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和歌山弁護士会など「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」(2018年5月21日)実施のお知らせ

 2018年5月17日配信(予定)のメルマガ金原No.3150を転載します。
 
和歌山弁護士会など「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」(2018年5月21日)実施のお知らせ
 
 まず、今日報じられた最新のニュースからお読みください。
 
毎日新聞 2018年5月17日 10時14分(最終更新 5月17日 15時14分)
強制不妊手術 東京の男性ら一斉提訴 国賠訴訟第2陣
(抜粋引用開始)
 「不良な子孫の出生防止」を掲げた旧優生保護法(1948~96年)に基づき不妊手術を強制されたのは「個人の尊厳」などを保障する憲法に反するとして、東京、宮城、北海道に住むいずれも70代の男女3人が17日、国に総額計約8000万円の損害賠償を求めて東京、仙台、札幌の各地裁に提訴した。旧法下の不妊手術をめぐる国賠訴訟は、今年1月末に仙台地裁に起こした宮城県の60代女性による提訴に続く第2陣で、一斉提訴は初めて。
 3人の弁護団を中心に当事者の救済を目指す各地の弁護士らが27日に「全国弁護団」を発足させる予定で、国の責任を問う動きがさらに広がる。
 請求額は、東京の男性3000万円▽宮城の女性3850万円▽北海道の男性1100万円。北海道の男性は小島喜久夫さん(76)と名前を明らかにし、宮城の女性と東京の男性はそれぞれ飯塚淳子さん、北三郎さん(75)の名前で活動している。3人は提訴に先立ち、各道県へ手術記録の開示を請求するなどしたが、保存期間終了を理由に見つかっていないため、記憶や証言、手術痕などから当事者であるとした。
(略)
 3人は「子どもを産み育てるかどうかを決める権利を侵害された」などと主張。政府や国会が救済制度の創設を怠った「不作為」の状態が現在も続き、精神的苦痛を被ったと訴えている。当初、今回の一斉提訴に参加予定だった北海道の夫婦は、妻が不妊手術と同時に人工妊娠中絶も強制されていたとして賠償内容を追加するため、後日に札幌地裁へ提訴する意向。【服部陽、遠藤大志、安達恒太郎】
(引用終わり)
 
 なお、毎日新聞は、上記の記事に引き続き、東京地裁に提訴した北三郎さんと仙台地裁に提訴した飯塚淳子さんの提訴後の記者会見での発言を伝える記事も配信しています。引用はしませんが、無料記事として公開されていますので、是非リンク先でお読みください。
 
毎日新聞 2018年5月17日 11時31分(最終更新 5月17日 15時15分)
強制不妊手術 「心の傷埋めたい」東京の男性提訴
 
 ところで、本ブログでも、去る3月30日に、和歌山弁護士会などが「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」を実施することをお知らせしました(和歌山弁護士会など「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」(2018年3月30日)実施のお知らせ/2018年3月28日)。
 もっとも、ブログに掲載したのがわずか2日前というあまりに間際であったため、あまり効果はなかったと思いますが。
 ちなみに、3月30日の一斉相談は、弁護士会(9箇所)、弁護士有志(7箇所)、弁護団(2箇所)が実施主体となって行われ、全国で34件の相談が寄せられたということです。
 
 さて、今日のメインのお知らせは、これまた間際となりましたが(前回よりは少しましか)、来る5月21日(月)に再び実施される「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」をご案内しようというものです。
 今回も、和歌山弁護士会の長岡健太郎弁護士からの掲載要請に応じてのものですが、前回3月の相談の際には和歌山弁護士会副会長であった長岡先生も、同月末で副会長の1年の任期を終え、4月から、同弁護士会高齢者・障害者支援センター運営委員会の委員長に「復帰」しての要請です。
 
 3月30日の相談は、「全国一斉」と銘打っての実施の割には、全国18箇所での実施(内弁護士会は9会)にとどまりましたが、今度の5月21日は、統一日以外の日程で実施する3箇所を含め、全国38箇所での実施が決定しており、しかも、この内22箇所が弁護士会が主体となって相談を行います。もちろん、和歌山弁護士会でも実施します。
 前回の相談をブログでご紹介した際には、和歌山だけではなく、全国各地の受付電話(FAX)番号や受付時間を、入手した資料に基づいてご紹介しましたが、今回は、とてもそこまでやっている時間はありません。
 とりあえず、私が入手した資料に基づき、今回、「一斉相談(110番)」を実施する弁護士会の名称を記載して、「一斉相談(110番)」案内記事が掲載されている場合には、該当ページにリンクしておきます。
 詳細は、各弁護士会のホームページ(掲載されている場合/これから掲載されるところもあるはず)をご覧になるか、各会に電話等でお問い合わせください。
 
千葉県弁護士会
神奈川県弁護士会
愛知県弁護士会(実施日5月25日)
和歌山弁護士会
広島弁護士会
  
 私が閲覧した後に掲載されたところがあるかもしれませんので、その節は何卒ご容赦ください。 
 
 なお、この他、弁護士有志や弁護団によって電話相談が計画されているのは、以下の地域です。
 
北海道、宮城、栃木、群馬、東京、富山(6月6日実施予定)、石川、山梨、長野、鳥取、愛媛、福岡、佐賀、長崎、大分(5月26日実施)、鹿児島
 
(追記)
 全国38箇所での受付時間や受付番号を一覧表にした「優生保護法ホットライン(電話相談)一覧(2018年5月21日)」を入手しましたので、PDFファイル化してご紹介します。ご活用ください(5月17日20時)。 

http://web2.nazca.co.jp/rituko31/20180517200006.pdf

 
 それでは、以下に、和歌山弁護士会が実施する「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」の実施概要をご紹介します。
 長岡健太郎委員長(高齢者・障害者支援センター運営委員会)から、メールに添付していくつかの資料を送ってもらいました。それは、
〇チラシ(総ルビ付き)
〇実施要領
〇和歌山弁護士会ホームページ掲載用告知文
の3点です。
 ただ、それぞれ重複する部分もありますので、全部掲載する必要もないと思い、これらを適宜ブレンドし、私が1つの文章にまとめてみました。つまり「文責:金原」です。
 
和歌山弁護士会「全国一斉 旧優生保護法による不妊手術110番」
 
企画の趣旨
 平成8年に改正され、「母体保護法」と改称される以前の旧優生保護法は、「この法律は、優生上の見地から不良な子孫の出生を防止するととともに、母性の生命健康を保護することを目的とする」(1条)と規定し、同法のもと、平成8年まで、全国で多くの障害者が本人の意思に関わりなく不妊手術及び人工妊娠中絶を受けました。
 この問題に関しては、知的障害を理由に同意なく不妊手術を強制され、救済措置も取られていないのは違法として、宮城県内の60代の女性が、平成30年1月30日、国家賠償請求訴訟を仙台地裁に提起し、大きく報道されました。
 その後、複数の都道府県で過去の優生手術に関する資料が公表され、また、実際に優生手術を行った医師がマスコミの前で発言したり、国会でも取り上げられ、議員立法が検討されるなどの動きが出てきています。
 また、報道によれば、和歌山県でも、少なくとも103人が強制不妊手術を受け、手術に関する資料は県に現存しているとされています。
 このような動きの中で、本年3月30日に続き、来る5月21日(月)に、全国において、優生手術被害者からの相談に弁護士が答える110番の実施が計画されており、和歌山弁護士会においても、「旧優生保護法による不妊手術110番」を実施することになりました。その概要は以下のとおりです。
 
相談会の概要
(1)日    時  平成30年5月21日(月)午後1時~午後4時
(2)相談方法  
 面談による相談:和歌山弁護士会館(和歌山市四番丁5番地)にて
 電話相談:073-421-6055
  ※上記電話は、当日のみの開設です。
 FAX:073-436-5322
  ※聴覚障害者など、電話相談が困難な方のために、FAXでの相談も受け付けます。
(3)対    象  障害当事者や、その家族、支援者等
(4)相  談  料  無料
(5)相談内容  旧優生保護法による不妊手術や人工妊娠中絶に関する問題等
(6)相  談  員  和歌山弁護士会人権擁護委員会委員及び高齢者・障害者支援センター運営委員会委員が担当
(7)主    催  和歌山弁護士会
(8)本件に関するお問い合わせ先  
 長岡健太郎弁護士(和歌山弁護士会高齢者障害者支援センター運営委員会委員長)
     TEL:073-422-1858(パークアベニュー法律事務所)
 和歌山弁護士会事務局 
  TEL:073-422-4580
(9)5月21日以降のご相談(重要!)
 なお、5月21日以降も和歌山弁護士会では、旧優生保護法による不妊手術や人工妊娠中絶に関する相談を随時受け付けます。まずは、以下の電話もしくはFAX宛にお申し込みください。折り返し、担当者からご連絡します。
  TEL:073-422-4580 
  FAX:073-436-5322 
 
 以上、「文責:金原」によるハイブリッド版のご案内でした。
 3月30日の一斉相談は、全国で34件の相談があったものの、和歌山は0件でした。「残念ながら」という表現が適切か?という問題はあるものの、必要な情報が当事者やご家族、支援者に届いていない可能性が十分にありますので、5月21日の全国一斉相談にも参加した上、それ以降も随時相談を受け付けることにしたものです(長岡委員長から直接確認しました)。
 多くの方のご協力を得て、この情報を、5月21日を過ぎても広げていきたいと思いますので、何卒よろしくお願いします。

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司法に安保法制の違憲を訴える意義(23)~東京・国家賠償請求訴訟(第7回口頭弁論)において3人の原告(井筒高雄さん他)と5人の代理人が語ったこと

 2018年5月16日配信(予定)のメルマガ金原No.3149を転載します。
 
司法に安保法制の違憲を訴える意義(23)~東京・国家賠償請求訴訟(第7回口頭弁論)において3人の原告(井筒高雄さん他)と5人の代理人が語ったこと
 
 半年以上お休みしていた「司法に安保法制の違憲を訴える意義」シリーズの更新を一昨日再開し、次は、
  東京・差止請求訴訟 第6回口頭弁論 2018年2月5日開廷
  東京・国賠請求訴訟 第7回口頭弁論 2018年5月11日開廷
のどちらをご紹介すべきかと考えていたところ、「安保法制違憲訴訟の会」ホームページに、5月11日の国賠請求訴訟第7回期日後の報告集会で配布された資料が素早くアップされていましたので、こちらの方を先にご紹介することにしました。
 
 というのは、国賠請求訴訟では、今年1月26日に開かれた第6回口頭弁論期日において、7人の原告本人尋問が行われた(一昨日ご紹介しました)のに続き、5月11日の第7回口頭弁論期日では、残る3人の原告本人尋問(井筒高雄さん、常盤達雄さん、堀尾輝久さん)が行われた他、それに先立ち、裁判所の構成が総入れ替えになったということもあって、5人の原告訴訟代理人(寺井一弘、福田護、伊藤真、古川健三、棚橋桂介各弁護士)から、弁論更新にあたっての意見陳述が行われたからです。
 本件訴訟は、10人の原告本人尋問だけで証拠調べが終わるのか、原告らが請求する8人(に絞り込んだ)の証人尋問が採用されるのか、とうい非常に重要な段階に来ており(証人の採否についての裁判所の判断は次回7月20日の第8回口頭弁論期日で示されるとのこと)、現時点での原告らの主張を総まとめして訴えた5人の原告代理人による意見陳述を是非読んでいただきたく、2月5日の差止請求訴訟第6回口頭弁論のご紹介に先立ち、5日前の国賠請求訴訟第7回口頭弁論を取り上げることにしたものです。
 
 ちなみに、後掲の棚橋桂介弁護士の意見陳述によれば、原告らは、5月9日付・証拠申出書を裁判所に提出し、従前立証計画で示していた19名のうち特に8名について、尋問すべき必要性が高く、証人として採用すべきであると主張したそうです。その8名とは、
 元内閣法制局長官の宮﨑礼壹さん
 元最高裁判事の濱田邦夫さん
 ジャーナリストの半田滋さん
 軍事評論家の前田哲男さん
 ジャーナリスト・NGO職員の西谷文和さん
 小説家・歴史家の半藤一利さん
 学習院大学教授(憲法学)の青井未帆さん
の皆さんです。
 
 なお、5月11日の開廷前集会(森薫さん)、記者会見(UPLANさん)、報告集会(森薫さん)の各動画を以下にご紹介しておきます。
 
2018年5月11日 安保法制違憲訴訟 第7回国賠期日 地裁前集会(20分)
 
20180511 UPLAN【記者会見のみ】安保法制違憲訴訟 第7回国賠期日(東京地裁)(25分)
 
2018年5月11日 安保法制違憲訴訟 第7回国賠期日&報告集会(1時間51分)
冒頭~ 開会挨拶 寺井一弘弁護士
5分~ 福田 護弁護士
14分~ 伊藤 真弁護士
29分~ 井筒高雄さん(元自衛官
34分~ 常盤達雄さん(鉄道員
41分~ 堀尾輝久さん(教育学者、東大名誉教授)
53分~ 各地の安保法制違憲訴訟弁護団から(岡山、札幌、釧路)
1時間04分~ 寺井一弘弁護士
1時間16分~ 意見交換、質疑応答
 
 報告集会での1時間04分~、寺井先生の「法廷での自然な感情の発露としての拍手を制止する権限は裁判所(裁判長)にない」という意気込みと、全国での提訴状況(ついに名古屋が提訴に踏み切るとか)についての報告には、いつものことながら勇気付けられますね。
 
 それでは、以下に、第7回口頭弁論で行われた5人の原告ら代理人弁護士による弁論更新にあたっての意見陳述、及び本人尋問が行われた3人の原告についての証拠調べ請求書中の「証すべき事実」と「尋問事項」をご紹介します。
 

今、なぜ安保法制の違憲訴訟か
 
原告ら訴訟代理人 弁護士 寺 井 一 弘
 
 私は、「安保法制を違憲とする国家賠償請求訴訟」の代理人の一人である東京弁護士会所属の寺井一弘であります。
 本件訴訟の弁論更新にあたって私からはまず、なにゆえに多くの市民と弁護士がこの訴訟を提起したか、私自身の思いも含めて率直な考えを述べさせていただきます。
 私は3年前の9月19日の夜、集団的自衛権行使容認の閣議決定の具体化としての安保法制の採決が強行された時、国会周辺に集まった多くの市民の方々とともにわが国の平和憲法が危機に瀕していること、70年間以上にわたって「一人も殺されない、一人も殺さない」という崇高な国柄が一夜にして崩壊していくのではないかということを強く実感させられました。憲法9条がなし崩し的に「改定」させられていくことへの恐怖と国民主権と民主主義が最大の危機に陥っていることを憂える市民の方々、老人、女性、労働者、若者たちの表情の一つ一つは今も私の脳裏に焼きついております。そして、私はその場で戦前、戦中、戦後の時代を苦労だけを背負って生き抜いた亡き母のことを想い出しておりました。
 私ごとでまことに恐縮ですが、私の生い立ちと母のことについて若干お話しすることをお許しいただきたいと思います。私の生き方の原点につながり、今回の違憲訴訟の代理人になったことに深く関わっているからです。
 私は日本の傀儡国家であった中国満州の「満州鉄道」の鉄道員だった父と旅館の女中をしていた母との間に生まれ、3歳の時にその満州終戦を迎えました。8月9日のソ連軍の参戦により、満州にいた日本人の生命の危険はきわめて厳しくなり、私の父も私を生かすため中国人に預ける行動に出たようです。しかし、私の母は父の反対を押し切り、残留孤児になる寸前の私を抱きしめて故郷の長崎に命がけで連れ帰ってくれました。
 引揚者として原爆の被災地である長崎に戻った私ども家族の生活は筆舌に尽くせないほど貧しく、母は農家で使う縄や筵をなうため朝から晩まで寝る時間を削って働いていました。最後は結核になって病に伏せてしまいましたが、母はいつも私に「こうして生きて日本に帰ってこれたのだから、お前は戦争を憎み平和を守る国づくりのため全力を尽くしなさい」と教え続けてくれました。私はこうした母の教えを受けて弁護士となり、これまで48年以上にわたって憲法と人権を守るためささやかな活動をしてきましたが、今回の明らかな憲法違反である安保法制の強行採決は私の母と同じような思いで戦中戦後を生きてこられた多くの方々と私自身の人生を根底から否定するものであると痛感させられました。そこで残された人生の全てを平和憲法と民主主義を踏みにじる政府の蛮行に抵抗するための仕事に捧げようと決意して代理人を引き受けることにいたしました。おそらくこうした考えは本日裁判所に出頭されている多くの原告や市民の方々、そして代理人が共通にされていることと思います。
 ところで安保法制を違憲とする訴訟には現在、全国すべての地域から1607名の弁護士が訴訟の代理人に就任し、訴訟の原告となられた方は全国で7303名となっております。この勢いは今後もさらに広がっていき、全国的に大きな流れになっていくことは間違いありません。
 私どもは一昨年4月26日に東京地方裁判所に「国賠訴訟」と「差止訴訟」を提訴しましたが、東京地裁以外においては、それ以降本日までに原発事故発生地での福島をはじめ、高知、大阪、長崎、岡山、埼玉、長野、女の会、横浜、広島、福岡、京都、山口、大分、札幌、宮崎、群馬、釧路、鹿児島、沖縄、山梨での提訴が相次ぎ、今後も名古屋をはじめとして全国各地で提訴に向けての準備がなされているとお聞きしています。
 このように安保法制を違憲とする裁判は現在北から南までの全国各地で展開されていますが、原告になられた方々は裁判所に対して自分がなにゆえに原告となったのか、どうして安保法制に反対しなければならないのかについての陳述書を次々に提出しておられます。そして、この民事一部の法廷では今年の1月26日に7名の原告の皆様の切々たる尋問がなされ、本日も3名の方々の尋問が予定されています。皆様の陳述の内容はもとよりさまざまな内容でありますが、いずれも自分の人生体験を振り返りながら、今回の安保法制が日本を再び戦争をできる国にしてしまったこと、それによって自分がどれほどの恐怖と不安を抱いているか、その蒙った被害と損害について切々と訴えるものになっています。 私ども法律家はこの魂からの叫びを耳にして改めてこの違憲訴訟にさらに真剣に取り組んでいかなければならないとの決意を新たにさせられております。
 私どもは圧倒的多くの憲法学者最高裁長官や内閣法制局長官を歴任された有識者の方々が安保法制を憲法違反と断じている中で、行政府と立法府がこれらに背を向け、国会での十分な審議を尽くすことなく安保法制法の制定を強行したことは憲法の基本原理である恒久平和主義に基づく憲法秩序を根底から覆すものだと考えております。
 政府は2014年7月1日の閣議決定に引き続いて2015年9月19日にはわが国の歴史上に大きな汚点を残す採決の強行により集団的自衛権の行使を容認する安保法制を国会で成立させ、2016年の3月29日にこれを施行しました。
 さらに安倍首相は昨年の憲法記念日の5月3日に「東京オリンピックの2020年に新憲法を施行する」と豪語し、本年3月に自衛隊憲法9条に明記するなどの改憲原案をまとめるに至りました。
 私どもは国民世論と全く乖離したこうした思いつきの乱暴きわまる策動を決して許してはならないとの覚悟を固めています。今日の事態はわが国の平和憲法と民主主義を守り抜いていくにあたって、きわめて深刻であると言わなければなりません。
 このような歴史的危機に当たって、司法こそが憲法81条の違憲審査権に基づき、損なわれた憲法秩序を回復し、法の支配を貫徹する役割を有しており、またその機能を発揮することが今ほど強く求められている時はないものと確信しています。
 安倍政権が集団的自衛権を容認している根拠として著しく歪めて引用した「砂川事件判決」においても「一見極めて明白に違憲無効と認められる場合には裁判所の司法審査権の範囲に完全に入る」と指摘しています。
 私は、裁判所、とりわけ東京地裁民事一部の三名の裁判官がご自身の裁判官を志された原点に立ち戻られて、ただひたすら平和を求めている原告一人一人の思いと訴えにしっかり向き合い、本件訴訟について憲法判断を回避することなく、憲法の基本原則である平和主義原理に基づく法秩序の回復と基本的人権保障の機能を遺憾なく発揮されることを切に望むものです。
 最後になりますが、わが国の政府は「戦争法」とも称されている安保法制法について国民が「諦め」ないし「忘却」することをひたすら期待しているようです。
 しかし私どもは、こうした狙いに屈することなく、わが国の未来のために世界に誇る平和憲法を死守して「戦争を絶対許さない」ことを決して諦めてはならないと考えております。
 私は集団的自衛権容認を閣議決定した2014年7月1日以降の4年近く、北海道から沖縄までの数多くの全国市民の方々とお会いしてきましたが、皆様は涙ながらに戦争の恐怖と平和の大切さを訴えておられました。
 東京地方裁判所民事一部の裁判官におかれましてはこうした市民の皆様の心からの願いと期待に真摯に応えられることを懇請して、私からの意見陳述とさせていただきます。
 

