の枠組みで~全国でも和歌山でも
2017年3月4日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.4

2017年3月6日
共謀罪に反対するのも“弁護士”、賛成するのも“弁護士”
2017年3月8日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.5~「テロリズム集団その他」のまやかし

2017年3月9日
3月9日、和歌山で共謀罪に反対する街頭宣伝スタート~総がかり行動実行委員会の呼びかけで
2017年3月17日
共謀罪をめぐる最新ニュース、動画、声明のご紹介vol.6~立憲デモクラシーの会が声明を出しました
2017年3月21日
閣議決定された「共謀罪」法案~闘うための基礎資料を集めました
2017年2月6日2017年3月31日

「『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方」(4/5)に期待する

 今晩(2017年4月6日)配信した「メルマガ金原No.2774」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方」(4/5)に期待する

 昨日(4月5日)夕刻、市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)と立憲野党4党(民進党日本共産党自由党社民党)の意見交換会が国会内で開かれ、野党4党は、「『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方」を確認しました。
 
産経ニュース 2017.4.5 21:57
4野党が次期衆院選に向け共通見解 「原発ゼロ」など市民連合に提示

(引用開始)
 民進、共産、自由、社民の4野党の幹事長らは5日、市民グループ「市民連合」との意見交換会を国会内で開き、次期衆院選の公約づくりに向け、「原発ゼロを目指す」と明記した4党の共通見解を提示した。自民党憲法改正草案をベースとした改憲の阻止や、安全保障法制の白紙化なども盛り込んだ。
 民進党野田佳彦幹事長は会合後、記者団に「今年は政治決戦の年。それに向けた準備をより加速していきたい」と強調した。共産党小池晃書記局長は「いよいよこれを土台にして、より豊かで魅力的な共通政策を作っていくことがわれわれの課題だ」と述べ、衆院選での野党共闘の条件としている「共通政策の締結」に向け意気込んでみせた。
 会合では、野田氏が「今日的な問題においても市民連合と強く連携したい」と提案。共謀罪の構成要件を厳格化した「テロ等準備罪」を新設する組織犯罪処罰法改正案の成立阻止や、学校法人「森友学園」(大阪市)への国有地払い下げ問題の真相解明をめぐっても、市民連合と連携を強化していくことで一致した。
(引用終わり)
 
 他のニュースも似たり寄ったりで、あまり詳しく報じたところはなかったようです。上記産経ニュースが比較的まとまっている方でしょうか(小池書記局長の発言について「意気込んでみせた」という部分はデスクによる修正か、それとも現場記者のデスクへの「忖度」か、が少し気になりますが)。
 もう一つ、東京新聞の記事も引用しておきます。
 
東京新聞 2017年4月6日 朝刊
次期衆院選の公約「原発ゼロ目指す」 4野党が共通見解

(抜粋引用開始)
 民進、共産、自由、社民の野党四党の幹事長・書記局長は五日、安全保障関連法廃止を掲げる市民グループ「市民連合」と国会内で会合を開き、次期衆院選の公約づくりを巡り「原発ゼロを目指す」などとした共通見解をまとめた。憲法九条の改悪阻止や安保関連法の白紙撤回、就学前から大学までの原則教育無償化なども明記した。各党が公約に反映させる。
 民進党野田佳彦幹事長は会見で、衆院選に向け「基本的理念、政策的な方向性は四党で共有できた。これを基本に政治決戦の準備を加速したい」と指摘。共産党小池晃書記局長は「魅力的な共通政策をつくることが課題だ」と述べた。
 ただ、民進党は共通公約に発展させることには慎重姿勢を示している。
(引用終わり/下線は金原による)
 
 実は、昨年の参院選前、2016年6月7日にも、市民連合が「野党4党の政策に対する市民連合の要望書」を提出し、これに4党の党首(社民党は幹事長)が署名したということがありました(必読!市民連合から4野党への要望書(付・6/12に和歌山のゆら登信さんと市民連合が政策協定に調印します/2016年6月8日)。
 今回は、昨年12月9日に市民連合が4党に提示した「市民連合が実現を目指す政策」についての協議結果を踏まえ、4党がとりまとめた「『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方」を確認したということです。
 
 そこで、その「『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方」全文を読んでみようと思って探したところ、民進党ホームページの「ニュース」欄に、「野党4党と市民連合との意見交換会で基本的な理念、政策的な方向性の共有を確認」という記事が掲載され、その中に、「四党の考え方」のPDFファイルも掲載されていましたので、少し長くなりますが、以下に全文引用します。。
 
(引用開始)
                                          2017年4月5日
 
         『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方
 
 四年間続いた安倍政権の下、我が国の立憲主義、民主主義は大きく脅かされている。アベノミクスは日本経済の持続的成長をもたらすことなく、格差を助長してきた。
 民進党日本共産党自由党社会民主党の野党四党は、昨年の参議院選挙にあたり、①安保法制を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回、立憲主義を回復する、②アベノミクスによる国民生活破壊、格差と貧困を是正する、③TPPや沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治を許さない、④安倍政権の下での憲法改悪に反対する、との内容を共有・確認し、また、昨年6月7日に市民連合から提出された『野党4党の政策に対する市民連合の要望書』を受け止め、さらには昨年の通常国会で、介護、保育、雇用、被災者支援、男女平等、LGBT(性的マイノリティー)差別解消をはじめとした15本の議員立法を共通の政策として共同提案し、全力で戦った。
 野党四党は、これらの到達点、さらに早期の衆院解散・総選挙は十分にあり得るという前提のうえに立って、できる限りの協力を進めることで合意している。今般、『市民連合が実現を目指す政策』についても、その現状認識及び基本理念を十分共有できると確認した。
 今こそ、安保法制を廃止し、立憲主義を回復するとともに、個人の尊厳と基本的人権の保障を進めることが求められている。自由民主党憲法改正草案のように立憲主義と平和主義を脅かす憲法改正は認められない。アベノミクスからの転換を進め、すべての人間に尊厳ある生活を確保するための社会経済政策を実現すべきである。
 今後も、安倍政権の打倒を目指して政策面や国会活動における四党間の協力を進めていく。
(改頁)
 
 四年間続いた安倍政権の下、我が国の立憲主義、民主主義は危機に直面している。アベノミクスは日本経済の持続的成長をもたらすことなく、格差拡大を助長し、人口減少を放置してきた。
 民進、共産、自由、社民の四党は、早期の衆院解散総選挙は十分にあり得るという前提に立って、できる限りの協力を進めることで合意している。そのうえで、市民連合が実現を目指す政策について四党政策実務者による協議を進めた結果、以下のような考え方を共有することを私たちは確認した。
 
1. 国民生活の安定と「分厚い中間層」の復活に向け、社会経済政策を転換する
(1) 子育て・教育・若者
〇就学前教育から大学まで、すべての教育について原則無償化をめざす。
〇保育施設の拡充、保育士の賃金引き上げ等を通じて待機児童をなくす。
〇安倍政権が放置してきた子育て・教育への投資を劇的に拡大することにより、教育の機会平等と質の向上、持続的成長の実現、雇用の創出、女性の社会進出、人口減少対策等を後押しする。
(2) 雇用・働き方
〇残業代ゼロ法案の成立を阻止するとともに、インターバル規制を含む長時間労働規制法を早期に成立させる。
〇同一価値労働同一賃金の実現など非正規労働者に対する待遇の差別を禁止する。
最低賃金の大幅引き上げなど、賃金・労働条件を改善する。
(3) 社会保障
国民皆保険制度を維持し、年金の最低保障機能を強化する。
〇介護労働者の賃金など待遇を改善するなど、介護の充実を進める。
〇働き方や性別等に中立的かつ公正な社会保障制度、税制を確立する。
(4) 女性・ジェンダー
〇選択的夫婦別姓を実現する。
〇政治分野で候補者割り当てクオータを導入する。
〇包括的な性暴力の禁止に向け、性暴力被害者支援法を制定する。
LGBTに対する差別解消施策を盛り込んだ法律を制定する。
(5) 地域活性化
霞ヶ関目線で効果の上がらない地方創生を掲げ、カジノによる地域振興に迷走する安倍政権と対峙し、地方の自主性を尊重した公正な地域活性化を進める。
〇農家に対する所得補償制度を法制化する。
 
2. 原発ゼロを目指し、エネルギー政策を抜本的に転換する
(1) 原発ゼロを目指す
 3.11を原点として新しい日本のエネルギー政策を構想する。
(2) 省エネルギーの徹底
 断熱の徹底、廃熱の有効利用等をすすめ、世界一の省エネ社会を実現する。
(3) 再生可能エネルギーの飛躍的増強
 太陽光発電風力発電への支援、ソーラーシェアリングの大幅拡大等を進める。
(4) 地球温暖化対策の推進
 国際社会に通用する中長期数値目標を設定し、地球環境・生態系の保全を進めるとともに新産業と雇用の創出につなげる。
 
3. 立憲主義を守り抜き、平和を創造する
(1) 立憲主義と平和主義を脅かす憲法改悪の阻止
 自民党憲法改正草案は、立憲主義に反し、基本的人権の尊重や国民主権、そして平和主義という基本的価値を脅かすものであり、これを基礎とした改定、特に平和主義を破壊する憲法9条の改悪を阻止する。
(2) 2015年安保法制の白紙化
 安倍政権下で強行された安全保障法制は立憲主義と平和主義を揺るがすものであり、その白紙撤回を求める。
(3) 戦略的なアジア太平洋外交の推進
 同盟国である米国を含め、近隣諸国、関係国との対話を促進し、地域における信頼醸成に努める。
(4) 沖縄の基地負担の軽減
 沖縄の民意を踏みにじって基地建設を強引に進める政府の姿勢は、容認できない。沖縄県民の思いを尊重しながら基地負担の軽減を進める。
(5) 情報公開の推進と報道の自由の回復
 安倍政権下で後退した情報公開と報道の自由は、民主政治の基盤であり、危機感を持ってその推進、回復に取り組む。
                                           以上
(引用終わり)
 
