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武田恵世氏特別講演「第二回 風力発電・低周波音被害についての勉強会」(11/19@紀美野町総合福祉センター)のご案内

 2017年11月9日配信(予定)のメルマガ金原.No.2981を転載します。
 
武田恵世氏特別講演「第二回 風力発電低周波音被害についての勉強会」(11/19@紀美野町総合福祉センター)のご案内
 
 今年(2017年)9月28日付の朝日新聞朝刊の和歌山版(紀北)を読んだ方で、そこに掲載された写真付きの2つの記事に共通して登場する方がいることに気がついた人はそんなに多くはなかったかもしれません。
 正解は「松浦攸吉(まつうら・ゆうきち)さん」です。
 最初の「野党統一候補を要請 市民連合わかやま」では、同月27日に県庁内(県政記者室)で記者会見を行った市民連合わかやまの共同代表3名の写真が掲載されていますが、その右端に写っているのが松浦攸吉さんです。
 そして、2番目の記事「風力発電で住民ら勉強会 紀美野『被害のおそれ』」では、写真のキャプションに「『デメリットも知った上で必要か判断すべきだ』と話す松浦攸吉さん=紀美野町」と書かれています。
 松浦さんは、様々な市民運動に関わっておられ、そのうち、私もご一緒しているものとしては、上記記事にもある「市民連合わかやま」共同代表の他に、「子どもたちの未来と被ばくを考える会」事務局長などがあります。また、多分私は会員ではないと思いますが、何となくパートタイム広報担当を委託されている「平和と憲法を守りたい市民の声」代表というのもあります。そして、紀美野町での風力発電学習会で講師を務められたというのは、「風力発電の被害を考える会・わかやま」世話人代表だからでしょう。
 上記記事の一部を引用します。
 
朝日新聞(和歌山版) 2017年9月28日
風力発電で住民ら勉強会 紀美野「被害のおそれ」
(抜粋引用開始)
 海南市紀の川市など4市町に国内有数規模の風力発電所建設が計画されていることを受け、建設予定地の一つである紀美野町内で26日夜、住民らが勉強会を開いた。
 計画では海南市紀の川市有田川町紀美野町の山間部に、最大高さ約150メートルの風力発電機を計72基設置。最大出力は約32万4千キロワットを見込む。使用予定の風車は出力・大きさとも国内最大となる。
 勉強会講師の「風力発電の被害を考える会・わかやま」世話人代表の松浦攸吉さんは、県内の風力発電所周辺住民の一部が、耳鳴りや頭痛など、低周波音が原因とみられる体調不良を訴えた事例を説明。これらの住民は風車から650メートル~1キロ程度離れた場所に居住していたという。
 一方、紀美野町など4市町で検討されている計画では、住宅からの最短距離は500メートル、1キロ以内に約1800戸が存在するとされる。
(略)
(引用終わり)
 
 この紀美野町での「風力発電低周波音被害についての勉強会」の第二回が、来る11月19日(日)に開かれるというご案内をいただきましたので、以下にチラシ記載情報を転記してご紹介します。
 
(引用開始)
第二回 風力発電低周波音被害についての勉強会
 
特別講演 講師 歯科医師日本野鳥の会会員 武田恵世(たけだ・けいせ)氏
武田恵世氏プロフィール
1957年三重県伊賀市生まれ。大阪歯科大学卒業、歯学博士。大阪大学付属病院、天理病院をへて、三重県伊賀市上野桑町で歯科医院を開業。日本生態学会、日本鳥学会会員、伊賀市環境保全市民会議レッドデータブック作成委員会委員長、環境省希少動植物保存推進員、三重県公共事業環境検討協議会委員、介護認定審査会委員、三重県レッドデータブック作成委員会委員など。
著書:『風力発電不都合な真実』(アットワークス)、『自然エネルギ-の罠』(あっぷる出版社)、『伊賀のレッドデータブック』『三重県レッドデータブック」(いずれも共著)など。
自然環境関係の論文:風力発電機による鳥類の繁殖への影響、日本列島におけるタカの渡り、カモ科鳥類が越冬する池の環境条件など。
 
日時 2017年11月19日(日)13:30~16:30
場所 紀美野町総合福祉センター3F多目的ホール
    和歌山県紀美野町下佐々1408-4
入場無料
 
紀美野町を中心に紀の川市海南市有田川町にかけて、72基もの風車を建設するという国内最大級の風力発電所建設計画。一見環境に優しい自然エネルギ-と思われる風力発電ですが、建設に伴う環境破壊や聞こえない音(低周波音)による健康被害などの問題が各地で出てきています。今回、現役歯科医師日本野鳥の会会員として環境保全の見地から活動をされている武田恵世氏を講師に迎え、特別講演会を開催します。風車を建設してしまってから何かあっても遅い!風力発電って本当にエコなの?私達の暮らしにどんな影響があるの?低周波音って何?など、武田氏の講演を聴きながら、今一緒に学び考えませんか?
 
主催:武田恵世講演会実行委員会、きみの雑技団tel:090-5018-7218(フナヤマ)
協力:風力発電の被害を考える会・わかやま、ベーカリーテラス ドーシェル
(引用終わり)
 
 ところで、この日本最大級と言われる風力発電計画((仮称)海南・紀の川風力発電事業)、現在、環境影響評価法に基づく最初の段階(配慮書)における和歌山県環境影響評価審査会「意見」(10月17日)及び和歌山県知事「意見」(10月25日)が出たところです。
 この後、方法書の作成、環境影響評価の実施、準備書の作成、評価書の作成などという段階が続くのですけどね。
 「(仮称)海南・紀の川風力発電事業」に関する情報は、和歌山県環境生活部・環境政策局・環境生活総務課ホームページの中の下記ページに集められていますので、この問題に関心を持つ方は、時折チェックするようにしてください。
 
 とりあえず、同計画・配慮書に対する環境影響評価審査会「意見」と県知事「意見」をお読みいただければと思います。もっとも、知事「意見」は、審査会「意見」を踏まえたものですから、審査会「意見」だけ読んでも十分かと思います。
 ただし、知事「意見」のPDFファイルには、海南市紀の川市紀美野町有田川町からの意見照会(知事からの)に対する回答が添付されており、それを読むと、紀の川市有田川町の回答書に比べ、海南市紀美野町(とりわけ紀美野町)の回答内容が質量ともに「気合いの入り方が違う」と感じました。
 
「(仮称)海南・紀の川風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」に対する環境の保全の見地からの意見(和歌山県環境影響評価審査会/平成29年10月17日)
(引用開始)
1 総括的事項
 (仮称)海南・紀の川風力発電事業について、本配慮書では、「事業性配慮(風況や社会インフラ整備状況)」、「規制配慮(法令等の制約)」及び「環境配慮(環境保全上留意が必要な場所の確認)」の3要件から風力発電機の設置予定範囲を設定し、具体的な施設の位置・規模又は配置・構造(以下「位置等」という。)を決めていくこととしている。
 しかし、配慮書では使用する風力発電機の重要な諸元である音響パワーレベルなどが明らかではなく、配慮書段階において「環境配慮」を、十分検討しているとは判断できない。中でも、環境配慮における風力発電機から住宅等への離隔距離について、環境省報告書を引用しているが、その内容理解については重大な誤認があると考えられ、距離設定が適切であるとは判断できない。
 速やかに、使用する風力発電機の具体的な諸元をできる限り明らかにした上で、住民意見や関係自治体からの意見を十分に勘案し位置等について検討を行うこと。重大な環境影響が避けられないと判断した場合には、対象事業実施区域の見直し及び基数や出力の削減を含む事業計画の全体的見直しを行うこと。
 なお、見直しを行う場合には、その検討過程については方法書において明らかにすること。
2 個別的事項
(1)騒音及び超低周波
 事業実施想定区域及びその周辺には住居等が存在しており、これらに対する騒音及び超低周波音による重大な環境影響が生じるおそれがある。
 離隔距離については、県内の既設風力発電機についても十分に把握、精査した上で、詳細な調査予測を行い、専門家等からの助言を得ながら、影響を回避低減すること。
(2)動物
 本事業で使用予定の風力発電機は、国内ではまだ運用事例がない巨大なもので、基数も72基と大規模である。そのため、特に鳥類・ほ乳類全般に重大な影響を及ぼすおそれがある。このことなどから、詳細な調査予測を行い、専門家等からの助言を得ながら、影響を回避低減すること。
(3)植物、生態系
 生態系に対する基本的な認識に基づき、事業により直接改変が行われる地域のみではなく、その周辺地域についても重大な影響を受けるおそれがあることから、詳細な調査予測を行い、専門家等からの助言を得ながら、影響を回避低減すること。
(4)景観
 本事業は、稜線部分の景観を大きく変えるおそれがあるにもかかわらず、どのように景観を保全していくか、具体的な考えが示されていない。
 なお、事業実施想定区域及びその周辺には、地域住民にとって愛着ある生石高原をはじめとする主要な眺望点及び景観資源が存在しているので、当該地域において景観にはとりわけ重要な文化的価値がある。
 方法書においては、景観をどのように保全していくのか、事業者としての考えを明らかにした上で、詳細な調査予測を行い、専門家等からの助言を得ながら、影響を回避低減すること。
 なお、主要な眺望点だけでなく、地域住民が日常生活上慣れ親しんでいる場所や近傍の住居についても身近な眺望点として選定し、適切な方法により調査及び予測を行こと。
(5)その他
 事業者は、地域住民の不安解消のため、配慮書段階の計画内容を事業実施面などで精査を行い、速やかに計画を詰めて、その内容について説明会を開催するなど積極的な対話に努めること。
 なお、住民等への説明の際には、環境影響及び根拠となるデータ等について正確な情報をわかりやすく提供すること。
(引用終わり)
 
「(仮称)海南・紀の川風力発電事業に係る計画段階環境配慮書」に対する環境の保全の見地からの知事意見(平成29年10月25日)
 
(参考動画)
 「風力発電の被害を考える会・わかやま」が主催した武田恵世さんの講演会「風力発電は本当にエコなのか?-風力発電不都合な真実-」(2013年6月2日/和歌山市勤労者総合センター)の動画があります。4年以上前の動画ですが、基本的な部分は今でも通用すると思いますのでご紹介します。なお、動画は5本分割となっています。
風力発電は本当にエコなのか?1/5「風力発電不都合な真実」(28分)
風力発電は本当にエコなのか?2/5「風力発電不都合な真実」(28分)
風力発電は本当にエコなのか?3/5「風力発電不都合な真実」(32分)
風力発電は本当にエコなのか?4/5「風力発電不都合な真実」(32分)
風力発電は本当にエコなのか?5/5「風力発電不都合な真実」(42分)
 
 もう少し新しい武田恵世さんの講演としては、2016年7月17日に(新潟県村上市で行なわれた『風力発電は村上を元気にするか』における武田さんの基調講演(1時間53分)があります。ただし、音声だけですが。
風力発電は村上を元気にするか』基調講演・武田恵世氏(音声のみ)
 
 なお、「風力発電の被害を考える会・わかやま」(2012年11月設立)が、和歌山における実態を訴えるために作った動画があります(YouTubeへのアップは2014年3月27日)。
風力発電の羽根の下で~和歌山における被害の実態~(53分)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから)
2017年1月20日
2/15「低周波音問題について考える」シンポジウム(和歌山弁護士会)のご案内

「安倍9条改憲NO!全国市民アクション11・3国会包囲大行動」プレコンサートでの中川五郎さんの魂の演奏を聴く

 2017年11月8日配信(予定)のメルマガ金原.No.2980を転載します。
 
「安倍9条改憲NO!全国市民アクション11・3国会包囲大行動」プレコンサートでの中川五郎さんの魂の演奏を聴く
 
 11月3日(金・祝)午後1時55分から行われた「安倍9条改憲NO!全国市民アクション11・3国会包囲大行動」(主催:安倍9条改憲NO!全国市民アクション実行委員会、戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会)に先立ち、午後1時からプレコンサートが開かれました。前半はMilk [弥勒](みるく)さん、後半は中川五郎さんが出演されました。
 
 プレコンサートに中川五郎さんが出演されるということは、直前に中川さんのFacebookへの投稿で知りました。
 そして、その翌日、中川さんご自身によるプレコンサートのレポートがFacebookに。
(抜粋引用開始)
 お調子者とみんなから笑われるのは承知で、昨日11月3日の国会包囲大行動の国会正門前ステージでの13時からのプレコンサート、ぼくは愛用のリッケンバッカーのエレキ・ギターの弾き語りで歌いたいと思いました。先の衆議院選挙で立憲民主党が生まれ、立憲がリッケンバッカーと結びつき、リッケンバッカーのエレキ・ギターを抱えたリッケン民主くんも生まれ、立憲バッカー(立憲主義支持者)なる言葉も使われる中、ぼくは立憲民主主義を貫くことは大賛成だし、上からではなく草の根から、一人一人が考え、動くことで世の中は変えられるという枝野幸男さんのスピーチにも共感し、ぼくなりの立憲民主主義への熱い思いをアピールしようと、この日の国会前ではどうしてもリッケンバッカーのエレキ・ギターを抱えて弾き語りで歌いたかったのです。
 でもギター・アンプを使わないエレキ・ギターでの弾き語りはギターの音がめちゃくちゃしょぼく、しかも弾き始めたらリッケンバッカーのチューニングはまるで合っていなくて(炎天下の影響?)、2曲目の前にチューニングをしようとしたら直射日光のもとチューニング・メーターのデジタル表示はまったく見えず、おまけに3曲目の「Sports For Tomorrow」では弦まで切ってしまい、散々の結果になってしまいました。いつものぼくの半分も力が出せませんでしたが、それでもしょぼい音の弾きにくいリッケンバッカーをかき鳴らしながら、今のとんでもない政治状況への怒りを込めて、国会の真ん前で思いきり歌いました。
(略)
(引用終わり)
 
 私は、このセルフ・レポートを読み、中川さんの気合いの入り方が半端ではないと感じ入りました。
 ちなみに、「『立憲バッカ-』って何だ?」と首をひねる方は、以下の記事をお読みください。
 
日刊スポーツ 2017年10月21日
立憲民主くんギター「枝野モデル」発売は「難しい」
(抜粋引用開始)
 立憲民主党の非公式ツイッターで「立憲民主くん」のフォロワー数は20日までに1万3000人を超えた。2日の結党以来、党公式ツイッター(フォロワー18万人超)とともに、爆発的な伸びを見せたアカウントだ。立憲民主くんは、民主党時代のゆるキャラ民主くん」が、ジョン・レノンも愛用した米楽器メーカー「リッケンバッカー」のギターを構えた姿をしている。ロック好きなら誰もが知る楽器メーカーだが、立憲民主くんの誕生で初めて知った人も多く、ここにきて再注目を浴びている。
 党の支持拡大を受け、リッケンバッカー「枝野モデル」の発売はないのか。リッケンバッカー日本代理店の山野楽器担当者によると「アーティスト限定モデルはあります。ただ、枝野さんがアーティストなら別ですが、特定の政党の政治家となると難しい」。
(略)
(引用終わり)
 
※参考 立憲民主党[非公式]Twitter立憲民主くん
 
 ということで、国会議事堂前での中川五郎さんの歌声を是非私のブログでも記録にとどめたいと考え、動画サイトを探してみました。いくつか見つかりましたので、あれこれ選別することなく、みんなご紹介することにします。どれでも気に入った動画で(やはり音質、音量が一番気になりますが)ご覧下さい。ちなみに、取り上げられた曲は以下の4曲でした。
 
1曲目『一台のリヤカーが立ち向かう』(私のブログをご参照ください)
2曲目『ライセンス・トゥ・キル』(原曲ボブ・ディラン)の替歌(私のブログをご参照ください)
3曲目『Sports For Tomorrow』(私のブログをご参照ください)
4曲目『風に吹かれて』(ボブ・ディラン
 
【動画1/shusei ch1 】
中川五郎氏 オープニングライブ② 『ギターは話題の ”リッケンバッカー” !』「安倍9条改憲NO!全国市民アクション11・3国会包囲大行動」2017.11.3 @国会正門前(21分)
 
【動画2/ken23qu】
2017.11.03 安倍9条改憲NO!全国市民アクション11・3国会包囲大行動【プレコンサート編】(54分)
中川五郎さんの演奏は25分~です。 
 
【動画3/森薫
2017年11月3日 安倍9条改憲NO!全国市民アクション11・3国会包囲大行動(2時間42分)
中川五郎さんの演奏は25分~です。
 
【動画4/三輪祐児】
20171103 UPLAN 再び国会を10万人で包囲しよう! 安倍9条改憲NO!全国市民アクション 11・3国会包囲大行動(2時間35分)
中川五郎さんの演奏は28分~です。なお、冒頭の国会を防衛するためのゲートを設営する警察の動きをとらえているのは三輪さんならではでしょうか。
 
【動画5/Makabe Takashi】
安倍9条改憲NO!全国市民アクション11・3国会包囲大行動 国会正門前・国会図書館前 2017年11月3日(2時間42分)
中川五郎さんの演奏は25分~です。
 
【動画6/IWJ】
国会を4万人が包囲!!~日本国憲法交付から71年目の国会周りで立憲・共産・民進・社民の4野党議員と市民らが改憲発議、国民投票に警鐘!――安倍9条改憲NO!全国市民アクション 2017.11.3
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/中川五郎さん関連)
2012年8月22日(2013年2月11日に再配信)
中川五郎さんの新しい“We Sall Oercome”=『大きな壁が崩れる』
2012年9月25日(2013年2月3日に再配信)
『一台のリヤカーが立ち向かう』~彼は3.11前から3.11後を歌っていた~
2015年1月2日
中川五郎さんは問いかける~“ああ どうすれば男の耳を傾けさせられるのか”
2016年5月7日
小林節さんGWも駆け回る~5/14は和歌山市民会館大ホール(付・5/7岡山弁護士会のイベントは凄かった~中川五郎さんの“新曲”にも注目!)
2016年5月8日
中川五郎さんの新曲“Sports for tomorrow”をじっくりと聴く
2017年6月12日
4年目に入った「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」&予告「第4回 くまの平和の風コンサート(中川五郎ライブ!)」(7/30)
2017年9月6日
中川五郎さんの『トーキング烏山神社の椎ノ木ブルース』を聴き、変わろうとしないこの国の人たちを思う