原告の主張の全体像と新安保法制法の違憲性・危険性
 
原告ら訴訟代理人 弁護士 福 田   護 
 
第 1 これまでの原告の主張の概要
1 本件における加害と被害と違法性
 原告らは、本件において、2014年7月1日の「国の存立を全うし、国民を守るための切れ目のない安全保障法制の整備について」と題する閣議決定、これを受けた2015年5月14日の新安保法制法案の閣議決定とその翌日の国会への提出、そして国会による同法案の採決という各行為による新安保法制法の制定を、内閣及び国会を構成する公務員の加害行為として捉え、これによって、原告らの有する①平和的生存権、②人格権、③憲法改正・決定権が侵害されたことを主張してきました。そして、この加害行為は、それまでの憲法9条についての確立した政府解釈の限界を明らかに逸脱し、自衛隊による集団的自衛権の行使を含む海外における武力の行使を認め、またその危険をもたらすものとして、明らかに憲法9条に違反するものであり、その侵害行為は極めて重大な違法性を有することを主張してきました。
2 加害行為の違憲性とその重大性
 加害・侵害行為の違憲性、憲法破壊の重大性については、原告準備書面(1)において、我が国を代表する識者(憲法学者樋口陽一、長谷部恭男、石川健治、青井未帆の各教授、山口繁元最高裁長官、濱田邦夫元最高裁判事、歴代内閣法制局長官ら)の鋭い明確な見解を指摘しましたが、そのうちの数名の方には、本件訴訟において証人として証言することのご了解もいただいています。そして準備書面(4)において、本件侵害行為が立法によ
不法行為である点に関し、これが「憲法の一義的な文言に反し」、「憲法上保障されている権利の明白な侵害」に当たることを明らかにしました。
 新安保法制法の違憲性の内容としては、①存立危機事態における「自衛の措置」としての集団的自衛権の行使容認、②重要影響事態法における後方支援活動の外国軍隊の武力行使との一体化、③国際平和支援法における協力支援活動の同様の一体化のほか、準備書面(9)において、④国連平和維持活動協力法(PKO協力法)の改正によって認められた駆け付け警護等とその任務遂行のための武器使用、⑤改正自衛隊法95条の2に基づく米軍等の武器等防護のための武器使用についても、請求原因の追加として本件侵害行為の内容を追加しました。
 そして、これらの違憲性の内容については、準備書面(10)でその全体像を示し、準備書面(11)で上記5つの事項の違憲性の具体的内容を詳述し、準備書面(12)でこれらがアメリカとの軍事的一体化を推進し、国民の権利・義務を大きく左右し、軍需産業・軍事研究の拡大その他、日本の国の基本的な在り方を変容させてしまう危険なものであ
ることを論じています。
3 被侵害権利・利益の内容と重要性
 被侵害権利についてですが、本件において平和的生存権の侵害は、中心的な問題です(準備書面(2)等)。平和のうちに生存する権利は、憲法前文に明示され、すべての基本的人権の基礎にあってその享有を可能ならしめる基底的権利であり、憲法13条等によって具体的規範性が根拠づけられ、憲法9条によってその制度的保障を与えられたものと理解されます。
 この憲法9条による「平和」の保障は、本件にとって核心的なものですが、新安保法制法はこの「平和の防波堤」を破壊してしまったのです。たとえば、ある原告にとっては、9条によって保障される平和な日常は苛酷な戦争体験の代償として得たかけがえのないものであり、原告の人格の核心部分を構成しています。ある原告にとっては、平和の実現のための活動が職業的使命であったり、一生をかけた取組であったりし、その支えないし拠り所が憲法9条にほかなりません。総じて、原告らそれぞれの人格権、平穏生活権は、憲法9条を破壊した新安保法制法によって、様々な形で深く侵害されているのです(準備書面(8)等)。
 さらに、憲法改正・決定権は、憲法を強引な手続・手法で蹂躙した新安保法制法の制定を前にして、権力制限規範である憲法の制定・改正権の主体であり、主権者である国民が、直接民主主義・間接民主主義及び国民投票手続を通じて、憲法の条項と内容を自らの意思に基づいて決定する根源的な権利として観念されるものです。新安保法制法の制定は、本来憲法9条を改正しなければできないことを憲法96条を潜脱して強行し、原告らの憲法改正・決定権を侵害したのです。すなわち、原告らは本来、集団的自衛権や海外派兵を認めようとする憲法改正に対し、国会の発議に至る過程で民主的な参政権を行使し、また国民投票運動を通じて、これを阻止する根源的な権利を行使できたはずなのに、その権利を奪われたのです(準備書面(5)等)。
4 具体的被害、司法の役割について
 以上のような権利とその侵害によって、原告らが具体的にいかなる被害と損害を受けているか(準備書面(3)(6)等)、そしてかかる事態を前にして司法の役割をどう考えるべきか(準備書面(13))については、他の代理人から述べることと致します。
第2 新安保法制法の違憲性と危険性
 ここでは、新安保法制法の制定後の推移も含めて、その違憲性と危険性を、いくつかの特徴的な局面について指摘しておきたいと思います。
1 存立危機事態における集団的自衛権の行使について
(1)昨年8月10日、北朝鮮グアム島周辺に向けて中距離弾道ミサイルを4発同時に発射する計画を検討していると表明したことに関し、小野寺防衛大臣は、その日の衆議院安全保障委員会で、武力行使の新三要件に該当するかどうかで判断されることになるが、日本の安全保障にとって、米国の抑止力、打撃力の欠如は、日本の存立危機事態に当たる可能性がないとはいえないと答弁しました。
(2)ところで、新三要件は、①我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある事態(存立危機事態)であること、②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないこと、③必要最小限度の実力を行使すること、とされています。
 新安保法制法以前の自衛権発動の要件は、「我が国に対する武力攻撃が発生したこと」であり、これは客観的に日本の領域への侵害等として認識、判断することが基本的に容易なものでした。これに対し、「存立危機事態」該当性は、「密接な関係にある」他国に対する武力攻撃かどうか、それが「我が国の存立を脅かす」かどうか、国民の権利等が「根底から覆される」「明白な危険」があるかどうかといった、いくつもの抽象的な不確定概念についての判断によって構成され、これは結局「政府の総合的な判断」に委ねられるというものですから、その判断の適否の客観的な基準は極めて考えにくいという基本的な問題があります。
 そして、従前の政府解釈では、自衛権の発動としての実力の行使は、我が国を防衛するため、外部からの武力攻撃を我が国の領域から排除する受動的なものであり、原則として我が国の領土・領海・領空で行われ、せいぜいその周辺の公海・公空に限られるとされてきたのですが、それに対し、存立危機事態における集団的自衛権の行使は、相手国の領域
を含めて地理的限定などなく、地球の裏側にまで及びます。したがってまた、従前の「必要最小限度の実力行使」というのは日本の領域ないしその周辺において、外部からの武力攻撃をそこから排除するためという限定的な線引きが明確であったのに対し、存立危機事態の武力の行使は、もともと海外を戦場とする他国の戦争に参加するわけですから、どこで何をするのが「必要最小限度」かという客観的判断基準は極めて考えにくいのです。
 だから、一旦「存立危機事態」と判断して参戦したら、その戦局の推移に応じ、なし崩しに、際限なく、その戦争に引きずり込まれていく危険性が極めて高いのです(以上準備書面(11)p27~36参照)。私たちは、その余りの危険性に慄然とせざるを得ません。
(3)そこで前述の小野寺防衛大臣の答弁ですが、この答弁は、北朝鮮グアム島周辺に向けてミサイルを発射するという行為が、「米国の抑止力、打撃力の欠如」をもたらすから、我が国の「存立危機事態」に該当しうるということを示したものと理解されます。米国の抑止力、打撃力の欠如などというのは、極めて漠然とした抽象的・一般的な理由ですが、それが「我が国の存立を脅かし」、国民の権利等を「根底から覆す」「明白な危険」といった多義的な要件に当てはまるかどうかは、ひとえに政府の判断に委ねられることになりましょう。
 その政府の判断一つで、我が国が戦争に突入するのかどうかが決定されてしまいます。
 そして、そこで想定されている我が国の武力の行使は、さしあたりSM3によるミサイル迎撃などでしょうが、その現実的技術的迎撃可能性は措くとして、仮に迎撃に失敗したとしても、日本がミサイルを打ち落とそうと北朝鮮に対して武力の行使を行ったという決定的な事実に対し、今度は北朝鮮が日本に対する直接的な攻撃をしてくることは避けられません。こうして日本は、戦争に突入し壊滅的な被害を蒙ることになりましょう。
 存立危機事態における武力の行使、集団的自衛権の行使というのは、このようにとてつもなく危険なものなのです。
2 後方支援活動等と「非戦闘地域」について
 次に、重要影響事態における後方支援活動、国際平和共同対処事態における協力支援活動について触れます。
(1)去る4月2日、防衛省は、これまで存在しないと国会答弁してきたイラク派遣時の陸上自衛隊の活動報告(日報)について、派遣期間の日数の半分近くの376日分が見つかったと発表しました。しかも陸自内部では1年以上も前にその存在を把握していたのに放置されていたことも判明しました。
 その中にはたとえば、自衛隊が宿営地を置いたサマワにおいて、2005年6月23日、自衛隊軽装甲機動車など4両が復興支援現場に向かっていたところ、3両目の前方付近で爆発があり、3両目のフロントガラスにひびが入ったりし、爆発直後道路から離れるように走って行く男が目撃された等、と記載されています。またたとえば、2006年1月22日の記載では、サマワ市内で英軍が武装勢力に襲われ、英軍のパトロールに対してサドル派が射撃し始めたことに端を発して「戦闘が拡大」などとされています。そして、開示された日報には自衛隊宿舎にロケット弾等が撃ち込まれたことの記録も一部含まれていますが、ロケット弾等の着弾は2004年2月から2006年7月までの2年半の陸上自衛隊派遣期間中に全部で13回22発あったことが分かっています。
 これら公開された日報は、その派遣期間を通じ、自衛隊員がいかに日常的に攻撃の脅威にさらされていたかを物語る生々しい「命がけの記録」だと評されるものです。
 ちなみに、イラクから帰国した自衛隊員のうち在職中に29人もが、その後自殺していること(2015年時点)からも、派遣中の精神的負担の大きさを推し量ることができます。
(2)そして本件との関係で重要なのは、実際にはそれほどに身の危険を伴う状況にあったサマワが、イラク特措法上いわゆる「非戦闘地域」(現に戦闘行為が行われておらず、かつ、そこで実施される活動の期間を通じて戦闘行為が行われることがないと認められる地域)とされていたことです。そして、そのことに根本的な疑問を抱かせる現場からの日報が開示されないまま、新安保法制法の審議は行われました。
 新安保法制法は、イラクで「非戦闘地域」とされたところが「戦闘」が行われていた命がけの地域であったことの客観的資料を前提とすることなく、これを無視して、「非戦闘地域」の枠さえ取り払ってしまったのです。すなわち、重要影響事態における後方支援活動も国際平和共同対処事態における協力支援活動も、「非戦闘地域」どころか、「現に戦闘行為が行われている現場」でなければ行えるものとして、その制限を大きく緩和したのです。
 しかも、そこでの自衛隊による外国軍隊への物品・役務の提供(いわゆる兵站活動)も、弾薬の提供や戦闘発進準備中の航空機に対する給油・整備まで認めました。それらの結果、自衛隊が戦闘に巻き込まれる危険も、敵対国・敵対勢力から攻撃の対象とされる危険も、格段に高くなりました。
 いま、当時「非戦闘地域」とされたサマワが実際には「非戦闘地域」とは到底いえない実態にあったことが、日報という客観的資料によって裏付けられた以上、それよりもはるかに危険な活動を自衛隊に行わせようとする新安保法制法が、そのまま放置されてよいはずはありません。
 ちなみに、名古屋高裁平成20年4月17日判決が、陸上自衛隊撤収後もクエートからバグダッドへの米兵等の空輸を行っていた航空自衛隊の活動について、バグダッドは「戦闘地域」に該当し、米兵等の空輸は他国の武力行使と一体化した行動だと判断しているのは、周知のとおりです。
(3)ところで、本件で証人として申請をした半田滋氏(東京新聞論説委員編集委員)は、自衛隊イラク派遣について、その初期にサマワに滞在した経験を踏まえ、またその後の継続的な取材を経て、ずっとその危険性を指摘してこられました(『「戦地」派遣―変わる自衛隊岩波新書など)。
 前述の2005年6月23日自衛隊軽装甲機動車などに対する爆発事件についても、関係者の取材によって夙にこれを把握し、それがIED(遠隔操作爆弾)による意図的な攻撃であり、爆発後緊急停車した車両の機関銃手は、自衛隊海外派遣の歴史で初めて実弾装填をしたこと(単に実弾入りの弾装を差し込むだけではなく弾丸を銃身に送り込むこと)、その事実は今なお公表されていないことを指摘しています。
 イラクにおける「非戦闘地域」の実態、それを無視し、さらに危険な場所と活動へと自衛隊員を送り込もうとする新安保法制法の無謀ともいえる危険性を理解するには、このような経験と取材によって蓄積された知見を有する半田滋氏のような証人のお話を伺うことが、必要不可欠であると考えます。
3 新安保法制法の下での自衛隊の強化
 新安保法制法制定前後からの自衛隊の装備等の導入やその構想の拡大には、著しいものがあり、それらは、従来の「専守防衛」の域を超えるものと言わざるを得ません。このまま進めば、日本はまぎれもない軍事国家へと変貌するでしょう。
(1)新安保法制法制定時に離島への不法上陸などグレーゾーン対策とされていた、「日本版海兵隊」と呼ばれる水陸機動団が、米軍海兵隊との共同訓練等を経て、去る3月27日に発足しました。同時に、水陸機動団を最前線に運ぶオスプレイ17機の購入も決定され、2018年度から順次導入されます。
(2)政府は、昨年12月、新たな弾道ミサイル防衛システムとして、陸上配備型イージス・システム(イージス・アショア)2基を導入することを決定しました。秋田県山口県に設置することが構想されていますが、導入に1基1000億円以上もかかる装備で、単独国での保有はアメリカ以外にないものです。
(3)防衛省は、やはり昨年12月、航空自衛隊の戦闘機に搭載する長距離巡航ミサイルを導入するための関連経費を2018年度予算案に追加要求しました。日本海上空や東シナ海上空から発射すれば北朝鮮や中国まで届くもので、他国の敵基地攻撃が可能なミサイルであり、専守防衛を逸脱するものと考えられます。
(4)今年1月には、青森県三沢基地航空自衛隊初のステルス戦闘機F35Aが配備されました。
 相手のレーダーに捉えられにくく、防空網を破って侵入できる敵地攻撃的な能力を持つもので、F4の後継機として42機の導入が予定されています。日米が同じ機体で編隊を組み、データをリンクして敵地を攻撃する共同作戦も視野に入ってくるといいます。
(5)昨年5月、自衛隊法95条の2の武器等防護に関する警護を初めて実施した日本最大の護衛艦「いずも」は、空母の形状をしたヘリコプター搭載艦ですが、この「いずも」を、垂直離着陸が可能なF35Bステルス戦闘機を搭載する空母とする構想が浮上し、検討されています。これまで日本は、憲法9条の制約として、相手国の壊滅的破壊のために用いられる攻撃型兵器の保有は認められないとして、空母は持たないとされてきましたが、
これも踏み越えられようとしています。
4 結語
 このように、新安保法制法の下で、自衛隊は、ミサイル防衛も含めて米軍との共同・一体的運用を深化し、海外での武力の行使も視野に入れて敵地攻撃能力を備えた新たな装備を次々と導入する動きが顕著になっています。それは、これまで日本の領域を守るという専守防衛から離脱して、世界規模に武力の行使を含めた活動を展開しようとする動きとして、憲法9条を基本とした平和国家日本の在り方を、根本的に変容させてしまう危険性を示すものといわざるをえません。
 行政府と立法府が暴走し、憲法のくびきを破断して強行制定した新安保法制法は、いま、この国とそこに住む国民・市民を、とてつもなく危険なところへと導こうとしています。
この危険は、国民・市民の名において、どうしても食い止めなければなりません。本件訴訟はそのためのものであり、私たちはいまや司法にその役割を託する以外にないし、司法は積極的にその役割を果たすべきだと考えるものです。
 