 そこで、この「四党の考え方」の前提となった「市民連合が実現を目指す政策」も当然読んでみたいということになるのですが、上記民進党のニュースの中にPDFファイル化されて掲載されていました(市民連合のホームページには見当たらず)。
 けれども、このPDFファイルには、テキストデータが埋め込まれておらず、コピペすることができないので、全文はリンク先のPDFファイルをご覧になっていただくとして、市民連合が「私たちは以下の政策を提案します。」として掲げた「3 重要政策」の項目のみ転記します。
 
(抜粋引用開始)
               市民連合が実現を目指す政策
                                       2016.12.09

1 政治の現状認識 (略)
 
2 基本理念 (略)
 
3 重要政策
私たちは以下の政策を提案します。立憲野党の合意を得て、野党、市民の力で推進していくことを望みます。
① 安保法制の廃止と対話による平和の創出
(略)
・2015年安保法制の廃止
・アジアにおける相互信頼関係を再構築するためのイニシアティブ
・日米中韓による多角的対話の推進
南スーダンPKO駆けつけ警護からの即時撤収
・沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設の停止と、基地負担の軽減
 
② 若者や女性に焦点を当てた社会経済政策の創造
(略)
A 女性・ジェンダー政策
・女性の自己決定権の保障 選択的夫婦別姓の実現
・雇用における男女差別の禁止と性暴力被害者支援法の制定
・ライフスタイルの選択を制約しない税制、社会保障制度の実現
・待機児童をなくすため、保育施設の充実、保育士の賃金引き上げ、保育の質を改善する
・国会、地方議会において候補者割当クオータを導入し、議員の男女同数を目指す
LGBT差別解消法の制定
B 子ども・若者政策
・子どもの貧困を廃絶するための中・高等教育を含む教育費の無償化
・学ぶ権利の保障のための中・高等教育を含む教育費の無償化
・給付型奨学金の創設と既存奨学金債務の減免
・仕事と子育てに取り組む若い家族のために、社会的セーフティネットとして低家賃の公営住宅を増設する。
 
③ 公正で持続可能な社会と経済をつくるための政策転換 
(略)
A 雇用政策の転換
・政府提出の労働基準法改正案への反対及び同法の遵守と長時間労働を規制する法案に罰則を設ける等長時間労働の規制
最低賃金の時給1500円以上への大幅引き上げなど働きつづけられる賃金・労働条件の引き上げ
・合理的理由のない格差を認めない同一労働同一賃金の実現など非正規労働者に対する差別の禁止・年金、健康保険に関する雇用形態による不利益の解消
B 社会保障政策の転換・2025年(高齢化のピーク)以降も持続する年金制度の再構築と最低保障年金の創設
・介護労働者の賃金改善
国民皆保険制度の維持
・累進所得税、法人課税、資産課税のバランスの回復、タックスヘイブン対策による公正な税制の実現
 
④ 脱原発への決意
(略)
東京電力福島第一原発事故の徹底的な究明と、安全対策や避難計画等が不備のままでの再稼働を認めない。
再生可能エネルギーの拡大計画の策定による温暖化対策の推進
 
⑤ 多様な地域社会の持続
(略)
・公共交通機関、教育・医療等の公共サービスの維持により生活基盤をどこでも平等に確保する
・農家に対する公正な所得補償制度
・地元に残りたい若者のための雇用創出と賃金の引上げ
(引用終わり)
 
 以上を読み比べてみれば、かなりの程度に市民連合からの「提案」を取り入れて、4党が「考え方を共有すること」が確認されたことが分かります。
 
 なお、いずれ記者会見の動画がアップされるのではないかと思いますが、各政党の公式サイトが、自党出席者の発言をどのように伝えたかを見ておきます(といっても、自由党社民党は見当たりませんでしたが)。
 
「(意見交換会で)野田幹事長は開会に当たって、3月12日の民進党結党後初めての定期党大会で「一致できる政策を見出す努力を行い、市民との連携を軸として野党の連携を進めていき、安倍1強支配に対抗していく」ことを活動方針として確認したことにも触れ、「今日はその前進につながる意見交換の場になることを強く期待したい」とあいさつ。」
「(記者会見で)野田幹事長は、「市民連合の皆さんが抱いている現状の認識と基本的な理念、政策的な方向性については4党でしっかり共有できたと思っている。このことを基本に置いて、政治決戦に向けた準備をより加速していきたい」と表明。森友学園疑惑の真相究明と共謀罪の廃案についても市民連合との共闘を確認できた意義にも触れ、「これからも連携を取りながら安倍政権打倒に向けて全力を尽くしていきたい」と力を込めた。
 共謀罪の廃案については特に、「内心の自由を脅かす脅威を共通して持っていること。こういう国民の多様な生き方、価値観、活動に対して制約を加えるような動きについてはそれぞれ立ち位置はあるかもしれないが強い危機感を共有しているということだ」と指摘。「過去にも協力して反対してきており、本質的な中身は変わっていない。むしろ性質(たち)が悪くなったのは正体隠しながらテロ等準備あるいはオリンピック対策と言っているということ。もっと筋も性質も悪くなっているのだから、より厳しく激しく闘っていく」と述べた。」
 
日本共産党 小池晃書記局長
日本共産党小池晃書記局長は意見交換会後の共同記者会見で、4野党の考え方について「これはまさに現時点での到達点。これを土台にして、より豊かで魅力ある共通政策をつくっていくことが課題だ」と強調。「『共謀罪』の廃案や『森友』問題の追及でも4野党が力を合わせてたたかっていく中で、より豊かな政策をつくっていくことが必要だ」と述べました。同時に、今後の政策づくりについて「議論の中身を国民のみなさんにみていただけるような努力もしながら、ぜひ来たるべき総選挙で、野党と市民の共闘で自公と補完勢力を少数に追い込んでいく。その旗印を立てていきたい。今日はその点で、大きな一歩が示された」と語りました。」
 
自由党 玉城デニー幹事長
※公式サイトにはアップされていない。
 
社民党 又市征治幹事長
※公式サイトにはアップされていない。
 
 東京新聞も伝えるとおり、「共通公約」を掲げるにはハードルが高いでしょうが、「事実上」であっても、極力、重要政策について共通の基盤を持つことはとても重要だと思います。
 衆議院解散の時期は混沌としていますが、この「四党の考え方」を基礎として、選挙区調整などの協議も具体的に進展することを心より願います。
 
(追記)
 このメルマガを配信してブログをアップした直後、中野晃一さんのFacebookで、市民連合の公式サイトに「4月5日 野党4党との意見交換会」がアップされたことを知りました。
 そこには、
 「市民連合が実現を目指す政策」(2016.12.09)
 「『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方」(2017年4月5日)
 「市民連合からの野党4党への要請」(2017年4月5日)
という3点の文書が掲載されていました(もう少し待てば良かった!)。
 以下には、初めて読んだ「市民連合からの野党4党への要請」を全文引用します。
 全国各地で野党共闘を模索している市民運動にとって、これらの文書をどのように活用すべきか考えることが緊急の課題となるでしょう。
 
(引用開始)
市民連合からの野党4党への要請
 
 4野党が通常国会において安倍政権による国家の私物化に対して果敢に戦っていることに、市民連合は深い敬意を表します。
 昨年12月の4野党と市民連合の意見交換会において、市民連合は共通政策の骨子を提案し、その場で幹事長、書記局長から基本的に共有できるという反応をいただいたところです。その後、全国各地で野党と市民の協力を求める運動が広がり、市民連合のメンバーもそのような運動の集会に赴き、野党結集、野党と市民の共同の機運を高めるために尽力してきました。
 このたび、4野党から政策の基盤となる共通認識の骨子について見解を示していただきました。通常国会の多忙な日程の中、認識の共有のために努力してくださった4野党の方々に、市民連合はお礼申し上げたいと思います。また、市民連合の目指す政策について、その基本的な方向性を共有していただいたことに、感謝申し上げます。政策実現までの道筋やスピードについては各党間、および政党と市民連合との間で差異はありますが、現段階で作る共通認識は、野党と市民の共闘を進める際の道しるべとなるべきものであり、総選挙の際に政権交代を迫るための政策の手前の、基本的な方向性を示すもので十分だと考えます。
 野党結集を図るうえで、具体的な候補者の選定にはまだ長い話し合いが必要だと思われます。解散総選挙の時期が不透明になる中、市民連合はこれからしばらくの間、全国の運動において共有すべき政策を具体化する作業を進めたいと考えています。今回ご提示いただいた共通認識の骨子は、全国の野党と市民の協力を目指す市民に大きな勇気を与え、各地での運動を加速すると確信しています。
 市民連合は、目前の重大事である森友学園疑惑の究明、共謀罪に対する反対運動の展開についても野党と市民の共闘を広げ、人間本位の民主政治、立憲政治を取り戻すために、4野党とともに努力したいと決意を新たにしています。今後とも引き続き野党と市民の協力を強化していきたいと願っています。
 
2017年4月5日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
(引用終わり)  

「カジノ実施法案」作成作業が始まりました~クリーンなカジノの実現を目指して(!?)

 今晩(2017年4月5日)配信した「メルマガ金原No.2773」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「カジノ実施法案」作成作業が始まりました~クリーンなカジノの実現を目指して(!?)