渡辺治さんの講演動画「衆院選後 安倍改憲の新段階と九条の会の課題」(2017年10月30日)を視聴する

 2017年11月7日配信(予定)のメルマガ金原.No.2979を転載します。
 
渡辺治さんの講演動画「衆院選後 安倍改憲の新段階と九条の会の課題」(2017年10月30日)を視聴する
 
 今日は、動画のご紹介です。去る10月30日に九条の会東京連絡会が開催した「渡辺治が吠える!一橋大学名誉教授 政治学者・渡辺治さん 選挙を、憲法を、熱く語る。」という、チラシを読むだけで、血湧き肉躍りそうな(?)講演会です。
 もっとも、動画を見ると、講師演台の後方に貼られた横断幕(横紙)には、「衆院選後 安倍改憲の新段階と九条の会の課題」という大人しめの演題が掲げられていましたけど。
 
 ところで、末尾のリンク一覧をご覧いただければ分かるとおり、私は折に触れて(というより、節目節目でと言った方が適切)渡辺治さん(一橋大学名誉教授)の講演動画をご紹介してきました。
 それは、憲法をめぐる「情勢分析と展望」を語って、渡辺治先生の右に出る学者はそうそういないと思うからです。
 ということで、10月22日の衆院選の結果をうけて、渡辺先生がこの情勢をどのように分析し、展望を語っておられるのか、興味津々というところです。
 動画の9分ころに渡辺先生から、この日の講演でお話されるのが以下の4項目であると述べられています。
 
〇5月3日「安倍改憲提言」の狙いと「9条加憲論」の危険性
改憲戦略はなぜ変更されたのか(解散総選挙の前倒し)
〇総選挙の結果をどう総括するか
九条の会の今後の課題
 
 私もまだちらちらと飛ばし視聴しただけなので、是非じっくりと時間を作って学ばせてもらおうと思います。皆さまも是非ご一緒に。
 
10・30安倍政権の新段階と九条の会の課題 (2時間17分)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/渡辺治氏関連)
2015年5月21日
九条の会事務局、奮闘する~討論集会(3/15)、訴えと提案(5/1)、そして緊急学習会(5/16)
2015年7月20日
渡辺治さんの「SEALDs戦争法案に反対する国会前抗議行動」(7/17)での訴え
2015年12月13日
渡辺治さん(一橋大学名誉教授)が9.19後に語る「情勢論と今後の展望」
2016年10月10日
「総がかり行動」の中間総括~「戦争法廃止!憲法いかそう!総がかり行動シンポジウム」(10/6)を視聴して
2016年11月10日
渡辺治氏(一橋大学名誉教授)講演「憲法をめぐる参院選後の情勢と課題」(2016/10/10)を視聴する
2017年3月2日
渡辺 治さんの講演と安倍政治を語る市民のつどい@和歌山県田辺市(2017年3月11日)のご案内
2017年6月27日
動画・学習会「安倍首相の改憲発言をめぐって」(九条の会事務局)~浦田一郎さん、渡辺治さんのダブル講演で学ぶ
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/安倍改憲メッセージ関連)
2017年5月24日
立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」を読む
2017年6月16日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」発表記者会見(5/22)
2017年6月22日
羽柴修弁護士講演会「憲法をめぐる情勢と国民投票を意識した取り組み」から学ぶ
2017年6月27日
動画・学習会「安倍首相の改憲発言をめぐって」(九条の会事務局)~浦田一郎さん、渡辺治さんのダブル講演で学ぶ
2017年6月30日
立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」(6/26)を読む
2017年7月9日
「なるほど!新9条改正案を斬る」(イキョンジュ氏「アジアの中の日本国憲法」出版記念イベント)のご案内
2017年7月12日
和歌山県下7団体共同声明「安倍首相による改憲発言についての声明」を今日(7/12)発表しました
2017年7月18日
市民連合「緊急シンポジウム ストップ安倍政治-改憲を許さない市民集会」(7/12)を視聴する
2017年7月20日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」発表記者会見(6/26)
2017年7月26日
法律家6団体アピール「自衛隊の存在を9条に明記する安倍改憲提案に反対します」と清水雅彦氏講演動画「『2020年 安倍改憲』~その中味と狙いとは何か」のご紹介
2017年7月31日
君島東彦立命館大学教授「安倍改憲案とわたしたちの平和構想―9条論の再創造―」講演動画を視聴する
2017年8月2日
「安倍9条加憲NO!シンポジウム―未来をつくる日本国憲法―」(中野晃一、武村正義長谷部恭男辻元清美各氏/7/31)の動画を視聴する
2017年8月9日
青井未帆氏「憲法自衛隊を明記することの意味を考える」講演動画(8/5兵庫県弁護士9条の会)を視聴する 
2017年8月23日
和歌山弁護士会憲法学習集会9/20「安倍首相の新たな改憲提言について―自衛隊憲法に書き込む改憲は何をもたらすか―」(講師:青井未帆氏)のご案内
2017年9月5日
九条の会」も参加して「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」がスタートします~目指せ3000万人署名
2017年9月9日
「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」9.8 キック・オフ集会大成功~3000万人署名活動スタート!
2017年9月13日
「安倍9条改憲を阻むために全国の九条の会は立ちあがりましょう」(9/6九条の会事務局からの訴え)
2017年9月14日
「安倍9条改憲NO!」のために「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」はまだまだ頑張ります
2017年9月15日
今年の憲法フェスタ(11/3守ろう9条 紀の川 市民の会)は本秀紀(もと・ひでのり)さん~歌う憲法学者が語る9条と自衛隊
2017年9月18日
9条の会共同講演会「安倍改憲を許すな!!」(愛敬浩二名古屋大学大学院教授@11/4和歌山県JAビル)のご案内
2017年10月11日
「安倍9条改憲NO!大学人と市民のつどい―憲法問題シンポジウムと大学有志の会ブロック連絡会発足記念集会」(2017年10月8日)を視聴する
2017年10月17日
憲法(特に9条)についての各党「公約」比較~とても分かりやすくなっていた
2017年10月22日
清水雅彦氏(日本体育大学)講演動画「学ぶ!安倍改憲の真実!」(10/17市民連合国分寺)を視聴する
2017年10月23日
山田朗明治大学教授による講演「安倍改憲の危険性と北朝鮮問題」を視聴する(映画人九条の会
2017年10月26日
11/3は「安倍9条改憲NO!わかやまアクション」に結集を!(汀公園)~11月に開催される講演会・リレートークのお知らせ@和歌山市
2017年10月28日
開催予告11/21「リレートーク 自民党改憲4項目の検証」(憲法9条を守る和歌山弁護士の会) 
2017年10月29日
地域からの結集を!~「9条改憲NO!全国市民アクション・国立」の「キックオフ集会inくにたち」を視聴する
2017年10月31日
自民党改憲4項目のうち「参議院の合区解消」について~浦部法穂氏の論考で学ぶ
2017年11月4日
2日連続 名古屋大学大学院教授(本秀紀氏&愛敬浩二氏)から学ぶ憲法をめぐる動向
2017年11月6日
「安倍改憲」を阻止するために~衆院選の結果を踏まえて

「安倍改憲」を阻止するために~衆院選の結果を踏まえて

 2017年11月6日配信(予定)のメルマガ金原.No.2978を転載します。
 
「安倍改憲」を阻止するために~衆院選の結果を踏まえて
 
 伊藤真弁護士が主宰されている法学館憲法研究所は、「憲法を系統的に研究し、個人の尊厳の実現をめざす非政府組織としての自由な研究機関です」(同研究所ホームページより)。
 その研究成果は、年に2回刊行される「法学館憲法研究所報」の他、様々な出版物や講演会で発表されています。
 ちなみに、最新の「法学館憲法研究所報」第17号は憲法「改正」特集で、実に読み応えがあるだけでなく、学習会の講師を頼まれた弁護士にとって、とても役立つ参考文献です。多くの方にご一読をお薦めしたいと思います。
 
 さて、今日のブログでご紹介するのは、法学館憲法研究所ホームページの中の「今週の一言」コーナーに、先週の10月30日から掲載されていた拙稿「『安倍改憲』を阻止するために~衆院選の結果を踏まえて」です。
  今日(11月6日)から同コーナーのバックナンバー入りしたのを機に、私のブログに全文転載することとしました。ご一読いただければ幸いです。
 

            「安倍改憲」を阻止するために~衆院選の結果を踏まえて  
 
                                  金 原 徹 雄
 
 私は、東京電力福島第一原発事故に衝撃を受け、2011年3月28日から「メルマガ金原」と名付けたささやかな個人メルマガを友人・知人に送り始め、2013年1月からは、メルマガをそのまま転載するブログ(弁護士・金原徹雄のブログ)を開設し、今日まで毎日更新を続けています。
 毎日更新する弁護士ブロガーといえば、何と言っても澤藤統一郎先生ですが(「澤藤統一郎の憲法日記」)、私のブログなど、とても澤藤先生の足許にも及ばず、自らの意見を訴えるというよりは、主にインターネットで収集した情報を取捨選択して紹介することを主な目的として更新を続けてきました。
 ですから、本サイトの編集者から、「安倍改憲の問題点~改憲を阻止するために(仮題)」という原稿を依頼された際にも、光栄とは思いましたが、果たして依頼の趣旨に沿った原稿が書けるのか不安でした。それでも、結局お引き受けした理由をご説明する代わりに、原稿依頼を受けた9月14日の夜に私が書いたブログ(「安倍9条改憲NO!」のために「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」はまだまだ頑張ります)の一部を引用したいと思います。
 
(引用開始)
 Facebookにも書きましたが、今年の5月3日に顕在化した「安倍9条改憲」の危機は、東京都議選での自民党の敗北によっても、少しも去ってなどいません。代表選前後からの民進党の状況を踏まえれば、危機は一層深化していると言っても良いでしょう。健康問題を含め、安倍首相退陣の可能性が高まれば高まったで、衆参両院で改憲勢力が2/3以上の議席を確保しているうちに、何が何でも改憲発議をという政治的圧力が高まるでしょうし、走り出してしまった機関車にブレーキをかけるだけの理性と能力が自民党に備わっているかも疑わしく、場合によっては、「安倍なき安倍9条改憲」という事態もあり得るという想定が必要なのではないかと考えられます。
 「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」や「九条の会」が「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」を立ち上げ、「安倍9条改憲NO!憲法を生かす全国統一署名」(3000万人署名)をスタートしたのも、そのような危機感と情勢認識の結果によるもののはずです。
 まさに、今こそ、従来からの運動の成果を踏まえつつ、そこから一段も二段も飛躍した大きなうねりを巻き起こすべき時期だと思います。
(略)
 私たちが、2014年以来、毎月続けて来た「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」(呼びかけ:憲法9条を守る和歌山弁護士の会)も、このような情勢の下、さらにパワーアップし、より多くの方に参加いただくことにより、「安倍9条改憲NO!」を一層アピールする有力なツールにしなければと思います。
 そして、月に1回の「ランチTIMEデモ」だけではなく、もっと多彩な人々が、様々な団体が、色々な場所で思い思いのアピールを(デモでなくてもよいけれど)企画・実行するのが理想でしょう。
 安保法案(戦争法)制定阻止の闘いに比べ、市民の側の盛り上がりがいまひとつではないかと懸念する声も聞こえてきますし、正直、同じ心配を和歌山の地で感じることも事実です。私が、「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」の参加者数にこだわるのも、そういう背景があってのことです(それにしても、弁護士の参加が6人だけというのはないよなあ)。
(引用終わり)
 
 以上のような認識の下、「9.8キックオフ集会」において、「戦争させない・9条壊すな!総がかり行動実行委員会」共同代表の小田川義和さんが提起した、①3000万人署名達成、②大規模集会の開催(東京で全国で)、③学習会・講演会・街頭宣伝の各地での開催など、さらに、「九条の会」事務局が全国の9条の会に呼びかけた、④全ての「9条の会」が学習会を持つこと、⑤それぞれの地域で他団体と協力し合って市民アクションを立ちあげ共同の輪を広げることなどをご紹介した上で、私の地元・和歌山での取組状況や展望を書けば良いだろうと思ったのですが・・・。
 
 そこに降って湧いたような衆議院の解散・総選挙です。結果はご存知のとおりで、大山鳴動したものの、自民公明の与党勢力はほぼ現状維持で2/3超のままとなりました。これに対し、民進党は希望の党への合流騒動により、立憲民主党希望の党、無所属で当選した衆議院議員民進党(参議院議員)の4グループに分裂してしまい、再結集や連携という言葉が飛び交っていますが、現時点(投開票から3日目に書いています)では不透明というほかありません。
 今度の選挙について、私自身は市民連合わかやまの一員として、推薦した日本共産党候補(1区、2区、3区)の応援に務めましたが、結果は全員落選でした。
 そもそも、和歌山では、民進党から立候補を予定していた1区の前職(解散前には離党確実と言われていましたが)と2区の新人が希望の党の公認を得て出馬することになり、この時点で、市民連合わかやまが働きかけていた市民と野党の共闘による野党統一候補の擁立(もちろん、民進党を含めての話です)は、断念せざるを得なくなりました。
市民連合わかやまが3人の共産党公認候補を推薦(社民党県連支持、自由党県連応援などもありました)したのは、そのような経緯によります。
 希望の党ではなく、せめて無所属で立候補してくれていたらと思いますが、今さら言っても仕方がありません(共産党が候補をおろし、立憲民主党や無所属候補を支援した地域がうらやましい)。
 ただ、懸念されるのは、和歌山において、安保法制反対、共謀罪阻止などの闘いを通じ、ようやく順調に機能してきた総がかり行動実行委員会の枠組が、希望の党共産党の両陣営に分かれて選挙戦を闘ったことにより、ぎくしゃくしたものにならないかということです。まあ、希望の党などと言っても、県レベルではおそらく実態ゼロだろうと思いますし、1区の前職は自民党候補を寄せ付けずに議席を守りましたので、支援組織同士の関係については、それほど心配しなくても良いのではと楽観したい気持ちもあります。 
 
  さて、「安倍改憲」です。単純に議席の数だけで考えれば、改憲勢力に圧倒的に有利な状況は変わらない、どころか、一層悪化したとも言えます。希望の党で当選した50人全員を改憲派とくくる必要はないでしょうが、相当部分は実質的改憲派でしょう。 なお、ここで「改憲」というのは、主に「9条改憲」を想定しています。
 野党第一党となった立憲民主党や、与党である公明党の動きが気になるところですし、特に公明党に対しては、圧倒的な国民各層から「9条改憲は認められない」とアピールするための「手紙大作戦」はどうだろう?などと思ったりします。そのような工夫も含めて、私たちに出来ることは何でしょうか?
 解散前から提起されていた「3000万人署名」をはじめとする、9条の会を含む多くの組織による取組目標の達成もとても重要ですが、それと併行して、なかなか私たちの声が届いていない層への浸透を工夫することがとても大事なことだと思います。
 今回の選挙戦に関わった市民連合わかやまのメンバーが投開票日の翌日集まり、意見を述べ会う機会がありましたが、そこで、ママの会や学生の皆さんから語られたことは、直接には衆院選での経験ですが、「安倍改憲」にどう立ち向かうかを考える際のヒントの宝庫でもあると感じました。そのことは、おそらく和歌山だけではなく、全国各地で通用することではないでしょうか。
 その1つ1つをご紹介する余裕はありませんが、みんなの話に共通するのは、始めから「どうせだめ」と諦めたりせず、勇気をもって話しかけてみるということでした。
 また、私が今度の選挙戦を通じて注目したことの1つは、立憲民主党の選挙戦略、とりわけ、公式Twitterの発信力、街頭演説の見せ方の工夫(動画サイトを含むインターネットを介した拡散を見通した)などが、従来のそれとは明らかに異質かつ新鮮なものであり、それが多くの国民からの支持を短期間で集めることにかなりの程度役立ったのではないかと思われることでした。
 選挙スタッフとして、元SEALDsのメンバーが協力していたとも言われていますが、このようなインターネットを利用した政治的発信には、まだまだ工夫の余地が大きいのだということを実感しました。
 
 「安倍改憲」の危険性をいかにして国民に浸透させていくか?以上に述べたとおり、フェイスtoフェイスで話しかけて理解を求める地道な活動と、インターネット、SNSなどをフルに活用した活動を両輪としながら、常に新しいアイデアを補給しつつ、主張自体は堂々と正攻法で進むべきだろうと確信します。これが、今回の衆院選から得た最も重要な教訓かもしれません。
 
 最後に、今回の解散騒動の直前に、私が所属する「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が開催を決定していた企画(リレートーク自民党改憲4項目の検証」)をご紹介します。同会が会員によるリレートークを開催するのはこれが3回目で、1回目は2005年(自民党改憲案の検証)、2回目は2013年(立憲主義と平和主義の危機に立ち向かう~自民党日本国憲法改正草案」の検証~)でした。
 企画当初に解散総選挙は想定していませんでしたが、いよいよ自民党が選挙公約に憲法「改正」条項として明記した4項目が改憲発議される可能性が高まった情勢下、その問題点を広く市民に知っていただく機会に出来ればと念願しています。
 
名称 リレートーク自民党改憲4項目の検証」
日時 2017年11月21日(火)午後6時30分開演(開場6時)
会場 和歌山市あいあいセンター6階ホール(固定席153席)
      和歌山市小人町29   TEL:073-432-4704
主催 憲法9条を守る和歌山弁護士の会
入場無料、予約不要
内容(憲法9条を守る和歌山弁護士の会会員が解説します)
第1トーク 自衛隊明記(9条加憲論)
第2トーク 緊急事態条項
第3トーク 教育無償化+参議院の合区解消
第4トーク 国民投票を見すえたこれからの運動
 