裁判所の違憲審査のあり方と役割
 
原告ら訴訟代理人 弁護士 伊 藤   真
 
 弁論更新にあたって、裁判所の違憲審査のあり方と役割について述べる。
1 組織のガバナンスと裁判所への信頼
 どんな組織でも、完璧であることは不可能である。人間が組織を作り運営する以上は、会社であろうが、国家であろうが、その組織を担う人間が不適切な行動をとることがある。そこで、そのような不正をチェックする機関の存在が不可欠となる。組織内の不正等に対しては、組織外の監視機関が機能することが求められる。企業でいえば社外取締役であり、第三者機関による検証である。
 国家組織においても同様であり、国家組織のガバナンスの基本が権力分立である。立法、行政、司法が相互に抑制・均衡を保つことで、国民の人権保障を図ろうとしている。その構造をまねて、株主総会、取締役会、監査役という株式会社組織の基本は作られた。国家組織のガバナンスは、企業にとっても手本となるべきもののはずである。その国家のガバナンスが現在、底が抜けたように機能しなくなってしまっている。国会による行政統制のために不可欠な情報が、公文書の隠蔽、廃棄、改竄等により信頼できなくなってしまった。 仮に司法による政治統制が、司法自らの自制と称する姿勢によって機能しないのであれば、すなわち、「ダメなものはダメ」と言えないのであれば、この国の国家組織のガバナンスはとても企業や個人の手本となるものとはいえなくなる。それはすなわち、裁判所に対する国民の信頼を失うということを意味する。原告らのみならず多くの国民は、政治に
絶望しても司法への信頼を完全には失っていない。
 だからこそ、本訴訟を提訴し、支援している。すなわち司法への信頼が、国民の国家への信頼の糸をかろうじてつなぎ止めているのである。このことは、裁判所にとって極めて重要なことと思われる。財布も武器も持たない裁判所にとって最も重要なことは国民からの信頼である。国民の信頼こそが司法権という国家権力行使の正統性の源泉である。
 裁判所が憲法判断を下しても、国会がそれに従わなければ裁判所の威信に傷が付くという考えがあることは承知している。しかし、それ以上に、裁判所が国民から判断を期待された争点についての判断を避けることによって失う信頼の方が大きいことも忘れてはならない。
 本件訴訟で原告が提起している争点は、原告らには法的保護が必要な被害が生じていること、そして新安保法制法の内容および制定手続が違憲であることである。どちらも重要な争点であり、裁判所が判断する必要のある事項である。原告の請求を棄却する場合であっても、憲法判断を行っている例は、準備書面(4)でも指摘した平成27年再婚禁止期間違憲判決をはじめとして少なくない。それは合憲違憲の判断を明示的に示す必要性が、当該憲法問題の重要性、社会的影響等を考慮した個々の事案として認められたからに他ならない。また、そうした裁量を委ねられている裁判所としては、それを適切に行使する責務があるからに他ならない。
 準備書面(13)42頁で引用した、首相の靖国神社公式参拝につき違憲判断をした九州靖国訴訟(福岡地判平成16年4月7日)は、以下の通り、違憲判断をすることが自らの責務であると判示をしている。
「本件参拝は、靖国神社参拝の合憲性について十分な議論も経ないままなされ、その後も靖国神社への参拝は繰り返されてきたものである。こうした事情にかんがみるとき、裁判所が違憲性についての判断を回避すれば、今後も同様の行為が繰り返される可能性が高いというべきであり、当裁判所は、本件参拝の違憲性を判断することを自らの責務と考え、前記のとおり判示するものである。」
 確かに、事案によって憲法判断をしないで結論を出すことが正しいこともあろう。
 しかし、本件は、裁判所からみてその程度のものなのであろうか。現在の日本の政治状況は、とても議会制民主主義が十分に機能していると胸を張れるようなものでないことは、裁判所もよくわかっていると思う。秘密保護法、新安保法制、共謀罪など十分な議論と検討が必要な法律が、数の力によって押し切られるように成立してしまった。昨今の官僚、政治家の不祥事、不適切な発言をあげるまでもなく、議会制民主主義の根幹が揺らいでしまっている。こうしたときに裁判所がその役割を果たさずして、果たして日本に未来はあるのであろうか。政治的な問題だから司法は口を差し挟まないという態度が、国の方向を誤らせるのではないか。後世から見れば、あの時が重要な分岐点だったと言われる時に今私達はいるのではないか。
2 憲法判断と政治性
 あらためて言うまでもなく、憲法とは国家権力を拘束し抑制するための法である。時の権力の暴走や濫用に歯止めをかけ、国民の権利、自由、平和を守ることが憲法の存在意義である。よって、憲法判断というものは、必然的に時の政治に対抗する色彩を帯びる。憲法判断をすること自体が、本来極めて政治的なものなのである。
 戦前の大日本帝国憲法は、裁判所に違憲審査権を認めていなかった。それどころか、司法権の独立を認めず、裁判官人事も司法省の下にあった。
 行政訴訟すら司法権に含まれず、裁判所の権限から除外されていた。それが、日本国憲法の下で、行政訴訟も含めてすべてが司法権に含まれ、司法権の独立が確保され、裁判所に違憲審査権が認められた。政治部門が多数意思によって成立させた法律を違憲無効とする権限が、裁判所に与えられたのである。これは司法が極めて政治的な判断をすることを憲法自体が認めたことを意味する。この点こそが戦前と決定的に異なる画期的なことなのである。また、こうした政治的な判断権限を裁判所に与えたからこそ、政治部門から不当な影響を受けないように、裁判官の身分も憲法上、最大限保障とされることになったのである。
 戦前の司法省の監督を受けた裁判官ならいざ知らず、司法権が独立し、身分が保障された現行憲法の下の裁判官が恐れるものは何もないはずである。
 裁判所が憲法判断をすることは、時の政権に対して異論を唱えることにはなるが、そのことはけっして政治部門と司法が敵対することを意味しない。
 健全な政治部門を回復するためにむしろ、政治部門の機能不全を改善することに資するのである。
 そして最高裁の最終的な憲法判断をより充実したものにするために、あらゆる資料を地裁段階で確保し記録化しておかなければならない。憲法判断は、法令等の合憲、違憲を基礎づける多くの事実や専門家の知見の下でより説得的で充実したものになる。
 最高裁での充実した判断のための判断基礎資料確保は、地裁段階における極めて重要な責任である。
 よって、証人尋問を実施し上級審における憲法判断の基礎資料を充実させておくべきである。
3 これまでの憲法9条裁判との違い
 本件訴訟は、これまでの憲法9条が問題となった裁判とはまったく異なるものである。従来の9条裁判で行われてきたように、憲法判断に立ち入らないで、損害論あるいは法的保護利益がないと判断して訴訟を終結させることが裁判所の判断として正しいとはいえない。
 3点、違いを指摘する。
 まず、長沼事件、恵庭事件とは異なり、自衛隊の存在そのものの合憲性を争うものではない。また、砂川事件のように安保条約の合憲性を争うものでもない。これらの点において、政治部門への配慮の必要性がまったく異なる。理由はどうあれ国民の多くが認め、長期間に渡り存在してきた組織や条約に対する憲法判断に躊躇を覚える裁判官がいることは理解できる。しかし、本訴訟はそのようなものではない。これから違憲の既成事実が積み重ねられようとしているときに、裁判所が人権と憲法価値の擁護者として判断するだけである。
 次に、イラク訴訟等と異なり、法律制定手続自体の瑕疵をも問題にしている訴訟である。法律制定手続の異常さ、すなわち十分な議論も国民への説明もなされないままに、これまでとは全く違う国柄になってしまうような前代未聞の事態が起こった。民主主義というプロセスそのものが傷つけられたことを国家行為の違法性の根拠としている。
 そして何よりも、政治的に意見が分かれる問題について政治的敗者が不満を述べているようなものではまったくない。圧倒的多数の有識者や法律専門家が違憲と指摘する法律が、国民の半数以上が十分な議論を経たとはいえないとする中で、単なる数の力によって成立させられてしまったという法的にはクーデターとも評される事態を問題にしているのである。
 以上の諸点からもこれまでの9条裁判とは全く異なる性質を持った訴訟であり、裁判所の役割が、これまでの9条裁判よりも格段に強く求められていることを忘れてはならない。
 もちろん安全保障政策に関する国民の意思は多様である。具体的な安全保障政策の実現や外交交渉の内容などは政治部門の判断に委ねられている。
 しかし、そうだとしても、内閣、国会が最低限遵守しなければならない枠組みは憲法によって規定されている。政策の当不当の判断ではなく、こうした憲法の枠組みを逸脱した立法か否かの判断こそは司法の役割に他ならない。本件訴訟は、新安保法制法の安全保障政策上の当否の判断を裁判所に求めているものではない。あくまでも、新安保法制法が、憲法が許容している枠組みを逸脱しているか否かの判断を求めているだけである。それにもかかわらず、この問題を政治の場で解決するべき問題であるとして、裁判所が憲法判断を避けるようなことがあれば、すなわち、政治部門の行為が憲法の枠組みを逸脱しているか否かの判断をすることすら放棄してしまうことがあるとすれば、それこそ司法による政治部門への追随であり、極めて政治的な判断をしたと評価されることになろう。今回の事件は、憲法判断を避けること自体が極めて政治的な判断であることを意味する事案なのである。
 仮に、憲法判断を避けるとしたら、それは司法が政治に関わらない方がいいという話ではなく、司法はときの政権与党という特定の政治グループや政治家には逆らわない方がいいというだけの話に成り下がる。それを人は保身という。政治的判断に踏み込みたくないという裁判所の意図とはまったく逆に、裁判所が極めて政治的な対応をしたと国民は評価するであろう。その結果、裁判所に対する国民の信頼は失墜するであろう。
4 最後に
 私事で恐縮であるが、私は37年間司法試験の受験指導に携わってきた。裁判官諸氏は、何のために憲法を学んだのであろうか。単なる試験科目に過ぎなかったのだろうか。そうではなかったはずである。憲法には人類の叡智、日本の先人達の叡智が詰まっていることに気づいたはずである。
 また、憲法9条には、戦争の惨禍を二度と繰り返してはならないという先人達の強い思いが込められていることも知ったはずである。それに感動したこともあったのではないだろうか。
 私は、国民に憲法価値を知ってもらうため、全国で講演を続けている。立憲主義が蹂躙されたときに国民として何ができるかを考え、実践しているつもりではある。しかし、隔靴掻痒の感を否めず、歯がゆい思いをしている。率直に言って、同じ憲法を学んだ者として、裁判官をとてもうらやましく思う。裁判官はすばらしい職業である。憲法価値を守る権限が与えられ、それを仕事として実践できる唯一の職業である。自らの意思で憲法をよ
みがえらせることが出来、目の前で苦しんでいる原告に希望の光を与えることができるのは裁判官だけである。そして、裁判官には何も畏れるものがない。仮にあるとしたら自分の良心だけである。
 従うべきものも自らの良心と憲法だけである。
 準備書面13で述べたことを最後に再度、主張する。代理人は、裁判所にあえて「勇気と英断」などは求めない。この歴史に残る裁判において、裁判官としての、法律家としての職責を淡々と果たしていただきたいだけである。憲法を学んだ同じ法律家として、司法には、政治部門に対して強く気高く聳え立っていてほしい。このことを弁論更新に際して切に願う。
 

原告らが受けた被害について
 
原告ら訴訟代理人 弁護士 古 川(こがわ) 健 三
 
 代理人古川から、本年1月26日の第6回口頭弁論で行われました原告7名の本人尋問を受けまして、 原告らが新安保法制法の制定によって受けた被害は、きわめて具体的かつ重大なものであって、法的に救済されなければならないものであることを述べさせていただきます。
1.恐怖及び欠乏からの自由としての平和的生存権
 原告らの被害の具体的な内容に立ち入る前に、もう一度日本国憲法に立ち戻って、平和的生存権について一言述べておきたいと思います。日本国憲法前文第2段は、次のように宣言しています。
「われらは、全世界の国民が、ひとしく恐怖と欠乏から免かれ、平和のうちに生存する権利を有することを確認する」
 すなわち、平和的生存権とは、決して抽象的な「平和」を求める趣旨ではなく、一人一人の市民に、具体的に恐怖からの自由、欠乏からの自由を保障するものです。いうまでもなく、恐怖からの自由、欠乏からの自由とはルーズベルトが1941年に提唱した4つの自由のうちの二つであります。この「4つの自由」を普遍的原理とする考え方は世界人権宣言にも取り入れられ、「平和への権利」を保障しようとする動きは、今や全世界に広がっています 。
 ところが今日、平和の反対概念ともいうべき「恐怖」と「欠乏」は、きわめて具体的なものとして私たちに襲いかかっています。恐怖とはすなわち戦争であり、暴力であり、差別であり、 人権蹂躙であり、 人格の否定であり、法治主義が否定された知性のかけらもない強権国家の出現です。「平和安全法制」という美名とは裏腹な、「戦争法」ともいうべき新安保法制法の実態は、私たちが幾多の犠牲に上に築き上げてきたこの国の姿を根底から覆しました。原告らがそれぞれに歩んできた人生、経験、原告らを支えている家族や社会的なつながりさえもが、日本が他国の戦争に協力し、戦争当事国となりうる法的仕組みをもったことによって毀損され、 具体的な恐怖として立ち現れました。
2.原告らの個別の被害
 以下、先に行われました原告本人尋問に現れた原告らの被害について述べさせていただきます。
(1)    原告横湯
 原告横湯は、その体験した沼津大空襲で亡くなった女学生の肉片などが木に張り付いている様子や焼死体が累々と並べられた様子、さらに治安維持法で弾圧された父の死後、母と工場の屋根裏などに隠れた記憶を生々しく物語っています。それらの記憶は、新安保法制の制定によってフラッシュバックして原告横湯を苦しめているのです。それまでも、焼魚やレアステーキなどを見ては、空襲で目撃した悲惨な光景を思い起こしていた原告横湯に、なお一層鮮明なフラッシュバックによる現実の苦痛と戦争への恐怖をもたらしています。
(2) 原告清水
 原告清水は、障がいをもつ息子の父親です。息子には先天性の心臓疾患があり、手術を受けた当時は成人まで生きた前例がないと言われていました。息子は成人した今も300メートル歩くごとに休憩しなければならず、A4コピー用紙2冊を持つのが精一杯です。新安保法制法の制定は、原告清水に、ナチスドイツで障がい者が虐殺された歴史を想起させることになりました。2016年7月に相模原市福祉施設で起きた残酷な殺人事件は、新安保法制法制定後の社会で、障がい者は「生きる価値がない」とみなされるようになったことを象徴する事件として原告清水を震撼させました。
(3) 原告平原
 原告平原は、長崎での被爆体験者です。担架で運ばれてくる犠牲者の火傷で皮膚がずるずると剥けている様子は、原告平原の心に深い傷を残しました。今でも同人はトマトの湯むきができないと述べています。原告平原は、被爆者歌う会「ひまわり」に参加し、被爆者として核兵器に反対しています。そして同人は、日本には憲法9条があってもう戦争はしない、してはいけない、そのことに大きな安心感を持って生きてきました。ところが新安保法制法によって、日本が戦争に巻き込まれるときが再びくるかもしれないと大きな不安を感じ、またそれが国民に十分語られないままに決められたことに憤りを感じているのです。それらは原告平原の被爆体験とそれを原点としたその後の人生そのものの否定という、極めて重大な被害をもたらしています。
(4) 原告新倉
 原告新倉は、基地の町横須賀で平和運動を続けています。同人は、基地に配属されている自衛官やその家族は憲法9条により守られ、実際の戦闘に派遣されることが食い止められていることを実感しています。原告新倉にとって、憲法9条は、平和運動家だけではなく、自衛官や米軍兵士との間でも共有できる普遍的な価値なのです。あるとき現役自衛官から「命令があれば私は行かざるを得ない、だからそんなひどい命令を出す政府を絶対に作らないでほしい」と言われたこともあります。ところが、新安保法制法は基地の町横須賀の危険度を著しく高めました。新安保法制法による武器等防護は、横須賀基地に所属する「いずも」によって実施されました。横須賀基地原子力空母の母港であり、原子炉がメルトダウンした場合には基地から半径 8 キロメートル内は全数致死と言われています。新安保法制法の制定は、具体的な戦闘を想定せざるを得ない状況を作り出し、横須賀基地周辺の危険性は新たなステージに持ち上げられてしまったのです。
(5) 原告渡辺
 原告渡辺は、原発の設計に長く関わってきた技師であり、誰よりも原発の恐ろしさを知っています。原発は、原子炉自体が破壊されないとしても冷却材の喪失により容易に重大事故を引き起こします。使用済み燃料も極めて危険な放射性物質を多く含んでいます。浜岡原発福島第1原発と同等の事故が起きた場合、原告渡辺の居住する山梨県はもとより、首都圏にも甚大な被害が及ぶことが予想されています。新安保法制法の制定は、日本が戦争当事国となり攻撃を受ける可能性をもたらしました。原発は運転を停止して使用済み燃料を放置して冷やすことによって安全を保つことができます。ところが新安保法制法は、日本への攻撃の可能性をもたらしたため、このような形での安全管理を困難なものとしてしまいました。技術的に原発の危険性を低減させる方法を、新安保法制が奪ったのです。新安保法制は、原告渡辺が技術者として原発をフェイズ・アウトしようとする試みを粉々に砕いたのです。
(6) 原告菱山
 原告菱山は、祖母から八王子大空襲の体験を聞き、戦争の恐ろしさと戦争を放棄した憲法9条の素晴らしさ、大切さを知りました。2001年9月11日のテロの際、戦争でテロに立ち向かってもテロはなくならないとの思いから反戦平和運動に参加するようになりました。2015年9月19日未明の強行採決当時、原告菱山は、真っ暗な空の中、「憲法違反」というコールだけが響き渡る中で、これからどうなるんだろうと地獄の蓋が開いたような恐ろしさを感じました。そして新安保法制法制定後、仲間が不当逮捕されて連れ去られる夢や家宅捜査の夢などを見るようになりました。それは、原告菱山のアイデンティティの中心にあった憲法が蹂躙され、戦前戦中のような時代が始まったことに対して同人が感じている恐怖の現れなのです。
(7) 原告安海
 原告安海は、インドネシアで生まれ育ち、かつて日本軍がインドネシア人を虐殺した歴史を間近にみてきました。また2001年9月11日当時は、アメリカに留学しており、愛国心が煽り立てられて悪に対する武力の行使はやむなしという空気が巻き起こって戦争に突入する姿を目の当たりにしました。その経験から、新安保法制法を強行採決した日本がまさに911テロ当時のアメリカにそっくりであり、日本が戦争に突入することへの恐れを感じています。また、キリスト者として、神道が上位に置かれて、他の宗教が弾圧され戦争に加担させられた苦い歴史の繰り返しを危惧しています。原告安海は、新安保法制法制定により、信仰と信念に基づいた行動と言論すらも監視され、排除されるのではないかという極めて切迫した危機感を持っています。
3.まとめ
 以上の通り、 新安保法制法の制定は、原告らの人生そのものを否定し、 生命と人格そのものに対する重大な脅威を現実化させています。これらはきわめて具体的かつ深刻、重大なものです。これらの恐怖から私たち市民を守るのが憲法、そして裁判所の本来の責務です。本日もこの後3名の原告本人尋問が行われます。裁判所におかれましては、原告らの体験と感性に寄り添ってその証言に真摯に耳を傾け、 原告らの訴えの重大さ、 深刻さに想
いを致していただきたく、お願い申し上げます。
 