 これまでも、カジノ解禁推進法をめぐっては、何度かこのメルマガ(ブログ)で取り上げてきましたが、いよいよカジノ実施法制定に向けて政府が具体的な活動を始めましたので、注意喚起の意味も込めて取り上げておこうと思います。
 その動きを伝える報道を引用しておきます。
 
日本経済新聞 2017/4/4 9:48
首相、カジノ「最高水準の規制導入」 推進本部初会合

(引用開始)
 
政府は4日午前、カジノを含む統合型リゾート(IR)導入に向けた推進本部の初会合を首相官邸で開いた。推進本部の本部長を務める安倍晋三首相は「世界最高水準のカジノ規制を導入する」と表明。政府はカジノの運営方法や入場規制について本格的な検討を進め、秋の臨時国会にIR実施法案の提出を目指す。ギャンブル依存症対策なども議論し、詳細なルール作りを急ぐ。
 首相はIRについて「大規模な民間投資がおこなわれ、大きな経済効果・雇用創出効果をもたらすことが重要だ」と強調。カジノに関しては「国民の幅広い理解を得られるようクリーンなカジノを実現する」と述べ、法案提出へ向けた作業の加速を全閣僚に指示した。
 同本部の下に設置する推進会議の委員として美原融・大阪商業大教授や渡辺雅之・三宅法律事務所パートナー弁護士ら8人を決定。6日に初会合を開く。
 政府はIRを経済成長の起爆剤としたい考え。カジノ解禁を巡ってはマネーロンダリングなどの犯罪防止策や暴力団対策が重要課題となる。政府は法案が成立した後、内閣府の外局として「カジノ管理委員会」を設置し、入場規制のあり方や対象者について具体的な検討を進める方針だ。
 昨年末に施行されたIR整備推進法(カジノ法)は1年以内をめどに、政府に実施法案を作成して国会に提出するよう求めている。
(引用終わり)
 
 以上の記事をしっかり理解する前提として、昨年12月26日に公布され、第三章を除いて即日施行されたカジノ解禁推進法(特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律)の規定を復習しておきましょう。「第一章 総則」を引用します。
 
特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(平成二十八年十二月二十六日法律第百十五号)
  
第一章 総則
(目的)
第一条 この法律は、特定複合観光施設区域の整備の推進が、観光及び地域経済の振興に寄与するとともに、財政の改善に資するものであることに鑑み、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する基本理念及び基本方針その地の基本となる事項を定めるとともに、特定複合観光施設区域整備推進本部を設置することにより、これを総合的かつ集中的に行うことを目的とする。
(定義)
第二条 この法律において「特定複合観光施設」とは、カジノ施設(別に法律で定めるところにより第十一条のカジノ管理委員会の許可を受けた民間事業者により特定複合観光施設区域において設置され、及び運営されるものに限る。以下同じ。)及び会議場施設、レクリエーション施設、展示施設、宿泊施設その他の観光の振興に寄与すると認められる施設が一体となっている施設であって、民間事業者が設置及び運営をするものをいう。
2 この法律において「特定複合観光施設区域」とは、特定複合観光施設を設置することができる区域として、別に法律で定めるところにより地方公共団体の申請に基づき国の認定を受けた区域をいう。
(基本理念)
第三条 特定複合観光施設区域の整備の推進は、地域の創意工夫及び民間の活力を生かした国際競争力の高い魅力ある滞在型観光を実現し、地域経済の振興に寄与するとともに、適切な国の監視及び管理の下で運営される健全なカジノ施設の収益が社会に還元されることを基本として行われるものとする。
(国の責務)
第四条 国は、前条の基本理念にのっとり、特定複合観光施設区域の整備を推進する責務を有する。
(法制上の措置等)
第五条 政府は、次章の規定に基づき、特定複合観光施設区域の整備の推進を行うものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。
  第二章 特定複合観光施設区域の整備の推進に関し基本となる事項
(以下略)
 
 ただし、上記総務省ホームページに掲載された法律は、附則第1項のただし書「ただし、第三章の規定は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。」に基づき、3月24日に施行された第三章(第14条から第23条)がまだ「未施行」のままとなっており、条文が掲載されていません。施行直後に「読めない」ということ自体は別に珍しいことではありませんが、不便には違いありません。
 そこで、首相官邸ホームページに「特定複合観光施設区域整備推進本部」の設置根拠となる法令がPDFで掲載されていますので、煩をいとわず引用しておきます。
 
○特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律(平成28年法律第115号(抄))
第三章 特定複合観光施設区域整備推進本部
(設置)
第十四条 特定複合観光施設区域の整備の推進を総合的かつ集中的に行うため、内閣に、特定複合観光施設区域整備推進本部(以下「本部」という。)を置く。
(所掌事務等)
第十五条 本部は、次に掲げる事務をつかさどる。
一 特定複合観光施設区域の整備の推進に関する総合調整に関すること。
二 特定複合観光施設区域の整備の推進を総合的かつ集中的に行うために必要な法律案及び政令案の立案に関すること。
三 特定複合観光施設区域の整備の推進に関する関係機関及び関係団体との連絡調整に関すること。
2 本部に係る事項については、内閣法(昭和二十二年法律第五号)にいう主任の大臣は、内閣総理大臣とする。
(組織)
第十六条 本部は、特定複合観光施設区域整備推進本部長、特定複合観光施設区域整備推進副本部長及び特定複合観光施設区域整備推進本部員をもって組織する。
(特定複合観光施設区域整備推進本部長)
第十七条 本部の長は、特定複合観光施設区域整備推進本部長(以下「本部長」という。)とし、内閣総理大臣をもって充てる。
2 本部長は、本部の事務を総括し、所部の職員を指揮監督する。
(特定複合観光施設区域整備推進副本部長)
第十八条 本部に、特定複合観光施設区域整備推進副本部長(以下「副本部長」という。)を置き、国務大臣をもって充てる。
2 副本部長は、本部長の職務を助ける。
(特定複合観光施設区域整備推進本部員)
第十九条 本部に、特定複合観光施設区域整備推進本部員(以下「本部員」という。)を置く。
2 本部員は、本部長及び副本部長以外の全ての国務大臣をもって充てる。
(資料の提出その他の協力)
第二十条 本部は、その所掌事務を遂行するため必要があると認めるときは、関係行政機関、地方公共団体独立行政法人独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第一項に規定する独立行政法人をいう。)及び地方独立行政法人地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第一項に規定する地方独立行政法人をいう。)の長並びに特殊法人(法律により直接に設立された法人又は特別の法律により特別の設立行為をもって設立された法人であって、総務省設置法(平成十一年法律第九十一号)第四条第一項第九号の規定の適用を受けるものをいう。)の代表者に対して、資料の提出、意見の開陳、説明その他の必要な協力を求めることができる。
2 本部は、その所掌事務を遂行するため特に必要があると認めるときは、前項に規定する者以外の者に対しても、必要な協力を依頼することができる。
(特定複合観光施設区域整備推進会議)
第二十一条 本部に、特定複合観光施設区域整備推進会議(以下「推進会議」という。)を置く。
2 推進会議は、学識経験を有する者のうちから、内閣総理大臣が任命する委員二十人以内で組織する。
3 推進会議は、特定複合観光施設区域の整備の推進のために講ぜられる施策に係る重要事項について調査審議し、本部長に意見を述べるものとする。
4 推進会議は、前項の規定により意見を述べたときは、遅滞なく、その内容を公表しなければならない。
5 本部長は、第三項の規定による意見に基づき措置を講じたときは、その旨を推進会議に通知しなければならない。
(事務局)
第二十二条 本部の事務を処理させるため、本部に、事務局を置く。
2 事務局に、事務局長のほか、所要の職員を置く。
3 事務局長は、本部長の命を受けて、局務を掌理する。
政令への委任)
第二十三条 この法律に定めるもののほか、本部に関し必要な事項は、政令で定める。
附 則
(施行期日)
1 この法律は、公布の日から施行する。ただし、第三章の規定は、公布の日から起算して三月を超えない範囲内において政令で定める日から施行する。
 
○特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律の一部の施行期日を定める政令平成29年政令第41号)
 特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律附則第一項ただし書に規定する規定の施行期日は、平成二十九年三月二十四日とする。
 
○特定複合観光施設区域整備推進本部令(平成29年政令第42号)
(特定複合観光施設区域整備推進本部長補佐)
第一条 特定複合観光施設区域整備推進本部(以下「本部」という。)に、特定複合観光施設区域整備推進本部長補佐(以下「本部長補佐」という。)五人以内を置く。
2 本部長補佐は、内閣官房副長官内閣官房副長官補又は内閣総理大臣補佐官のうちから、内閣総理大臣が指名する者をもって充てる。
3 本部長補佐は、特定複合観光施設区域整備推進本部長(以下「本部長」という。)の命を受け、本部の事務局(以下単に「事務局」という。)の事務の総括及び事務局の職員の指揮監督に係る本部長の職務について本部長を補佐する。
(委員の任期等)
第二条 特定複合観光施設区域整備推進会議(以下「推進会議」という。)の委員の任期は、二年とする。ただし、補欠の委員の任期は、前任者の残任期間とする。
2 委員は、再任されることができる。
3 委員は、非常勤とする。
(議長)
第三条 推進会議に、議長を置き、委員の互選により選任する。
2 議長は、会務を総理し、推進会議を代表する。
3 議長に事故があるときは、あらかじめその指名する委員が、その職務を代理する。
(議事)
第四条 推進会議は、委員の過半数が出席しなければ、会議を開き、議決することができ
ない。
2 推進会議の議事は、出席した委員の過半数で決し、可否同数のときは、議長の決するところによる。
(事務局長)
第五条 事務局の事務局長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
(事務局次長)
第六条 事務局に、事務局次長一人を置く。
2 事務局次長は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 事務局次長は、事務局長を助け、局務を整理する。
(審議官)
第七条 事務局に、審議官五人以内を置く。
2 審議官は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 審議官は、命を受けて、局務に関する重要事項についての企画及び立案に参画し、関係事務を総括整理する。
(参事官)
第八条 事務局に、参事官十人以内を置く。
2 参事官は、関係のある他の職を占める者をもって充てられるものとする。
3 参事官は 命を受けて 局務を分掌し、又は局務に関する重要事項の審議に参画する。
(本部長補佐等の勤務の形態)
第九条 本部長補佐、事務局長、事務局次長、審議官及び参事官は、その充てられる者の占める関係のある他の職が非常勤の職であるときは、非常勤とする。
(本部の組織の細目)
第十条 この政令に定めるもののほか、本部の組織に関し必要な細目は、内閣総理大臣が定める。
(本部の運営)
第十一条 この政令に定めるもののほか、本部の運営に関し必要な事項は、本部長が本部に諮って定める。
附 則
(施行期日)
1 この政令は、特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律附則第一項ただし書に規定する規定の施行の日(平成二十九年三月二十四日)から施行する。
 
