今晩(2017年4月6日)配信した「メルマガ金原No.2774」を転載します。
「『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方」(4/5)に期待する
昨日(4月5日)夕刻、市民連合(安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合)と立憲野党4党(民進党、日本共産党、自由党、社民党)の意見交換会が国会内で開かれ、野党4党は、「『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方」を確認しました。
他のニュースも似たり寄ったりで、あまり詳しく報じたところはなかったようです。上記産経ニュースが比較的まとまっている方でしょうか(小池書記局長の発言について「意気込んでみせた」という部分はデスクによる修正か、それとも現場記者のデスクへの「忖度」か、が少し気になりますが)。
もう一つ、東京新聞の記事も引用しておきます。
(引用開始)
2017年4月5日
『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方
四年間続いた安倍政権の下、我が国の立憲主義、民主主義は大きく脅かされている。アベノミクスは日本経済の持続的成長をもたらすことなく、格差を助長してきた。
民進党、日本共産党、自由党、社会民主党の野党四党は、昨年の参議院選挙にあたり、①安保法制を廃止し、集団的自衛権行使容認の閣議決定を撤回、立憲主義を回復する、②アベノミクスによる国民生活破壊、格差と貧困を是正する、③TPPや沖縄問題など、国民の声に耳を傾けない強権政治を許さない、④安倍政権の下での憲法改悪に反対する、との内容を共有・確認し、また、昨年6月7日に市民連合から提出された『野党4党の政策に対する市民連合の要望書』を受け止め、さらには昨年の通常国会で、介護、保育、雇用、被災者支援、男女平等、LGBT(性的マイノリティー)差別解消をはじめとした15本の議員立法を共通の政策として共同提案し、全力で戦った。
野党四党は、これらの到達点、さらに早期の衆院解散・総選挙は十分にあり得るという前提のうえに立って、できる限りの協力を進めることで合意している。今般、『市民連合が実現を目指す政策』についても、その現状認識及び基本理念を十分共有できると確認した。
今こそ、安保法制を廃止し、立憲主義を回復するとともに、個人の尊厳と基本的人権の保障を進めることが求められている。自由民主党の憲法改正草案のように立憲主義と平和主義を脅かす憲法改正は認められない。アベノミクスからの転換を進め、すべての人間に尊厳ある生活を確保するための社会経済政策を実現すべきである。
今後も、安倍政権の打倒を目指して政策面や国会活動における四党間の協力を進めていく。
(改頁)
四年間続いた安倍政権の下、我が国の立憲主義、民主主義は危機に直面している。アベノミクスは日本経済の持続的成長をもたらすことなく、格差拡大を助長し、人口減少を放置してきた。
民進、共産、自由、社民の四党は、早期の衆院解散総選挙は十分にあり得るという前提に立って、できる限りの協力を進めることで合意している。そのうえで、市民連合が実現を目指す政策について四党政策実務者による協議を進めた結果、以下のような考え方を共有することを私たちは確認した。
1. 国民生活の安定と「分厚い中間層」の復活に向け、社会経済政策を転換する
(1) 子育て・教育・若者
〇就学前教育から大学まで、すべての教育について原則無償化をめざす。
〇保育施設の拡充、保育士の賃金引き上げ等を通じて待機児童をなくす。
〇安倍政権が放置してきた子育て・教育への投資を劇的に拡大することにより、教育の機会平等と質の向上、持続的成長の実現、雇用の創出、女性の社会進出、人口減少対策等を後押しする。
(2) 雇用・働き方
〇残業代ゼロ法案の成立を阻止するとともに、インターバル規制を含む長時間労働規制法を早期に成立させる。
〇同一価値労働同一賃金の実現など非正規労働者に対する待遇の差別を禁止する。
〇最低賃金の大幅引き上げなど、賃金・労働条件を改善する。
(3) 社会保障等
〇国民皆保険制度を維持し、年金の最低保障機能を強化する。
〇介護労働者の賃金など待遇を改善するなど、介護の充実を進める。
〇働き方や性別等に中立的かつ公正な社会保障制度、税制を確立する。
(4) 女性・ジェンダー
〇選択的夫婦別姓を実現する。
〇政治分野で候補者割り当てクオータを導入する。
〇包括的な性暴力の禁止に向け、性暴力被害者支援法を制定する。
〇LGBTに対する差別解消施策を盛り込んだ法律を制定する。
(5) 地域活性化
〇霞ヶ関目線で効果の上がらない地方創生を掲げ、カジノによる地域振興に迷走する安倍政権と対峙し、地方の自主性を尊重した公正な地域活性化を進める。
〇農家に対する所得補償制度を法制化する。
2. 原発ゼロを目指し、エネルギー政策を抜本的に転換する
(1) 原発ゼロを目指す
3.11を原点として新しい日本のエネルギー政策を構想する。
(2) 省エネルギーの徹底