◆金原徹雄(きんばら てつお)プロフィール
1954年、和歌山市に生まれる。
1989年、和歌山弁護士会に入会。以後、和歌山市で平凡な「町弁」生活を続ける。
2006年~2012年、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」事務局長。
3.11による福島第一原発事故に衝撃を受け、2011年3月から、原発問題や憲法問題について考える「メルマガ金原」の配信開始。
2013年1月からメルマガを転載する「弁護士・金原徹雄のブログ」を「毎日更新」中。他に、「守ろう9条 紀の川 市民の会」運営委員、「市民連合わかやま」会計担当幹事など。
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/安倍改憲メッセージ関連)
2017年5月24日
立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」を読む
2017年6月16日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」発表記者会見(5/22)
2017年6月22日
羽柴修弁護士講演会「憲法をめぐる情勢と国民投票を意識した取り組み」から学ぶ
2017年6月27日
動画・学習会「安倍首相の改憲発言をめぐって」(九条の会事務局)~浦田一郎さん、渡辺治さんのダブル講演で学ぶ
2017年6月30日
立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」(6/26)を読む
2017年7月9日
「なるほど!新9条改正案を斬る」(イキョンジュ氏「アジアの中の日本国憲法」出版記念イベント)のご案内
2017年7月12日
和歌山県下7団体共同声明「安倍首相による改憲発言についての声明」を今日(7/12)発表しました
2017年7月18日
市民連合「緊急シンポジウム ストップ安倍政治-改憲を許さない市民集会」(7/12)を視聴する
2017年7月20日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」発表記者会見(6/26)
2017年7月26日
法律家6団体アピール「自衛隊の存在を9条に明記する安倍改憲提案に反対します」と清水雅彦氏講演動画「『2020年 安倍改憲』~その中味と狙いとは何か」のご紹介
2017年7月31日
君島東彦立命館大学教授「安倍改憲案とわたしたちの平和構想―9条論の再創造―」講演動画を視聴する
2017年8月2日
「安倍9条加憲NO!シンポジウム―未来をつくる日本国憲法―」(中野晃一、武村正義長谷部恭男辻元清美各氏/7/31)の動画を視聴する
2017年8月9日
青井未帆氏「憲法自衛隊を明記することの意味を考える」講演動画(8/5兵庫県弁護士9条の会)を視聴する 
2017年8月23日
和歌山弁護士会憲法学習集会9/20「安倍首相の新たな改憲提言について―自衛隊憲法に書き込む改憲は何をもたらすか―」(講師:青井未帆氏)のご案内
2017年9月5日
九条の会」も参加して「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」がスタートします~目指せ3000万人署名
2017年9月9日
「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」9.8 キック・オフ集会大成功~3000万人署名活動スタート!
2017年9月13日
「安倍9条改憲を阻むために全国の九条の会は立ちあがりましょう」(9/6九条の会事務局からの訴え)
2017年9月14日
「安倍9条改憲NO!」のために「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」はまだまだ頑張ります
2017年9月15日
今年の憲法フェスタ(11/3守ろう9条 紀の川 市民の会)は本秀紀(もと・ひでのり)さん~歌う憲法学者が語る9条と自衛隊
2017年9月18日
9条の会共同講演会「安倍改憲を許すな!!」(愛敬浩二名古屋大学大学院教授@11/4和歌山県JAビル)のご案内
2017年10月11日
「安倍9条改憲NO!大学人と市民のつどい―憲法問題シンポジウムと大学有志の会ブロック連絡会発足記念集会」(2017年10月8日)を視聴する
2017年10月17日
憲法(特に9条)についての各党「公約」比較~とても分かりやすくなっていた
2017年10月22日
清水雅彦氏(日本体育大学)講演動画「学ぶ!安倍改憲の真実!」(10/17市民連合国分寺)を視聴する
2017年10月23日
山田朗明治大学教授による講演「安倍改憲の危険性と北朝鮮問題」を視聴する(映画人九条の会
2017年10月26日
11/3は「安倍9条改憲NO!わかやまアクション」に結集を!(汀公園)~11月に開催される講演会・リレートークのお知らせ@和歌山市
2017年10月28日
開催予告11/21「リレートーク 自民党改憲4項目の検証」(憲法9条を守る和歌山弁護士の会) 
2017年10月29日
地域からの結集を!~「9条改憲NO!全国市民アクション・国立」の「キックオフ集会inくにたち」を視聴する
2017年10月31日
自民党改憲4項目のうち「参議院の合区解消」について~浦部法穂氏の論考で学ぶ
2017年11月4日
2日連続 名古屋大学大学院教授(本秀紀氏&愛敬浩二氏)から学ぶ憲法をめぐる動向

司法に安保法制の違憲を訴える意義(21)~東京・差止請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述

 2017年11月5配信(予定)のメルマガ金原.No.2977を転載します。
 
司法に安保法制の違憲を訴える意義(21)~東京・差止請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
 
 ご存知のとおり、安保法制違憲訴訟の会は、昨年(2016年)4月26日、東京地方裁判所に2件の訴訟を同時に提起しました。
 1つは、国家賠償請求訴訟、もう1つは差止請求訴訟です。
 
 ところで、今日取り上げる差止請求訴訟は、今年の8月10日、追加提訴を行っていますので、ここで、当初提訴の訴状と追加提訴の訴状の中から、「請求の趣旨」の部分を抜き出し、原告らが、そもそも何の「差止」を求めているのかを確認しておきたいと思います。
 
2016年4月26日提訴「訴状」から
     請 求 の 趣 旨
1 内閣総理大臣は,自衛隊法76条1項2号に基づき自衛隊の全部又は一部を出動
させてはならない。
2 防衛大臣は,重要影響事態に際して我が国の平和及び安全を確保するための措置に関する法律の実施に関し,
(1)    同法6条1項に基づき,自ら又は他に委任して,同法3条1項2号に規定する後方支
援活動として,自衛隊に属する物品の提供を実施してはならない。
(2) 同法6条2項に基づき,防衛省の機関又は自衛隊の部隊等(自衛隊法8条に規定する部隊等をいう。以下同じ。)に命じて,同法3条1項2号に規定する後方支援活動として,自衛隊による役務の提供を実施させてはならない。
3 防衛大臣は,国際平和共同対処事態に際して我が国が実施する諸外国の軍隊等に対する協力支援活動等に関する法律の実施に関し,
(1) 同法7条1項に基づき,自ら又は他に委任して,同法3条1項2号に規定する協力支援活動として,自衛隊に属する物品の提供を実施してはならない。
(2) 同法7条2項に基づき,自衛隊の部隊等に命じて,同法3条1項2号に規定する協力支援活動として,自衛隊による役務の提供を実施させてはならない。
4 被告は,原告らそれぞれに対し,各金10万円及びこれに対する平成27年9月19日から支払済みまで年5分の割合による金員を支払え。
5 訴訟費用は,被告の負担とする。
との判決並びに第4項につき仮執行の宣言を求める。
 
2017年8月10日追加提訴「訴状」から
     請 求 の 趣 旨
1 防衛大臣は、国際連合平和維持活動等に対する協力に関する法律9条4項に基づき、自衛隊の部隊等に、同法3条5号ト若しくはラに掲げる国際平和協力業務又は同号トに類するものとして同号ナの政令で定める国際平和協力業務を行わせてはならない。
2 防衛大臣は、自衛隊法95条の2に基づき、自衛官に、アメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊の部隊の武器等の警護を行わせてはならない。
との判決を求める。
 
 当初提訴において、差止を求めたのは、①存立危機事態に際しての防衛出動、②重要影響事態に際しての後方支援活動、③国際平和共同対処事態に際しての協力支援活動の3点でした。「請求の趣旨」4項の慰謝料請求は、形式的却下判決のリスクを避けるための「押さえ」でしょうか。
 それに対して、本年8月10日の追加提訴で差止を求めたのは、①PKO協力法に基づく新任務である、いわゆる「安全確保業務」と「駆け付け警護」、②米軍等の武器等の防護であり、今年に入ってから、現に防衛大臣自衛隊に命令を発している業務です。
 以下に、追加提訴の「請求の趣旨」で言及されている条文を引用しておきます。
 
(定義)
第三条 この法律において、次の各号に掲げる用語の意義は、それぞれ当該各号に定めるところによる。
五 国際平和協力業務 国際連合平和維持活動のために実施される業務で次に掲げるもの、国際連携平和安全活動のために実施される業務で次に掲げるもの、人道的な国際救援活動のために実施される業務で次のワからツまで、ナ及びラに掲げるもの並びに国際的な選挙監視活動のために実施される業務で次のチ及びナに掲げるもの(これらの業務にそれぞれ附帯する業務を含む。以下同じ。)であって、海外で行われるものをいう。
イ~ヘ 略
ト 防護を必要とする住民、被災民その他の者の生命、身体及び財産に対する危害の防止及び抑止その他特定の区域の保安のための監視、駐留、巡回、検問及び警護
チ~ネ 略
ナ イからネまでに掲げる業務に類するものとして政令で定める業務
ラ ヲからネまでに掲げる業務又はこれらの業務に類するものとしてナの政令で定める業務を行う場合であって、国際連合平和維持活動、国際連携平和安全活動若しくは人道的な国際救援活動に従事する者又はこれらの活動を支援する者(以下このラ及び第二十六条第二項において「活動関係者」という。)の生命又は身体に対する不測の侵害又は危難が生じ、又は生ずるおそれがある場合に、緊急の要請に対応して行う当該活動関係者の生命及び身体の保護
(国際平和協力業務等の実施)
第九条 協力隊は、実施計画及び実施要領に従い、国際平和協力業務を行う。
2 略
3 略
4 防衛大臣は、実施計画に定められた第六条第六項の国際平和協力業務について本部長から要請があった場合には、実施計画及び実施要領に従い、自衛隊の部隊等に国際平和協力業務を行わせることができる。
5 略
6 略
7 略
   
自衛隊法(昭和二十九年法律第百六十五号)
(合衆国軍隊等の部隊の武器等の防護のための武器の使用)
第九十五条の二 自衛官は、アメリカ合衆国の軍隊その他の外国の軍隊その他これに類する組織(次項において「合衆国軍隊等」という。)の部隊であつて自衛隊と連携して我が国の防衛に資する活動(共同訓練を含み、現に戦闘行為が行われている現場で行われるものを除く。)に現に従事しているものの武器等を職務上警護するに当たり、人又は武器等を防護するため必要であると認める相当の理由がある場合には、その事態に応じ合理的に必要と判断される限度で武器を使用することができる。ただし、刑法第三十六条又は第三十七条に該当する場合のほか、人に危害を与えてはならない。
2 前項の警護は、合衆国軍隊等から要請があつた場合であつて、防衛大臣が必要と認めるときに限り、自衛官が行うものとする。
 
 なお、追加提訴後の記者会見の動画は以下のものがアップされています。ちなみに、この日は国賠訴訟の第3次提訴も同時に行われており、その両提訴についての記者会見となっています。
 
安保法制違憲訴訟・国賠第3次提訴・差止追加提訴記者会見(35分)
 
 東京・差止訴訟は、去る10月27日(金)午前10時30分から、東京地裁103号法廷において第5回口頭弁論が開かれました。
 東京・国賠訴訟は、9月28日に第5回口頭弁論が開かれ、次回以降、証拠調べの段階に入る予定であることは既にお伝えしたとおりですが、差止訴訟は、まだそこまで行っていないようです。
 10月27日の口頭弁論終了後の記者会見の模様については、以下の動画をご参照ください(音声レベルが低いのは我慢してください)。
 
安保法制違憲訴訟第5回差止め訴訟記者会見(20分)
 
 その後、衆議院第一議員会館B1第1会議室において報告集会が行われましたが、その動画はまだアップされていません。撮影に来てくれたメディアが無かったため、急遽、事務局が撮影したそうなので、間もなくアップされると思いますから、アップされ次第、ブログには追加でご紹介します。
 以下には、当日の裁判における3人の原告訴訟代理人による陳述の要旨をご紹介します(差止請求訴訟では、前回(第4回)から、原告本人による意見陳述は行われなくなっています)。
 

原告ら訴訟代理人 弁護士 福 田   護
 
 新安保法制法の違憲性、その適用開始とこれによる米軍支援の現実的危険性及び追加提訴の趣旨等について述べます。
 
1 海外で武力行使をする自衛隊は 「戦力」 であること
(1)原告らは、準備書面(9)(10)(11)において、新安保法制法の内容の具体的違憲性、その制定による立憲主義の破壊、これらによるこの国のあり方の変容の危険等について論じました。
 新安保法制法の何が違憲なのか。その問題の核心はやはり、自衛隊が海外に出向いて武
力の行使をし又はその危険を生ずることにあります。これを肯認することによって、日本が戦争当事国となる機会と危険を大きく拡大したのです。新安保法制法は、従来の政府解釈が、そうならないように設けていた最低限の歯止めの、根幹部分を外してしまいました。
 従来の政府解釈とそれに基づく防衛法制の基本原則は、日本の領域が外部からの武力攻撃によって侵害された場合に限って、その武力攻撃を日本の領域から排除するためにのみ、自衛隊による実力の行使を認めるというものでした。だからその活動範囲も、基本的に日本の領域又はその周辺の公海、公空に限られるとされてきました。従来の自衛権発動の3要件は、この原則の表現でした。
 ところが新安保法制法は、自衛隊が海外で集団的自衛権による武力の行使をすることを認め、あるいは海外での武力行使につながる、後方支援その他様々な危険な活動を認めたのです。このように、日本の領域を守るだけでなく、海外を戦場として武力を行使する自衛隊は、もはや他国の軍隊と異なるものではなく、紛れもない「戦力」であり、「交戦権」
の主体にほかなりません。
(2)安倍総理大臣は、国会審議の中などで、繰り返し、新法の下でも、「自衛隊武力行使を目的として、かつての湾岸戦争イラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありません」「武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるもので許
されない。これは新三要件の下で集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらない」「他国の領域での武力の行使は、ホルムズ海峡以外は念頭にありません」、などと強調しました。(原告準備書面(10)34頁以下)
 しかし、存立危機事態において「他国に対する武力攻撃」を排除する自衛隊の武力の行
使は、その性質上当然に、当該他国の領域における武力の行使を予定するものであり、もちろん法文上のどこにも、外国の領域を不可として限定する規定はありません。すなわち新安保法制法は、自衛隊の海外での武力の行使を前提とするものです。政府も国会答弁で、「法理上」はそうなることを認めざるをえませんでした(2015年5月28日衆議院安保法制特別委・安倍総理大臣・中谷防衛大臣答弁)。
 安倍総理大臣の海外派兵はしない、できないという答弁は、このような新安保法制法の
最も基本的な違憲性と大きな危険性から国民の目をそらそうとする詭弁というほかはありません。
2 新ガイドラインによる自衛隊の米軍との一体的行動の危険性
(1)2015年4月27日、新安保法制法案の閣議決定・国会提出に先立って、法案の内容を先取りする新たな日米ガイドラインが両政府によって合意され、しかもその際安倍総理大臣が米議会で演説し、新安保法制法の制定を約束してしまいました。そのことの本末転倒、国会無視の問題性は言うまでもありませんが、そのことに象徴されるように、新安保法制法は新ガイドラインの実施法であり、米軍支援法にほかなりません(原告準備書面(11)21頁以下)。
 そして新ガイドラインは、平時から有事まで「切れ目のない、力強い、柔軟かつ実効的
な日米共同の対応」を目的とし、その共同対応体制として、平時から緊急事態までのあら
ゆる段階に対処するための「共同調整メカニズム」の整備を定めた上、新安保法制法によ
る新たな、そしてグローバルな自衛隊の諸活動と米軍との共同関係を定めています。
(2)ここで重大なのは、新安保法制法によってこれまでの憲法の制約を破って可能とされた集団的自衛権の行使、戦闘現場近くでの物品・役務の提供、PKOにおける駆け付け警護、米軍の武器等防護などが、この新ガイドラインに基づいてアメリカから要請されれ
ば、これに応じて自衛隊が米軍と共同・連携し、あるいは一体的な行動をとることになる
ことです。日本はもはや、憲法9条によって禁じられているからとの理由で、これらのア
メリカの要請を断ることはできなくなってしまいました。否むしろ、アメリカのこのような要請に応えるために、新安保法制法が制定されたというべきでありましょう。
3 新安保法制法の適用事例の危険性と問題性
(1)原告らは、去る8月10日、追加の提訴をして、PKOにおけるいわゆる安全確保業務と駆け付け警護の実施、及び自衛隊法95条の2に基づく米軍等の武器等防護の実施の差止めを求めました。これは、新安保法制法が制定・施行されてから現実の適用事例が発生し、その危険性が明確な形をとって現れたからです。
(2)PKOの駆け付け警護等については、後ほど相代理人が述べるところに委ねます。
 もう一つの武器等防護は、本年5月、北朝鮮に圧力を加えるために日本海に米空母カールビンソンの艦隊が展開する最中に、防衛大臣の命令により、自衛隊の最大級護衛艦「いずも」ほか1隻が、米軍補給艦の武器等防護のため警護の任務についたものです。これは、米軍艦船に武力攻撃とまではいえない侵害が発生した場合に、自衛官に米軍艦船の防護のための「武器の使用」を認めるもので、場合によってはミサイルの発射までも想定されるものです。
 この武器等防護の発令は、トランプ政権が軍事力を誇示して力による外交を展開し、こ
れに対抗して北朝鮮弾道ミサイルの発射を繰り返すという、米朝関係が極度に緊張する状況の中で、日本が米軍を守るという立場で軍事的にコミットするもので、これによって日本は明確に、軍事的対立の当事者となったことになります(追加訴状45頁以下)。
 さらに、報道によれば、今年5月以降数回にわたり、自衛隊の補給艦が、日本海等で弾
道ミサイル警戒をしている米イージス艦に燃料を補給しているのですが、これは、物品・
役務の提供の機会を拡大した改正自衛隊法100条の6に基づくものと解されます。これもまた、自衛隊が米軍と共同して、北朝鮮弾道ミサイル警戒活動を行っていることになり、日本を米朝の軍事的対立の当事者にしてしまうものです。
(3)もともと日本は、北朝鮮と軍事的対立関係にあったわけではありません。対立当事者はアメリカと韓国であり、北朝鮮のミサイル発射や核実験もアメリカに対する対抗戦略であることは明らかです。上記の自衛隊による米艦防護や物品・役務の提供は、その他国同士の軍事的対立に割り込んで一方に加担し、自ら危険を買って出る行為と言わざるを得
ません。新安保法制法と新ガイドラインは、このようにして日本を戦争の危険に導くものであり、戦力を持たず、武力の行使を抛棄し、平和主義のもとに国民の人権と生存を保障しようとする憲法9条に真っ向から反するものにほかなりません。
4 処分性に関する予備的主張について
 原告らはこれまで、本件における行訴法3条2項にいう「処分」について、集団的自衛権の行使等という事実行為を捉え、これらの事実行為が原告らの平和的生存権等の権利を侵害し、その侵害状態の受忍を強いるものとして、原告らに対する公権力の行使に当たると主張してきました。
 このたび、行政法学の大家であられる兼子仁東京都立大学名誉教授から、このような処分の捉え方は行政法上適法であると考えられるとのご意見とともに、集団的自衛権の行使等に先立つ自衛官に対する関係大臣の命令を処分として捉える方途についてもご示唆をいただきました(甲E5)。
 このようなご意見及び本件請求の趣旨等を総合考慮し、準備書面(13)のとおり、本件処分の捉え方について、予備的請求原因としての主張を追加したく、同書面のとおり陳述するものです。
                                                                            以上
 