 以上のとおり、法第三章に定める内閣総理大臣を本部長とし、全ての国務大臣を本部員とする「特定複合観光施設区域整備推進本部」が3月24日に設置され、その第1回会合が昨日(4月4日)開催されたという訳です。
 そして、法第21条に基づいて本部に設置した「特定複合観光施設区域整備推進会議」において、「特定複合観光施設区域の整備の推進のために講ぜられる施策に係る重要事項について調査審議し、本部長に意見を述べる」こととなっており、その第1回の会合が明日(4月6日)開催される予定です。
 法第5条は、「政府は、(略)必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。」とあることから、リミットは今年の12月25日となっており、日本経済新聞が伝えるとおり、「秋の臨時国会にIR実施法案の提出を目指す。」のが当然のタイムスケジュールとなります。
 
 なお、昨日(4月4日)開催された「推進本部」の「配付資料」の中から、一部をご紹介しておきましょう。
 
(抜粋引用開始)
IR推進会議における検討
主な論点
・我が国が目指すべきIRの在り方(日本型IR)
・IR区域の認定制度の在り方
・カジノ規制の在り方
・カジノ管理委員会の組織の在り方
・納付金・入場料等の在り方 等

夏頃 大枠取りまとめ
更に国民的な議論
必要な法制上の措置(IR推進法第5条:「施行後一年以内を目途として講じなければならない」)
 

IR推進会議委員

熊谷 亮丸(㈱大和総研常務執行役員・調査本部副本部長・チーフエコノミスト
櫻井 敬子(学習院大学法学部教授)
篠原 文也(政治解説者、ジャーナリスト)
武内 紀子( ㈱コングレ代表取締役社長)
丸田 健太郎(有限責任あずさ監査法人 パートナー公認会計士
美原 融(大阪商業大学教授)
山内 弘隆(一橋大学大学院商学研究科教授)
渡邉 雅之(弁護士法人三宅法律事務所 パートナー弁護士)
(引用終わり)
 
 今日のところは、状況の確認をするのが目的なので、批判や反対運動についての考えを述べるのはまた別の機会にすることとして、最後に、昨日の推進本部の議事録から、石井啓一IR担当大臣(副本部長、国土交通大臣)の冒頭発言と、安倍晋三内閣総理大臣の発言を引用しておきます。

 ・・・と、批判は「別の機会に」と書いたばかりですが、「クリーンなカジノを実現するため、世界最高水準のカジノ規制を導入する」(安倍首相)を読んでは一言せざるを得ませんね。
 このような日本語は、いかに官僚の作文であっても、普通の廉恥心を持った者には、とても恥ずかしくて口に出来ないと思いますが、「世界最高水準の安全基準」を充たした原発を再稼働させると公言する人間にとって、「クリーンなカジノ」「世界最高水準のカジノ規制」という、何を意味するのか、実は起案した官僚にも分かっていないに違いない空虚な言葉をはき出すことなど何でもないことなのでしょう。
 このような空虚な言語にどう対峙すればよいのか、私たちの課題であり続けています。
 
 それにしても、どういう神経で議事録に「安倍内閣総理大臣御挨拶」と「御」の字を付けますかね?これも官僚の「忖度」なのでしょうか?
 
第1回 特定複合観光施設区域整備推進本部 会合 議事録
(抜粋引用開始)
(石井IR担当大臣)
 ただいまから、特定複合観光施設区域整備推進本部を開催いたします。議事進行を務めます、副本部長の石井です。会議の公開等については、他の本部の例にならい、議事録及び配布資料は、原則として、本部会合終了後、速やかに公開することとします。それでは議事に入ります。お手元の資料1「今後の進め方」を御覧下さい。昨年末にIR推進法が成立をいたしまして、3月24日に本部が設置されました。IR推進法には附帯決議が付されており、お手元に参考資料として配布しております。下の欄をご覧頂きたいと思いますが、明後日の六日からは、本部の下に置かれる有識者のIR推進会議において、主な論点について検討いただき、夏頃に大枠を取りまとめたいと考えております。その後に、附帯決議を踏まえ、国民的な議論を尽くした上で、IR推進法の施行後一年以内を目途として、必要な法制上の措置を講じることとなります。資料2「IRの推進体制」を御覧下さい。本部の体制については、資料の左側にあるとおりです。また、IR推進会議の委員については、本日付で、資料の右側にある8名となっております。引き続いて、関係閣僚から御発言をお願いします。はじめに、観光を所管する国土交通大臣として、私から申し上げます。IRの整備は、日本の新たな観光の魅力となり、インバウンドの促進をはじめ観光先進国の実現に大きく貢献するものと考えております。このため、国土交通省内に検討チームも設けたところであり、IRが、国際競争力のある滞在型観光を実現し、地域の特性を活かした観光地形成の中核となるよう、関係府省と連携しながら、しっかりと対応してまいります。
(略)
安倍内閣総理大臣御挨拶)
 本日から、IRの制度設計の検討が開始されます。「日本型IR」は、家族連れで楽しめるエンターテイメント施設や、国際会議場・展示場等を一体的に運営し、また、日本の伝統・文化・芸術を生かしたコンテンツを導入することで、国際競争力の高い滞在型観光を実現するものにしていかなければなりません。また、シンガポールのような大規模な民間投資が行われ、大きな経済効果・雇用創出効果をもたらすものとすることも重要です。あわせて、IRを訪れる旅行客が全国各地を訪問できるようにして、全国で経済効果をもたらしたいと考えます。さらに、カジノ収益を幅広い公益目的に還元することにより、国民の幅広い理解を得られるようにすること、クリーンなカジノを実現するため、世界最高水準のカジノ規制を導入するとともに、それを的確に執行するための体制を整備すること、依存症やマネー・ローンダリング、青少年への影響等、IRについての様々な懸念に万全の対策を講じることも重要であります。これらを通じ、クリーンなカジノを含んだ、魅力ある「日本型IR」を創り上げたいと思います。衆・参内閣委員会の附帯決議を踏まえ、国民の理解を得つつ、石井大臣を中心に関係閣僚が協力して検討いただきますように、お願いをいたします。
(引用終わり/下線は金原による)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2016年12月8日
カジノ推進法案をめぐる和歌山の現状と読売新聞による徹底批判

2016年12月13日
カジノ解禁推進法案の廃案を求める大阪弁護士会・会長声明(2016年12月12日)のご紹介~付・2014年10月の和歌山弁護士会・会長声明

2017年2月27日
和歌山弁護士会「いわゆる「カジノ解禁推進法」の成立に抗議し、同法の廃止を求める会長声明」(2017年2月27日)と和歌山でのカジノ誘致の動き
2017年3月10日
「カジノで観光・まちづくり!?ちょっと、おかしいんとちゃうか!緊急トーク集会」3/13@プラザホープのご案内と4月・5月の「予告編」

「実はなかった8億円のゴミ!?」~環境ジャーナリスト・青木泰氏インタビュー(UPLAN)を視聴する

 今晩(2017年4月4日)配信した「メルマガ金原No.2772」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「実はなかった8億円のゴミ!?」~環境ジャーナリスト・青木泰氏インタビュー(UPLAN)を視聴する

 今晩(4月4日)午後6時半から、桜の名所として名高い和歌山城で、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が花見を敢行しました。4月4日というと、例年ならもう満開を過ぎて散りかけという時期ですが、今年は何とまだ五分咲き(ところにより七分咲き)ということで、平日ということもあり、我々がビニールシートを広げたあたりは、他にいくつかのグループが来ていたものの、静かなもので、落ち着いて楽しむことができました。
 ただ、今日のメルマガ(ブログ)を1行も書いていなかった私は、かつらぎ町の自宅まで帰らなければならない藤井幹雄先生についで2人目の早退者となり、和歌山城近くの自分の事務所に戻りました。そして、ブログの素材を探すよりも先に、つい撮ったばかりの花見の写真をFacebookにアップする作業をしてしまいました。

 ということで、いよいよメルマガ(ブログ)を書いている時間がなくなってきました。
 実は、今度の日曜日(4月9日)に御坊市の日高教育会館で行う共謀罪学習会のためのレジュメを書き上げて今日主催者にメールで送ったところなので、そのレジュメを今日のメルマガ(ブログ)で紹介するという誘惑にかられたのですが、さすがにまだやっていない学習会のレジュメを、5日も前に公表するのはまずかろうと思いとどまりました。
 
 もう一つ、安倍内閣の閣僚による、教育勅語を教材として使用すること自体は否定されないという趣旨の相次ぐ発言も、いずれ取り上げなければとは思っているのですが、もう少し執筆に時間がかけられる時でないと満足のいく内容のものは書けないということと、初鹿博明衆議院議員民進党)による質問主意書は読めるものの、内閣の答弁がまだ衆議院ホームページにアップされていないので、それを待ってからでないと首尾一貫しませんからね。
初鹿議員の質問主意書
 
 といった紆余曲折の末、たどり着いたのは、UPLAN月島スタジオで収録されて今日公開された環境ジャーナリスト・青木泰さんに対するインタビュー動画で、非常に興味深い内容でした。
 それは、近畿財務局が森友学園に対してタダ同然で豊中市の国有地を払い下げる理由とされた「8億円分のゴミ」などそもそも存在しなかったのではないのか?という誰もが抱く疑問に対し、根拠を示して青木さんが「なかった」という推論を展開しておられるのでした。 
 青木さんの主張に全面的に同意するかどうかは視聴する人が個々に判断すれば良いことですが、私は相当に説得力があると思いました。視聴をお薦めします。
 
20170404 UPLAN 実はなかった 8億円のゴミ!? ―国の資料から読み解く―(33分58秒)
 

放送予告4/16『防衛フェリー~甦る徴用の記憶と現実~』(テレメンタリー)

 今晩(2017年4月3日)配信した「メルマガ金原No.2771」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
放送予告4/16『防衛フェリー~甦る徴用の記憶と現実~』(テレメンタリー