断熱の徹底、廃熱の有効利用等をすすめ、世界一の省エネ社会を実現する。
(3) 再生可能エネルギーの飛躍的増強
太陽光発電や風力発電への支援、ソーラーシェアリングの大幅拡大等を進める。
(4) 地球温暖化対策の推進
国際社会に通用する中長期数値目標を設定し、地球環境・生態系の保全を進めるとともに新産業と雇用の創出につなげる。
3. 立憲主義を守り抜き、平和を創造する
(1) 立憲主義と平和主義を脅かす憲法改悪の阻止
自民党の憲法改正草案は、立憲主義に反し、基本的人権の尊重や国民主権、そして平和主義という基本的価値を脅かすものであり、これを基礎とした改定、特に平和主義を破壊する憲法9条の改悪を阻止する。
(2) 2015年安保法制の白紙化
安倍政権下で強行された安全保障法制は立憲主義と平和主義を揺るがすものであり、その白紙撤回を求める。
(3) 戦略的なアジア太平洋外交の推進
同盟国である米国を含め、近隣諸国、関係国との対話を促進し、地域における信頼醸成に努める。
(4) 沖縄の基地負担の軽減
沖縄の民意を踏みにじって基地建設を強引に進める政府の姿勢は、容認できない。沖縄県民の思いを尊重しながら基地負担の軽減を進める。
(5) 情報公開の推進と報道の自由の回復
安倍政権下で後退した情報公開と報道の自由は、民主政治の基盤であり、危機感を持ってその推進、回復に取り組む。
以上
(引用終わり)
そこで、この「四党の考え方」の前提となった「市民連合が実現を目指す政策」も当然読んでみたいということになるのですが、上記民進党のニュースの中にPDFファイル化されて掲載されていました(市民連合のホームページには見当たらず)。
けれども、このPDFファイルには、テキストデータが埋め込まれておらず、コピペすることができないので、全文はリンク先のPDFファイルをご覧になっていただくとして、市民連合が「私たちは以下の政策を提案します。」として掲げた「3 重要政策」の項目のみ転記します。
(抜粋引用開始)
市民連合が実現を目指す政策
2016.12.09
1 政治の現状認識 (略)
2 基本理念 (略)
3 重要政策
私たちは以下の政策を提案します。立憲野党の合意を得て、野党、市民の力で推進していくことを望みます。
① 安保法制の廃止と対話による平和の創出
(略)
・2015年安保法制の廃止
・アジアにおける相互信頼関係を再構築するためのイニシアティブ
・日米中韓による多角的対話の推進
・南スーダンPKO駆けつけ警護からの即時撤収
・沖縄の民意を無視した辺野古新基地建設の停止と、基地負担の軽減
② 若者や女性に焦点を当てた社会経済政策の創造
(略)
A 女性・ジェンダー政策
・女性の自己決定権の保障 選択的夫婦別姓の実現
・雇用における男女差別の禁止と性暴力被害者支援法の制定
・ライフスタイルの選択を制約しない税制、社会保障制度の実現
・待機児童をなくすため、保育施設の充実、保育士の賃金引き上げ、保育の質を改善する
・国会、地方議会において候補者割当クオータを導入し、議員の男女同数を目指す
・LGBT差別解消法の制定
B 子ども・若者政策
・子どもの貧困を廃絶するための中・高等教育を含む教育費の無償化
・学ぶ権利の保障のための中・高等教育を含む教育費の無償化
・給付型奨学金の創設と既存奨学金債務の減免
・仕事と子育てに取り組む若い家族のために、社会的セーフティネットとして低家賃の公営住宅を増設する。
③ 公正で持続可能な社会と経済をつくるための政策転換
(略)
A 雇用政策の転換
・政府提出の労働基準法改正案への反対及び同法の遵守と長時間労働を規制する法案に罰則を設ける等長時間労働の規制
・最低賃金の時給1500円以上への大幅引き上げなど働きつづけられる賃金・労働条件の引き上げ
・合理的理由のない格差を認めない同一労働同一賃金の実現など非正規労働者に対する差別の禁止・年金、健康保険に関する雇用形態による不利益の解消
B 社会保障政策の転換・2025年(高齢化のピーク)以降も持続する年金制度の再構築と最低保障年金の創設
・介護労働者の賃金改善
・国民皆保険制度の維持
・累進所得税、法人課税、資産課税のバランスの回復、タックスヘイブン対策による公正な税制の実現
⑤ 多様な地域社会の持続
(略)
・公共交通機関、教育・医療等の公共サービスの維持により生活基盤をどこでも平等に確保する
・農家に対する公正な所得補償制度
・地元に残りたい若者のための雇用創出と賃金の引上げ
(引用終わり)
以上を読み比べてみれば、かなりの程度に市民連合からの「提案」を取り入れて、4党が「考え方を共有すること」が確認されたことが分かります。
なお、いずれ記者会見の動画がアップされるのではないかと思いますが、各政党の公式サイトが、自党出席者の発言をどのように伝えたかを見ておきます(といっても、自由党と社民党は見当たりませんでしたが)。
「(意見交換会で)野田幹事長は開会に当たって、3月12日の民進党結党後初めての定期党大会で「一致できる政策を見出す努力を行い、市民との連携を軸として野党の連携を進めていき、安倍1強支配に対抗していく」ことを活動方針として確認したことにも触れ、「今日はその前進につながる意見交換の場になることを強く期待したい」とあいさつ。」