証人の採用について
 
原告ら訴訟代理人 弁護士 棚 橋 桂 介
 
 代理人の棚橋から、証人の採用の必要性について申し上げます。
 私たちは、5月9日付け証拠申出書を裁判所に提出し、従前立証計画で示していた19名のうち特に8名について、尋問すべき必要性が高く、証人として採用すべきであると主張しています。その8名とは、元内閣法制局長官の宮﨑礼壹さん、元最高裁判事の濱田邦夫さん、参議院議員福山哲郎さん、ジャーナリストの半田滋さん、軍事評論家の前田哲男さん、ジャーナリスト・NGO職員の西谷文和さん、小説家・歴史家の半藤一利さん、
学習院大学教授(憲法学)の青井未帆さんです。
 私たちが8名の証人の尋問で立証しようとしているのは、大きく分けると、①新安保法制法の違憲性(憲法の一義的な文言に違反する内容であり、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害する内容であることが明白であること)を基礎づける事実、②その他の加害行為の重大性を基礎づける事実(国会において新安保法制法案が違憲である疑いが強いことが参考人質疑等で明確にされたにも拘わらず、その点についての議論が十分なされないまま、決議の有無さえも分からないような異常な状況で強行採決が行われたこと等)、③原告らの訴える精神的被害に客観的根拠が存在することを基礎づける事実(原告らの訴える精神的被害と、新安保法制法に関連して生じつつある現実社会の変化との対応関係を明らかにすることを含む。)の3つです。
 証人尋問が必要であるという私たちの主張に対し、被告は、「原告らが予定している証人による立証は、いずれも本件の争点である国賠法の救済を得られる具体的な権利ないし法的利益の有無の点を離れて、実質は原告らの意見ないし評価を中心とするものであり、法的に意味ある事実についての証人尋問が予定されない」から不必要であると主張してきました。
 私たちも、証人尋問が、紛争当事者間に争いのある事実(証明の対象たる事実)につき、証人が経験した事実を供述させて、その証言を証拠とする手続であることを前提としていますが、法律上も実務上も、尋問の対象が事実のみならず経験則にまで及ぶことが認められており、被告主張のように「証明の対象たる事実」を殊更に狭く捉えて証人の適格性を否定することは適切ではありません。
 そして、私たちが8名の証人の尋問で立証しようとしている①新安保法制法の違憲性を基礎づける事実、②その他の加害行為の重大性を基礎づける事実、③原告らの訴える精神的被害に客観的根拠が存在することを基礎づける事実(③に関しては、新安保法制法に関連して生じつつある現実社会の変化に経験則を適用して原告らの訴える精神的被害との対応関係を示すことを含みます。)は、いずれも紛争当事者間に争いのある事実すなわち証明の対象たる事実であり、証人尋問により立証することが必要です。
 被告は、原告らの主張する権利ないし法的利益の侵害(損害)は国賠法上の保護に値しないと主張し、これを前提に証人尋問が不要であるとも述べています。
 しかし、明確な基準ないし根拠を示すこともなくア・プリオリに、私たちの主張する権利ないし法的利益の侵害(損害)は国賠法上の保護に値しないと切り捨てることは許されません。私たちは、③原告らの訴える精神的被害に客観的根拠が存在することを基礎づける事実(原告らの訴える精神的被害と、新安保法制法に関連して生じつつある現実社会の変化との対応関係を明らかにすることを含む。)についても証人尋問で明らかにしようと
しているのですから、仮に裁判所がこの事実に関連する証人を採用せずに私たちの請求を棄却するようなことがあるとすれば、私たちの立証を不当に制限するものとの誹りを免れません。また、既に私たちが繰り返し主張しているように、判例上も、国賠法上の保護に値するか否かは加害行為の重大性と相関的に検討されなければならないとされていますし、その相関関係の下で人格的利益や平穏な生活利益等も広く不法行為法上の救済対象とされてきています。そして、憲法の一義的な文言に違反する内容の立法が国会によって敢えて行われた場合、立法の内容が国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害するものであることが明白である場合等には、国会議員の立法行為が国賠法1条1項上違法との考え方がとられています。
 これらの加害行為の重大性を立証するには、①新安保法制法の違憲性(憲法の一義的な文言に違反する内容であり、国民に憲法上保障されている権利を違法に侵害する内容であることが明白であること)を基礎づける事実、②その他の加害行為の重大性を基礎づける事実(国会において新安保法制法案が違憲である疑いが強いことが参考人質疑等で明確にされたにも拘わらず、その点についての議論が十分なされないまま、決議の有無さえも分からないような異常な状況で強行採決が行われたこと等)に関連する証人の尋問が不可欠です。
 この裁判で私たちが主張している原告らの損害は精神的損害であり、目に見えにくいものです。そうであるからこそ、その存否の判断は慎重にしなければならず、目に見えにくいからというだけで安易に否定するようなことはあってはなりません。新安保法制法に関連して生じつつある現実社会の変化が原告らの訴える精神的被害とどのような対応関係にあるのかを専門家の知見を踏まえて探る必要がありますし、また、目に見えにくい損害の実態を知るには加害行為について分析することが不可欠ですから、原告らの訴える精神的被害がどのような加害行為により発生したものなのかをつぶさに検討する必要があります。
 加えて、被告の主張は、違憲審査について最高裁が採用している枠組みを全く無視するものであり、この点でも適切ではありません。最大判平成27年12月16日民集69巻8号2427頁は、離婚した女性について6か月の再婚禁止期間を定める民法733条1項の規定があるために再婚が遅れ、これによって精神的損害を被ったと主張する原告が提起した国家賠償請求訴訟の上告審判決ですが、まず当該規定の憲法適合性の判断を行った上で、国家賠償法上の違法性の判断へと進み、結論としては原審の判断を維持して上告を棄却し、原告の請求を退けています。同判例が、国家賠償請求については棄却すべきものとしつつ、あえて当該規定の憲法適合性について判断をしたことについて、同判例の調査官解説は、「国家賠償責任が否定される場合に前提問題として憲法判断を行うか回避するかについて、常に憲法適合性に関する判断が違法性の有無の判断に先行するものであるところ、合憲又は違憲の判断を明示的に示す必要性が当該憲法問題の重要性・社会的影響等を考慮した個々の事案ごとの裁判所の裁量に委ねられているという立場に立ったものと解されよう。特に、憲法判断を責務とする最高裁の判決においては、憲法適合性につき各裁判官に多様な意見があり得る事件等について、仮に多数意見としては違憲であることが明白でないことを理由に国家賠償請求を棄却すべきものとする場合であっても、多数意見や個別意見において憲法判断についての意見を明示的に示すために上記の必要性が認められることがあるものと考えられる。」と述べています。つまり、合憲または違憲の判断を明示的に示す必要性が、当該憲法問題の重要性・社会的影響等を考慮した上で認められる場合には、裁判所はその判断を示すべきだとの立場がとられたということになります。この立場は、憲法判断回避の準則を絶対的なルールとして主張すると、違憲審査制の憲法保障機能に反する場合が生じるため、裁判所は、事件の重大性や違憲状態の程度、その及ぼす影響の範囲、事件で問題にされている権利の性質等を総合的に考慮し、十分理由があると判断した場合は、回避のルールによらず、憲法判断に踏み切ることができるとする有力な学説とも整合するものです。
 もちろん、私たちは、原告らに生じた権利ないし法的利益の侵害(損害)に国賠法上の救済が与えられなければならないと主張しておりますが、仮に結果として国賠法上の救済が与えられないとされる場合であっても、本件において問題となっている新安保法制法の重大性・違憲状態の深刻性・社会的影響の大きさ等を考慮すれば、本件において裁判所が
憲法判断を明示的に示す必要性があることは火を見るよりも明らかであり、そのためには証人尋問は欠くことができません。
 違憲性についての判断を最終的に下すのは最高裁判所ですが、憲法81条に関する現行の支配的解釈は、違憲審査を最高裁に集中させず下級裁判所にもその行使を認めており、これは、審級制からくる一定の拘束を受けつつも各審級が独自の憲法解釈を提示し、もって違憲審査権行使の活性化を促進するものであると評価されています。また、下級審段階で違憲性について十分な審理が尽くされることで、最高裁による終局的な憲法判断がより充実したものになることが期待できます。従って、最高裁憲法判断を行うにあたって少しでも有益であると思われる証拠は採用すべきでしょう。このような観点からも、証人尋問を行う必要があるといえます。
 以上述べてきた理由により、私たちは、少なくとも今回証拠申出をしている8名の証人を採用すべきであると考えます。御庁におかれましては、本件が、政治的立場を超えた多くの国民の耳目を集める重大事件であること、深刻な違憲状態が存在するにも拘わらず裁判所がそれを座視することは、違憲状態を社会に定着・固定化させ、憲法規範が書き換えられること(壊憲)に司法が積極的に手を貸すことにほかならず、司法の役割を放棄するものであることに思いをいたし、あるべき判断を下していただきたく、強く訴える次第です。
 

原告 井 筒 高 雄(元自衛官
 
(1)証すべき事実  
 自衛隊の特質、仕組み、戦闘能力、現場の状況、隊員の意識、他国の軍隊と比較について。
 新安保法制法の制定及び集団的自衛権行使等容認によって生じる自衛隊及び隊員の意識の変化について。 
 自衛隊員やその家族はその変化を受け入れているのかについて。
 自衛隊集団的自衛権行使等の目的で海外に派遣された場合におこることについて。
 元自衛隊員として、今の自衛隊員に対して共感を持っていることについて。
(2) 尋問事項 
1 原告の経歴
2 原告の知る自衛隊の特質、仕組み、現場の状況、隊員の意識はどのようなものか。他国の軍隊と比較してどのような特徴があるか。
3 新安保法制法の制定及び集団的自衛権行使等容認の前後で、自衛隊及び自衛隊が置かれる状況や隊員の意識にどのような変化が生じたか。
4 自衛隊員は、上記3の変化がもたらすリスクを織り込み済みで入隊したといえるか。また、自衛隊員の家族も、上記3の変化を覚悟していたといえるか。
5 自衛隊(員)の戦闘能力はどの程度か。
6 自衛隊集団的自衛権行使等の目的で海外に派遣されて帰還した場合、どのような社会問題の発生が予測されるか。また、その予測の根拠はどういったものか。
7 新安保法制法の制定前、自衛隊はどのように戦術を練り、訓練、研究を行っていたか。それは、自衛隊がこれまで一度も交戦状態に至らなかったということとどのような関係があるか。
8 原告自身の経験を踏まえると、新安保法制法の制定により(7)の点にどのような変化が生じると予想されるか。
9 原告自身は、新安保法制法の成立及び集団的自衛権行使容認等によりどのような権利ないし利益を侵害されているか。
10 その他、上記に関連する事項。
 

原告 常 盤 達 雄(鉄道員
 
(1)証すべき事実
 鉄道輸送が先の大戦時に果たした役割について。
 今後戦争に関わるようになったときに、鉄道輸送が担わされる役割について。
 過去、鉄道事故が引き起こされた事案について。
 原告が勤務する橫田基地周辺の地域において、輸送時に生じうる危険性について。
(2) 尋問事項
1 職業・経歴等について。
2 勤務先における仕事内容と横田基地とのかかわり(ジェット燃料の輸送方法、保守点検の際の許可申請手順など)について。
3 ジェット燃料輸送の際は誰が運転するのか、輸送時の注意点、もし攻撃を受けたらどのような事態が想定されるか。
4 業務上拠点としている立川駅の路線上の位置付け、営業上の地位及び乗降者数等について。
5 国民保護法、新安保法制法施行によって、有事の際の対応、業務への影響、従業員としての危険性の認識はどのように変化したか。
6 横田基地周辺で働く者として、どのような危険、不安を感じているか。これまで、海外有事の際の状況はどうだったか。
7 過去の戦争時、駅が攻撃されたことはあるか。鉄道会社の従業員はどのような危険を感じていたか。
8 新安保法制法の制定により、原告自身が受けている被害(不安、苦痛など)の内容について。
9 原告が、本件訴訟の原告になることを決意した理由について。
10 その他、本件に関連する一切の事情について。
 

原告 堀 尾 輝 久(教育学者 東大名誉教授)
 
(1)証すべき事実  
 軍国少年であった原告が、戦後、その思想、人格を変えられたことの意味について。
 平和や教育を重要な研究課題にすることにした理由について。
 教育が国の礎であることについて。 
 現在の原告の活動について。それを支える思いについて。
 新安保法制法が原告に与えた影響について。
(2) 尋問事項
1 原告の生い立ちと経歴
2 教育・マスコミ挙げての国民精神総動員体制の下で軍国少年
3 終戦後の教科書黒塗り体験の衝撃とその後の虚脱感
4 教育学者として「平和と教育」「平和思想史」教育の実践的研究
5 平和憲法教育と9条を世界に広める国際活動
6 幣原首相からマッカーサーGHQ最高司令官への憲法9条の提案文書の発見
7 教科書検定教育基本法改正等の教育を通じての軍国主義へ危機と自らの反対運動
8 新安保法制法によって憲法下の実践的平和教育の否定、平和憲法の不法な侵害による人格否定と苦しみ・怒り
9 本違憲訴訟の原告となった理由
10 その他関連事項
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/安保法制違憲訴訟関連)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述
2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述
2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述
2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述
2017年2月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述
2017年3月15日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(11)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述 
2017年3月16日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(12)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告(田島諦氏ほか)による意見陳述
2017年4月21日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(13)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述
2017年4月22日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(14)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告による意見陳述(様々な立場から)
2017年6月23日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(15)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年6月25日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(16)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告による意見陳述(野木裕子さん他)
2017年8月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(17)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年8月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(18)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)において3人の原告が陳述する予定だったこと
2017年8月20日
「私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える」市民大集会(2017年9月28日/日本教育会館)へのご参加のお願い
2017年9月30日
市民大集会「私たちは戦争を許さない」(2017年9月28日)で確認されたこと
2017年11月1日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(19)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年11月2日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(20)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告による意見陳述(今野寿美雄さん他)
2017年11月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(21)~東京・差止請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2018年5月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(22)~東京・国家賠償請求訴訟(第6回口頭弁論)において7人の原告が語ったこと(横湯園子さん他)