 興味深いTVドキュメンタリー番組をたびたび紹介しているこのメルマガ(ブログ)ですが、テレビ朝日系列各社が共同で制作する「テレメンタリー」をご紹介するのは久しぶりのような気がします。
 
テレビ朝日 2017年4月16日(日)午前4時30分~5時00分
朝日放送 2017年4月16日(日)午前5時20分~5時50分
テレメンタリー2017「防衛フェリー~甦る徴用の記憶と現実~」

(番組案内から引用開始)
 防衛省は、有事や災害の際に民間のフェリーを活用する制度を新設した。現行の「防衛計画の大綱」に基づき、陸上自衛隊の戦車部隊などを南西諸島などに運搬するのも役割のひとつだ。さらに国は民間の船員の希望者に、防衛出動の要員となる資格を持たせる制度を新たに導入した。全国海員組合は、「戦争中の“徴用”に繋がる」として強く反対している。事実上、防衛省専属となったフェリーを取材。民間船と戦争との「距離」を考える。
ナレーター:上田定行
制作:メ~テレ
(引用終わり)
 
 制作局の「メ~テレ」って何だ?と驚きましたが、「名古屋テレビ」のことらしいです。
 
 ところで、この番組案内を読んで、私がただちに思い出したのは、昨年12月2日に行われた安保法制違憲・東京国家賠償請求訴訟の第2回口頭弁論において意見陳述した本望隆司さんのお話でした。
 この意見陳述については、私のメルマガ(ブログ)で既にご紹介していますが(司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述/2016年12月10日)、以下に再掲します。
 
本望隆司さんの東京地裁における意見陳述
(引用開始)
 私は、1962 年から 1987 年まで、主にタンカーや鉱石船で資源を運搬する船舶に乗船しました。
 印象深いのは、1980 年に始まったイラン・イラク戦争の際に、ペルシャ湾内を航行する船舶を攻撃すると両国が言いだしたときです。日本船も対象になるということで、大変な問題になりました。この時、タンカー攻撃を避けて日本の石油輸送を守ることができたのは、憲法9条のおかげでした。つまり日本がいずれの国にも武力で加担しない中立国であるとの認識が国際的に確立していたからです。日本船をペルシャ湾の入り口にまとめ、船団を組んでペルシャ湾に入ることを外交ルートを通じて両国に通報し、タンカーにはデッキと船側に日本船と判明できるよう、大きな日の丸を描いて視認できる日中に航行しました。当時攻撃を受け被弾した世界全体の船舶は407隻、333人の死者、317人の負傷者が出ました。しかし日本船は被弾ゼロ、日本人船員は外国籍船の乗船者のみ2名の犠牲を出しました。(1999 年5月18日参議院「新ガイドライン関連法」特別委員会中央広聴会での海員組合・平山公述人の口述から)こうして、日本船は攻撃をまぬがれ石油輸送を守ったのです。
 ところが、政府が憲法9条の精神を捨て去り、海外での武力の行使が可能になる集団的自衛権閣議決定してから、我が海運業界もその影響が現れています。
 
2016 年には軍需物資の海上輸送に、防衛省と船舶会社との間で、既に、2隻のチャーター契約を結んでいます。これは、普段はこの船舶を通常利用してもよいが、有事の際には、防衛省の命令によって、これらの船舶を自衛隊に提供するというものです。そして、船舶を操船するのは、自衛官となっていますが、現役の自衛官では操船が無理ですから、船員を予備自衛官として、自衛官の身分で、船舶を航行させることになります。この契約は10年で合計250億円という金額ですから、船舶会社としては、黙ってもお金が入ってくる非常に魅力的な取引ですが、現場の船員にとっては、「後方支援」の名の下、いつ攻撃されるか分からない危険な状態におかれます。そして、これらの船舶会社に就職する際に、予備自衛官補になることを条件としています。それを拒否すれば下船させられます。
 政府は、あたかも「後方支援」は安全であるかのような説明をしておりますが、実際のところ、兵站活動です。前線部隊に兵員、食糧、武器弾薬、医療物資等を運ぶのですから、敵からみれば、それを攻撃し、補給を遮断するのがもっとも効率的であることは当然です。「後方支援」だからといって安全であることは全くなく、輸送船は反撃の手段を持っていませんから、むしろ前線より危険ともいえるわけです。このことは、第二次世界大戦中に、日本の民間の船舶が輸送船として徴用され、攻撃対象になって、約半数の船員が犠牲となり、保有船舶もわずか数隻にまで壊滅した歴史で明らかです。日本海運が立ち直るために長い年月を要したのです。これは我々船員としては繰り返してはならない歴史です。「海員不戦の誓い」は海運界の切実な願いです。
 さらには、集団的自衛権の行使容認を政府が決めてから、日本の船舶だから安全ということは全くなくなりました。先日のダッカでの日本人襲撃でも明らかなように、むしろ日本が攻撃対象として扱われる事態になっており、海運業界を初めとする運送に関わる業界にもろに影響が出て来るのではないかと非常に恐れています。イラン・イラク戦争の当時、憲法9条のもと日本は戦力を保持しない平和国家であると国際的に認知されていたが、その国際的認知は崩れ去り戦争やテロに巻き込まれる可能性が増大したと言わざるを得ません。船舶が攻撃される危険性に恐怖を感じます。正規の憲法改正の手続をとらず、専門家を初め多くの人たちが違憲であると言っている安保法制を強行採決し、海運業界がまた、再び戦争への協力をさせられる途がひらかれてしまったことに対し、海運業界にいた者として、これほどの苦痛はありません。 
(引用終わり/※下線は金原による)
 
 本望さんの陳述の中で「2016年には軍需物資の海上輸送に、防衛省と船舶会社との間で、既に、2隻のチャーター契約を結んでいます。」とあるのが、まさに今日ご紹介したテレメンタリーで取り上げられる「防衛フェリー」のことです。この事業は、防衛省が進めている「民間船舶の運航・管理事業」のことであり、その実施方針等については、昨年12月10日に書いた私のメルマガ(ブログ)でご紹介していますので、ご参照ください。
 
 以下では、全日本海員組合(番組案内に「全国海員組合」とあるのは多分誤記でしょう)が昨年1月29日に発表した声明をご紹介します。
 
(引用開始)
                                  平成 28 年1月 29 日
 
        民間船員を予備自衛官補とすることに断固反対する声明
 
                                     全日本海員組合
 
 一昨年からのいわゆる「機動展開構想」に関する一連の報道を受け、全日本海員組合は、民間船員を予備自衛官として活用することに対し断固反対する旨の声明を発し、様々な対応を図ってきた。しかしながら、防衛省は平成 28 年度予算案に、海上自衛隊予備自衛官補として「21 名」を採用できるよう盛り込んだ。われわれ船員の声を全く無視した施策が政府の中で具体的に進められてきたことは誠に遺憾である。
 
 先の太平洋戦争においては、民間船舶や船員の大半が軍事徴用され物資輸送や兵員の輸送などに従事した結果、1万 5518 隻の民間船舶が撃沈され、6万 609人もの船員が犠牲となった。この犠牲者は軍人の死亡比率を大きく上回り、中には 14、15 歳で徴用された少年船員も含まれている。

 このような悲劇を二度と繰り返してはならないということは、われわれ船員に限らず、国民全員が認識を一にするところである。
 政府が当事者の声を全く聞くことなく、民間人である船員を予備自衛官補として活用できる制度を創設することは、「事実上の徴用」につながるものと言わざるを得ない。このような政府の姿勢は、戦後われわれが「戦争の被害者にも加害者にもならない」を合言葉に海員不戦の誓いを立て、希求してきた恒久的平和を否定するものであり、断じて許されるものではない。
 
 全日本海員組合は、民間人である船員を予備自衛官補とすることに断固反対し、今後あらゆる活動を展開していくことを表明する。
                     
                         以 上
(引用終わり)
 
 『防衛フェリー~甦る徴用の記憶と現実~』の制作スタッフの問題意識は、「甦る徴用の記憶と現実」というサブタイトルに明確に現れていると思い、皆さまにも是非視聴していただきたいと思い、ご紹介しました。
 
(参考サイト)
 
(参考動画)
陸上自衛隊90式戦車 高速船ナッチャンWORLDで輸送~特大型運搬車へ搭載@大分-2015 JGSDF TYPE 90 TANK(10分53秒)
 
高速船「ナッチャンWorld」 船内見学会 2017.3.1.(6分18秒)
 

(弁護士・金原徹雄のブログから)
2014年2月3日
今年初めてETV特集の新作が見られる!(2/8『戦時徴用船~知られざる民間商船の悲劇~』)

2016年12月10日

植松健一氏(立命館大学教授)「安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第13回総会)

 今晩(2017年4月2日)配信した「メルマガ金原No.2770」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
植松健一氏(立命館大学教授)「安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか」講演レジュメを読む(守ろう9条 紀の川 市民の会 第13回総会)

 昨日(4月1日)午後2時から、私も運営委員の1人に名前を連ねる地域9条の会「守ろう9条 紀の川 市民の会」(原通範代表)が13回目の総会を開きました。
 2005年1月に設立総会を開いて結成された当会は、毎年の総会開催時に記念講演を行うのを例としてきました。
 当初は、会員でもある和歌山の弁護士(私もその1人です)が講師を務め、やがて、会員ではない和歌山や関西圏の弁護士に講演を依頼したのですが、やがてそれも一巡し、「田舎の9条の会だけれど、当たってくだけろ」の精神で(?)、憲法研究者を中心に、大学教員の皆さんに講演を依頼するようになりました(春の総会だけではなく、秋の憲法フェスタも)。
 たいした講演料も払えない上に遠いという悪条件にもかかわらず、これまで、以下の学者の皆さんが「守ろう9条 紀の川 市民の会」の招きに応えて講演してくださっています。
 
吉田栄司先生(関西大学教授)→2012年 憲法フェスタ
二宮厚美先生(神戸大学名誉教授)→2013年 総会
森 英樹先生(名古屋大学名誉教授)→2014年 総会
清水雅彦先生(日本体育大学教授)→2014年 憲法フェスタ
高作正博先生(関西大学教授)→2015年 憲法フェスタ
石埼 学先生(龍谷大学法科大学院教授)→2016年 総会
 