「(記者会見で)野田幹事長は、「市民連合の皆さんが抱いている現状の認識と基本的な理念、政策的な方向性については4党でしっかり共有できたと思っている。このことを基本に置いて、政治決戦に向けた準備をより加速していきたい」と表明。森友学園疑惑の真相究明と共謀罪の廃案についても市民連合との共闘を確認できた意義にも触れ、「これからも連携を取りながら安倍政権打倒に向けて全力を尽くしていきたい」と力を込めた。
共謀罪の廃案については特に、「内心の自由を脅かす脅威を共通して持っていること。こういう国民の多様な生き方、価値観、活動に対して制約を加えるような動きについてはそれぞれ立ち位置はあるかもしれないが強い危機感を共有しているということだ」と指摘。「過去にも協力して反対してきており、本質的な中身は変わっていない。むしろ性質(たち)が悪くなったのは正体隠しながらテロ等準備あるいはオリンピック対策と言っているということ。もっと筋も性質も悪くなっているのだから、より厳しく激しく闘っていく」と述べた。」
日本共産党 小池晃書記局長
「日本共産党の小池晃書記局長は意見交換会後の共同記者会見で、4野党の考え方について「これはまさに現時点での到達点。これを土台にして、より豊かで魅力ある共通政策をつくっていくことが課題だ」と強調。「『共謀罪』の廃案や『森友』問題の追及でも4野党が力を合わせてたたかっていく中で、より豊かな政策をつくっていくことが必要だ」と述べました。同時に、今後の政策づくりについて「議論の中身を国民のみなさんにみていただけるような努力もしながら、ぜひ来たるべき総選挙で、野党と市民の共闘で自公と補完勢力を少数に追い込んでいく。その旗印を立てていきたい。今日はその点で、大きな一歩が示された」と語りました。」
自由党 玉城デニー幹事長
※公式サイトにはアップされていない。
東京新聞も伝えるとおり、「共通公約」を掲げるにはハードルが高いでしょうが、「事実上」であっても、極力、重要政策について共通の基盤を持つことはとても重要だと思います。
衆議院解散の時期は混沌としていますが、この「四党の考え方」を基礎として、選挙区調整などの協議も具体的に進展することを心より願います。
(追記)
このメルマガを配信してブログをアップした直後、中野晃一さんのFacebookで、市民連合の公式サイトに「4月5日 野党4党との意見交換会」がアップされたことを知りました。
そこには、
「市民連合が実現を目指す政策」(2016.12.09)
「『市民連合が実現を目指す政策』に関する四党の考え方」(2017年4月5日)
「市民連合からの野党4党への要請」(2017年4月5日)
という3点の文書が掲載されていました(もう少し待てば良かった!)。
以下には、初めて読んだ「市民連合からの野党4党への要請」を全文引用します。
全国各地で野党共闘を模索している市民運動にとって、これらの文書をどのように活用すべきか考えることが緊急の課題となるでしょう。
(引用開始)
市民連合からの野党4党への要請
4野党が通常国会において安倍政権による国家の私物化に対して果敢に戦っていることに、市民連合は深い敬意を表します。
昨年12月の4野党と市民連合の意見交換会において、市民連合は共通政策の骨子を提案し、その場で幹事長、書記局長から基本的に共有できるという反応をいただいたところです。その後、全国各地で野党と市民の協力を求める運動が広がり、市民連合のメンバーもそのような運動の集会に赴き、野党結集、野党と市民の共同の機運を高めるために尽力してきました。
このたび、4野党から政策の基盤となる共通認識の骨子について見解を示していただきました。通常国会の多忙な日程の中、認識の共有のために努力してくださった4野党の方々に、市民連合はお礼申し上げたいと思います。また、市民連合の目指す政策について、その基本的な方向性を共有していただいたことに、感謝申し上げます。政策実現までの道筋やスピードについては各党間、および政党と市民連合との間で差異はありますが、現段階で作る共通認識は、野党と市民の共闘を進める際の道しるべとなるべきものであり、総選挙の際に政権交代を迫るための政策の手前の、基本的な方向性を示すもので十分だと考えます。
野党結集を図るうえで、具体的な候補者の選定にはまだ長い話し合いが必要だと思われます。解散総選挙の時期が不透明になる中、市民連合はこれからしばらくの間、全国の運動において共有すべき政策を具体化する作業を進めたいと考えています。今回ご提示いただいた共通認識の骨子は、全国の野党と市民の協力を目指す市民に大きな勇気を与え、各地での運動を加速すると確信しています。
市民連合は、目前の重大事である森友学園疑惑の究明、共謀罪に対する反対運動の展開についても野党と市民の共闘を広げ、人間本位の民主政治、立憲政治を取り戻すために、4野党とともに努力したいと決意を新たにしています。今後とも引き続き野党と市民の協力を強化していきたいと願っています。
2017年4月5日
安保法制の廃止と立憲主義の回復を求める市民連合
(引用終わり)