高橋和夫氏(放送大学名誉教授)「今朝の思い」(YouTube高橋和夫(国際政治学者)チャンネル)のご紹介

 2018年5月15日配信(予定)のメルマガ金原No.3148を転載します。
 
高橋和夫氏(放送大学名誉教授)「今朝の思い」(YouTube高橋和夫(国際政治学者)チャンネル)のご紹介
 
 今年の3月末をもって放送大学教授を退任された国際政治学者の高橋和夫先生は、同大学から名誉教授の称を贈られたようで、その貢献の大きさを思えば当然のことながら、まずはおめでとうございます。
 さて、その高橋先生は、放送大学を退任された後、どこか別の大学の専任教員となるつもりは今のところなさそうで、それらしい噂は耳に入ってきません。
 
 放送大学で昨年度までに開講された高橋先生の放送科目は、現在も引き続き開講中です。
    「国際理解のために(’13)」
   「世界の中の日本(’15)」
    パレスチナ問題(’16)」
 そして、新年度、「現代の国際政治(’13)」を改訂した
    「現代の国際政治(’18)」
が開講されています。
 
 「現代の国際政治(’18)」の改訂部分は、放送大学ホームページの学生専用ページで視聴させていただくこととして、とりあえずそれ以外の科目は全て単位取得済みなので、今では、高橋先生個人のブログ、FacebookTwitterでその活動をフォローさせていただいています。
 
高橋和夫の国際政治ブログ
高橋和夫 (@kazuotakahashi)-Twitter
 
 ところで、そのフォローをしていて気がついたのですが、高橋先生が、YouTubeで「高橋和夫(国際政治学者)チャンネル)」を開設され、既に2本の(短い)動画(音声のみですから画は動きませんが)をアップされていました。
 最初の投稿は去る4月26日でしたが、それを紹介されたブログに、「YouTubeに音声ファイルをアップしました。これから、『今朝の思い』と題して、時折、思ったことをお伝えします。」と書かれていました。
 第1回のタイトルが「トロントとグーグル」、第2回(5月13日)が「シリア上空でのロシアン・ルーレットが止まった!」です。是非皆さんもチャンネル登録して、高橋先生の音声による発信をフォローされてはいかがでしょうか。
 なお、第1回の音声レベルは非常に低く、聴き取りにくかったのですが、まあ初めての試みなので仕方がないかと思います。この点は第2回で改善されています。
 
180426 今朝の思い トロントとグーグル(7分58秒)
 
180513 今朝の思い(2) シリア上空でのロシアン・ルーレットが止まった!(4分52秒)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/高橋和夫氏関連)
2013年8月17日
高橋和夫放送大学教授に岩上安身氏が“中東問題”をきく ※追記あり(高橋教授から受講者・視聴者への訴え)
2015年1月23日
イスラム国」人質事件について柳澤協二さんと高橋和夫さんの意見を聴く~IWJに会員登録をして
2016年8月6日
高橋和夫教授の「パレスチナ問題('16)」(放送大学)受講のすすめ
2017年1月26日
高橋和夫教授(放送大学)の「パレスチナ問題('16)」全15回を是非視聴して欲しい
2017年5月1日
IWJからの緊急メッセージと高橋和夫放送大学教授の4講義「受講」の奨め
2017年8月17日
高橋和夫教授(放送大学)の「パレスチナ問題('16)」全15回を是非視聴して欲しい(再説)
2017年9月7日
田中浩一郎氏と高橋和夫氏が語る「イラン情勢と米国の中東政策」(日本記者クラブ/2017年6月8日)を視聴する
2018年1月19日
放送大学あれこれ~高橋和夫教授の退任と「子ども居場所づくりで子そだち子そだて支援-学びは生きる力-」(2/10和歌山学習センター)
2018年4月26日
高橋真樹×高橋和夫×荻上チキ「今、パレスチナで何が起きているのか?」を読む

司法に安保法制の違憲を訴える意義(22)~東京・国家賠償請求訴訟(第6回口頭弁論)において7人の原告が語ったこと(横湯園子さん他)

 2018年5月14日配信(予定)のメルマガ金原No.3147を転載します。
 
司法に安保法制の違憲を訴える意義(22)~東京・国家賠償請求訴訟(第6回口頭弁論)において7人の原告が語ったこと(横湯園子さん他)
 
 私のブログでお届けしてきた「司法に安保法制の違憲を訴える意義」シリーズの更新が最近滞っていて気になっていました。
 このシリーズでは、主に2016年4月26日に東京地方裁判所に提訴された2件の安保法制違憲訴訟(国家賠償請求訴訟と差止請求訴訟)の口頭弁論の内容を、弁論後の記者会見や報告集会の動画、及び公開された原告や代理人の陳述書によってご紹介してきました。
 巻末リストのとおり、これまで、国賠請求訴訟については第5回口頭弁論(2017年9月28日開廷)、差止請求訴訟についても第5回口頭弁論(2017年10月27日開廷)までご紹介済みです。
 
 けれども、これらの記事をアップしてから半年以上、事態はかなり大きく動いています。
 とりわけ国賠請求訴訟については、全国の安保法制違憲訴訟のトップを切って証拠調べ手続に入り、
    第6回口頭弁論 2018年1月26日開廷
    原告本人尋問(7人)
    第7回口頭弁論 2018年5月11日開廷
    原告本人尋問(3人)
が行われました。
 東京国賠訴訟の現在の最大の焦点は、原告側が強く求めている証人尋問について、裁判所がその一部なりと認めるのか、ということです。
 国賠訴訟の裁判体(東京地裁民事第1部)の構成が、5月11日の第7回期日から総入れ替えになったということもあり、次回第8回口頭弁論期日(2018年7月20日)において、原告による証人尋問請求に対する裁判所の判断がくだされるという流れのようです。
 
 なお、差止請求訴訟(東京地裁民事第2部)については、
    第6回口頭弁論 2018年2月5日 開廷
    原告ら準備書面14(違憲審査制と裁判所の役割)、同15(被害論その2)陳述
   被告準備書面4陳述
が行われ、次回(第7回)口頭弁論期日が6月20日と指定されており、裁判所としては、そろそろ立証に入ろうとしているという段階のようです。
 
 以上が、東京地裁に系属中の国賠請求訴訟と差止請求訴訟の概要です。
 半年の遅れを取り戻すため、とりあえず今日は、今年の1月26日に行われた東京国賠請求訴訟を取り上げることとし、裁判終了後の報告集会の動画(森薫さん撮影)と、付小谷集会で配布され、その後、「安保法制違憲訴訟の会」ホームページにアップされた資料をご紹介します。
 その資料とは、当日、本人尋問に立たれた各原告についての証拠調べ請求書から「証すべき事実」と「尋問事項」を抜きだしたものです。
 報告集会の動画と併せ読めば、原告の皆さんの法廷での発言の概要が理解いただけるだろうと思います。
 
動画 2018年1月26日 安保法制違憲訴訟(第6回口頭弁論・国賠請求)報告集会(1時間41分)
冒頭~ 寺井一弘弁護士(安保法制違憲訴訟の会共同代表)
8分~ 原告・安海和宣さん(キリスト教牧師、東南アジアで布教)
12分~ 原告・新倉裕史さん(基地周辺住民)
19分~ 原告・横湯園子さん(教育臨床心理学者、空襲体験者)
31分~ 原告・清水民男さん(障害ある子を持つ親)
42分~ 原告・平原ヨシ子さん(原爆被害者)
1時間12分~ 原告・渡辺敦雄さん(元原発技師)
1時間22分~ 原告・菱山南帆子さん(若者、障害者施設職員)
1時間34分~ 宮崎訴訟弁護団から
1時間36分~ 堀尾輝久氏(原告、5月11日に尋問予定)
※この録画をパソコンで視聴される方には、可能であれば、外付スピーカーの購入をお勧めしたいですね。
 

1 原告 横湯 園子(戦争被害他)
(1)証すべき事実        
 原告は、教育臨床心理学、心理臨床の専門家であり、いじめ被害者やDV被害者の救済の活動をしていること。
 原告は、空襲経験時の肉片や焼死体の映像を鮮明に覚えており、現在でも、頭付きの焼き魚を見ると焼死体を思い出し、食することができない。レアなステーキを見ただけでも気分が悪くなる。東日本大震災(3・11)後に東北を訪問した際にも、戦時中グラマン機で追い回され狙撃されたことや、爆撃後に母親を捜す少年の姿がフラッシュバックしたこと。
 原告の心の深奥で警鐘が鳴り出したのは特定秘密保護法が制定された頃で全国的な行動を起こしたこと。その後集団的自衛権閣議決定がされ、危惧は現実となったこと。
 また、原告には、子どもや青年の間での神経症、トラコーマ、結核の増大から、戦争の兆候を見て取っていること。
 安保法制により日本国が再び戦争へ向かっていくために、原告を含む原告らはその心の傷を掻き毟られ抉られて多大な精神的苦痛を受けていること。
(2)尋問事項
1 原告の経歴
2 教育臨床心理学とはどのような学問であるか。心理臨床家の専門家としてどのような活動を行っているか。
3 静岡県沼津市の空襲を経験したか。
4 沼津空襲について記憶にあることはどのようなことか。
5 東北大震災3・11後の東北訪問したことはあるか。
6 東北訪問でどのようなことを経験したか。
7 安保法制法の制定について、教育臨床心理学、心理臨床家として、どのように受け止めているか。
8 安保法制成立の直前からの政権の動きによる女性の権利侵害を感じ女性の行動レッドアクション「女の平和」を企画し国会を包囲し、その動きが全国的な女性の行動に波及していったことについて。
9 関連事項
 

2 原告 清水 民男(障害の息子の親)
(1)証すべき事実        
 原告の長男は生まれつきの内部障害があり、出生直後それが分かると苦悩したが、幼少時に友だちからいじめに遭うのをかばいながら大切に育ててきたこと。長男の障害は、心臓の疾患で300mほど歩くと息が苦しくなり休んではまた歩くことになるような症状であること。
 しかし内部障害であるため、怠けている甘えていると見られることが多く辛い思いをしてきた。
 安保法制により戦争にかり出されたり、作業に就かされることがあれば障害と見えず、無理を強いられるのではないか不安であること。
 茨城に住むのでテロで原発に事故が起きれば逃げることは難しく、息子は家族に「置いて逃げてほしい」と考えていることを原告は知らされたことなど、安保法制により社会が変わる中、障害を持つ子を持つ父の苦しみについて。
(2)尋問事項
1 原告の育った環境(母親の戦争被害の体験、父親の社会への思いと活動)について
2 原告のこれまでの生き方と退職後の挑戦について
3 原告の息子さんは障害をもっているが、どのような障害か
4 障害を持つ息子さんのこれまでの生活と今の生活状況
5 障害を持つ息子さんに対する思いについて
6 息子さんも原告であるが、息子さんがこの安保法制についての被害を語っているその思いを聞いて
7 新安保法制法の制定により、原告自身はどのような不安、苦痛をうけているのか
8 原告が、本件訴訟の原告になることを決意した理由について
9 その他、本件に関連する一切の事情について 
 

3 原告 平原 ヨシ子(原爆被害)
(1)証すべき事実        
 長崎の原爆被害を17才で体験した原告は、爆心から3.6㎞のところで建物に逃れ助かったが、街は地獄絵図のような状態になった。被爆者は髪が抜けおちたり、黄色い寒天のようなものを吐いたりしていた。手の皮がむけて垂れていた姿はちょうどトマトの皮を湯剥きした時のようでその姿は忘れられず、原告は今でもトマトの湯剥きができない。被
爆体験とその被害の甚大さ、遭遇したことによるトラウマが消えることのないことについて。
 戦争中は一人でも多くの敵を殺せといわれ、原告がその製造を手伝った魚雷が敵艦に命中するとお祝いした。洗脳されていた。敵にも家族があるということが分からないような状態になっていた。当時の洗脳状況と安保法制による戦争への接近を感じる恐怖について。
 安保法制法の成立により、人の心を歪め、人を傷つけ、生涯いえることのない心の傷を残す戦争に接近していることを感じ、被害体験も蘇り苦しんでいる。
(2)尋問事項
1 原告の生い立ちと経歴
2 アジア太平洋戦争における原告及び家族の体験
3 1945年8月9日の長崎での被爆体験
4 被爆体験によるトラウマ
5 日本国憲法制定が原告に与えた意味
6 その後の平和憲法に支えられた原告の生活と活動
7 新安保法制法制定による原告の被害内容
8 違憲訴訟を決意させた理由
9 その他本件に関する事項
 

4 原告 新倉 裕史(基地周辺住民)
(1)証すべき事実 
 横須賀基地問題とのかかわりについて。
 横須賀基地の概要~米海軍の構成、任務等。空母、艦船とその活動の特徴などについて。
 横須賀基地における海上自衛隊について。
 安保法制と新ガイドラインによる、米海軍と海上自衛隊の役割、機能、相互関係の変化について。
 横須賀を母港とする原子力空母その他の原子力艦船の危険性について。
 安保法制の成立・適用によって、増大した危険性について。
(2)尋問事項
1 地位・経歴等と横須賀基地問題とのかかわり。
2 横須賀基地の概要。
3 横須賀基地における米海軍の構成、任務等。空母をはじめとする艦船とその活動の特徴など(ベトナム戦争湾岸戦争イラク戦争アフガニスタン戦争のとき等)。
4 横須賀基地における海上自衛隊の構成、任務、その活動の特徴等。
5 安保法制と新ガイドラインによって、米海軍と海上自衛隊の役割、機能、相互関係はどのように変化しつつあるか。
6 2017年5月に実施された横須賀基地から出港した自衛隊護衛艦「いずも」による米軍艦船の武器等防護は、横須賀市民にどう受け止められたか。
7 横須賀を母港とする原子力空母その他の原子力艦船の危険性。原子力災害の現実性、想定される被害と市民の不安。
8 基地の街に暮らす原告ら市民にとって、基地が戦争やテロの攻撃対象となる危険、脅威はいかなるものか。例えば9・11のとき、米軍はどう動いたか。
9 安保法制の成立・適用によって、基地の街に住むことの危険性は増大したか。
10 原告が45年間、反基地・平和運動を続けてきたのはなぜか。その原告にとって安保法制の制定はどのような意味をもったか。
11 その他関連事項。
 

5 原告 渡辺 敦雄(元原発技師)
(1)証すべき事実        
 原告は、福島第一原子力発電所などをはじめとして、約20年間原発の基本設計を担当したこと。
 原子力発電所の危機管理は脆弱であること。
 歴史的には原子力発電所は、これまでも空爆に遭ってきたし、9・11の際、ニューヨーク州原発もテロリストの攻撃対象のひとつだったこと。
 原発は空からの攻撃だけでなく、近傍送電線や使用済み核燃料を保管する燃料プールも狙われやすいこと。しかし、日本の原発はテロ対策は何もしていないといっても過言ではないこと。
 原発の被害は長年月に影響を残すこと。
 安保法制により、原子力施設が空爆される恐れが高まり、原発破壊による放射能拡散の危険が極めてたかくなったこと。
(2)尋問事項
1 原告の経歴、特に原子力工学に関する知識経験について。
2 原子力施設の構造について。
3 原子力施設の設計の際、ミサイル攻撃やテロ攻撃に対する対策は取られているか。取られているとすればどのような対策がなされているのか。
4 原子力施設をミサイル攻撃やテロ攻撃から防ぐことは可能なのか。
5 原子力施設に対するミサイル攻撃やテロ攻撃等の実例について。
6 日本の原子力施設にミサイル攻撃やテロ攻撃が行われた場合、どのような事態が想定されるか。
7 新安保法制法の制定の前後で、原子力施設に対する攻撃の可能性が高まっていると考えるか。また、そう考える根拠について。
8 新安保法制法の制定により、原告自身が受けている不安、苦痛の内容について。
9 原告が、本件訴訟の原告になることを決意した理由について。
10 その他、本件に関連する一切の事情について。
 

6 原告 菱山 南帆子(若者~障害者施設職員)
(1)証すべき事実        
 20代後半の原告が、「貧困」、「差別」、「戦争」が人々の間に憎しみを生むことを学んできたこと。
 皆同じように幸せに暮らしたいと願い、原告が社会に訴え、行動してきた事実について。
 安保法制の成立については、多くの人と一緒になり、またそれを代弁して市井の人々の声を政治に届けようと行動していることについて。
 主権者として原告や、他の市民の声が無視されて安保法制法が制定されたことが、憲法で保障された権利の侵害だと強く感じていることについて。
 特に、憲法を変えることができるのは自分たち主権者だけだと考えているにもかかわらず、政府が勝手に憲法の規範内容を変更してしまったことへの怒りと失望、苦しさについて。
 先輩の大人たちがやっている政治が自分たちの声を聞き入れない憲法違反のものであることに対する怒りと悲しさについて。
 それでもあきらめずに闘おうとする原告の思いについて。
(2)尋問事項
1 1989年4月に生まれた原告の生い立ち
2 原告の発想の原点となった戦争のことや戦争で肉親が亡くなる悲惨さをどのようにして学んだか
3 小学校時代、担任の差別発言に抗議したこと、そのことは間違っていないと指導してくれた教師に出会ったこと等、小・中学生の頃に学び身につけた価値について
4 読書をして学びながら、集会参加などの実践を重ね「社会はすべて自分の生活に繋がっていることを自覚し、私自身がはじめて世界にリンクできた」と感じた小学校6年生の頃のことなど
5 たとえば、現在の職場である障害者施設で、人手が足らずおしめ交換が間に合わず、お漏らしをすることでベッドのスプリングが錆び、障害者がでこぼこのベッドに寝させられる福祉の貧しさ等の現実に直面し、憲法が保障する権利の重要性を認識したことで感じる社会の矛盾への憤り
6 憎しみの連鎖をたちきるために「貧困」、「差別」、「戦争」の三つの原因をなくすことが必要だと考える原告が、主権者であるのにその声を無視して成立させられた戦争法=安保法制に対して思うこと
7 憲法改正しなければできないと考えていたことを主権者たる自分の意思を無視して強行されたことで、どれほどの苦痛を受けたか。
8 原告が、本件訴訟の原告になることを決意した理由について
9 その他、本件に関連する一切の事情について
 