CIMG6998 そして、昨日開かれた第13回総会における記念講演は、立命館大学法学部教授(憲法学)の植松健一先生に、「安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか」と題してご講演いただきました。
 なお、付言すると、植松先生は、清水雅彦先生、石埼学先生についで、当会で講演された3人目の明治大学雄辯部出身者です(先輩・後輩の序列は当会で講演された順番のとおりだそうです)。

 主催者から講師の植松先生に提案してご了解いただいた演題は、「安倍首相はなぜ憲法を変えたいのか~私たちの生活はどうなるのか~」でしたが、植松先生が書かれたレジュメやパワーポイント資料のタイトルは「安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか」となっていました。
 あえて、「憲法」に括弧書きで(constitution)という英語表記が付け加えられているのは、植松先生のご了解を得て以下に全文掲載する講演用レジュメの第1章のタイトルが、「Ⅰ すでに「憲法」(constitution)を変えてしまった(!?)安倍政権」とされていることからお分かりかと思いますが、ここで言う「憲法」とは、「日本国憲法」という名称を付された憲法典をさしているのではなく、憲法的慣行を含む「この国のかたち」を意味するものとして使われています(講学上のいわゆる「実質的意味の憲法」に近いかもしれません)。
 実は、昨日の植松先生のお話の中で、とりわけ私が感銘を受けたのは(ということは、私が講師を頼まれた際に「使える」と思ったということですが)、安倍政権は「すでに「憲法」(constitution)を変えてしまった」という部分でした。
 というのも、最近、家庭教育支援法案について考えた際、2006年(平成18年)12月の第一次安倍政権による教育基本法の全部「改正」が、実質的には「改憲」だったのではないかという感を強くしていたからです(「家庭教育支援法案」を考えるための基礎資料のご紹介~(付)「和歌山市家庭教育支援条例」を読む/2017年3月29日)。
 
 さらに、「文芸懇話会(1934年)」、「国防の本義と其強化の提唱(1934年)」、「唯研事件(1938年)」などの1930年代の動きとここ数年の政治状況との著しい近似性や公共の福祉のために基本的人権を利用する責任という考え方など、教えられることの多い講演会でした。

CIMG7001 昨日の講演会には、「守ろう9条 紀の川 市民の会」の会員でない方も来てくださっていましたが、本当なら、もっとたくさんの方においで戴きたかったと(いつものことですが)思います。私たち主催者の力不足であり、まことにもったいないことで、講師にも申し訳なく思います。
 既に、秋の憲法フェスタのメイン企画をどうするか、企画会議はこれからですが、個々の運営委員は(私を含め)もう既に具体的な検討を始めています(と思います)。必ずや、各地の「9条の会」のみならず、多くの方に喜んでいただける企画を実現したいと思いますので、是非、私たち「守ろう9条 紀の川 市民の会」の憲法フェスタに足をお運びください。
 
 さて、上にも書いたとおり、植松先生から、講演用にお送りいただいたレジュメやパワーポイント資料のメルマガ(ブログ)への転載を快くご了解いただきましたので、以下に掲載させていただきます。是非じっくりと考えながらお読みいただければと思います。
 転載の方針について若干説明しますと、まず、レジュメは全文引用します(黒色)。その上で、レジュ
メには記載されていないけれど、パワーポイント資料には記載のあった事項については、該当箇所に【PP(パワーポイント)より】と表記した上で引用しました(紺色)。
 なお、レジュメは6章構成(0、Ⅰ、Ⅱ、Ⅲ、Ⅳ、Ⅴ)となっていますが、時間の都合により、「Ⅲ 15
年安保体制下の自衛隊防衛省の力学の変動」の部分は、昨日の講演では省略されました。
 
CIMG7019 それから、昨日の総会では、第1部の記念講演が終わった後、総会議事が行われました。総会議案書の内、情勢分析のパート(私たちを取り巻く情勢)については、事前にメルマガ(ブログ)でご紹介していますが(植松健一立命館大学教授(憲法学)講演のお知らせと「情勢分析2016-2017」(守ろう9条 紀の川 市民の会)/2017年3月14日)、活動報告やこれからの活動方針なども含めた総会議案書全体もPDF化しましたので、お目通しいただければと思います。
 
 それでは、植松健一先生による講演「安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか」レジュメ全文をご紹介します。
 
 

守ろう9条 紀の川 市民の会(2017年4月1日:河北コミュニティセンター)
 
     安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか
 
                             植松健一(立命館大学憲法学)
 
0 はじめに――秘密保護法・共謀罪・政策芸術  
 哲学者・戸坂潤の時評(「文化統制の種々相」(1935年)『全集5巻』(勁草書房・1967年)所収245‐246頁(傍点は原文(金原注:赤字での表記に変えました)、下線は植松)
「現代の日本に於ける文化統制の内で、最も典型的なものは所謂国体明徴運動である。憲法学説に就いての一定の学的立場と学的解釈方法とをば、一個の行政府に過ぎない政府が公的に決定して之を施行するのだから、ここではこの問題に関する限り、言論の自由と信教の自由とが全く制約されるのであって、これ以上の公的な文化統制振りは今の処日本には先ず存在し得ないのである…。
 …統制がこのように一定の露骨な形を取ることが出来たのも、国民の或る意味における「総意」が之を支持するからなのである。というのは、国民が総体から云ってこの統制に対して、何等本当の抵抗を試みようとしないからなのである。というのは、別な言葉で云うと、実は国民は全体から云って、それ程、この問題に対して無関係だからなのである。統制政策はいつも、国民のこうした一種の無関心による支持見出し得る場合に限って容易に成功するのであり、或いはそういう無関心な支持を期待出来そうな場合だけを選んでも最も容易に発動するのである。」
 
【PP(パワーポイント)より】
唯研事件(1938年)
 1938年11月、雑誌『唯物論研究』改め『学芸』にかかわる主要メンバーの一斉検挙に始まる弾圧。戸坂
潤、岡邦雄、森宏一、古在由重、新島繁ら30名が検挙。
 40年1月の第2次一斉検挙後は、雑誌購読者にも捜査が及び、検挙者総数100人余ともいわれる。
 裁判所は「…日本共産党ノ目的達成ニ寄与…支援スルコトヲ目的トスル唯物論研究会ナル結社ヲ組織シ」(控訴審判決)と認定し、戸坂を懲役3年とする。戸坂は45年8月9日、栄養失調と腎臓不全で獄死。
 
【PP(パワーポイント)より】
文芸懇話会とは?

・1934年3月、内務省警保局長・松本学が、文化統制を目的に、直樹三十五らを抱え込んで創立した官民合
同の文学団体。 
 
安倍首相支持の勉強会「文化芸術懇話会」(産経デジタル2015年6月25日21:55)
自民党の若手国会議員有志は25日、芸術家を講師に招いて意見交換する勉強会を発足させた。出席者には、安倍晋三首相(自民党総裁)に近い議員も多く、9月の総裁選を前に首相の無投票再選の機運を高める狙いがある。新勉強会は「文化芸術懇話会」。設立趣意書によると、芸術家との意見交換を通じ「心を打つ『政策芸術』を立案し、実行する知恵と力を習得すること」を目的としている。
 この日、党本部で開いた初会合には加藤勝信官房副長官薗浦健太郎外務政務官萩生田光一総裁特別補佐ら首相を支持する議員を中心に37人が出席、作家の百田尚樹氏の講演に耳を傾けた。代表に就任した木原稔党青年局長は会合後、記者団に「党所属国会議員として、党や政府が進めようとしていることを後押しするのは当然だ」と強調。総裁選に向け、首相の「応援団」として活動するとみられる。…」
 
【PP(パワーポイント)より】
国防の本義と其強化の提唱(1934年・陸軍省新聞班)
・科学的研究機関を統制し、合理化し、其能率を向上し…
・発明を奨励し、資金供給、研究機関の利用の道を拓き特許制度に改善を加う。
・民族特有の文化を顕揚し、泰西文物の無批判的吸収を防止すること。
・智育偏重の教育を改め訓育を重視し且つ実務的、実際的教育を主とすること。 
 
【PP(パワーポイント)より】
国家安全保障戦略(2013年12月17日閣議決定
国家安全保障を支える国内基盤の強化と内外における理解促進
①防衛生産・技術基盤の維持・強化
②情報発信の強化
③社会的基盤の強化
④知的基盤の強化
 

Ⅰ すでに「憲法」(constitution)を変えてしまった(!?)安倍政権
・人事権をフル稼働させての権力内ブレーキの破壊
 日本銀行総裁NHK経営委員・会長、内閣法制局長官内閣人事局設置… 
 最高裁裁判官人事(山口厚氏の任命)も?
集団的自衛権の政府解釈変更による行使容認
・内閣もスキップする国家安全保障会議による意思決定
・「憲法の常道」の破壊⇒2015年臨時国会の非招集
小選挙区制効果としての、「自民1強」と自民党内の「安倍1強」
 
【PP(パワーポイント)より】
憲法(constitution)=「この国のかたち」
・国憲に関する法=(constitutional law)=憲法
・内閣が人事権を有していても、恣意的な行使はできない
日本銀行内閣法制局の専門性に基づく自立性
・大学、報道機関、農協などの自治の尊重
自民党内の派閥による「疑似政権交代
・少なくとも、集団的自衛権憲法上行使できない
 

Ⅱ では、なんのための改憲日本国憲法の改定)?
(1)そもそも安倍政権を担うのは、どのような勢力
①米国の権益の擁護(外務省・自衛隊統幕):「強固な日米同盟」・「積極的平和主義」
 自衛隊と米軍の運用一体化、自衛隊の権限拡大・装備充実(2017年3月護衛艦「かが」就役)、防衛省内部における制服組の台頭、大学での軍事研究誘導、辺野古基地建設の強行
②グローバル企業の利益の擁護(経産省・防衛装備庁):アベノミクス+成長戦略としての「積極的平和主義」
 ……金融緩和、TPP、国家戦略特区、「一億総活躍」、「官製春闘」、武器・原発の輸出促進
③右翼的勢力の擁護(日本会議):国粋・民族主義
 ……閣僚の靖国参拝、「日本第一」の教科書検定、道徳の教科化
 