原告ら訴訟代理人 弁護士 武 谷 直 人
 
PKO新任務と任務遂行のための武器使用の違憲
 
1 はじめに
 強行採決された新安保法制の一つに、国連平和維持活動協力法いわゆるPKO協力法の改正があります。
 この改正で、自衛隊が行える活動領域が大きく拡大されました。それは、いわゆる「安全確保業務」(住民・被災民の危害の防止等特定の区域の保安の維持・警護などの業務)と「駆け付け警護」(PKO等活動関係者の不測の侵害・危難等に対する緊急の要請に対応する生命・身体の保護業務)が追加され、それと共に、武装勢力等の妨害を排除し、目的を達成するための強力な武器の使用、すなわち任務遂行のための武器使用が認められたことです。
2 国連平和協力法案制定の経緯
⑴ PKO協力法制定に至る論議
 そもそも、PKO協力法は、いわゆる湾岸戦争を契機に湾岸戦争後の国連貢献策の名の
下に成立したものです。
 この審議過程においてもっとも大きな争点となったのは、自衛隊員の武器の携行とその使用についてです。PKO協力法は、自衛隊が平和維持軍に参加する以上は、国連の指揮の下で、組織的な武力行使をせざるを得ないことになり、国連平和維持軍への参加は、武力の行使を禁じた憲法9条に反すると当初から批判されていました。
 しかし、政府は、「平和維持軍(PKF)」への参加は当面凍結され、いわゆるPKO5原則(①停戦合意の成立、②紛争当事者のすべてのPKOへ参加の同意、③PKO活動
の中立性、④これらいずれかが満たなくなったときの部隊の撤収、⑤生命等防護のための必要最小限度の武器使用)を設けることによって、憲法9条には違反しないとして、1992年6月に可決成立させました。
 このように、もともとPKO協力法そのものが、PKO5原則の下でかろうじて、合憲性を維持しようとしていたのです。
3 PKO活動の拡大 (今回の新任務付与) の違憲
⑴ PKOの役割の変化
 さらに、新安保法制においてPKO活動における自衛隊業務の拡大の背景には、国連
PKO活動の変質・変遷があることを指摘しておく必要があります。
 従来のPKOは、PKO5原則のもとで行うことがその活動の中心でした。
 しかし、1994年、ルワンダにおける停戦合意の崩壊、PKO部隊の撤退による大量
の住民が虐殺される事件が発生したことを契機として、国連PKOの性質も変化し、「停
戦や軍の撤退などの監視活動」だけでなく、紛争当事者による住民の虐殺などが発生した場合には、停戦の有無とは関係なく、PKO部隊は、紛争当事者と「交戦」して住民を保護するという「住民保護」もその目的となりました。
 これでは、そもそもPKO5原則すら維持できず、特に必要性最小限の武器使用という
原則も通用しなくなってしまいます。
⑵ PKOにおける新任務及びそれに伴う武器使用の違憲
 今回のPKO業務の追加と武器使用権限の拡大について、政府は、PKO業務において、紛争の一方当事者との抗争に至ることはあり得ないから、憲法9条に違反することはないとしています。
 しかし、南スーダンでPKOに参加していた陸上自衛隊が2016年7月11日から
12日に作成した日報には、「戦闘」という言葉が多用されており、まさに、停戦合意が
崩れ、現地では戦闘状態が現出していることが明らかになりました。  
 かかる状況下において、仮に自衛隊が駆け付け警護のために武器使用をしたとすれば、それは、戦闘行為からさらに政府軍ないし反政府軍に対する武力の行使に至る危険性は明
白であったと言わなければなりません。
4 結論
 以上のとおり、南スーダンの事例を見るまでもなく、今後、再び紛争地帯においてPKOによって派遣された自衛隊が武器を使用する事態が生じる場合には、これは単なる「武器の使用」ではなく、「武力の行使」というべきであります。
 したがって、PKO協力法における新任務は、もはや政府の従来の解釈で正当化することはできないのであり、これは、武力の行使を禁止した憲法9条1項及び交戦権を否定する憲法9条2項に違反することは明白です。
                                                                            以上
 

原告ら訴訟代理人 弁護士 古 川(こがわ)健 三
 
 被告は、準備書面(1)において、本件集団的自衛権の行使等は、行政訴訟法3条2項の処分に当たらない、と主張している。しかし、この主張は、原告らの主張を正解せず、原告らが引用している判例に対する誤った理解に基づくものである。
 
処分性に関する最高裁判例について
 被告は、被告が処分性の一般的判断基準であるとする昭和39年最高裁判決は、何ら変更されておらず、原告が引用する病院開設中止勧告の処分性に関する平成 17年7月15 日の最高裁判例は、事例的な意味しか持たないと主張する。
 しかし、前記平成17年最高裁判例と同種事案である平成17年10月25日の最高裁判例において、藤田宙靖判事は補足意見の中で、昭和39年判決の考え方を「従来の公式」と呼び、「従来の公式」は現代の複雑な行政メカニズムには対応できず、そのような事実関係のもとで「従来の公式」を採用するのは適当でない、との趣旨を述べている。
 そして、前記平成17年判決以外にも、最高裁は、「実効的な権利救済のために当該行為を抗告訴訟の対象として取り上げるのが合理的かどうか」、という事情を考慮すべきと述べて、土地区画整理事業計画決定の処分性を否定していた従来の判例を変更した(最高裁大法廷平成20年9月10日判決)。その後も処分性を拡大する判例が相次いでおり、最高裁が昭和39年判決の考え方をもはや維持していないことは明白である。
 本件集団的自衛権等の行使が、 原告らに不利益な効果の受忍を義務付けることについて
 被告はまた、本件集団的自衛権の行使等は、被告に何ら不利益な効果の受忍を義務付けるものではないとし、その理由として、原告らの主張する「平和的生存権」「人格権」及び「憲法改正・決定権」の具体的権利性を争い、また、原告らの主張は、本件命令等にかかる事実行為が行われることにより必然的に我が国が戦争に巻き込まれるという仮定が成立してはじめて成り立つが、そのようなことは言えない、という。
 原告の主張する権利の具体的権利性についてはすでに他の準備書面で詳しく述べた。被告の後段の主張は、原告の主張を誤解するものである。原告らは、現に戦争が起きる場合はもちろんであるが、戦争が起きる危険性が生じることによっても原告らの権利が侵害される、と主張しているのである。そして、集団的自衛権の行使が行われた場合、我が国が戦争当事国となることを意味することはジュネーブ条約に照らし
明白であるから、戦争の危険は必然的に生じる。
厚木基地訴訟に関する最高裁平成28年判決について
 被告は、最高裁平成28年判決は、本件と事案を異にする、と主張する。
 しかし、最高裁平成28年判決及びその判断の前提とされた最高裁平成5年判決がいう「受忍義務」とは、法的義務とはいえない。厚木基地周辺住民が航空機運行によって受けているのは航空機の運航に伴う不利益な結果を受忍すべき「一般的な拘束」であって、法的地位や権利関係の変動ではない。
 そして、最高裁平成28年判決は、健康被害そのものを認めているのではなく、不快感や健康被害への不安感等の幅広い被害が、処分性及び損害の重大性を基礎づける、という判断をしたものである。
 この判断枠組みは、本件においても当然考慮されなければならず、「事案を異にする」という被告の主張は当たらない。
「行政権の行使」 は民事訴訟の対象でない、 とする被告の主張
 被告は、横浜地裁での主張内容が本件での 主張と矛盾する、との原告らの指摘に対し、「行政権の行使」は民事訴訟の対象でない、という。 
 しかし「行政権の行使」であっても「公権力の行使」に当たらない非権力的行為が住民差止訴訟の対象となることは確立した判例であって、被告の主張は誤りであり、詭弁と言わざるを得ない。
 原告は被告が主張する「当該行為の属性」とは何か、また被告のいう「行政権の行使」が「公権力の行使」と同一であるか否かについて釈明を求める。
まとめ
 処分性判断の核心は、本件集団的自衛権の行使等が、原告らに対し、いかなる不利益をもたらすか、という点にある。そしてその憲法適合性を具体的に検討せずして、処分性の判断をすることはできない。
 被告は、概念的で空虚な反論に終始することなく、集団的自衛権の行使の権利侵害性と憲法適合性について、正面から認否反論すべきである。
                                                                            以上
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/安保法制違憲訴訟関連)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述
2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述
2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述
2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述
2017年2月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述
2017年3月15日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(11)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述 
2017年3月16日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(12)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告(田島諦氏ほか)による意見陳述
2017年4月21日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(13)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述
2017年4月22日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(14)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告による意見陳述(様々な立場から)
2017年6月23日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(15)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年6月25日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(16)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告による意見陳述(野木裕子さん他)
2017年8月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(17)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年8月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(18)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)において3人の原告が陳述する予定だったこと
2017年8月20日
「私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える」市民大集会(2017年9月28日/日本教育会館)へのご参加のお願い
2017年9月30日
市民大集会「私たちは戦争を許さない」(2017年9月28日)で確認されたこと
2017年11月1日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(19)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年11月2日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(20)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告による意見陳述(今野寿美雄さん他)

2日連続 名古屋大学大学院教授(本秀紀氏&愛敬浩二氏)から学ぶ憲法をめぐる動向

 
 2017年11月4日配信(予定)のメルマガ金原.No.2976を転載します。
 
2日連続 名古屋大学大学院教授(本秀紀氏&愛敬浩二氏)から学ぶ憲法をめぐる動向
 
 昨日(11月3日)は本秀紀(もと・ひでのり)先生、今日(11月4日)は愛敬浩二(あいきょう・こうじ)先生という、お2人の名古屋大学大学院法学研究科の憲法学の教授が、連日、和歌山市改憲問題をテーマに講演されました。
 記録に留めるため(?)以下に開催概要を記載しておきます。
 
2017年11月3日(金・祝)午後2時00分~
和歌山市河北コミュニティセンター 2階多目的ホール
守ろう9条 紀の川 市民の会 第14回 憲法フェスタ 9条をまんなかに~えがこう平和への道~
講演「安倍政権の9条破壊を許さない~海外で戦争する『自衛隊』は認められない~」
講師 本 秀紀(もと・ひでのり)さん(名古屋大学大学院法学研究科教授・憲法学)
 
2017年11月4日(土)午後2時30分~
和歌山県JAビル 11階会議室
9条の会共同講演会(26団体共同企画)「安倍改憲を許すな!!」
講演「自衛隊憲法に明記させてはならない」
講師 愛敬浩二(あいきょう・こうじ)さん(名古屋大学大学院法学研究科教授・憲法学)
 
 何故2日連続して名古屋大学憲法学の教授が和歌山市で講演されることになったのかについて、今のところ、本先生をお招きする企画の方が先に決まっていたこと、9条の会共同講演会について、会場と講師の日程の都合により、可能な日が11月4日しかなかったこと、という2点が耳に入っているだけで、それ以上のことは不明です。
 ただ、怪我の功名というか何というか、私を含め、2日連続して聴講する機会に恵まれた者は、みんな大満足したのではないですかね。おそらくレジュメを読み返し、自ら考えることによって、さらに色々な示唆が得られることと思います。
 2日とも、かなり詳しめにFacebookにレポートを書きましたので、それを一部補訂の上転載することにします。写真については、リンク先のFacebookの方には複数掲載しています。
 

【11/3 第14回 憲法フェスタ(守ろう9条 紀の川 市民の会):本秀紀教授講演会】
 本日(11月3日)、和歌山市河北コミセンで、「守ろう9条紀の川市民の会」が主催する「第14回 憲法フェスタ」が開かれました。午前中には、和歌山県平和フォーラムの協力により、『高江 森が泣いている2』(藤本幸久・影山あさ子共同監督/2016年)の上映会や、不要となった子供服などをタダで貰えるリサイクル広場があったりして賑わいました。
 午後2時からの多目的ホールでは、①治安維持法犠牲者(戸臺俊一氏)の甥・戸臺敏治さんのお話、②和歌山県原水協の白井春樹さんからの核兵器禁止条約ニューヨーク要請行動の報告などに引き続き(ここまでで大幅タイムオーバーではらはらしました)、本秀紀(もと・ひでのり)先生(名古屋大学大学院法学研究科教授・憲法学)による講演が行われました。以下に、本先生が用意されたレジュメの項目(見出し)をご紹介します。
 
はじめに-安倍政治による議会制民主主義の危機
1 憲法から見た2017年総選挙-「自民大勝」は本当か?
2 安倍改憲の内容とねらい
(1)経緯
(2)内容:4本柱
(3)問題点
(4)ねらい
3 9条破壊を許さないために
 
 限られた時間(もともと限られていたのに、スケジュールが押していよいよ限られてしまった)の中で、ポイントを絞り、分かりやすくお話いただけました。
 私個人としては、レジュメの2(3)で、現時点での「自衛隊明記改憲」を考えるための4類型についての説明が、頭の整理のために非常に役立ちました。
 
※参考(レジュメから引用)
1 自民党改憲草案(2012年):9条2項を削除し、「国防軍」を創設。
cf. 西尾幹二「何もできない自衛隊を永遠化するという、空恐ろしい断念宣言」(6/1産経)
2 自衛隊違憲(9条2項違反):2項と「自衛隊」保持規定が矛盾⇒2項の「無効化」
3 自衛隊=合憲+集団的自衛権行使=違憲:2項(戦力=違憲)にもかかわらず、自衛隊は「自衛のための必要最小限度の実力」として合憲⇒自衛隊の明記は無意味or「自衛隊」を明記することで、2項により効いていた(自衛隊の活動に関わる)諸制約が緩和(ex.集団的自衛権行使の合憲化、軍事費拡大の歯止め緩和…)=2項の「無効化」
4 自衛隊=合憲+集団的自衛権行使=合憲(9条2項はほぼ無意味)⇒自衛隊の明記は無意味or「フルスペック」の集団的自衛権行使など、より「普通の軍隊」化が容易になる?
 