7 原告 安海 和宣(東南アジアで布教)
(1)証すべき事実        
 子ども時代、日本がかつて侵略したインドネシアで暮らし村人や友だちから排除されたが、布教をする父は「かつて、日本軍は刀を持ってこの地にやってきた。しかし今、私は平和の福音を携えてこの地に戻ってきました」と語りかけ、現地の人々に受け入れられていったこと。
 9.11の時アメリカに留学していた原告は、アメリカが愛国心を喚起し戦争に突入していった状況を目の当たりにしたこと。
 安保法制法が成立し、日本が海外、とりわけアジアの国からの信頼を失うことが不安であり辛く恐ろしいこと。
 日本が9.11以降のアメリカに似てきていることを感じること等。   
(2)尋問事項
1 プロテスタント教会の牧師となった動機 
  宣教師であったお父さんから受けた影響
2 インドネシアで15歳まで生活して、何を学んだか。
  日本人いうことで差別されたことがあるか、その理由とそれが解消された理由
3 アメリカへは何歳の時に、何の目的で行ったのか
4 アメリカでは何を学び、どんな経験をしたか
5 日本での牧師としての活動 
6 日本国憲法の理解、特に9条と20条について
7 キリスト者にとっての平和の価値、安全保障について
  「平和つくり人でありなさい」という教えの実践について
8 新安保法制法の本質をどう理解しているか
9 新安保法制法の制定によって、どのような危惧と精神的苦痛を感じているか 心に本当の平和がないと、真の意味での平和づくりはできないという信念について
10 キリスト教牧師としての使命をどう考えているか
 

(弁護士・金原徹雄のブログから/安保法制違憲訴訟関連)
2016年9月3日
東京・安保法制違憲訴訟(国賠請求)が始まりました(2016年9月2日)
※過去の安保法制違憲訴訟関連のブログ記事にリンクしています。
2016年9月6日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(1)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年9月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(2)~東京・国家賠償請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年10月4日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(3)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告訴訟代理人による意見陳述
2016年10月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(4)~東京・差止請求訴訟(第1回口頭弁論)における原告による意見陳述
2016年12月9日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(5)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告代理人による意見陳述
2016年12月10日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(6)~東京・国家賠償請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告による意見陳述
2017年1月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(7)~寺井一弘弁護士(長崎国賠訴訟)と吉岡康祐弁護士(岡山国賠訴訟)の第1回口頭弁論における意見陳述
2017年1月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(8)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年1月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(9)~東京・差止請求訴訟(第2回口頭弁論)における原告(田中煕巳さんと小倉志郎さん)による意見陳述
2017年2月14日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(10)~東京「女の会」訴訟(第1回口頭弁論)における原告・原告代理人による意見陳述
2017年3月15日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(11)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述 
2017年3月16日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(12)~東京・国家賠償請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告(田島諦氏ほか)による意見陳述
2017年4月21日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(13)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告代理人による陳述
2017年4月22日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(14)~東京・差止請求訴訟(第3回口頭弁論)における原告による意見陳述(様々な立場から)
2017年6月23日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(15)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年6月25日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(16)~東京・国家賠償請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告による意見陳述(野木裕子さん他)
2017年8月7日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(17)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年8月8日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(18)~東京・差止請求訴訟(第4回口頭弁論)において3人の原告が陳述する予定だったこと
2017年8月20日
「私たちは戦争を許さない-安保法制の憲法違反を訴える」市民大集会(2017年9月28日/日本教育会館)へのご参加のお願い
2017年9月30日
市民大集会「私たちは戦争を許さない」(2017年9月28日)で確認されたこと
2017年11月1日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(19)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述
2017年11月2日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(20)~東京・国家賠償請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告による意見陳述(今野寿美雄さん他)
2017年11月5日
司法に安保法制の違憲を訴える意義(21)~東京・差止請求訴訟(第5回口頭弁論)における原告訴訟代理人による陳述

「立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期」第5回・丹羽宇一郎氏(元伊藤忠商事会長、元駐中国大使)「戦争に近付くな」のご紹介

 2018年5月13日配信(予定)のメルマガ金原No.3146を転載します。
 
「立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期」第5回・丹羽宇一郎氏(元伊藤忠商事会長、元駐中国大使)「戦争に近付くな」のご紹介
 
 皆さんは、伊藤忠商事の社長、会長を歴任した後、民主党政権時代の2010年6月から2012年12月まで、中華人民共和国駐箚特命全権大使を務めた丹羽宇一郎(にわ・ういちろう/1939年1月生)さんが、「立憲デモクラシーの会」設立時からの呼びかけ人のお一人(経済界からはただ1人)であることをご存知だったでしょうか?
 元々、憲法学者政治学者が中心となった立ち上げた同会ではあるものの、それにしても、自然科学関係が池内了氏と益川敏英氏の2人だけとは少なすぎはしないか?と思っていましたので、呼びかけ人リストのそのすぐ下に「経済界 丹羽宇一郎 元中国大使」と、ぽつんと1人だけ書かれていることに、私は最初から気がついていました。
 
 従って、その丹羽元駐中国大使が、立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期の5人目の講師として登壇されるという予告を見ても、少しも不思議な気持ちは起きませんでした。
 
 一昨日(5月11日)午後6時から、早稲田大学早稲田キャンパス・3号館402教室において、丹羽宇一郎さんが「戦争に近づくな」と題して講演されました(主催:立憲デモクラシーの会)。
 いつものようにUPLANによる中継動画がアップされていますので、ご紹介します。
 
20180511 UPLAN 丹羽宇一郎「戦争に近づくな」(1時間41分)
 
 もう少し音声レベルが高ければ、と思う方には、安価な外付けスピーカー(USB電源が主流)の購入を検討されてはどうですか?とお勧めします。1,000円~2,000円で満足のいく製品が入手できるようです(1,000円以下というのもありますが)。
 
 ところで、丹羽さんについては、私は昨年の12月に、以下のようなブログを書いています。
 
2017年12月12日
丹羽宇一郎氏が「歴史の節目の日」に発表する論考(東洋経済ONLINE)を読む~『戦争の大問題』その後
 
 そこでは、丹羽さんが昨年の8月以降、戦争を振り返る際に節目となる日に、「東洋経済ONLINE」に発表した論考をご紹介しました。その節目の日というのは、以下の5日です。
 
8月 6日 広島への原爆投下(1945年)
8月15日 敗戦の国民への公表(1945年)
9月18日 満州事変開戦(1931年)
9月29日 日中国交正常化(1972年)
12月8日 太平洋戦争開戦(1941年)
 
 その後、このシリーズには次の1編が追加されていました。沖縄戦が始まった日「3月26日(1945年)」に発表されました。
 
丹羽宇一郎選、沖縄戦の悲劇を知る「この1冊」
「怒りに身が震え、涙が止まらなかった」
丹羽 宇一郎:元伊藤忠商事社長・元中国大使 2018年03月26日
(抜粋引用開始)
求めて戦争体験者の話を聞かねばならない
 戦争を知らない世代が、戦争に近づいているように見える。いま日本には、日本は強くなければ他国に侵略され、蹂躙(じゅうりん)される、だから日本はもっと強い武力を持つべきという主張がある。私はこうした主張に強く異を唱える。
 沖縄の悲劇は負け戦だったからか。日本軍が強ければ沖縄の人々を救えたのか。こうした問いに対しても、私は否と答える。
 力対力では、悲劇を増殖させるだけだ。日本が強ければ、今度は日本軍が他国の人々を犠牲者にすることになる。これは、すでに中国やフィリピンで起きた事実である。大という文字が付こうが付くまいが、虐殺は非道の極みだ。
 米軍が、日本軍が、特別なのではない。戦争による非人間性は人類の業である。戦争は人から人間性を奪う。被害者にならなければ、加害者になる。悲劇の加害者であることを強いられる国民も、やはりある種の被害者といえよう。
 だから力対力、武力対武力で国際問題を解決するという姿勢では、人類を幸福にする道から遠ざかっていくことになってしまうだろう。
 戦争では、結局、国民が犠牲になる。真っ先に犠牲になるのは弱者だ。女性や子どもが犠牲者となる。それが戦争の真実である。戦争に近づいてはいけないのだ。そのためにも、われわれは戦争の真実を知ろうとしないまま、一生を過ごすことがあってはならない。
 沖縄の人々が、かつて味わった苦しみ、悲しみ、怒り、絶望をわれわれは知るべきである。沖縄を含め、日本全国にいる戦場体験者、戦災体験者の方々には、戦争を知らない世代が具体的なイメージを持てるよう、つらい思い出をあえてお話ししてくださることを願う。
 われわれは、求めて戦争体験者の話を聞かなければいけない。もうわずかしか時間は残されていないのだ。それが、今日、73年前に沖縄戦の始まった3月26日に涙をこらえて私が思うことである。
(引用終わり)
 
 「戦争に近づいてはいけないのだ。そのためにも、われわれは戦争の真実を知ろうとしないまま、一生を過ごすことがあってはならない。」というのが、一昨日の講演の主題でもあったはずだと思います。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/立憲デモクラシー講座)
2015年11月15日
佐々木惣一が発見した「国民の存在権」(憲法13条)と自民党改憲案~石川健治東大教授の講義で学ぶ(11/13立憲デモクラシー講座 第1回)
2015年12月12日
山口二郎法政大学教授による「戦後70年目の日本政治」一応の総括~12/11立憲デモクラシー講座 第3回)
2016年1月8日
中野晃一上智大学教授による「グローバルな寡頭支配vs.立憲デモクラシー」~1/8立憲デモクラシー講座第4回)
2016年1月31日
杉田敦法政大学教授による「憲法9条の削除・改訂は必要か」~1/29立憲デモクラシー講座 第5回)
2016年3月28日
立憲デモクラシー講座第6回(3/4三浦まり上智大学教授)と第7回(3/18齋藤純一早稲田大学教授)のご紹介
2016年4月11日
立憲デモクラシー講座第8回(4/8)「大震災と憲法―議員任期延長は必要か?(高見勝利氏)」のご紹介(付・『新憲法の解説』と緊急事態条項)
2016年4月25日
立憲デモクラシー講座第9回(4/22)「表現の自由の危機と改憲問題」(阪口正二郎一橋大学教授)」のご紹介(付・3/2「放送規制問題に関する見解」全文)
2016年5月15日
立憲デモクラシー講座第10回(5/13)「戦争化する世界と日本のゆくえ」(西谷修立教大学特任教授)のご紹介
2016年6月16日
立憲デモクラシー講座第11回(6/3石田英敬東京大学教授)と第12回(6/10岡野八代同志社大学大学院教授)のご紹介
2016年10月22日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅱ期」スタート~第1回・白藤博行専修大学教授「辺野古争訟から考える立憲地方自治」(10/21)のご紹介
2016年11月21日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅱ期」第2回・木村草太首都大学東京教授「泣いた赤鬼から考える辺野古訴訟」は視聴できないけれど
2016年12月17日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅱ期」第3回・五野井郁夫高千穂大学教授「政治的リアリズムと超国家主義丸山眞男の国際政治思想から現代世界を読む」のご紹介
2017年1月16日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅱ期」第4回・山口二郎法政大学教授「民主主義と多数決」のご紹介
2017年3月11日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅱ期」第5回・青井未帆学習院大学教授「裁判所の果たす役割~安保法制違憲国家賠償請求訴訟を題材に」のご紹介
2017年5月5日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅱ期」第6回・石川健治東京大学教授「天皇と主権 信仰と規範のあいだ」のご紹介
2017年6月29日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅱ期」第7回・島薗進上智大学特任教授&石川健治東京大学教授「教育勅語―なにが問題か:天皇・軍隊・人間」のご紹介
2017年12月17日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期」第1回・山口二郎氏、佐々木寛氏、柿崎明二氏「市民連合と選挙政治-到達点と課題」のご紹介
2018年1月30日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期」第2回・本田由紀氏(東京大学大学院教授)「家族に干渉する国家―家庭教育支援法案を中心に」のご紹介
2018年3月3日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期」第3回・石田淳氏(東京大学大学院総合文化研究科教授)「安全保障のディレンマと立憲デモクラシー」のご紹介
2018年4月29日
「立憲デモクラシー講座・第Ⅲ期」第4回・上西充子氏(法政大学キャリアデザイン学部教授)「働き方改革という策略―裁量労働制と高度プロフェッショナル制度をめぐって」のご紹介
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/YouTube版・立憲デモクラシー講座)
2018年2月18日
YouTube版・立憲デモクラシー講座が始まった~第1回(山口二郎氏)、第2回(杉田敦氏)、第3回(長谷部恭男氏)のご紹介
2018年3月12日
YouTube版・立憲デモクラシー講座第2回「立憲政治とは何か」(杉田敦法政大学教授)のご紹介~【音声改良版】再アップ
2018年3月14日
YouTube版・立憲デモクラシー講座に石川健治東京大学教授(憲法学)が登場~しかも3回分(第4回~第6回)の「大河」講義
2018年4月6日
YouTube版・立憲デモクラシー講座・第7回「「メディアと政治」を考える」(石田英敬東京大学教授)を視聴する

「ボクらのチカラをひとつに@参議院2019(仮称)」参加呼びかけ記者会見(岡山市)を視聴して来年の参院選を思う

 2018年5月12日配信(予定)のメルマガ金原No.3145を転載します。
 
「ボクらのチカラをひとつに@参議院2019(仮称)」参加呼びかけ記者会見(岡山市)を視聴して来年の参院選を思う
 
 「希望の党」が解党して、その多数派が一瞬だけ「国民党」を結成し、その上で民進党と合流して「国民民主党」が出来た・・・これで良かったでしょうか?(自信ないけど)。 ということで、5月11日現在の「会派別所属議員数一覧」を、参議院ホームページで調べてみました。
 
 総議員定数242が3年ごとに半数ずつ改選される訳ですが、各会派の議席状況は以下のとおりでした。リンク先では、括弧内に女性議員の数を記載していますが、ここでは省略させてもらっています(平成30年5月10日現在)。
 
自由民主党・こころ
 2019年7月28日任期満了 比例21 選挙区48 合計69 
 2022年7月25日任期満了 比例19 選挙区37 合計56
 合計125
 2019年7月28日任期満了 比例07 選挙区04 合計11 
 2022年7月25日任期満了 比例07 選挙区07 合計14
 合計25
 2019年7月28日任期満了 比例04 選挙区06 合計10 
 2022年7月25日任期満了 比例04 選挙区10 合計14
 合計24
立憲民主党・民友会
 2019年7月28日任期満了 比例04 選挙区03 合計07 
 2022年7月25日任期満了 比例06 選挙区10 合計16
 合計23
 2019年7月28日任期満了 比例05 選挙区03 合計08 
 2022年7月25日任期満了 比例05 選挙区01 合計06
 合計14
 2019年7月28日任期満了 比例03 選挙区02 合計05 
 2022年7月25日任期満了 比例03 選挙区03 合計06
 合計11
 2019年7月28日任期満了 比例01 選挙区01 合計02 
 2022年7月25日任期満了 比例02 選挙区02 合計04
 合計06
 2019年7月28日任期満了 比例01 選挙区02 合計03 
 2022年7月25日任期満了 比例00 選挙区00 合計00
 合計03
無所属クラブ
 2019年7月28日任期満了 比例01 選挙区01 合計02 
 2022年7月25日任期満了 比例00 選挙区00 合計00
 合計02
 2019年7月28日任期満了 比例00 選挙区01 合計01 
 2022年7月25日任期満了 比例00 選挙区01 合計01
 合計02
国民の声
 2019年7月28日任期満了 比例00 選挙区00 合計00 
 2022年7月25日任期満了 比例01 選挙区01 合計02
 合計02
各派に属しない議員
 2019年7月28日任期満了 比例01 選挙区02 合計03 
 2022年7月25日任期満了 比例01 選挙区01 合計02
 合計05
合計
 2019年7月28日任期満了 比例48 選挙区73 合計121 
 2022年7月25日任期満了 比例48 選挙区73 合計121
 合計242
 
 来年(2019年)の7月28日に任期満了となる参議院議員、つまり6年前(2013年)の7月21日に投開票が行われた第23回参議院議員通常選挙で当選した議員が、来年改選期を迎えることになります。
 各地で選挙に向けた態勢をどう整えるのか、とりわけ、離合集散の激しい野党陣営、及びその勢力伸長を願う市民にとって、もう実質1年しかない、という段階です。
 今度の参議院議員選挙がなぜ重要かといえば、6年前の選挙は、第二次安倍内閣がその前年(2012年)12月に誕生してから初めての本格的国政選挙でしたが、前年に政権を失った民主党が惨敗した選挙でした。
 候補を擁立した19の1人区で全敗し、2人区の宮城、京都、兵庫で敗れたほか、3人区の埼玉、4人区の大阪、5人区の東京でも議席を失い、選挙区10人、比例7人の当選者を出すのが精一杯でした。
 その時かろうじて当選した17人が、今では国民民主党に10人、立憲民主党に7人と別れて在籍することになったということのようです。
 
 民主党が惨敗し、自民・公明が大勝した6年前の議員が改選期を迎えるということは、適切な選挙戦略をもって臨めば、自民・公明からかなりの議席を取り戻せる可能性があるということであり、ひいては、いわゆる改憲勢力参議院で2/3の議席を割り込む目もあるということでもあります。
 もっとも、具体的な改憲案を提示しているのは自民党だけという現段階で、どの政党が自民党に(修正協議などの末に)同調するのか、完全には見通せず、「いわゆる改憲派」というレッテル貼りによって、わざわざ「あちらの勢力」を増やす愚は避けねばなりませんが。
 