第2次以降の安倍政権の特徴=後期新自由主義政権(渡辺治)・「関わっていく政治」(柿﨑明二)
①のための改憲集団的自衛権規定、愛国心条項(日の丸・君が代規定含む)、緊急事態条項
②のための改憲=健全財政条項、社会権条項の削除、首相公選制、道州制参議院見直し+フォローとしての愛国心条項、「公益」による人権制限、家族条項  
③のための改憲=「押しつけ憲法」の破棄、天皇の元首化、愛国心条項、個人尊重的要素の削減、「公益」による人権制限、家族条項、政教分離緩和
      ↓
①→解釈改憲(自衛のために必要な限定的な集団的自衛権行使は合憲)により必要なくなった
②→多くは法律レベルで対応可能(生活保護費や年金制度の切下げ)
③→実は①②に比べ優先順位は低い!?:=「保守」を語らなくなった安倍首相、一定のヘイトスピーチ規制、森友問題での「しっぽ切り」
 
(2)では、なぜ改憲なのか?
①「自分らしさ改憲」=保守層の結束、安倍首相の個人的思い入れ
②「どさくさ改憲」=緊急事態条項(まずは議員任期特例規定)、参議院の地方代表化、健全財政条項
③「思いやり(のふり)改憲」=高校無償化、同性婚
④「あわよくば改憲」=「限定」を取り払った完全な軍隊、基本的人権の制限規定
 
【PP(パワーポイント)より】
『あたらしい憲法草案のはなし』 自民党憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合(著)
あたらしい憲法草案のはなし
自民党憲法改正草案を爆発的にひろめる有志連合
太郎次郎社エディタス
2016-07-02



Ⅲ 15年安保体制下の自衛隊防衛省の力学の変動
1 安保関連法の本格始動
南スーダンPKO第11次要員(陸自第9師団第5普通科連隊等)の「駆け付け警護」「宿営地共同防護」「任務遂行型武器使用」(16年11月18日防衛大臣命令→17年5月末には撤退予定)
・日米共同統合演習(16年11月7日・うるま市沿岸)「重要影響事態」を想定した訓練
・空自と英空軍の共同訓練(16年11月3日・三沢基地
・日韓軍事情報包括協定(GSOMIA)締結(16年11月23日)

2 一体化する自衛隊・米軍(実際には米軍優位の「対等」化)
 「同盟調整メカニズム」の常設(15年ガイドライン)=日米の共同軍令機構(横田=市ヶ谷=ハワイ)
 「共同計画策定メカニズム」による計画策定 

3 台頭する制服組
(1)統合幕僚長の政治的役割の向上
・第2次安倍政権発足(2012年12月)以降~2016年4月23日段階までで首相と統幕長との面会は76回(2006年の統幕長ポスト発足から2012年12月の野田政権までは24回)
国家安全保障会議4大臣会合にも「首相の求めに応じて」出席可能
国家安全保障局にも影響力(6つの部局に幹部自衛官2名を配置)
 国家安全保障局顧問会議:座長・山内昌之(東大名誉教授)、特別顧問・三村昭夫(日本商工会議所会頭)、顧問・折木良一(富士通顧問・元統合幕僚長)、片岡晴彦(IHI顧問・元航空幕僚長)、香田洋二(ジャパンマリンユナイデット顧問・元自衛艦隊司令官)、細谷雄一(慶大教授・安保法制懇委員)ほか7名(2016年6月現在)
(2)防衛省設置法改定(2015年6月)
・内局優位から内局と統幕が「対等」に防衛大臣を補佐することを明文上明確に(12条)
・運用企画局(「自衛隊の行動の基本」についての大臣の補佐が所掌事務)の廃止→部隊運用は統幕に一元化
(3)日本型「文民統制」システムにおける「文官統制」の意義
①国会による統制→・批判的エキスパートの少なさ=エキスパートはミイラとり(防衛族)に…
・「特定秘密の壁」→国家安全保障会議4大臣会合は特定秘密以外でも「率直な意見交換」のため「非開示が原則」(衆院情報監視審査会2015・9・25の政府参考人答弁)
②内閣による統制→南スーダンPKO派遣部隊の「日報隠し」問題での稲田防衛大臣の統制力の無さ
③文官による統制→防衛参事官制度を中心とする文官統制がかろうじて、「軍」の統制を行ってきた⇒現在はこれが破壊された状態(「軍からの自由」保障の真空常態!)
(4)政治エリート化する幹部自衛官
陸自による自民党憲法草案(2004年)たたき台への関与
・安保関連法成立前に法案成立を先取りした自衛隊と米軍との覚書き
・元幹部自衛官の政界進出(中谷元衆議院議員[元2等陸尉]、佐藤正久参議院議員[元1等陸佐])
(5)増殖する軍産学複合体~司令塔としての防衛装備庁
「成長戦略」(グローバル競争国家路線)と「積極的平和主義」(対米従属型軍事大国路線)の一体的追及
 国家安全保障戦略(2013年12月)=「積極的平和主義の観点から、防衛装備品の活用等による平和貢献
・国際協力に一層積極的に関与するとともに、防衛装備品等の共同開発・生産等に参画する」
 デュアル・ユース技術などの一層の振興のため、「技術開発関連情報等、科学技術に関する動向を平素から把握し、産学官の力を結集させて、安全保障分野においても有効に活用するように努め」る。
・防衛装備庁の発足(2015年10月):事務官・技官1400名・自衛官200名
 「防衛装備庁は、装備品等について、その開発及び生産のための基盤の強化を図りつつ、研究開発、調達、補給及び管理の適正かつ効率的な遂行並びに国際協力の推進を図ることを任務とする」(防衛省設置法36条)⇒海外の武器輸入業者や外国政府などへの武器の購入資金の低金利融資や武器製造の海外合弁会社の設立などにも関与
・軍事下請け化される大学:「安全保障技術研究促進制度」(防衛装備庁所管):
 15年総額3億⇒16年総額6億円:自民党政調会国防部会は100億規模への拡大を提言
・歯止めなき軍拡予算
・2016年度予算5兆5千億円、2017年度概算要求5兆1千億円規模
・長期契約特例法(2015年4月成立):国庫債務負担行為の上限を5年とする財政法15条の縛りを解除し、最長10年の複数年契約を可能とする(護衛艦などの建造)⇒予算単年度主義(憲法86条)との関係で問題
・民間企業にとっての安保関連法:「存立危機事態」や「重要影響事態」において後方支援のために「民間が有する能力を適切に活用する」(15年ガイドライン)⇒⇒「武力攻撃事態」での空港や港湾などの民間施設の自衛隊・米軍の優先利用を可能にする特定公共施設利用法の「存立危機事態」への拡大 //フェリー船員の予備自衛官化の推進
 
 
Ⅳ 「政治的公正中立」論に抗う日本国憲法12条の論理
自治体における「憲法集会」の「後援」の取りやめ、安保法学習会などへの公民館の利用拒否(さいたま市の九条俳句不掲載事件、神戸市の後援取止め、姫路市の集会中止要請事件など)。
     しかし↓
 「憲法尊重擁護義務」(99条)から憲法立憲主義の普及・擁護を目的とする催しについて自治体がサポートすることは当然では?⇒⇒(憲法擁護以外の)特定の立場の政治的・社会的意見を内容とする催しであっても、住民への「多様な観点」の提供は自治体の責務だといえるのではないか?
・教育公務員特例法改定の動き:「政治的行為」をした公立高校の教職員に対して「3年以下の懲役又は百万円以下の罰金」程度の罰則を設ける
・「高等学校における政治的教養の教育と高等学校の生徒による政治的活動について(通知)」(2015年10月)、生徒指導者向けの「Q&A」(16年1月):高校生の学校外での政治活動を届け出制にすることも可能
・小中学校で政治活動をした教職員に罰則を科す「義務教育諸学校における教育の政治的中立の確保に関する臨時措置法」を私立高校教職員への適用も検討(2016年5月10日の産経新聞
・市立三重短期大学教員による安保関連法反対の活動に対する、市議会での追及
 
「公共の福祉のために基本的人権を利用する責任」:
 拙稿「『憲法擁護』・『公正中立』・『人権を利用する責任』」月刊憲法運動452号(2016年)4頁以下
より抜粋
「…もともと「立憲主義」(constitutionalism)とは当然に「ある」状態を指すのではない。「立憲主義」とは、複数の「ありうる」政治制度・憲法体制(例えば、専制君主制や独裁制)から「あるべきもの」
として選択された1つのスタンス(-ism)である。国民が主権者=憲法制定権者として、専制主義や全体主義ではなく、「立憲主義」の価値観と憲法体制を選び取ったという基本線においては、人は「中立」ではありえない。これは、日本国憲法という立憲主義憲法体制に関しても、当然の事理である。「この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努力によつて、これを保持しなければならない」ものであり、かつ、これらの権利を国民は「常に公共の福祉のために」「利用する責務を負ふ」のだと説く憲法12条の文言は、この事理を表現したものといえるのではなかろうか。
 「不断の努力」とは同時に「普段の努力」でもある。日々の生活の中で、国や自治体や大企業の振舞いが憲法の観点からみておかしいと市民が感じたときに、抗議行動、抗議集会、SNSでの発信、反対請願、訴訟の提起など、いろんな手を尽くして抗議の意思表示をし、これを是正させる――その意味での国民の「普段からの努力」によって日本国憲法の精神は維持されるのであり、憲法97条との強い連関を持つ憲法12条後段の「公共の福祉」の意味も、そのように読まれるべきである。この12条に基づく基本的人権の行使は「人権の立憲主義回復的な行使」と呼ぶべきもので、いわゆる「国民の抵抗権」が問題となるような立憲主義秩序が根底から破壊されるような局面とは一応区別された、まさに「普段の」抵抗をバック・アップするものと理解できるのである。
 公権力が憲法の条規やその精神に反した行動をとるときには――「選挙」国民投票」という「非日常」での意思表出の機会はもちろんのこと、それにとどまらず――表現の自由、請願権、財産権、「知る権利」、平和的生存権、裁判を受ける権利など、多種多様な基本的人権の行使によって、これを是正する。さらに、報道機関、教員集団、大学人、弁護士会などの専門家集団、政党、労働組合NPOなどがそれぞれの「立場」「持ち場」において、基本的人権をこの意味での「公共の福祉のために利用する」ことも憲法12条に由来する「責任」といえるかもしれない。
 いずれにしても、国民ないし団体が憲法12条の「責任」を果たす場面では、その時々の公権力との関係において「中立」ではいられないはずである。とりわけ憲法尊重擁護義務を負っているはずの公権力がそれを無視する行為に及んだ局面において、それと対峙することをせず、「公正中立」を理由に沈黙を続けることは、そのような憲法違反の公権力への「加担」にほかならないし、憲法12条が訓示する「責任」の放棄とみなされるよう。
 こうした観点から、自民党改憲案が試みる現行憲法の改変の対象に12条後段が入っている事実も看過してはならない。自民改憲案の12条後段では、国民に「自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公共の秩序に反してはならない」ことを求める内容に改められている。現行憲法にある「公共の福祉」を「公益及び公共の秩序」に替えたことの意図や「権利には義務が伴う」式の人権に対す無理解はかねてより批判されてきた点であるが、12条後段の削除は、「人権の立憲主義回復的な行使」という発想を憲法から消し去ることに他ならない。」
 