 ちなみに、明日(11月4日)は、本先生の名古屋大学での同僚・愛敬浩二(あいきょう・こうじ)先生が和歌山県JAビルで講演されますが、なぜ2日連続で名古屋大学憲法学の先生が和歌山市で講演されることになったのか、その真相について、フェスタ終了後の講師を囲んだ懇親会の席上、両方の企画に関わったM氏から「告白」がありましたが、ここで書くのは控えます。ただ、本先生から、是非明日の愛敬先生の講演会に参加して欲しいという要請があったことをご紹介しておきます。
 
 さて、写真をご覧いただければお分かりのとおり、本先生は名古屋から愛用のギターを持参して、講演の合間に(というか講演の一部として)得意の歌を3曲披露してくださいました。曲目をご紹介しておきます。
 
1曲目『戦争を知らない子どもたち』(一部替え歌)
2曲目『兵士Aくんの歌』(七尾旅人
3曲目『島んちゅぬ宝』(一部替え歌)
 
 正直、「歌う憲法学者」という評判は耳に入っていたものの、これまで動画サイトでも本先生の歌声を拝聴したことがなかったのですが、いやあ、完全に素人芸の域を脱しています。特に、『兵士Aくんの歌』は、曲自体の内容にもよりますが、満場の聴衆が息をのんで歌詞の一語一語に引き込まれていましたもの。
 ちなみに、作者である七尾旅人さんの歌唱は、YouTubeでいくつも聴くことができますし、いずれも素晴らしい演奏ですが、本先生の演奏は、オリジナルを尊重しながら、完全に自分の歌になっていると感心しました。
 
 なお、本先生は愛知憲法会議の事務局長を務めておられますが、講演会でも特に推奨されていた憲法会議が1冊100円で好評頒布中の20ページの憲法パンフレット「憲法9条を変えて、『戦争する自衛隊』にしていいのですか」の申込書(FAX用)はこちらです。
 
 さて、「守ろう9条 紀の川 市民の会」は(地方の一地域9条の会にもかかわらず)春の総会(記念講演)と秋の憲法フェスタに憲法学者をお招きすることが多く、本先生で7人目となります。
 
2012年・憲法フェスタ 吉田栄司先生(関西大学教授)
2014年・総会 森英樹先生(名古屋大学名誉教授)
2014年・憲法フェスタ 清水雅彦先生(日本体育大学教授)
2015年・憲法フェスタ 高作正博先生(関西大学教授)
2016年・総会 石埼学先生(龍谷大学教授)
2017年・総会 植松健一先生(立命館大学教授)
※以上6人の皆さんの講演要旨にリンクした私のブログ(6人の憲法研究者の講演録を読む~「守ろう9条 紀の川 市民の会」で語られたこと(吉田栄司氏、森英樹氏、清水雅彦氏、高作正博氏、石埼学氏、植松健一氏)/2017年5月21日)をご参照願います。
2017年・憲法フェスタ 本秀紀先生(名古屋大学教授)
 
 毎回必ず憲法学者に来ていただいている訳でもないのですが、9条の会ですから、やはり「憲法を学ぶ」ことを中心に人選することになります。来年の総会(普通、3月か4月に開催しています)はあっという間に来てしまいますから、今から人選を進めないといけませんね。本先生からお名前の上がった〇〇先生にあたってみようか、それとも「憲法ネット103」に相談してみようか、はたまた全然別ジャンルの方を考えるか。いずれにしても、もうあまり時間はありません。
 それにしても、本先生に至る講師陣の顔ぶれ、凄いでしょ?(と主催者としては自慢したい気持ちもある)何とかこの伝統を繋いでいきたいものです。
 

【11/49条の会共同講演会:愛敬浩二氏講演会「自衛隊憲法に明記させてはならない」】
 3連休の中日となった11月4日(土)午後2時30分より、和歌山県JAビル11階会議室において、名古屋大学大学院法学研究科教授の愛敬浩二(あいきょう・こうじ)先生による講演会がありました。
 チラシに記載があるとおり、和歌山市及びその周辺の9条の会25団体による共同企画であり、私も、チラシ印刷には間に合いませんでしたが、趣旨に賛同することを決めた26番目の団体(憲法9条を守る和歌山弁護士の会)のメンバーとして、分担金(非常に低廉な額ですから、これで全経費を賄うわけにはいかないでしょう)を実行委員会事務局に届けるとともに、11月21日(火)に開催するリレートーク自民党改憲4項目の検証」のチラシを各団体の代表にお渡しして広報への協力をお願いするため、早めに会場に着きました。
 最初のうちは各団体の事務局長などが分担金を払うためにぼちぼち来られるだけで、キャパ195席の会場にどれだけの人が来てくれるかと心配していましたが、開会前の目分量で、ほぼ8割方は埋まっており、流石に20数団体共同企画だけのことはあると思いました。
 
 午後2時半という比較的遅めの開会ということもあり、愛敬先生は、少し早めの電車で来られ、和歌山城を観光されたとか。昨日の本秀紀(もと・ひでのり)先生(守ろう9条 紀の川 市民の会)は、ギターを抱えて観光という訳にもいかず、講演+公演オンリーでしたけど。
 
 実質的には「九条の会・わかやま」が提唱した共同企画ですが、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」を含めれば26団体の共催と言ってもよい訳で、場内の聴衆は、ほとんどが主催者の一員でもあったことになります。
 衆院選の結果が出てから2週間、あらためて9条改憲についての危機感をいだき、参加された方も多かったのではないかと思います。その点については、質疑応答での質問の内容を聞いても推測されます。
 
 以下に、愛敬先生のレジュメから、その項目(骨子)を抜き書きします。
 ちなみに、演題「自衛隊憲法に明記させてはならない」は主催者からの提案だろうと思いますが、副題「2017総選挙後の憲法動向と私たちの課題」は、愛敬先生が自分で考えられたのかと推測します。
 
1 10・22総選挙で改憲動向にどんな変化が生じたのか?
(1)総選挙の結果
(2)10・22総選挙前の改憲情勢-「3分の2」にもかかわらず、なぜ「抱き込む」のか?
(3)改憲勢力としての希望の党への期待
2 現代政治の諸条件と安倍「改憲・壊憲」戦略
(1)現代改憲の特徴-安倍改憲は個性的ではあるが、例外ではない。
(2)戦後欧米諸国が築き上げたLiberal Democracy(資本主義の枠内での平等と寛容)の危機
3 安倍9条3項「加憲論」の問題点と危険性
(1)安倍個人の「遺産Legacy」としての9条改憲-「憲法の私物化」の極地
(2)9条3項「加憲論」の危険性
4 9条運動の課題
(1)Overlapping Consensusとしての憲法9条
(2)「戦後平和運動の記憶」の回復
(3)9条改憲国民投票の実施を視野に入れて
 
 自公両党で3分の2の議席を確保した選挙結果は少しも意外ではなかったとか、共産党議席大幅減は、元に戻っただけで、2009年、2012年に比べれば増えているとか、がっかりばかりしていても良くないという愛敬先生の考え方に目を開かれました。
 あと、運動論との関わりで私が非常に参考になったことを2点だけご紹介しておきます。
 
〇「希望の党」をいかに「左ぶれ」させるかが重要(⇒「こちらの方から『希望の党』を右へ、右へと追いやっても仕方がない」とは言われませんでした。これは私の独り言です)
〇9条加憲案が発議され、国民投票となった場合、改憲派は「もしも憲法改正案が否決されたら、自衛隊がなくなってしまうかもしれない。それでもいいのか?」と国民を脅しにかかると考えなければならない。従って、9条加憲反対派も、否決した場合に「どこまで戻るのか?」ということについての意見をしっかりと持つべきである。
立憲民主党(「立憲デモクラシーの会」も?)は、2014年7月1日の集団的自衛権を容認した閣議決定がなされる前の状態(伝統的自民党政権の立場)に戻ると主張するのだろうと思う。しかし、私たち(共産党なども?)は、海外派兵は一切認めないという1990年(湾岸戦争1991年、PKO協力法1992年)に戻ることを主張すべきではないか。
 
 以上の2点以外にも、色々と示唆に富むご意見が伺えたと思います。レジュメを読み返すことによって、また新たな発見もあるでしょう。
 2日連続での「名古屋大学大学院教授から学ぶ憲法をめぐる動向」、私を含め、2日続けての聴講者はかなりいたようです。実に貴重な体験であったことをご報告します。 
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/安倍改憲メッセージ関連)
2017年5月24日
立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」を読む
2017年6月16日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」発表記者会見(5/22)
2017年6月22日
羽柴修弁護士講演会「憲法をめぐる情勢と国民投票を意識した取り組み」から学ぶ
2017年6月27日
動画・学習会「安倍首相の改憲発言をめぐって」(九条の会事務局)~浦田一郎さん、渡辺治さんのダブル講演で学ぶ
2017年6月30日
立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」(6/26)を読む
2017年7月9日
「なるほど!新9条改正案を斬る」(イキョンジュ氏「アジアの中の日本国憲法」出版記念イベント)のご案内
2017年7月12日
和歌山県下7団体共同声明「安倍首相による改憲発言についての声明」を今日(7/12)発表しました
2017年7月18日
市民連合「緊急シンポジウム ストップ安倍政治-改憲を許さない市民集会」(7/12)を視聴する
2017年7月20日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」発表記者会見(6/26)
2017年7月26日
法律家6団体アピール「自衛隊の存在を9条に明記する安倍改憲提案に反対します」と清水雅彦氏講演動画「『2020年 安倍改憲』~その中味と狙いとは何か」のご紹介
2017年7月31日
君島東彦立命館大学教授「安倍改憲案とわたしたちの平和構想―9条論の再創造―」講演動画を視聴する
2017年8月2日
「安倍9条加憲NO!シンポジウム―未来をつくる日本国憲法―」(中野晃一、武村正義長谷部恭男辻元清美各氏/7/31)の動画を視聴する
2017年8月9日
青井未帆氏「憲法自衛隊を明記することの意味を考える」講演動画(8/5兵庫県弁護士9条の会)を視聴する 
2017年8月23日
和歌山弁護士会憲法学習集会9/20「安倍首相の新たな改憲提言について―自衛隊憲法に書き込む改憲は何をもたらすか―」(講師:青井未帆氏)のご案内
2017年9月5日
九条の会」も参加して「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」がスタートします~目指せ3000万人署名
2017年9月9日
「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」9.8 キック・オフ集会大成功~3000万人署名活動スタート!
2017年9月13日
「安倍9条改憲を阻むために全国の九条の会は立ちあがりましょう」(9/6九条の会事務局からの訴え)
2017年9月14日
「安倍9条改憲NO!」のために「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」はまだまだ頑張ります
2017年9月15日
今年の憲法フェスタ(11/3守ろう9条 紀の川 市民の会)は本秀紀(もと・ひでのり)さん~歌う憲法学者が語る9条と自衛隊
2017年9月18日
9条の会共同講演会「安倍改憲を許すな!!」(愛敬浩二名古屋大学大学院教授@11/4和歌山県JAビル)のご案内
2017年10月11日
「安倍9条改憲NO!大学人と市民のつどい―憲法問題シンポジウムと大学有志の会ブロック連絡会発足記念集会」(2017年10月8日)を視聴する
2017年10月17日
憲法(特に9条)についての各党「公約」比較~とても分かりやすくなっていた
2017年10月22日
清水雅彦氏(日本体育大学)講演動画「学ぶ!安倍改憲の真実!」(10/17市民連合国分寺)を視聴する
2017年10月23日
山田朗明治大学教授による講演「安倍改憲の危険性と北朝鮮問題」を視聴する(映画人九条の会
2017年10月26日
11/3は「安倍9条改憲NO!わかやまアクション」に結集を!(汀公園)~11月に開催される講演会・リレートークのお知らせ@和歌山市
2017年10月28日
開催予告11/21「リレートーク 自民党改憲4項目の検証」(憲法9条を守る和歌山弁護士の会) 
2017年10月29日
地域からの結集を!~「9条改憲NO!全国市民アクション・国立」の「キックオフ集会inくにたち」を視聴する
2017年10月31日
自民党改憲4項目のうち「参議院の合区解消」について~浦部法穂氏の論考で学ぶ

11/30カジノ問題を考える和歌山ネットワーク・創立総会のご案内(記念講演:井上善雄弁護士)

 2017年11月3配信(予定)のメルマガ金原.No.2975を転載します。
 
11/30カジノ問題を考える和歌山ネットワーク・創立総会のご案内(記念講演:井上善雄弁護士)
 
 巻末のリンク一覧をご覧いただければ分かると思いますが、昨年の12月以来、こつこつと(?)書いてきた私のブログでの「カジノ問題」シリーズも、相当の分量になってきました。
 ところで、11月1日に召集された第195回国会(特別会)の会期が、当初、実質審理も行われない短期間となり、その後、来年1月に召集される通常国会まで、臨時国会も開かれないのではないかという情報が飛び交っていましたが、私は、半信半疑で推移を見守っていました(結局、特別国会の会期は12月9日までとなりました)。
 私が「半信半疑」であった理由の1つ(それも重要な)がカジノ問題なのです。
 というのは、昨年(2016年)12月に議員立法で成立した「特定複合観光施設区域の整備の推進に関する法律」(同年12月26日施行)には、次のような規定が置かれているからです。
 
第五条 政府は、次章の規定に基づき、特定複合観光施設区域の整備の推進を行うものとし、このために必要な措置を講ずるものとする。この場合において、必要となる法制上の措置については、この法律の施行後一年以内を目途として講じなければならない。
 
 つまり、カジノ実施法案(多分、「特定複合観光施設区域の整備の実施に関する法律」とでも称するのでしょうが)を、年内に国会に提出して成立させることがスケジュールに組み込まれているからです。
 結局、特別国会の会期が12月9日までとなったのが、カジノ実施法案のためばかりでだった訳でもないでしょうけどね。
 
 ところで、カジノ誘致に公式に名乗りを上げている自治体に和歌山県があります(恥ずかしいことです)。誘致しようとしている和歌山マリーナシティは敷地が狭すぎるとか、外国人専用カジノを作ろうというカジノ業者などあるのかとか、いろいろ言われていますが、かといって、楽観(と言うのも変ですが)は禁物です。
 そもそも、外国人専用であろうが日本人対象であろうが、カジノなどあってはならないということを正々堂々と市民、県民に訴えるべきです。
 かねてから、そのような活動を県内で主導してきた「カジノ問題を考える和歌山ネットワーク準備会」が、来る11月30日(木)に、いよいよ創立総会を開催することになったとのご案内をいただきましたので、ご紹介することとします。
 以下にチラシの記載内容を転記しますが、特にチラシ裏面の「カジノ百害いろいろ」8項目は、誰でも「そりゃあそうだ!」と納得してくれるポイントが凝集されていて感心しました。
 是非多くの方にこの問題に関心を持っていただき、和歌山マリーナシティのカジノも駄目!、大阪夢洲カジノも駄目!の世論を強力に盛り上げていきたいと思います。
 
(チラシから引用開始)
-チラシ表面-
カジノは百害
利するものは何もありません
 
カジノ問題を考える和歌山ネットワーク・創立総会のご案内
 
 「和歌山マリーナシティへのカジノ誘致は、政府がすすめる設置要件を満たすことが困難」と、仁坂知事が自ら認めながら、県のカジノ基本構想の取りまとめを「トーマツ」に委託するなど、誘致を諦めず県民の血税をさらにつぎ込んでいます。
 カジノは、世界文化遺産の宝庫・和歌山の観光イメージを損なう恐れが大きいものです。さらにその百害(裏面に紹介)は計り知れません。
 この間、私たちは「カジノ問題を考える和歌山ネットワーク」準備会として、「市民の集い」など開催してきましたが、このたび正式に設立させようということになりました。
創立総会に併せて、ギャンブル依存症、カジノ問題に詳しい井上善雄弁護士を招いての記念講演もあります。市民の皆さまのご参加をお待ちしています。
 
2017年11月30日(木)18:30~
和歌山県民文化会館特設会議室(3階)
 
記念講演「ギャンブルによる消費者被害とカジノ」
講師/井上善雄弁護士
【講師プロフィール】
1946年生まれ。1971年大阪弁護士会登録、人権、公害、消費者保護等委員会。1980年市民オンブズマン結成。2012年ギャンブルオンブズマン結成、ギャンブル依存の防止のための社会活動を続けている。
 
-チラシ裏面-
カジノの百害いろいろ
 
刑法が禁じている犯罪行為
カジノは賭博。賭博行為は「怠惰浪費の弊風を生じせしめ、健康で文化的な社会の基礎をなす勤労の美風を害し、国民経済の機能に重大な障害を与える恐れがある」(最高裁判決)として、刑法が禁じている犯罪行為。
 
青少年に悪影響をもたらす
家族ぐるみででかけるIR施設に、公然と賭博場があることは、賭博への抵抗感を喪失させてしまい、青少年に悪影響をもたらすことは明らか。
 
人生は一変する
殆どの人が巻き上げられて飢えや借金に苦しむことになる。大王製紙の御曹司は100億円を巻きあげられた。「一攫千金」に人格は破壊される。
 
不健全な成長戦略
カジノは、賭博客の負け分が収益の柱となる。ギャンブルにはまった人や、外国人観光客らの散財に期待し、他人の不幸や不運を踏み台にするような成長戦略は極めて不健全といわねばならない。
 
賭け行為は国民所得の削減を意味する
何の生産物も生まず、おカネと時間が吸い上げられる。
 
ギャンブル依存者を生む
ギャンブルを渇望し、したいという衝動を制御することができず、そのせいで借金をし勤労しなくなり社会生活上の問題が生じてもやめられないといった状態に陥る。家族や周囲にいる人への影響も大きく、周囲の人も傷つく。
 
治安の悪化はさけられない
昨年1年間に起きたギャンブルがらみの犯罪が2328件もある。そのうちパチンコがらみが1329件、公営ギャンブルがらみが999件。2017年6月にはマニラのカジノで発砲放火事件があり、36人が死亡した。
 
外国人賭博客に期待できない
マカオシンガポールのカジノ業者の収益の大半は中国富裕層の負け金。最近は、中国の
腐敗取り締まり強化でそれも急減。そもそも中国や韓国では賭博を禁じており、日本のカジノでも勝ち金を受け取ると自国で処罰の対象となりうる。韓国・米国ではカジノ設置自治体の人口減少あるいは多額の損失を被ったという調査結果もある。
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/カジノ問題関連)
2016年12月8日
カジノ推進法案をめぐる和歌山の現状と読売新聞による徹底批判
2017年2月27日
和歌山弁護士会「いわゆる「カジノ解禁推進法」の成立に抗議し、同法の廃止を求める会長声明」(2017年2月27日)と和歌山でのカジノ誘致の動き
2017年3月10日
「カジノで観光・まちづくり!?ちょっと、おかしいんとちゃうか!緊急トーク集会」3/13@プラザホープのご案内と4月・5月の「予告編」
2017年3月26日
「カジノあかん3・25大阪集会」動画のご紹介と12/12参議院内閣委員会での新里宏二弁護士と鳥畑与一静岡大教授の反カジノ意見陳述
2017年4月5日
「カジノ実施法案」作成作業が始まりました~クリーンなカジノの実現を目指して(!?)
2017年6月21日
和歌山でのカジノ誘致に反対する動き~和歌山弁護士会「会長声明」(6/16)とカジノ問題を考える和歌山ネットワーク準備会「市民集会」(7/19)
2017年7月5日
カジノ実施法案の準備状況とNNNドキュメント『ギャンブル依存~抜け出せない"病"回復と衝動の狭間~(仮)』(7/30)のお知らせ
2017年8月18日
予告編・「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」パブコメ募集にカジノ反対の圧倒的世論の結集を!
2017年8月19日
「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」パブコメ募集にカジノ反対の圧倒的世論の結集を!(本編)
2017年8月30日
あと1日!(8/31まで)「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ~「観光先進国」の実現に向けて~」パブコメ募集にカジノ反対の意見を送ろう
2017年9月1日
和歌山弁護士会が「特定複合観光施設区域整備推進会議取りまとめ」に関するパブコメに送った意見書を読む
2017年9月3日
「第24回全国市民オンブズマン和歌山大会」に参加して
2017年9月4日
大阪弁護士会シンポジウム「カジノ実施法の制定阻止に向けて」(9/16)への参加を呼びかけます
2017年9月16日
「カジノ実施法の制定阻止に向けて」(大阪弁護士会)」に参加して