 以上のような状況を踏まえれば、誰が考えても、立憲民主党、国民民主党日本共産党間の選挙協力が必要(とりわけ1人区では)だと分かるのですが、他方、それだけでは、大幅な野党議席の伸張は望めないだろうとも思います。
 そこで、各地の実情により、様々な動きがあるのでしょうが、3年前の参議院選挙前にも、「おかやまいっぽん」というユニークな名前の組織を立ち上げ、先駆的な取組を行った岡山県で、その「おかやまいっぽん」などが中心となり、去る5月9日、「ボクらのチカラをひとつに@参議院2019(仮称)」設立に向けてのよびかけの記者会見が行なわれました。IWJ岡山による中継動画が全編視聴できますのでご紹介します。
 
「ボクらのチカラをひとつに@参議院2019(仮称)」参加呼びかけ記者会見 2018.5.9
記事公開日:2018.5.10 取材地:岡山県 動画(全編動画56分)
冒頭~ 趣旨説明 宮本龍門氏(おかやまいっぽん共同代表、真言宗・長泉寺住職)
9分~ 吉岡康祐氏(おかやまいっぽん共同代表、弁護士)
14分~ 秦 明美氏(岡山県農民連事務局長)
16分~ 森本 榮氏(元連合岡山会長)
21分~ 野中麻美氏(二児の母、安保関連法に反対するママとみんなの会おかやま)
22分~ 曽田和子氏(津島平和委員会、元高校教諭)
28分~ 大坂圭子氏(おかやまいっぽん共同代表)
31分~ 榊原 精氏(おかやまいっぽん共同代表、元大学教員)
35分~ 質疑応答
 
 来年の参議院選をにらみながら、どう共闘体制を構築していけばよいか、頭を悩ませておられる方の参考になればと思い、岡山の状況をご紹介しました。
 最後に、「おかやまいっぽん」のホームページに、上記記者会見についての報告がアップされており、おそらく記者会見でも配布されたであろう「参加呼びかけ資料」も掲載されていましたので、こちらもご紹介しておきます。
 
(引用開始)
「ボクらのチカラをひとつに@参議院2019(仮称)」参加呼びかけ資料
■参加呼びかけ資料PDFデータ
1,設立背景
 安保法制の廃止と立憲主義の回復という目的を達成するために、2016年2月におかやまいっぽんを設立して、市民の新しい政治参加の形を模索してきました。同時に2016年参院選/2017年衆院選では市民と立憲政党がチカラを合わせ統一候補で選挙に取り組みました。
 この2回の選挙を通じて、統一候補の実現の過程で市民が政党の間に入り調整をするという役割をする中で、共通政策の提案をしながら政党との信頼関係も築いてきました。
 2017年の衆院選では比例復活という状況ではありますが岡山県第1区において統一候補の高井たかし氏が当選し、衆議院へ送り出すことができました。これにより、わたしたちの衆議院議員と継続的にコミュニケーションを取りながら国政との繋がりを作ることが出来ました。
 国政では約5年間の安倍内閣による政権運営で国の形を変えるような重要法案を違憲状態のまま強行に成立させています。さらに防衛省ではシビリアンコントロールに疑問符がつき、文科省財務省では政権によって行政が歪められたのではないかという疑惑が深まっています。そんな中、2017年の衆院選直前の民進党の分裂など、次の政権を担っていくための野党の連携は不透明な状況です。
 
2,設立目的
 わたしたちは、現在の政治情勢と過去2回の国政選挙での取り組みを踏まえて、自分たちで作った政策を国政で実現するための候補者を擁立し、その候補者を統一候補として、市民と政党がチカラを合わせて国政へと送り出すことを目指します。
 そのための議論の場と議論した内容を実践していくためのプラットフォームとして新組織の設立を目指します。
 
3,設立する組織概要
 新組織は賛同する個人・団体・政党により構成し、設立に向けた参加者を募ります。
 設立後も随時入会または退会の手続きを行います。
 
4,今後のスケジュール(予定)
・2018年5月   設立に向けた参加呼びかけ
・2018年6月初旬 新組織設立/政策(第1 次)作成開始/統一候補選定開始
・2018年7月中  統一候補発表
・2018年8月   統一候補政治活動支援
 
5,呼びかけ内容
 新組織の目的に賛同する個人・団体・政党に対して参加を呼びかけます。
 可能な限り多様なコミュニティから意見を集約して政策を作成し、それを実現するための議員を国政へ送り出すための活動を一緒に担ってください。
 
6,呼びかけ人一覧(38名・2018年5月9日現在)
大坂圭子  おかやまいっぽん共同代表
榊原 精  おかやまいっぽん共同代表
宮本龍門  おかやまいっぽん共同代表
吉岡康祐  おかやまいっぽん共同代表
赤松章子  おかやまいっぽん事務局
伊東大輔  おかやまいっぽん事務局
氏平長親  おかやまいっぽん事務局
菅木智子  おかやまいっぽん事務局
木村周二  おかやまいっぽん事務局
市場恵子  社会心理学講師・カウンセラー
伊東朋子  ホームメイドのら代表
伊原 潔  労働組合役員
宇野忠義  弘前大学名誉教授、倉敷革新懇
梅田 環  おかやま宗教者九条の会代表
大石和昭  弁護士
岡田雅夫  岡山大学名誉教授
奥田伸一郎 WEB クリエイター
奥津 亘  弁護士
尾崎ツトム OZAKI UNIT
賀川進太郎 弁護士、憲法53 条違憲国賠訴訟弁護団代表
狩野 毅  まちづくり研究所代表
曽田和子  津島平和委員会、元高校教諭
高橋 淳  医師
津嶋宣夫  退職教員
中島純男  岡山県地域人権運動連絡協議会議長
西崎直人  団体職員
西平幸代  主婦
野中麻美  二児の母、安保関連法に反対するママとみんなの会おかやま
橋本省吾  福島県希望の牧場を支援する会
明美  岡山県農民連事務局長
平野幹雄  社会保険労務士
広畑周子  退職女性教職員の会 会長
藤川智子  弁護士
松田葉子  行政書士
森本 栄  元連合岡山会長
森本忠春  産業別労働組合連合会職員
山口二郎  法政大学教授
山崎樹一郎 映画監督
(引用終わり)

「暴走政治ストップ!!-今、和歌山で市民と野党に求められていることは-」(2018年5月27日)のご案内と伊藤宏先生を取り上げた東京新聞・毎日新聞のご紹介  

 2018年5月11日配信(予定)のメルマガ金原No.3144を転載します。
 
「暴走政治ストップ!!-今、和歌山で市民と野党に求められていることは-」(2018年5月27日)のご案内と伊藤宏先生を取り上げた東京新聞毎日新聞のご紹介
 
 今日のブログは二本立てです。
 前半は、来る5月27日(日)に、和歌山市中央コミセンで開催される県革新懇シンポジウムのご案内です。とはいえ、私がこのシンポについて知っていることといえば、以下のチラシ記載情報がほぼ全てなので、あまり付け加えることもありません。
 ただ、県革新懇の武内さんがチラシを事務所まで届けてくださった際うかがったところでは、パネラーとして出席要請している「各政党」の反応はあまり芳しくなさそうでした(ある程度予想されたことではありますけど)。
 
 そもそも「革新懇」ってどんな団体?ときかれても、私もちゃんとお答えするほどの知識はありませんから、「全国革新懇」のホームページをご参照ください。
 全国革新懇平和・民主・革新の日本をめざす全国の会)について私が知っていることといえば、2013年にお亡くなりになりましたが、元日本火災海上保険(株)会長、経済同友会終身幹事であった品川正治(しながわ・まさじ)さんが、全国革新懇の代表世話人のお1人であったということくらいです。
 
 それにも関わらず、というべきか、私がこのシンポの開催をお知らせしようというのは、
9人の呼びかけ人の皆さんの顔ぶれによります。これでは無視できないでしょう。
 それでは、チラシ記載情報をご紹介します。お時間の都合がつくようでしたら、是非ご参加ください。
 
(チラシから引用開始)
革新懇シンポジウム
暴走政治ストップ!!-今、和歌山で市民と野党に求められていることは-
 
2018年5月27日(日)
 13時 受付  13時30分 開会
和歌山市中央コミュニティセンター1階多目的ホール(小)(キャパ180人)
 和歌山市三沢町1丁目2番地  
 
■コーディネーター・問題提起
   和歌山信愛女子短期大学教授/伊藤 宏 氏
■パネラー
   出席いただいた各政党・市民団体
■フロアー発言を予定しています。
 
 今、日本は大きな歴史の分岐点にさしかかっています。2012年に安倍政権が発足して以来、集団的自衛権容認の閣議決定特定秘密保護法の制定、安全保障関連法案の制定、共謀罪の趣旨を盛り込んだ改正組織的犯罪処罰法の制定など、日本は着実に戦前の社会に回帰するかのような方向に進んでいます。また、「アベノミクス」という経済政策は貧富の差を広げ、福祉社会の根底を揺さぶり続けてきました。さらに「森友学園問題」に代表されるような公文書の改ざんは、民主主義の根幹をないがしろにするような暴挙です。
 このまま「暴走政治」が続けられれば、私たちの平和な暮らしが脅かされるだけではなく、朝鮮民主主義人民共和国北朝鮮)の問題に象徴されるように、日本は外交的にも孤立するような事態を招きかねません。一方、安倍政権の暴走による影響は、なかなか普段お暮らしの中で実感できないという面もあります。特に和歌山県においては、自治体固有の様々な問題も山積しており「国政」や「経済政策」「外交政策」には関心が持てないという状況があるかもしれません。そのために、政権の暴走が和歌山県にどのような影響をもたらしているのか、市民と野党が協力して問題点を明らかにし、和歌山県から何ができるのかを探っていきたいと思います。
 
【呼びかけ人】
伊藤 宏(和歌山信愛女子短期大学教授)
琴浦龍彦(県革新懇代表世話人・県地評議長)
島 知子(薬剤師)
田村悠紀栄(カトリック修道女)
豊田泰史(市民連合わかやま共同代表・弁護士)
服部涼平和歌山大学大学院生)
花田惠子(市民連合わかやま共同代表)
藤井幹雄(憲法9条を守る和歌山弁護士の会代表世話人9条ネットわかやま世話人代表・弁護士)
松永久視子(団体職員・主婦)
 
主催・連絡先
  和歌山市松原通3-20 和歌山県教育会館内 ℡ 073-423-2261
(引用終わり)

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 さて、二本立ての後半は、上記シンポの呼びかけ人兼コーディネーターである伊藤宏さん(和歌山信愛女子短期大学教授)の「ゴジラ憲法」に関わる活動が、今月(5月)初旬、有力ブロック紙東京新聞)と全国紙(毎日新聞)によって相次いで取り上げられたということのご紹介です。
 
 私たち(伊藤宏氏講演会@和歌山実行委員会)が、去る4月7日に伊藤宏先生の講演会「ゴジラVSシン・ゴジラゴジラから読み解く平和憲法」(於:和歌山市あいあいセンター6階ホール)を開催したことは、本ブログの読者の皆さんは先刻ご承知のことと思いますし、講演会当日、伊藤先生のご厚意で来場者に配布された紀要論文「ゴジラが伝える日本国憲法の意義-平和・反核・民主主義-」(『信愛紀要』2018年第59号)も、4月14日と15日の両日、私のブログに分載してご紹介しました。
 実は、その4月7日の講演会に、東京新聞特別報道部(あの有名な「こちら特報部」を担当されている部署ですね)の安藤恭子(あんどう・きょうこ)さんという記者がわざわざ取材に来てくださっていたのです(日帰り出張でしたが)。
 安藤さんからは、伊藤先生の「ゴジラから読み解く平和憲法」を「こちら特報部」に掲載できるよう企画を提案すると伺っていたため、是非とも企画が通って欲しいものだと願っていたところ、無事、5月1日の東京新聞朝刊「こちら特報部」に掲載されました(18面・19面)。
 
 残念ながら、「こちら特報部」に掲載された記事全文は、ネットでは有料サイト(東京新聞電子版)でしか読めませんので、以下には、誰でも読める「さわり」の部分のみご紹介します。
 
【特報】<貫く人たち>ゴジラ愛で憲法語る伊藤宏さん 2018年5月1日
(引用開始)
 四月上旬、和歌山市内で「ゴジラVSシン・ゴジラ」と題して開かれた憲法講演会。「(一九四六年の)十一月三日に日本国憲法が公布された。自由と平和を愛し、文化を進める日だが、一九五四年の初代ゴジラもこの日、映画が封切られた。憲法ゴジラは、誕生日が同じなんです」
 和歌山信愛女子短大(和歌山市)の教授、伊藤宏(55)は、歴代ゴジララドンなど映画に出てくる怪獣のフィギュア百数十体を会場に持ち込み、にこやかに話を切り出した。「ゴジラ」シリーズは、アニメ版を除き、近作「シン・ゴジラ」までの二十九作品で観客動員数は一億人超。伊藤は愛する「ゴジラ」を通じ、「水爆実験から生まれたゴジラに込められた、反戦反核のメッセージを受け止めてほしい」と平和憲法の理念を伝え続けている。
【こちらは記事の前文です】
記事全文をご覧になりたい方は、東京新聞朝刊をご利用ください。
東京新聞は、関東エリアの駅売店、コンビニエンスストアなどでお求めいただけます。
東京新聞電子版」なら全国どこでも、また海外でも、記事全文が紙面ビューアーでご覧いただけます。
(引用終わり)
 
 以上のような事情から、本文の引用はこれだけにとどめますが、以下に、安藤さんが送ってくださった掲載紙から、見出しの部分を引用したいと思います。これを読むだけでも、記事の構成やトーンを推測していただくことができるでしょう。
 
貫く人たち 原子力報道の研究者 伊藤 宏
核への怒り ゴジラで学ぶ
映画の焼け野原 まさに戦災
安全神話」疑い、記者から転身
映し出す時代の憲法
シン・ゴジラ」危機感の薄れにじむ
 
 以上の記事が東京新聞に掲載された3日後の5月4日、今度は全国紙である毎日新聞の朝刊社会面のトップ記事として、「ゴジラで学ぶ憲法」というカラー写真付きの記事が掲載されました(大阪本社版・23面)。
 
 これまたネットでは有料記事なので、無料で読める「さわり」の部分のみ引用してみましょう(少し書き足しましたが)。
 
憲法記念日 原点は反戦反核 ゴジラで読み解く平和憲法
会員限定有料記事 毎日新聞2018年5月3日 20時30分(最終更新 5月3日 21時18分)
(引用開始)
和歌山信愛女子短大の伊藤教授 第1作から29作目まで分析
 「ゴジラから読み解く平和憲法」。そんないっぷう変わったテーマで憲法を教え始めた教授がいる。1954年公開の第1作から、興行収入約80億円のヒットとなった2016年の29作目「シン・ゴジラ」まで、シリーズ化された映画を分析。終戦直後、冷戦、現代と、怪獣ゴジラに対する政府の対応や登場人物の描かれ方の移り変わりを指摘し、非戦の決意とともに生まれた憲法の意義を問い直す。
 「ゴジラの原点は、『反戦反核』だったのです」。4月26日、和歌山信愛女子短大(和歌山市)であった今年度最初の憲法の授業。担当する伊藤宏教授(メディア論)が第1作当時の白黒映画のカットを印刷した資料を配ると、新入生は見入った。
(引用終わり)
 
 東京新聞の記事が、4月7日の講演内容の紹介を皮切りとして、ゴジラ・シリーズ諸作品と反戦反核との関わりについての伊藤先生の分析を詳しく紹介しているのに対し、毎日新聞は、字数が東京新聞こちら特報部」ほどはないという条件の下、勤務校での憲法講義の紹介という体裁をとりつつ、伊藤先生の「ゴジラシリーズを通して、憲法を取り巻く社会の変容を見つめてほしい」という思いを凝縮して紹介している、良い記事だと思います。
 ちなみに、毎日新聞東京本社版でも、レイアウトは異なりますが、やがり社会面トップに掲載されました。
 以下に、その見出しをご紹介しておきましょう。
 
(大阪本社版)
原点の非戦 忘れていないか
シリーズの変遷 授業に
 
(東京本社版)
反戦反核」変容見つめ
和歌山の短大で授業
 
 あと余談を2つほど。
 
毎日新聞のネット版(無償で閲覧できる部分)でも、伊藤先生が和歌山信愛女子短大の研究室で毎日新聞の取材を受けている写真を見ることができますが、掲載の何日か前、取材のために、普段は収納用の袋や箱に入れているゴジラ・コレクションを研究室内に「展示」したと伊藤先生がFacebookに投稿しているのを読んでいましたので、毎日新聞が掲載された当日、私はFacebookに以下にように書き込みました。
 
「なお、余談ですが、毎日新聞の記事に掲載された写真は、ゴジラコレクションに取り囲まれた研究室(和歌山信愛女子短大)での伊藤先生の姿ですが、これは、毎日新聞のリクエストによって飾り付けられたものであり、普段、これらのコレクションは、荷造り用の入れ物に収納されているということです。もっとも、毎日新聞の取材が終わった後も、気に入ってそのままにしておられる可能性もゼロではありませんが(未確認)。」
 
 これに対して、早速、伊藤先生から以下のようなコメントが寄せられました。
 
「金原先生の読み…凄かったですね(^_-) コレクションは、今回の毎日新聞の取材を機に、当分の間は「常設展」といたしました(^_^;) ご覧になりたい方は大学に遊びに来てください(^_-)」
 
〇伊藤宏先生のお母様は、埼玉県にお住まいとのことで、5月1日の東京新聞も、5月4日の毎日新聞(東京本社版)も、すぐに写真に撮って伊藤先生のもとに送信してくださったとか。お母様も、とても誇らしく思われたのではないでしょうか。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/伊藤宏さん関連)
2016年10月25日
伊藤宏さん(和歌山信愛女子短期大学教授)が西谷文和さんと語る「現場記者が見てきた『原子力ムラ』」ほか~「自由なラジオ LIGHT UP!」最新アーカイブを聴く(027~030)
2017年1月17日
憲法と平和・原発・沖縄問題を考えるシンポジウム」@2/4アバローム紀の国(和歌山市)へのお誘い~森ゆうこ参議院議員を迎えて
2017年1月27日
伊藤宏さん(和歌山信愛女子短期大学教授)の論文「ゴジラが子どもたちに伝えたかったこと(2005年)」を読む(前編)
2017年1月28日
伊藤宏さん(和歌山信愛女子短期大学教授)の論文「ゴジラが子どもたちに伝えたかったこと(2005年)」を読む(後編)
2017年7月14日
「伊藤宏先生~教えて!?憲法はどうなるの?どう向き合ったらいいの?」(7/17キリスト者9条ネット和歌山の集い)のご案内
2017年11月13日
伊藤宏氏(和歌山信愛女子短大教授)講演会「ゴジラウルトラマンがあなたに伝えたいこと」(くまの平和ネットワーク12/9@新宮市福祉センター)のご案内
2018年2月22日
伊藤宏氏講演会「ゴジラVSシン・ゴジラゴジラから読み解く平和憲法」(4/7@和歌山市あいあいセンター)のご案内
2018年4月14日
伊藤宏さん(和歌山信愛女子短期大学教授)の論文「ゴジラが伝える日本国憲法の意義-平和・反核・民主主義-(2018年)」を読む(前編)
2018年4月15日
伊藤宏さん(和歌山信愛女子短期大学教授)の論文「ゴジラが伝える日本国憲法の意義-平和・反核・民主主義-(2018年)」を読む(後編)
2018年5月1日
5月1日の東京新聞こちら特報部に伊藤宏先生が取り上げられました!
2018年5月4日
東京新聞に続き毎日新聞にも伊藤宏先生が大きく取り上げられました!