Ⅴ まとめ~排外主義・差別主義に抗い「個人として尊重される」(憲法13条)世界へ

・世界規模での排外主義・差別主義の台頭―「ポピュリズム権力者の暴言・放言」(橋下からトランプまで)が一般民衆の差別心を促進(「籠池小学校」からイスラム差別まで)
・沖縄への冷たい視点:国による「合法的暴力」(不服審査請求制度の趣旨外使用、反対派市民の不当拘束、知事への個人賠償請求の示唆など)が民間の「沖縄ヘイト」を援助・助長
★自らが「個人として尊重される」ことの重要性を知る者は、他者もまた「個人として尊重」されてしかるべきと考えることができる=他者に対する「共感力」「想像力」→共生のための「創造力」
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/講演会レポート)
2013年2月13日
予告3/30「二宮厚美氏講演会と第9回総会」(守ろう9条 紀の川 市民の会)
 ⇒二宮厚美先生 ※レポートではなく予告記事です。
2014年3月30日
森英樹氏講演会を開催しました(守ろう9条 紀の川 市民の会・第10回総会)
 ⇒森英樹先生
2014年11月8日
『脱走兵』が日本の現実とならないように~11/8守ろう9条紀の川市民の会「第11回 憲法フェスタ」
 ⇒清水雅彦先生
2015年11月8日
「第12回 憲法フェスタ」(11/3 守ろう9条 紀の川 市民の会)レポートと11月中の和歌山での取組予定のお知らせ ⇒高作正博先生
2016年4月2日
石埼学龍谷大学法科大学院教授の講演をレジュメから振り返る~4/2「守ろう9条 紀の川 市民の会」第12回総会から ⇒石埼学先生
 

今この時点で「森友問題」を考えるために~木村真さんと神保哲生さんの発言に耳を傾けたい

 今晩(2017年4月1日)配信した「メルマガ金原No.2769」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
今この時点で「森友問題」を考えるために~木村真さんと神保哲生さんの発言に耳を傾けたい

 今日(4月日)午後2時から、私も運営委員の1人である「守ろう9条紀の川市民の会」(原通範代表)が13回目の総会を開き、立命館大学法学部教授の植松健一さんに、「安倍首相はなぜ憲法(constitution)を変えたいのか」と題した記念講演をしていただきました。
 当初は、そのレポートを書こうかと思ったのですが、「時間が足りない」と判断し、明日以降に回すことにしました。
 
 ということで、あまり時間もない中、今日は何を取り上げようかと考えた結果、「森友問題」とは何なのか、あらためてこの時点で考えてみるために大いに役立つと思われる動画を2本(というか3本)ご紹介することにしました。
 
 最初の2本は、昨日(3月31日)行われた「森友問題の今後を占う緊急集会!~木村真豊中市議を迎えて~」を収録したUPLANの動画2本(記者会見編と集会編です)。
 様々な方が発言されていますし、それぞれごもっともとは思うものの、私が注目したのはメインゲストである木村真豊中市議会議員のお話です。既に皆さん十分に知っていることばかりかもしれませんが、色々な事実、情報が乱舞し、このままでは訳の分からぬ迷路に踏み込んでしまって、「森友問題って何だったっけ?」と呆然と立ち竦むことになりかねません。ですから、原点を忘れないために、木村真さんのお話にあらためて耳を傾ける意義があると思うのです。
 
20170331 UPLAN【記者会見】~木村真豊中市議を迎えて~森友問題の今後を占う緊急集会!(46分)
 
20170331 UPLAN【緊急集会】~木村真豊中市議を迎えて~森友問題の今後を占う緊急集会!(2時間19分)

冒頭~ 木村真さん
32分~ 森ゆうこ参議院議員自由党
46分~ 福島みずほ参議院議員社民党
58分~ 初鹿明博衆議院議員民進党
1時間12分~ 佐高信
(以下略)
 
 もう1つの動画は、1週間前にアップされたビデオニュース・ドットコムのニュース・コメンタリー(神保哲生さんと宮台真司さんによる対話編)です。
 しみじみと神保さんの語るところに耳を澄ませば、「そうだよなあ」と頷かざるを得ないと思います。私も、「「日本改造計画」と呼んでも過言ではないほど、日本の将来に大きく影響を与えかねない」「天下の悪法と言っても過言ではない様々な法律の審議」にもっと注目しなければと思います。
 
ビデオニュース・ドットコム ニュース・コメンタリー (2017年3月25日)
異常な民間人の証人喚問と「森友国会」の裏で着々と進む悪法制定の動き(54分)

「これまで森友学園籠池泰典理事長の参考人招致を頑なに拒んでいた自民党は、籠池氏が「昭恵夫人を通じて安倍首相から100万円の寄付を受け取った」と発言したとたんに一転して籠池氏を証人喚問することを決定した。その理由は総理を侮辱したからだった。
 そして、国会が森友学園問題の追求に事件とエネルギーを割き、世間の目がそこに集中する間にも、国会の委員会では日本の将来に大きく影響を及ぼしかねない重大な、そして大変問題の多い数々の悪法の審議が着々と進んでいることも、われわれは忘れてはならない。
 証人喚問で籠池理事長が語った内容やそこで明らかにしたファックスなどの証拠の数々に対する評価は、いろいろあるだろう。疑惑は疑惑として、解明するべきだ。
 しかし、その前にまず国会が民間人を「総理を侮辱した」との理由で証人喚問まですることの是非は、厳しく問われなければならない。はっきりいってこれは異常だ。
 民間人を証人喚問という形で国会の場に強制的に引きずり出し、偽証罪の恐れがある状況下で国会議員からの厳しい追及に晒す行為は、著しい人権侵害につながる恐れがあり、それ相応の正当性が問われる。逮捕されたり起訴されたわけでもない私人に対しそのような扱いをする場合は、その人物の人権を一定程度制約してでも証言を得ることに国家的な利益があると判断される場合に限られるべきだ。
 しかし、3月23日の証人喚問の内容は、一体何だろうか。特に与党自民、公明や名指しされた維新の質問者は、繰り返し籠池氏を「偽証罪に問われるぞ」と脅した上に、そもそも喚問の目的だったはずの土地の払い下げ疑惑に関する質問よりもむしろ、籠池氏の信用を落とすことを目的とした無関係な問題への追求に時間を割いていた。その目的が氏の「総理から100万円の寄付を受けた」とする主張の信用性を弱めるところにあることは誰の目にも明らかだった。
 今回の瑞穂の國記念小学院の土地払い下げには不透明な点が多いのは確かだ。籠池氏側にも疑惑をもたれても仕方がないような不適切な行為が数多くあったことも事実だろう。しかし、政治目的のために私人を国会で喚問し、あのような行為を繰り返すことは、どう見ても国政調査権の濫用であり人権侵害だ。籠池氏個人に対する好き嫌いや森友学園の教育方針に疑問を持つことと、この問題ははっきりと分けて考えなければならない。
 そもそもこれまで民間人の証人喚問というのは、ロッキード事件小佐野賢治氏やリクルート事件江副浩正氏など、国家の根幹を揺るがすような事件に限られてきた。当初、籠池氏の参考人招致に慎重だった自民党が「私人の国会招致には慎重でなければならない」と主張したのは、正に正鵠を得た主張だった。それが一転して、参考人よりも遥かに重い証人喚問になってしまった。
 将来、国会に証人喚問された民間人のリストに、昭和電工疑獄やロッキード事件リクルート事件などと並んで「森友学園籠池泰典理事長」の名を見つけた時、「この人はなぜ国会に呼ばれたのか」との問いにわれわれは胸を張って答えることができるかどうかを、考えるべきだ。
 そして、日本中が森友劇場に現を抜かす間にも、国会では共謀罪はもとより、種子法の廃止法案、水道民営化法案、家庭教育支援法案、親子断絶防止法案、医療ビッグデータ法案、放射線防護基準緩和法案など、天下の悪法と言っても過言ではない様々な法律の審議が着々と進んでいる。これらの法案は「日本改造計画」と呼んでも過言ではないほど、日本の将来に大きく影響を与えかねないものばかりで、森友問題以上にメディアや市民による監視を必要としているものばかりだ。種子法の廃止案は既に今週、衆院の委員会を通過してしまっている。
 私人の証人喚問が孕む問題点と、森友学園問題の裏で着々と審議が進む「日本改造計画」法案の数々について、ジャーナリストの神保哲生社会学者の宮台真司が議論した。」