司法に安保法制の違憲を訴える意義(20)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告による意見陳述(今野寿美雄さん他)

 2017年11月2配信(予定)のメルマガ金原.No.2974を転載します。
 
司法に安保法制の違憲を訴える意義(20)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告による意見陳述(今野寿美雄さん他)
 
 昨日の原告訴訟代理人の陳述に続き、去る9月28日に東京地方裁判所で開かれた安保法制違憲・国家賠償請求訴訟の第5回口頭弁論での3人の原告の皆さんによる意見陳述の要旨を、安保法制違憲訴訟の会ホームページから転載してご紹介します。
 
 東京国賠請求訴訟では、次回(第6回)期日(2018年1月26日)、次々回(第7回)期日(同年5月11日)のいずれも、午後一杯の時間を取った指定がされ、いよいよ次回以降、証人尋問、原告本人尋問等の証拠調べの段階に入っていくことになります。
 従って、第5回口頭弁論まで行われたような形式の原告意見陳述は、今回が最後かもしれません。
 
 今日ご紹介する3人の原告は、これまで意見陳述された原告と同様、福島第一原発事故に遭遇した原子力発電関連従事者、仙台大空襲被災者、JR勤務者など、様々な背景を持った方々であり、それぞれ安保法制の制定により、どのように精神的苦痛を受けたかを説得力豊に語ってくださっています。是非、その声に耳を傾けていただければと思います。
 

原告 今 野 寿美雄
 
1 私は、2011年3月11日の東日本大震災の頃、福島第一原発から10㎞くらいの浪江町で妻と幼稚園のひとり息子と暮らしていました。
 私は、原子力従事者で、当日は宮城県女川原発に出張中でした。女川湾も津波に襲われ移動できず3月15日まで足止めになりました。
 3月11日の夜、ニュースで福島第一原発が全電源喪失し、原子炉水位が低下していることを知りました。メルトダウンしていることは確実だと思いました。家族はちゃんと遠くに避難しているだろうかといても立ってもいられない思いでした。
 15日になって、やっと福島に向かいましたが、自宅のある浪江町はすでに立ち入り禁止区域になっていました。 
 妻や息子は誘導されて避難していましたが、そこは、実は自宅周辺よりも放射線量の高い地域だったことがわかりました。国や県は、SPEEDIのデータを生かさず、汚染の状況や被ばく量を隠し続けて、汚染の酷い高線量地域に人々を留めおき、不要な被ばくを受けさせ続けたのです。情報が広報され誘導にいかされていればと悔しくて仕方ありません。国も自治体も、安定ヨウ素剤の配布も、服用もさせず、避難させず、何の対策も取らないどころか、被ばく拡大をしました。その後、故郷に帰れない私たちは転々とし、現在、福島市飯坂温泉に出来た復興公営住宅で避難生活を続けています。
 仮住まいで転校させた子どもも小学校を卒業する年になってしまい、不安定に6年を過ごさせたのではないか、あるいは、子どもの世界での「原発避難のいじめ」にも日々心を痛めています。
2 幼稚園だった息子は、確実に被ばくし、事故後、半年位経ってから、1か月に2度、風邪をひくようになりました。免疫力の低下によるものと思われます。2年間位続きました。私たち大人はともかく、まだ小さな子どもの受けた内部被ばくの影響が今後どのように出てくるのか、本当に不安でたまりません。
 行政は、被ばく量を測定してほしいと希望しても行いませんでした。高い数値が出ないように、半減期が過ぎる物質があればそれを待ちたかったのではないかと思います。また、旅館に避難中、当時出産直前の親戚の女性が、生まれてくる子に母乳が飲ませられるかどうか知りたく、母乳の汚染検査を求め県庁に何度も依頼しに出掛けましたが、「国や県の意向で測る事は、出来ない」と言われました。その数値が高いことを明らかにしたくなかったのではないでしょうか。彼女は初乳だけを赤ちゃんに飲ませ、あとは乳を捨て、支援物資の粉ミルクを与えていました。
 放射線障害防止法は『一般人の追加被ばく線量年間1mSv(シーベルト)以下』という基準を定めていました。ところが事故後は、年間20mSvまで許容される、などとしています。私は、原子力で29年間働いてきましたが、今までで最高の被ばく線量は、年間 12mSvです。いかに、20mSvと言う数値が大きいかということです。原子力従事者より多くの被ばくを小さな子どもたちに強要しているのです。子どもの将来をいったいどう考えているのかと本当に許せない思いです。
3 安保法制ができたことによる現実的な恐怖
 安保法制の成立により、戦争をするアメリカと一線を画してきましたが、これからはアメリカと一緒になって戦争をする国になってしまいました。
 日本も、また他国から疎まれてテロの対象になる可能性が高くなりました。日本が各地に多数おいている原発は格好の餌食です。少し前のパリのテロの時にも、フランス政府は原発へのテロを警戒したといいます。原発が狙われるというのは、私の思い過ごしではありません。
 原発が狙われたときには、その被害は甚大です。
 近隣住民は、故郷を失い、生活の安定を失い、健康被害を受けさらには、私たち大人が守らなければいけない子どもたちが、将来どんな被害を生じるとも分からない被爆の結果を残すのです。原発の被害は、絶望的な被害で、それを受けた者の苦悩は言葉で言い尽くせません。
 

原告 土 田 黎 子
 
 私は、1941年の生まれです。仙台で空襲に遭いました。
 1945年7月10日未明、テニアンを発ったB29が120機あまり襲来し、3000人近い人が一夜にしてなくなったいわゆる仙台大空襲です。私は、3歳8ヶ月でしたが、燃え盛る街なかを母に背負われ逃げたその時の映像が、記憶が鮮明にあります。
 翌朝、幸運にも焼け残った私の住まいの一部屋に、焼夷弾の直撃を受け亡くなった父の友人が畳に乗せられて運ばれてきました。その部屋に行ってはいけないといわれていましたが、私がそっと部屋をのぞいてみると、畳のへリに白い米粒のようなものが一面にびっしりはり付いていて、それが蠢いていた光景を幼子心に忘れることができません。今も「戦争」という言葉を耳にするとき、この光景が鮮明に蘇ってきます。
 戦争の記憶は重苦しい空気の記憶でもあります。
 私の父はキリスト教会の牧師でした。キリストを唯一の神と信じる父と母にとっては、現人神である天皇以外の神を礼拝することが許されなかった戦争の時代は本当に辛い時代だったということです。信者の礼拝出席はゼロになり、監視に来ていた特高の警官だけが、熱心な信者であるかのような皮肉な光景だったということでした。父は、特高からも何度も呼び出され、事情を聞かれたりしたそうです。また、隣組が組織されていたため、近隣からは、「耶蘇教の牧師なんて敵性思想にかぶれた英米のスパイだ」と言われ、我が家は、近所から完全に孤立していたようです。幼い私には、事情は分からず、ただ、父が家から連れて行かれるときの恐ろしさと不安、父が戻ってくるまで、母が合掌をしてずっとお祈りをしている光景は記憶に残っています。
 家の中一杯に漂う、その不安で重苦しい空気は忘れることができません。
 私は長く保育園で子どもたちに関わってきました。子どもたちは小さくても、3才から5 才くらいの時期に感受性も育ちます。私が体験した戦争、町が炎に焼かれ人が亡くなるという体験は子ども心に刻印され、消えることのないものだということを、自分の仕事を通しても学びました。
 私は、この自分の体験から、二度と戦争を起こさないため、子どもたちを戦争に巻き込まないために、戦争の時代にどんなことがあったのかを伝える冊子を作る活動をするようになりました。その活動の中で、実際戦場に行かされた兵士の苦しみにも出会いました。特に、日本軍の常軌を逸した残虐性、軍隊内の隷属関係、兵士を見殺しにするような無謀な作戦や他民族蔑視など、人が人でなくなる戦場の実相を次第に知るようになりました。
 戦後、二度とあのような戦争を起こさないように日本国憲法が作られました。戦前の言論弾圧や思想良心、信教の自由が侵害されたことから、これらを強く保障する規定も整備されました。にもかかわらず、2015年9月に安保法制が強行採決されて以来、精神的な自由さが奪われていた幼児期の息苦しさがよみがえるとともに、元兵士たちが伝えてくれた戦場での経験を反芻し、悪夢をみる思いでいます。
 この国は三権分立が貫かれており、立法や行政が誤ったことをしたときには、司法が正しく判断してくれる、人権の最後の砦である国だと信頼してきました。
 ところが、原発のこと 沖縄のこと 全国にある米軍基地のことなどについて、もっと国民の権利を考えてもらいたいから判断を避けてしまっているようにみえることに一国民として司法に信頼をもてなくなっています。
 どうか、私たちがこの安保法制ができたことで負っている戦争の不安、苦しみを分かって下さい。そして、司法の使命を果たして下さい。
 空襲のあと亡くなった人の周りで蠢いていたウジの話を、最近になって2才年上の兄にしてみました。兄ははっきり覚えていました。「あのときは7月で暑くてにおいがひどかったから、僕はヤマユリを何度も取りに行って、たくさん摘んで来てその人の周り置いたんだ。そして遺体を焼く薪を運ぶ手伝いもして、遺体を焼いたんだよ。」と初めて話してくれました。兄の心の中にも重苦しいものがずっしりと残っていました。
 二度とこんなことを日本でも他国でも起こすことのないようにして下さい。
 

原告 恒 本   肇
 
1 私は北海道の出身で、1978年に国鉄に就職し、その後分割民営化を経て清算事業団を2年経験し、1989年にJR東日本に採用になり現在に至っています。
 高校を卒業し就職して仕事を覚える傍ら、労働運動に出会いその側面から労働に対する見方、国鉄赤字に対する政府や財界の思惑などを知る中で、自ずと政治や社会について考えるようになりました。私の所属する国労は、日本がアジアの多くの民衆を犠牲にしてきた戦争を二度と繰り返さないこと、翼賛会政治のような潮流には決して流されないことを誓い合い労働者の団結の下に結成されました。結成当初から幾多の困難を経て現在まで一貫していることは、団結と平和の追求です。私は戦争を知らない世代ではありますが、第二次世界大戦後も世界で起きている戦争を見るときに、日本が当事者となって引き起こした先の戦争を反省し、誓った平和憲法こそ紛争の絶えない現代世界の中で胸を張って広めなくてはならないものであると思います。
2 ところが、2015年9月に多くの国民の声を無視し安保関連法が成立させられまし
た。平和憲法に反するものであり、精神的な苦痛は体調にも影響を及ぼしています。  
 私たち公共交通に従事する者は、必ず戦争に加担することになるからです。戦中の国鉄は人を運ぶだけではなく、兵隊と戦車と爆弾を載せて走った歴史があります。現在でも、米軍基地へのジェット燃料輸送にJRが使われていますが、アメリカの戦争にいかなる形であれ、参戦することになれば、自ずと対戦国の標的されることにもなりかねません。そして、私たちと同様に鉄路だけではなく空路、航路に従事する労働者、医療に従事する労働者など、過去の戦争にかかわった多くの産業労働者、直截的に関わることになる自衛隊員、その家族の悲惨な心情は、戦後70年間続いてきた日本の平和を覆すだけではなく、アジアの各国に対する信頼の崩壊に繋がりかねません。
3 ところで、私は7年前から、東京の目黒駅で出札・改札等や緑の窓口などを担当しています。
 目黒駅は、1日のJR利用者が約11万人ほど、それ以外に私鉄や地下鉄もあり、乗降人員だと70万人近くになります。また、場所柄大使館(コロンビア、タイ、フランス、ネパール、インドネシア等)等が多くあるので、外国人旅客数は増加していて、外国人だからと目立つこともありません。監視カメラは、目黒駅に何十台とありますが、警察官の姿もカメラにはよく写っています。監視やコントロール手段が充実してきているとはいえ、鉄道の駅は空港などとは違い、基本的にセキュリティーチェックはありません。切符さえ買えば、爆弾を身体に巻き付けた人でも紛れ込むことができます。この状況を冷静に考えたとき、この人混みでテロを行うことは容易であり、その被害は膨大に及びます。惨状は想像できます。それは、そして、一つの駅で事件が起きれば東京はあっという間に交通も生活もマヒします。
 アメリカと一緒になって武器を持って戦う国になることは、テロの危険を招くことになります。監視カメラや警官の監視では防ぎきれません。このことの不安は、安保関連法ができて以来、片時も私の心から離れることがありません。
 カメラに写る多くの人の波を日々目にするとき、穏やかにこの駅を通過し無事に目的地に着いてほしいと思います。日々行き来する乗客の方たちに危険は絶対に来ないでほしいと祈ります。
 司法には、この危険な憲法違反の安保関連法が違憲であることをはっきりと認めてほしいです。
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/安保法制違憲訴訟関連)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述
2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述
2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述
2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述
2017年2月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述
2017年3月15日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(11)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述 
2017年3月16日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(12)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告(田島諦氏ほか)による意見陳述
2017年4月21日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(13)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述
2017年4月22日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(14)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告による意見陳述(様々な立場から)
2017年6月23日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(15)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年6月25日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(16)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告による意見陳述(野木裕子さん他)
2017年8月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(17)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年8月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(18)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)において3人の原告が陳述する予定だったこと
2017年8月20日
「私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える」市民大集会(2017年9月28日/日本教育会館)へのご参加のお願い
2017年9月30日
市民大集会「私たちは戦争を許さない」(2017年9月28日)で確認されたこと
2017年11月1日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(19)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述

司法に安保法制の違憲を訴える意義(19)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述

 2017年11月1配信(予定)のメルマガ金原.No.2973を転載します。
 
司法に安保法制の違憲を訴える意義(19)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
 
 昨年(2016年)4月26日に東京地方裁判所に提訴された2件の安保法制違憲訴訟のうち、国家賠償請求訴訟の第5回口頭弁論が9月28日に開かれ、その日の法廷で陳述された訴訟代理人(弁護士)3人と原告3人の意見陳述の要旨が、安保法制違憲訴訟の会ホームページにアップされました。
 そこで、今日はその前半として、3人の原告訴訟代理人(福田護弁護士、島村海利弁護士、伊藤真弁護士)による陳述をご紹介します。それぞれの陳述は、裁判所に提出された原告「準備書面」の概要を述べるものであったはずです。
 なお、通常であれば、裁判判終了後に報告集会が開かれるのですが、9月28日には、市民大集会「私たちは戦争を許さない」(於日本教育会館)が開催されたため、報告集会自体はありませんでした(市民大集会「私たちは戦争を許さない」(2017年9月28日)で確認されたこと/2017年9月30日)。
 
 上記の市民大集会での寺井一弘共同代表の主催者挨拶でも言及されていましたが、次回(第6回)期日が2018年1月26日(金)、次々回(第7回)期日が5月11日の、いずれも午後一杯の時間を取った指定がされ、東京安保法制違憲・国賠請求訴訟は、いよいよ次回以降、証人尋問、原告本人尋問等の証拠調べの段階に入っていくことになります。
 原告側からは、元最高裁判事、元内閣法制局長官憲法学者国会議員を含む19名の証人申請、様々な立場を代表する18名の原告本人尋問を申請したそうです。
 以下に、市民大集会の動画を再掲しておきます。
 
20170928 UPLAN 「私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える」市民大集会(2時間22分)
冒頭~ 映像(長崎の被爆者団体「ひまわり」による演奏『もう二度と』/2017年8月9日 長崎原爆犠牲者慰霊平和祈念式典より/)
4分~ 開会挨拶 寺井一弘弁護士(「安保法制違憲訴訟の会」共同代表)
17分~ 基調講演「私たちはなぜ戦争を許さないのか」
      伊藤真弁護士(「安保法制違憲訴訟の会」共同代表)
原告の思い
1時間10分~ 河合節子さん(東京大空襲被害者)
1時間15分~ 服部道子さん(広島原爆被爆者)
1時間24分~ 本望隆司さん(外国航路船員)
1時間29分~ 井筒高雄さん(元自衛官
来賓挨拶
1時間34分~ 濱田邦夫さん(元最高裁判所判事)
1時間45分~ 青井未帆さん(学習院大学教授)
1時間48分~ 柚木康子さん(安保法制違憲訴訟女の会)
特別報告 
1時間55分~ 山城博治さん(沖縄平和運動センター議長)
アピール採択
2時間06分~ アピール案朗読 棚橋弁護士
 
 今日ご紹介する3人の訴訟代理人による陳述を一読したところ、証拠調べに入る前の最後の弁論期日に相応しく、原告の主張のうち、最も重要なポイントをあらためて強調し、裁判所の注意を喚起しようとしたものと思われました。
 国民の皆さまにも是非ご一読いただければと思います。
 

原告ら訴訟代理人 弁護士 福 田  護
 
 新安保法制法の基本的な違憲性と立法事実の不存在について述べます。
1 立法事実なき強行採決
(1)憲法9条の解釈を変更して集団的自衛権の行使を認める2014年7月1日の閣議決定(本閣議決定)は、同年5月15日のいわゆる安保法制懇の報告を受ける形でなされましたが、安倍総理大臣は、その報告当日記者会見をして政府の「基本的方向性」を発表しました。その中で安倍総理大臣は、紛争地域から退避する日本人母子が乗っている公海上の米軍艦を描いたパネルを示しながら、自衛隊がこの米艦を相手国の攻撃から防護できなくていいのかと訴え、「こうした事態は机上の空論ではありません」「まさに紛争国から逃れようとしているお父さんやお母さんや、おじいさんやおばあさん、子供たちかも知れない。かれらが乗っている米国の船を、今、私たちは守ることができない」と熱弁をふるい、集団的自衛権の行使の必要性を訴えたのでした。この同じ事例は、本閣議決定当日の安倍総理大臣の記者会見でも、重ねて訴えられました。
 ところが国会審議のなかで、結局、この米艦に日本人が乗っているかどうかは、存立危機事態かどうかの判断にとって「絶対的なものではない」、言い換えれば無関係である、ということが明らかになりました。
(2)もう一つ繰り返し強調された事例が、ホルムズ海峡の機雷掃海の必要性でした。これは、2012年8月のアーミテージ・レポートで日本による実施が求められ、上記安保法制懇もこれを取りあげ、本閣議決定直後の衆参予算委員会の集中審議でも真っ先に集団的自衛権行使の必要事例として挙げられ、新安保法制法案の国会審議の中でも繰り返し繰り返し取りあげられてきたものです。
 そこでは、日本が輸入する石油の8割が通過するホルムズ海峡が機雷で封鎖された場合、機雷除去を自衛隊ができなければ国民生活に死活的な影響が生ずるとして、集団的自衛権の行使の必要性が訴えられました。しかも、他国の領域での自衛隊の武力の行使は、「ホルムズ海峡の例以外は、現在念頭にありません」と繰り返され、唯一の事例だと説明されていました。
 ところがこの事例についても、国会審議の終わりごろになって、安倍総理大臣は、「今現在の国際情勢に照らせば、現実の問題として発生することを具体的に想定しているものではありません」と答弁するに至っています。
(3)それならば、この法律はいらないはずです。結局、あれほど大騒ぎをして、集団的自衛権の行使ができなければたいへんなことになると、煽情的に訴えられた事例が、両方
とも立法事実たりえないことが明らかになったのです。そうであれば、この法案は一旦撤回されるべきものでした。ところが国会では、言論と民主主義の府とは到底思えない、問答無用の強行採決が敢行されたのでした。
2 海外派兵はしないという詭弁
 また、安倍総理大臣は、前述の安保法制懇報告当日の記者会見を含め、新安保法制法の
下でも、「自衛隊武力行使を目的として、かつての湾岸戦争イラク戦争での戦闘に参加するようなことは、これからも決してありません」「武力行使の目的をもって武装した部隊を他国の領土、領海、領空に派遣するいわゆる海外派兵は、一般に自衛のための必要最小限度を超えるもので許されない。これは新三要件の下で集団的自衛権を行使する場合であっても全く変わらない」「他国の領域での武力の行使は、ホルムズ海峡以外は念頭にありません」、と繰り返し強調しました。
 しかし、存立危機事態における「他国に対する武力攻撃」を排除する自衛隊の武力の行
使は、その性質上当然に、当該他国の領域における武力の行使を予定するものであり、法
文上も、もちろん外国の領域を不可とする何の限定もありません。すなわち新安保法制法
は、自衛隊の海外での武力の行使を前提とするものです。政府も国会答弁で、「法理上」はそうなることを認めざるをえませんでした。そして、海外で武力の行使をする自衛隊は、
憲法9条2項の「戦力」に該当することをもはや否定することはできませんし、「交戦権」
の行使の主体となることも明らかです。
 安倍総理大臣の海外派兵はしない、できないという答弁は、このような安保法制法の最
も基本的な違憲性と大きな危険性から国民の目をそらそうとする詭弁というほかはありま
せん。そしてこのような詭弁がまかり通ってしまう行政府と立法府の現状は、真に憂慮す
べき事態にあるといわなければなりません。
                                                                            以上
 

原告ら訴訟代理人 島 村  海 利
 
新安保法制法の違憲性・各論
第1 はじめに
 新安保法制法の強行採決による「成立」及び施行により、自衛隊法95条の2が新設されました。
 この条文は、自衛隊の武器等防護のために、自衛官が武器を使用できることを定めた自衛隊法95条の適用場面を拡張し、米軍等の部隊の武器等を防護するため、平時から自衛官に武器の使用を認めるものです。
第2 米艦防護等の実施
 米軍等の部隊の武器等防護については、平成29年5月に、海上自衛隊護衛艦「いずも」と「さざなみ」が、房総半島沖周辺で米海軍の補給艦と合流し、任務を行いました。この間、海上自衛隊護衛艦の艦載ヘリコプターを補給艦に着艦させ、海自艦が補給艦から燃料の補給を受ける手順を確認するなどの訓練も実施したといいます。
 また、平成29年4月以降、海上自衛隊の補給艦が、北朝鮮弾道ミサイル警戒にあたる米イージス艦に給油を行っていたことが明らかになりました。これは、新安保法制法の一環として改正された日米物品役務相互提供協定(ACSA)の発効を受けたものです。
第3 問題点
(1)そもそも、自衛隊法95条の2のもとになった95条ですら、憲法上疑義が唱えられてきました。すなわち、武器等防護のための武器使用は、防護対象が主に武器であるため、生命・身体に対する自然的権利とは言えません。従来、95条の解釈として、我が国の防衛力を構成する重要な物的手段を破壊、奪取しようとする行為に対処するため、武器等の退避によっても防護が不可能であること(事前回避義務)、武器等が破壊されたり相手が逃走したりした場合には武器使用ができなくなること(事後追撃禁止)など、極めて受動的かつ限定的な必要最小限の使用のみが許されるものとされてきました。
 米軍の武器等防護のために自衛官が武器を使用することに、憲法上の根拠があるとは考えられませんし、国際法上の説明も困難であるとの指摘もなされています。
(2)また、武器等防護行為から集団的自衛権の行使に発展するおそれがあります。米軍
の武器等防護が実際に行なわれる場面を想定してみましょう。相手国等から米軍に対し、武力行使に至らない程度の何らかの侵害行為があったとして、その相手国等に対して自衛官による武器の使用がなされたとしましょう。普通に考えて、相手国等からすれば、自衛隊が反撃してきたと思うのは明らかです。そうすると、それは集団的自衛権の実質的な行使であり、国会の承認も内閣総理大臣の防衛出動命令もないまま、日本が国際的武力紛争の当事者になることになります。
(3)つまり、それは、文民統制が機能しないことを意味します。戦争というのはいつも、
現場での小競り合いをきっかけに始まってしまうものです。さらに恐ろしいことに、米艦防護等の実施については、特異な事象が発生した場合のみ、速やかに公表するとされています。政府は、現在も、「運用上の理由」を盾に実施状況を公表していないのです。国民には何も知らされないうちに、自衛隊が米軍のために発砲し、戦争が始まってしまうという危険があるのです。
第4 なし崩し的に続く米軍との一体化
 前述したとおり、新安保法制法の違憲性が叫ばれる中でも、米艦防護や米イージス艦への給油が既に行われています。
 今回の実績をもとに、日本海に展開する米原子力空母カール・ビンソンや米イージス艦に対する「米艦防護」や、米戦闘機に対する「米軍機防護」などへと拡大する危険もあります。
 その先にあるのは、集団的自衛権が実際に行使され、米軍との一体化がさらに進むことです。
 他国と一体となって武器を使用することを許すことは、「武力の行使」に当たり、又はその具体的危険を生じさせるものですから、憲法9条1項に違反します。また、戦争に容易につながっていく行為を行うことを認めているという意味で、憲法9条2項にいう交戦権の否認にも反します。
 したがって、新安保法制法により新設された自衛隊法95条の2は、違憲です。
                                                                            以上
 

原告ら訴訟代理人 伊藤 真
 
違憲審査制と裁判所の役割
 違憲審査権の意義と裁判所の役割を主に論じ、裁判所は付随的違憲審査制であることや司法消極主義を理由に、新安保法制法の違憲判断を回避することがあってはならないことを諸外国と対比しながら論じる。
1 民主的な政治過程との関係について
 違憲審査権は、伝統的な私権保障型の付随的審査制を基本としながらも、それが憲法保障の機能をもつべきであるということにも十分に配慮しなければならない。
 その配慮とはすなわち、裁判所は、付随的審査の基本的枠組みを維持し、議会に敬意と謙譲を払いつつも(司法消極主義)、必要な場合に合憲性の統制に積極的になることである(司法積極主義)。
 その「必要な場合」かどうかは、「広く、立法事実や憲法事実、社会的背景や権力機関の機能状況等」を総合的に考慮して判断するほかない。
 「必要な場合」かどうかの判断は、代議的自治の政治過程によって悪法を矯正できない状況にあったかどうかが、1つの指標となる。
 では、新安保法制法案の審議過程において、そうした国民の声が反映されていたかといえば、全くそうではなかった。むしろその不十分さと異常さが顕著な国会というほかはなかった。首相らの答弁が二転三転し、委員会決議がないままに採決が強行された。このように、新安保法制法の審議過程における不十分さと異常さに照らせば、国民の声がそこに届いていたとは言いがたく、憲法が予定する議会制民主主義を破壊して作られたものだとさえいえる。そうだとすると、裁判所は、合憲性の統制に積極的に乗り出さねばならない。
2 統治行為論について
 仮に統治行為論を概念として肯定したとしても、本件訴訟は司法判断がなされるべき事案である。まず、砂川判決の統治行為類似の理論に従って今回の新安保法制法を判断するのであれば、「一見極めて明白に」違憲無効か否かの判断を避けて通ることはできない。
 そもそも、統治行為論は、政治問題については、裁判所よりも国民の意思が直接反映されている国会で判断するほうが民主主義に適合することに支えられている。ところが、新安保法制法は先に述べたように不十分な審議経過と異常な議決によって成立し、権力間のバランスが崩れる中でなされたものであり、国会判断に敬意と謙譲を払うべき場面ではない。
 仮に政治部門が憲法破壊を進める状況にありながらも、司法府が何もできないとしたら、憲法 81 条で違憲審査権が認められたことの意義が大きく減殺される。
3 憲法判断の回避について
 憲法判断回避の準則によって裁判所が自己抑制をすることがある。しかしこれは、絶対的なルールではない。どのような場合に裁判所が憲法判断を行うかについては、憲法にも法律にも何ら明文の規定はない。むしろ、類似の事件が多発する恐れがあり、明確な憲法上の争点があるような場合に憲法判断することは学説上も是認されてきた。この点について、芦部信喜教授は、憲法判断回避のルールによらず、憲法判断に踏み切る際に総合的に考慮すべき要素として「事件の重大性」、「違憲状態の程度」、「その及ぼす影響」、「権利の性質」をあげる。これらの要素を当てはめてみたとしても、新安保法制法の憲法適合性にかかわる本件訴訟については「憲法判断回避の準則」を適用できる場合ではない。
4 外国の違憲審査制
 日本国憲法違憲審査制のあり方について考える際に、日本と同様に立憲主義、法の支配、権力分立、民主主義、司法権の独立、そして基本的人権の保障などの憲法価値を重視している外国の違憲審査制のあり方が参考になる。
 まず、アメリカでは裁判所が積極的に違憲審査権の行使に踏み切ってきた事実を指摘できる。権力分立が機能してきたといえ、1986 年に連邦最高裁は、外交関連の問題がすべて政治問題となるわけではなく、政治問題となるのは政策の選択等であって、法律の解釈の問題は政治問題にはならないとしている。
 本件訴訟は、新安保法制法が違憲であるか否かという憲法問題を問うものであり、こうした重要な法律問題を解決するために裁判所が積極的にその権限を行使するべき事案であることは、アメリカの政治問題の法理の展開を見ても明らかである。
 なお、日本において、司法消極主義の根拠として、民主的基盤を持たない裁判所は民主的基盤を持つ政治部門の判断に対しては謙抑的であるべきだと主張されることがある。しかし、フランスの「転轍手」理論によれば、裁判所の判断はたとえ違憲判断であっても最終的には憲法改正国民投票を含めた国民の判断に委ねることになるのであるから、民主主義という観点からは全く問題がない。裁判所は政治部門と比較した際の自らの民主的基盤の弱さを理由に、積極的に憲法判断、違憲判断を下すことを躊躇する理由は一切ないといえる。
 ドイツでは憲法擁護のための機関として、連邦憲法裁判所が憲法に明記された。議会の決定がファシズムへの道を開いた歴史的事実から、かつての議会への信頼感が失われ、それを統制する必要性が広く共有されたからであった。
 アメリカやフランス、ドイツでは「人権保障」のために裁判所が積極的に違憲審査権を行使し、憲法違反との判決を下すことに躊躇しない現実がある。フランスの「転轍手」理論が示すように、違憲審査権は民主主義に反するどころか、主権者である国民に対して国政の最終決定権に関する意見表明の場を提供する可能性があるという点で、決して民主主義に反するものでないという主張が受け入れられている。フランスやドイツでも、「憲法院」や「連邦憲法裁判所」の積極的な人権擁護の判断は、多くの国民の支持を得ている。
5 裁判所と裁判官の職責
 新安保法制法をめぐっては、日本の裁判所は「人権保障」の職責を自覚し、違憲判断を行うべき緊急性がアメリカやフランスの事例以上に高いものとなっている。裁判所が新安保法制法に対して憲法判断を避けることにより、違憲の既成事実が積み重ねられることを黙認したり、あるいは誤った合憲判断を下したりした結果、新安保法制法が存続することになれば、多くの自衛官が海外での戦闘で殺傷されるような事態を招くことになろう。そのような事態に至らないよう、日本の裁判所もアメリカ、フランス、ドイツの裁判所と同様に、人権、そして憲法価値を守る存在であることを明確な判決で示し、日本にも「法の支配」が存在することを内外に明らかにする職責が裁判所にはあるのである。
 そもそも、「人権保障」と「憲法保障」という目的は、「水と油」のような相いれない関係ではない。むしろかなり重なり合う。「人権保障」のためには、「私権保障型」の司法審査制を固守するのではなく、「憲法保障機関」としての裁判所でもあるべきという要請は、日本国憲法下での裁判所にも当てはまる。
 いうまでもなく、戦争は最大の人権侵害である。国家が戦争に近づくことを阻止することは、最大の人権侵害を未然に防ぐことを意味する。
 だからこそ、人権保障のためには、憲法9条や前文の平和主義が要請する平和国家としての憲法秩序の維持が必要なのであり、この憲法秩序を保障するために、裁判所が「憲法保障機関」としての役割を果たすことが要請されるのである。
 新安保法制法は日本人を危険な状態に陥らせる可能性が高い。そして実際に日本人が「殺傷され」てからでは、決して救済はできない。だからこそ、日本人が戦争やテロなどで生命や身体、安全が危機にさらされる事態、日本人が戦争で人を殺傷し、殺傷される事態を事前に予防するため、「防波堤」である憲法前文や9条の平和主義の価値を擁護する「憲法保障機関」としての裁判所であることも、人権保障の観点から要請されているのである。
 原告らの精神的苦痛を無視して、具体的な権利侵害がないから違憲審査権を行使しないなどという立場に立つのであれば、新安保法制法のために日本人が人を殺傷し、殺傷される事態が生じたとき、新安保法制法を成立させた安倍内閣、そして国会とともに裁判所も共同で責任を負うことになる。人権保障の役割を遂行するためには、「憲法保障」のための裁判所としての役割を果たすことも求められているのである。
 そして、政府が立憲主義に反する姿勢を取っているときに、裁判所には、これを是正する職責がある。内閣法制局が、内的批判者たる法律家としての役割を自ら放棄してしまった今回のような事態においては、政治部門の外にいる裁判所が、立憲主義の擁護者としてその役割を積極的に果たす以外に、日本の立憲主義を維持貫徹する方途はない。
 これまでもそれぞれの時代における、その時代固有の司法の役割、裁判官が果たすべき役割があった。今の時代は、政治部門が憲法を尊重し敬意を払っているとは思えない状況にあり、政治部門内での抑制・均衡が機能不全に陥っている。これまでにないほどに立憲主義、平和主義、民主主義といった憲法価値が危機に直面している。こうした時だからこそ、果たさなければならない司法の役割、裁判官の使命があるはずである。
 私たちは、裁判所にあえて「勇気と英断」などは求めない。この歴史に残る裁判において、裁判官としての、法律家としての職責を果たしていただきたいだけである。憲法を学んだ同じ法律家として、司法には、政治部門に対して強く気高く聳え立っていてほしい。このことを切に願う。
                                                                            以上
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/安保法制違憲訴訟関連)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述
2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述
2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述
2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述
2017年2月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述
2017年3月15日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(11)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述 
2017年3月16日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(12)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告(田島諦氏ほか)による意見陳述
2017年4月21日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(13)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述
2017年4月22日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(14)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告による意見陳述(様々な立場から)
2017年6月23日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(15)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年6月25日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(16)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告による意見陳述(野木裕子さん他)
2017年8月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(17)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年8月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(18)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)において3人の原告が陳述する予定だったこと
2017年8月20日
「私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える」市民大集会(2017年9月28日/日本教育会館)へのご参加のお願い
2017年9月30日
市民大集会「私たちは戦争を許さない」(2017年9月28日)で確認されたこと

自民党・改憲4項目のうち「参議院の合区解消」について~浦部法穂氏の論考で学ぶ

 2017年10月31配信(予定)のメルマガ金原.No.2972を転載します。
 
自民党改憲4項目のうち「参議院の合区解消」について~浦部法穂氏の論考で学ぶ
 
 「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」では、来る2017年11月21日(火)午後6時30分から、和歌山市あいあいセンター6階ホールにおいて、リレートーク自民党改憲4項目の検証」を開催します。
 予定では、会員の弁護士が分担して、
  第1トーク 自衛隊明記(9条加憲論)
  第2トーク 緊急事態条項
  第3トーク 教育無償化+参議院の合区解消
  第4トーク 国民投票を見すえたこれからの運動
についてお話する予定です。
 このうち、9条加憲論と緊急事態条項については、既に相当の議論の積み重ねがあり、短い時間でどうまとめるかが担当者の腕の見せ所だと思いますが、第3トークに割り振った「教育無償化+参議院の合区解消」は、憲法論として何をどう論じたらよいのか、担当者もとまどっているのではないかと、企画者(プロデューサー)的立場にある私は想像しています。
 今日は、そのうちの「参議院の合区解消」について取り上げてみます。
 
 そもそも、憲法論としての参議院選挙を考えるのですから、憲法の該当条文を読んでおきましょう。
 
日本国憲法(昭和二十一年憲法
第四十二条 国会は、衆議院及び参議院の両議院でこれを構成する。
第四十三条 両議院は、全国民を代表する選挙された議員でこれを組織する。
○2 両議院の議員の定数は、法律でこれを定める。
第四十四条 両議院の議員及びその選挙人の資格は、法律でこれを定める。但し、人種、信条、性別、社会的身分、門地、教育、財産又は収入によつて差別してはならない。
第四十六条 参議院議員の任期は、六年とし、三年ごとに議員の半数を改選する。
第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
 
 憲法47条に基づき、公職選挙法が制定されており、そのうち、参議院の選挙区に関わる規定を見ておきましょう。
 
公職選挙法(昭和二十五年法律第百号)
   第三章 選挙に関する区域
(選挙の単位)
第十二条 衆議院小選挙区選出)議員、衆議院比例代表選出)議員、参議院(選挙区選出)議員及び都道府県の議会の議員は、それぞれ各選挙区において、選挙する。
2 参議院比例代表選出)議員は、全都道府県の区域を通じて、選挙する。
3 略
4 略
参議院選挙区選出議員の選挙区)
第十四条 参議院(選挙区選出)議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数は、別表第三で定める。
2 地方自治法第六条の二第一項の規定による都道府県の廃置分合があつても、参議院(選挙区選出)議員の選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数は、なお従前の例による。
別表第三(第十四条関係)
選挙区       議員数
鳥取県及び島根県    二人
徳島県及び高知県  二人
   附 則(平成二七年八月五日法律第六〇号) 
第七条 平成三十一年に行われる参議院議員通常選挙に向けて、参議院の在り方を踏まえて、選挙区間における議員一人当たりの人口の較差の是正等を考慮しつつ選挙制度の抜本的な見直しについて引き続き検討を行い、必ず結論を得るものとする。
 
 上記のとおり、平成27年公職選挙法改正により、鳥取県及び島根県徳島県及び高知県でいわゆる合区が行われ(法文上は「二の都道府県の区域を区域とする参議院(選挙区選出)議員の選挙区」と表記~同法5条の6以下)、平成28年(2016年)参議院議員通常選挙から、合区となった区域で選挙が実施されました。これに対し、全国知事会をはじめとする多くの団体から反発の声が上がり、参議院自民党も強く合区解消を主張したことが、今回、同党の改憲4項目の中に「参議院の合区解消」が盛り込まれた理由でしょう。
 それでは、合区解消を求める側の主要な論拠は何でしょうか?ここでは、全国知事会が昨年(2016年)及び今年(2017年)採択した決議をご紹介しておきます。
 
参議院選挙における合区の解消に関する決議
(引用開始)
 日本国憲法が昭和 21 年 11 月3日に公布されて以来、今日に至るまでの 70年間、二院制を採る我が国において、参議院は一貫して都道府県単位で代表を選出し、地方の声を国政に届ける役割を果たしてきた。
 去る7月 10 日に憲政史上初の合区による選挙が実施されたが、意思形成を図る上での都道府県が果たしてきた役割を考えたときに、都道府県ごとに集約された意思が参議院を通じて国政に届けられなくなるのは非常に問題である。
 また、投票率の低下や選挙区において自県を代表する議員が出せないことなど、合区を起因とした弊害が顕在化しており、合区解消を求める声が大きなものとなっている。
 我が国が直面する急激な人口減少問題をはじめ、この国のあり方を考えていく上でも、多様な地方の意見が、国政の中で、しっかりと反映される必要がある。
 今回の合区による選挙はあくまで緊急避難措置として、公職選挙法の附則において、抜本的な見直しが規定されていることもあり、合区を早急に解消させる対応が図られるよう求める。また、同時に将来を見据え、最高裁判例を踏まえ憲法改正についても議論すべきと考える。
 なお、この決議に対しては、一部反対意見(大阪府)及び慎重意見(愛知県)があったことを申し添える。
   平成28年7月29日
   全 国 知 事 会
(引用終わり)
 
国民主権に基づく真の地方自治の確立に関する決議
(引用開始)
 平成28年7月、参議院選挙において、憲政史上初の合区選挙が実施され、「投票率の低下」や「自らの県を代表する議員が選出されない」という国民の参政権にも影響を及ぼしかねない状況が発生したことを受け、全国知事会をはじめ、「地方六団体」の全てにおいて、「合区解消」や「参議院選挙制度改革」に関する決議が行われた。
 国は、この「地方の声」を正面から受け止め、迫りつつある平成31年の参議院選挙に向け、早急かつ抜本的な合区問題の解決策を講じる必要がある。
 また、「国民代表」としての衆議院と、さらに「地域代表」としての性格を持つ参議院という二院のバランスの上に、「国民主権」はより効果的に機能すると考えられており、そもそも、国民主権を実現する大きな側面をもつのが、「地方自治」である。
 地方自治法施行70年を迎え、この間、「機関委任事務の廃止」や「国と地方の協議の場の法制化」など、国と地方の対等関係のもと、「住民自治」が国民主権を全うする手段として、地方公共団体は直接住民から負託を受けてきた。
 一方、現行憲法には、地方自治に関し、第8章として、第92条をはじめ4条が定められているものの、具体的には「地方自治の本旨」など、あまりにも抽象的・理念的であり、このことが様々な混乱を招いてきた。
 以上のことから、次の事項について、国において速やかに実行すること。
                                       記
1 平成31年の参議院選挙に向け、「合区問題」の抜本的解決策の結論を得、早急に示すとともに、国民に対して、十分に周知を図ること。
 なお、一部反対意見(大阪府)及び慎重意見(愛知県)があったことを申し添える。
2 「国民主権」の原理のもと、地方自治の権能は、住民から直接負託されたものであるとの観点から、憲法第92条の「地方自治の本旨」について、より具体的に規定するように検討すること。
   平成29年7月28日
   全 国 知 事 会
(引用終わり)
 
 以上の決議で言及されているのが「投票率の低下」や「自らの県を代表する議員が選出されない」という状況(誰がそう認定しているのでしょう?)くらいでは、あまり説得力があるようには思えませんけどね。
 それに、「国民代表」を主に衆議院に押し付け、参議院(選挙区)を「地域代表」と位置付けるというのは、連邦制国家ではあるまいし、相当無理があると思います。
 なお、大阪府知事が決議に「反対」したのは、日本維新の会がかねてから主張している道州制の導入と整合性がとれないということなのかもしれません(確信はありませんが)。
 
 さて、以上は前置きというか前提知識です。「前置きが長過ぎる」とお思いでしょうね。私もそう思います。
 第一、参議院の選挙区は、全て「法律でこれを定める」(憲法47条)とされているのですから、合区を解消したければ、公職選挙法を再改正すればよいことです。ただし、そうすると、1票の較差がとても最高裁判例の許容範囲におさまらず、違憲判決が出ることは確実(場合によっては、史上初の選挙無効判決になる可能性も)ということになるでしょうけど。
 そういうことから、「憲法改正して合区解消を」という主張が出てくるのですが、自民党内の動きとしては、参院自民党のプロジェクトチームが改憲の方向性をまとめたという報道がありました。
 
時事ドットコムニュース(2017/06/27-20:57)
合区解消へ憲法47条改正=参院自民PTが原案
(抜粋引用開始)
 参院選挙区の合区解消に向け、参院自民党の「参院在り方検討プロジェクトチーム」がまとめた原案が27日、分かった。国会議員の選挙に関して規定した憲法47条を改正し、参院議員について「各都道府県で3年ごとに少なくとも1人が選出される」と明記することが柱だ。
 参院自民は同日、全議員懇談会を党本部で開き、「鳥取と島根」、「徳島と高知」で導入された合区を改憲により解消する方針を確認。合区解消に向けた原案の扱いを執行部に一任した。
 憲法47条は、国会議員の選挙について「法律で定める」としている。原案は47条に参院議員についての規定を新たに加えるものだ。2019年の次期参院選改憲が間に合わなかった場合、公職選挙法などの改正や、暫定措置として議員定数の是正で対応することも盛り込んだ。
(略)
(引用終わり)
 
 そこで、最後に、「参議院の合区解消」を憲法に盛り込むということが、実は、そんなに単純な話ではないということを、分かりやすく解説してくれている文章(2016年8月発表)を見つけましたので、ご紹介します。
 かねてから、私が「現代の末弘厳太郎(すえひろ・いずたろう)」と密かに称して尊敬している浦部法穂(うらべ・のりほ)さん(神戸大学名誉教授、法学館憲法研究所顧問)が、法学館憲法研究所サイトに連載している「浦部法穂の「憲法雑記帳」」の一編として書かれたものです。
 とにかく、お読みいただければ、「参議院の合区解消」ということの憲法論的意味が相当クリアに頭に入ってくるはずです。
 もっとも、「ではどうするのがよいか?」と考えると、結局、「難し過ぎるので、現行憲法のままでよい。」ということに(私は)なるのですが。
 
法学館憲法研究所 浦部法穂の「憲法雑記帳」
第3回 「合区」解消へ「改憲」?
(抜粋引用開始)
(略)
 「合区」解消と「憲法改正」が、どうつながるのか?最高裁は、参議院選挙区の「一票の格差」を「違憲状態」とした2012年の判決で、「参議院だから投票価値の平等の要請が後退してよいと考えるべき理由はない」、「より適切な民意の反映が可能となるよう、都道府県を選挙区単位とする方式を見直すなど、現行の選挙制度の仕組み自体の見直しを早急に行うべき」旨、述べていた(この判決では、「違憲状態」とした裁判官が12名、「違憲」としたのが3名、つまり15名の裁判官全員が「違憲」の状態であると判断したことになる)。つまり、都道府県単位の選挙区割りを合憲的に維持することはもはや不可能だ、ということである。だから、あくまで都道府県単位にこだわるなら、「憲法改正」しかないことになるのである。
 では、その「合区」を解消するために、憲法のどこをどう変えるのか?憲法には、「選挙区」に関しては「法律でこれを定める」(47条)とあるだけで、参議院の選挙区を都道府県単位にするとは、どこにも書いてない。とすれば、たとえば47条に、「ただし、参議院選挙区選出議員の選挙区は、一の都道府県の区域とする」というような規定を加えれば、それで解決できそうにみえる。しかし、事はそれほど単純な話ではない。まず第一に、仮に都道府県単位の選挙区ということが憲法上規定されたとしても、だから「一票の格差」が許容されるということになるわけではない。これを両立させようとすれば、(都市部への人口集中が続くかぎり)参議院議員の総定数をその都度その都度増やしていくしかないことになるが、それでいいのか(2015年人口速報をもとに、都道府県単位の選挙区で「一票の格差」を可能なかぎり最小に押さえようとすれば、私の簡略な試算では、選挙区選出議員の総数はすでに424人必要になる)。あるいは、たとえば鳥取選挙区からは2人の議員、東京選挙区からは46人の議員(2015年人口速報をもとに計算すればそうなる)というように、都道府県間で選出される議員の数に極端な不均衡が生ずることになるが、こうしたことは都道府県単位ということを重視する立場と相容れるのか、というような問題が出てくる。
 こうした問題を解決するためには、さらに憲法43条を改正して、参議院は「全国民を代表する」のではなく「各都道府県を代表する」議員で組織する、とすればいいようにみえる。都道府県代表ということなら、各都道府県から、その人口には関係なく、同数の議員を選ぶ、という形にすべきであるから、「一票の格差」問題は考慮する必要はないことになる(ここに下手に中途半端な人口比例原則を持ち込むことは、投票価値も不平等になり、かつ都道府県間の不平等も生じさせる、というように、何もかもが不平等な制度になってしまう)。しかし、それならば衆議院はどうするのか?衆議院議員は「全国民の代表」で参議院議員は「都道府県の代表」とするのなら、衆議院参議院の関係やそれぞれの権限にかかわる憲法の規定は全面的に見直す必要が出てくるだろうし、なによりも、連邦制国家でもない国で明確に地域代表として位置づけられる院を置くというのは、どのような代表民主制観を前提としているのか、その「哲学」が問われることとなる。そういう根本的な議論を抜きにして安直に「都道府県代表」などとしたら、あちこち矛盾だらけの憲法になってしまうであろう。
 そしてもう一つ、以上の議論のそもそもの前提問題として、都道府県という存在は少なくとも憲法上明確に位置づけられた存在ではない、ということに気付かなければならない。憲法は、地方自治の主体として「地方公共団体」というものを掲げるが、「地方公共団体」がどんなものかは、「地方自治の本旨」にもとづいて法律で定める、と規定するのみである(92条)。つまり、都道府県というのは法律上定められた存在であって(地方自治法1条の3第2項)、憲法都道府県というものの存在を当然の前提としているわけではないのである。だから、もし参議院を「都道府県代表」として位置づけるのなら、都道府県というものを憲法上の存在として明確に位置づける必要がある。それは、日本国憲法における地方自治の位置づけをどう考えるかという問題にもつながっていく。「都道府県代表」というはっきりした位置づけにしないとしても、そもそも都道府県という単位を、憲法上明確に位置づけられているわけでないにもかかわらず、どこまで重要視するか、ということじたいが、地方自治のあり方についての本質的な議論を要求するものなのである。「合区」解消のための「改憲」というと簡単な話のように聞こえるが、それは、代表民主制のあり方、衆参両院の関係のあり方や二院制のそもそもの存在理由、あるいは地方自治のあり方など、憲法全体、とりわけ統治機構にかかわる規定の全体に、それもより根源的なところにかかわる問題として、関係してくるのである。
(略)
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/安倍改憲メッセージ関連)
2017年5月24日
立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」を読む
2017年6月16日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍晋三首相による改憲メッセージに対する見解」発表記者会見(5/22)
2017年6月22日
羽柴修弁護士講演会「憲法をめぐる情勢と国民投票を意識した取り組み」から学ぶ
2017年6月27日
動画・学習会「安倍首相の改憲発言をめぐって」(九条の会事務局)~浦田一郎さん、渡辺治さんのダブル講演で学ぶ
2017年6月30日
立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」(6/26)を読む
2017年7月9日
「なるほど!新9条改正案を斬る」(イキョンジュ氏「アジアの中の日本国憲法」出版記念イベント)のご案内
2017年7月12日
和歌山県下7団体共同声明「安倍首相による改憲発言についての声明」を今日(7/12)発表しました
2017年7月18日
市民連合「緊急シンポジウム ストップ安倍政治-改憲を許さない市民集会」(7/12)を視聴する
2017年7月20日
書き起こしで読む立憲デモクラシーの会「安倍政権による強権的な国会運営と説明責任の放棄に対する声明」発表記者会見(6/26)
2017年7月26日
法律家6団体アピール「自衛隊の存在を9条に明記する安倍改憲提案に反対します」と清水雅彦氏講演動画「『2020年 安倍改憲』~その中味と狙いとは何か」のご紹介
2017年7月31日
君島東彦立命館大学教授「安倍改憲案とわたしたちの平和構想―9条論の再創造―」講演動画を視聴する
2017年8月2日
「安倍9条加憲NO!シンポジウム―未来をつくる日本国憲法―」(中野晃一、武村正義長谷部恭男辻元清美各氏/7/31)の動画を視聴する
2017年8月9日
青井未帆氏「憲法自衛隊を明記することの意味を考える」講演動画(8/5兵庫県弁護士9条の会)を視聴する 
2017年8月23日
和歌山弁護士会憲法学習集会9/20「安倍首相の新たな改憲提言について―自衛隊憲法に書き込む改憲は何をもたらすか―」(講師:青井未帆氏)のご案内
2017年9月5日
九条の会」も参加して「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」がスタートします~目指せ3000万人署名
2017年9月9日
「安倍9条改憲NO!全国市民アクション」9.8 キック・オフ集会大成功~3000万人署名活動スタート!
2017年9月13日
「安倍9条改憲を阻むために全国の九条の会は立ちあがりましょう」(9/6九条の会事務局からの訴え)
2017年9月14日
「安倍9条改憲NO!」のために「憲法の破壊を許さないランチTIMEデモ」はまだまだ頑張ります
2017年9月15日
今年の憲法フェスタ(11/3守ろう9条 紀の川 市民の会)は本秀紀(もと・ひでのり)さん~歌う憲法学者が語る9条と自衛隊
2017年9月18日
9条の会共同講演会「安倍改憲を許すな!!」(愛敬浩二名古屋大学大学院教授@11/4和歌山県JAビル)のご案内
2017年10月11日
「安倍9条改憲NO!大学人と市民のつどい―憲法問題シンポジウムと大学有志の会ブロック連絡会発足記念集会」(2017年10月8日)を視聴する
2017年10月17日
憲法(特に9条)についての各党「公約」比較~とても分かりやすくなっていた
2017年10月22日
清水雅彦氏(日本体育大学)講演動画「学ぶ!安倍改憲の真実!」(10/17市民連合国分寺)を視聴する
2017年10月23日
山田朗明治大学教授による講演「安倍改憲の危険性と北朝鮮問題」を視聴する(映画人九条の会
2017年10月26日
11/3は「安倍9条改憲NO!わかやまアクション」に結集を!(汀公園)~11月に開催される講演会・リレートークのお知らせ@和歌山市
2017年10月28日
開催予告11/21「リレートーク 自民党改憲4項目の検証」(憲法9条を守る和歌山弁護士の会) 
2017年10月29日
地域からの結集を!~「9条改憲NO!全国市民アクション・国立」の「キックオフ集会inくにたち」を視聴する
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/浦部法穂氏関連)
2013年2月15日
浦部法穂氏が説く「憲法尊重擁護義務」(法学館憲法研究所)
2013年7月30日
浦部法穂先生の「憲法時評」を読む
2013年9月11日
きかんし放送局で視聴する浦部法穂氏講演会「浦部先生に聞いてみよう!憲法は変えなきゃダメですか」
2013年9月26日
浦部法穂氏が説く“憲法解釈の変更と立憲主義”(非嫡出子相続差別と集団的自衛権
2014年4月28日
浦部法穂さんが説く“日本国憲法自衛権
2014年11月23日
安倍晋三首相の「反立憲主義」を浦部法穂氏の「大人のための憲法理論入門」から照射する