渡辺治さん「自民党憲法改正案の危険性と改憲発議阻止のたたかい」(2018年4月28日)を視聴する~5月19日には和歌山市で渡辺治さんが講演!

 2018年5月10日配信(予定)のメルマガ金原No.3143を転載します。
 
渡辺治さん「自民党憲法改正案の危険性と改憲発議阻止のたたかい」(2018年4月28日)を視聴する~5月19日には和歌山市渡辺治さんが講演!
 
 渡辺治さん(一橋大学名誉教授、9条の会事務局)が、憲法九条を守るわかやま県民の会主催の5月憲法集会で講演されるまで、あと1週間余りと迫ってきました。私も、最後まで聴く時間はなさそうですが、途中までは聴講できそうで、楽しみにしています。
 
 その渡辺さんが、去る4月28日(土)に東京の文京区民センターで開かれた第123回「市民憲法講座」(主催:許すな!憲法改悪・市民連絡会)で、「自民党憲法改正案の危険性と改憲発議阻止のたたかい」と題して講演された模様が、自由メディアFmATVch からYouTubeにアップされていましたのでご紹介します。音声レベルがもう少し高ければと思いますが、何とか聴き取れる範囲でしょう。
 
 渡辺さんは、講演の冒頭、今日は「自民党憲法改正案の危険性」に焦点を当ててお話したいと断られ、その理由として、世論調査において、安倍内閣への支持率は低下しているにもかかわらず、自民党改憲案、とりわけ自衛隊明記による9条改憲についての賛否の状況に変動はなく、改憲賛成の割合が高止まりしていることを指摘し、そのため、この自民党改憲案そのものの危険性を訴えていく必要があるということを強調されました。
 ということで、和歌山の聴講予定者は予習の意味で、都合がつかずに行けない人、また県外の人にとっては、3000万人署名の追い込みのための理論武装として、是非視聴されますようにお勧めします。
 なお、質疑応答の中の1時間51分~で、若年層の問題について熱く語っておられます。ここは聴き所です。
 
FmATVch 20180428市民憲法講座渡辺治講演(2時間04分)
冒頭~ 主催者挨拶
2分~ 渡辺治さん講演「自民党憲法改正案の危険性と改憲発議阻止のたたかい」
1時間38分~ 質疑応答
 
 それでは、5月19日(土)にプラザホープで開かれる「We Love 憲法 ~五月の風に~」の開催概要を再掲しておきます。是非ご参加ください。
 
(チラシから引用開始)
2018 We Love 憲法 ~五月の風に~
 
2018年5月19日(土)午後1時開場 1時30分~4時
(4時10分~和歌山駅までアピール行進)
 
かつてない市民と野党の共同で安倍改憲にNOを!!
-9条改憲を阻んで 憲法の活きる日本とアジアを-
 
記念講演講師 渡辺 治 氏(一橋大学名誉教授)
【プロフィール】1947年東京生まれ。東京大学法学部卒業。東京大学社会科学研究所助手、助教授を経て、1990年より2010年まで一橋大学教授。専門は、政治学憲法学。1980年代の中曽根内閣誕生以来、保守勢力による憲法改正を阻むために研究や講演を続けてきた。2004年「九条の会」発足時から事務局を務めている。
著書・論文には共編著『日米安保と戦争法に代わる選択肢』(大月書店)、『現代史の中の安倍政権-憲法・戦争法をめぐる攻防』(かもがわ出版)、共著『大国への執念-安倍政権と日本の危機』(大月書店)、九条の会編『安倍9条改憲は戦争への道』、ほか多数。
 
主催/憲法九条を守るわかやま県民の会
事務局/和歌山市湊通丁南1丁目1-3 名城ビル2F 県地評内 ℡073-436-3520 
(引用終わり)

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(弁護士・金原徹雄のブログから/渡辺治さん関連) 
2015年5月21日
九条の会事務局、奮闘する~討論集会(3/15)、訴えと提案(5/1)、そして緊急学習会(5/16)
2015年7月20日
渡辺治さんの「SEALDs戦争法案に反対する国会前抗議行動」(7/17)での訴え
2015年12月13日
渡辺治さん(一橋大学名誉教授)が9.19後に語る「情勢論と今後の展望」
2016年10月10日
「総がかり行動」の中間総括~「戦争法廃止!憲法いかそう!総がかり行動シンポジウム」(10/6)を視聴して
2016年11月10日
渡辺治氏(一橋大学名誉教授)講演「憲法をめぐる参院選後の情勢と課題」(2016/10/10)を視聴する
2017年3月2日
渡辺 治さんの講演と安倍政治を語る市民のつどい@和歌山県田辺市(2017年3月11日)のご案内
2017年6月27日
動画・学習会「安倍首相の改憲発言をめぐって」(九条の会事務局)~浦田一郎さん、渡辺治さんのダブル講演で学ぶ
2017年11月7日
渡辺治さんの講演動画「衆院選後 安倍改憲の新段階と九条の会の課題」(2017年10月30日)を視聴する
2018年4月7日
2018 We Love 憲法~五月の風に~今年は渡辺治さん(5/19@和歌山県勤労福祉会館プラザホープ

いずみ山系の森と川を守るコンサート~メガソーラーはいらない(2018年5月12日)開催のお知らせ

 2018年5月9日配信(予定)のメルマガ金原No.3142を転載します。
 
いずみ山系の森と川を守るコンサート~メガソーラーはいらない(2018年5月12日)開催のお知らせ
 
 3日後の5月12日(土)に開催されるコンサートのお知らせをお届けします。「間際すぎはしないか?」とお思いでしょうが、私がこのコンサートの開催を知ったのが6日前の5月3日、知人からチラシがメールで届いたのが今朝のこと、という次第で、「今さらブログに書いても間に合わないだろう」と思わないではなかったのですが(実際、私も既に他用のために行けない)、1人でも多くの方に関心を持って参加していただきたい企画なので、出遅れすぎは承知の上でご案内することにしました。
 まずは、コンサートの内容を、チラシ文字情報から転記してご紹介します。
 
(チラシから引用開始)
いずみ山系の森と川を守るコンサート
メガソーラーはいらない 自然とともに安全に暮したい
 
2018年5月12日(土)
開場 13:00
開演 13:30
終了 15:30
 
協力券 500円
 
和歌山市北コミュニティセンター・2階多目的ホール(さんさんセンター紀の川内)
    和歌山市直川326番地の7
 
出演
Crowfield(クロウフィールド)
 高校2年生の娘、中学1年生の息子と結成したファミリーバンド。平和の歌を中心に、日本と海外の曲をお届けします。家族ならではの息の合ったハーモニーをお楽しみください!
※金原注 多分、この紹介原稿が書かれたのは、3月以前のことだと思いますので、子どもさんたちの今の学年は1つずつ進級しているはずです。
 
 三線グループです。手平にある「昭和通り」。昔そこに昭和紡績があり、沖縄から大勢が女工として働きに来ていました。その人たちに思いを寄せて創った「昭和通り」もお聞きください。
 
環境破壊に加えて
土砂災害・水害の危険も
 いずみ山系は植林のほとんどない自然林の森が豊かで、希少種も含め、多様な動植物の命の営みを見ることができます。また豊かな森は、渡したちにきれいな水を与え、水害を防ぐ役割を果たしてくれています。
 今ここに、巨大なメガソーラーの設置建設が計画されています。設置されるとなると森は伐採され、ソーラー発電板の下は日が差さなくなります。生態系は壊され、保水力をなくした山により、私たちは、土砂災害、水害の危険と隣り合わせることになります。
 「自然とともに安全に暮したい」これが私たちの願いです。この環境を子どもたちに残していきたいと願っています。
 音楽を聴きながら、自然の恵みに思いをはせましょう。ぜひコンサートにお運びください。
 
主催/いずみ山系の巨大太陽光発電を考える会
連絡先/村岡キミ子(六十谷)℡073-461-9222 阪口康悟(直川)℡073-462-3109
(引用終わり)
 
 私が、このコンサートに是非多くの方が参加して欲しいと願う理由はいくつかあります。アトランダムに列挙してみましょう。
 
和歌山県大阪府を隔てる和泉(いずみ)山脈南麓の紀の川北岸、とりわけ、現在メガソーラー計画で揺れる和歌山市の園部・六十谷・直川地区は、私が生まれ育ち、現在も居住している地区とはほんの目と鼻の先のご近所であり、実際、私は、指呼の間に和泉山脈の山なみを望みながら毎日生活しています。
 
和歌山県では、このいずみ山系巨大メガソーラー計画(複数あります)の他にも、海南市紀美野町有田川町などの山間部に巨大風力発電施設が計画されるなど、再生可能エネルギーのために自然を破壊するという逆説が各地で進行中です。こういう状況ですから、河合弘之監督の映画『日本と原発 4年後』を自主上映した実行委員会のメンバー(私もその1人です)の中から、同監督のその次の作品『日本と再生 光と風のギガワット作戦』の上映会をやろうという声があがらないのももっともなのです(私もやる気はありません)。ですから、この巨大メガソーラー計画に1人でも多くの市民に関心を持ってもらうきっかけとなればと願っています。
 
〇出演者のうち、Crowfieldは、昨年まで4年連続で“HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama”に出演され(今年は娘さんのエナさんが同級生とのユニット KYKで出演し、5月12日のコンサートの宣伝をしていましたが)、また、私が運営委員を務める「守ろう9条 紀の川 市民の会」の憲法フェスタ(2016年11月3日)にも出演してくださっているなど、私が関わっている企画だけでも、大変お世話になっているのです。
 
 ・・・というような事情から、間際にもかかわらず、ご案内しました。
 この記事が目に留まり、12日の午後、北コミセンに足を運ぶ時間がおありの方には、是非ともご参加くださいと呼びかけたいと思います。
 
(参考動画)
Crowfield in “HAPPY BIRTHDAY 憲法 in Wakayama 2017”
※冒頭~34分がCrowfieldの出演シーンです。

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「アジア太平洋法律家協会及び国際民主法律家協会の板門店宣言に関する声明」を読む(付・「板門店宣言」全訳)

 2018年5月8日配信(予定)のメルマガ金原No.3141を転載します。
 
「アジア太平洋法律家協会及び国際民主法律家協会の板門店宣言に関する声明」を読む(付・「板門店宣言」全訳)
 
 去る4月27日、板門店(パンムンジョム)の「平和の家」において、大韓民国の文在
寅(ムン・ジェイン)大統領と朝鮮民主主義人民共和国金正恩キム・ジョンウン)国務委員会委員長による南北首脳会談が行われました。
 朝鮮戦争休戦後の南北首脳会談としては、2000年6月の金大中(キム・デジュン)大統領・金正日キム・ジョンイル)国防委員長会談、2007年10月の盧武鉉ノ・ムヒョン)大統領・金正日総書記会談に続く3回目となりました。以前の2回が北朝鮮平壌で行われたのに対し、今回の会談は板門店で行われました。
 
 4月27日、両首脳は、「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」を発表しました。2000年の「6.15南北共同宣言」、2007年の「10.4宣言」との比較など、この「板門店(パンムンジョム)宣言」については、様々な評価が可能でしょう
が、以下には、5月4日に発表された「アジア太平洋法律家協会及び国際民主法律家協会の板門店宣言に関する声明」をご紹介しようと思います。
 この声明が出されるに至った経緯については、笹本潤弁護士(アジア太平洋法律家協会事務局長)が、青年法律家協会弁護士学者合同部会MLでこの声明を紹介された際の文章が参考となりますので、同弁護士のご了解を得て、以下に転記します。
 
(笹本潤弁護士の投稿から引用開始)
 南北朝鮮合意を受けて、COLAP(アジア太平洋法律家協会)では、北朝鮮の朝鮮民主法律協会と韓国の民弁米軍委員会のチャン弁護士と笹本(COLAP事務局長)で起草し、COLAPとIADL(国際民主法律家協会)のメンバーに提案して議論し、COLAPとIADLの共同声明ができました。
 この声明では、パンムンジョム宣言が自決権の原則を支持し、今後平和条約に移行するにあたり、段階的な非核化と、平和体制に逆行する朝鮮半島からの米軍の撤退、韓国の核の傘からの脱却、9条に反する日本の好戦的関与の放棄、などを求めています。
 米朝会談は、トランプ大統領のイランへの対応を見ると予断は許せない状況ですが、南北のパンムンジョム宣言の実施過程を市民・法律家レベルで強化していくことにより、東北アジアの軍事的緊張要因となってきた、朝鮮半島東北アジアの米軍の軍事的関与と9条に反する日本の軍事行動をなくしていくための力にもなると思います。
 COLAPとIADLの声明を出すにあたっては、2016年にCOLAPが結成されて以来、北朝鮮の法律家が積極的に関与し、声明の作成や会議の参加を通して、彼らとの信頼関係も築けてきました。チャン弁護士をはじめとする韓国の弁護士も、ともに積極的に関与しました。法律家レベルでアジアや国際的連携も確実に進んでいます。
 
IADLホームページ
(引用終わり)
 
 以下には、日本国際法律家協会(Jalesa)Facebookページに掲載された日本語訳(訳責・新倉修氏)と英語原文を、パラグラフごとに対照して掲載します。
 なお、印刷する場合には、PDFファイルをご利用ください。
 
(引用開始)
      アジア太平洋法律家協会及び国際民主法律家協会の板門店宣言に関する声明
             COLAP and IADL Statement on the Panmunjom Declaration
 
 アジア太平洋法律家協会(The Confederation of Lawyers of Asia and the Pacific, COLAP)及び国際民主法律家協会(The International Association of Democratic Lawyers, IADL)は、2018年4月27日に朝鮮民主主義人民共和国金正恩委員長および大韓民国文在寅大統領が署名した「朝鮮半島における平和、繁栄及び統一のための板門店宣言」を歓迎する。この宣言は、朝鮮半島及び東北アジアにおける平和の一里塚である。
 
The Confederation of Lawyers of Asia and the Pacific (COLAP) and International Association of Democratic Lawyers (IADL) welcome the "Panmunjom Declaration for Peace, Prosperity and Unification on the Korean Peninsula" singed on April 27th, 2018 by Chairman Kim Jong Un of the Democratic People’s Republic of Korea (DPRK) and President Moon Jae In of the Republic of Korea (ROK). It is a milestone for peace on the Korean peninsula in particular and in Northeast Asia at large.
 
  板門店宣言は歴史的に重要である。自決の原則を確認し、朝鮮半島における南北関係の劇的な改善と発展を反映するものである。これによって軍事的な緊張関係が減少され、これにともない朝鮮半島の恒久かつ永続的な平和への希求が生まれる。
 
This agreement is historic.  It upholds the principle of self-determination and reflects the dramatic improvements and developments of inter-Korean relations.  These improvements will reduce military tensions with the aspiration for a permanent and lasting peace on the Peninsula.
 
 この宣言は、朝鮮半島における恒久平和を呼びかけるものであり、休戦は速やかに恒久平和の合意に変わらなければならない。
 
The Declaration calls for permanent and peace on the Peninsula and for the armistice should be promptly transformed into a permanent peace agreement.
 
 この宣言ができたのは、戦争の脅威と核兵器の使用が高まっていたときであった。この宣言によって戦争の脅威が減ることになった。両国の指導者は、朝鮮半島における本当の非核化を実現するために協力することを約束した。  
 
The Declaration comes at a time when the threat of war and use of nuclear weapons was rising. The Declaration helps defuse the threat of war. Both leaders have promised to work to make true denuclearization of the Korean Peninsula as a reality.
 
 この地域における永遠の平和を心に留めながら、アジア太平洋法律家協会は、関係諸国にこの宣言の実現を求めるものである。すなわち
 
Having in mind eternal peace in this area, COLAP demands the states concerned implement the declaration.  We call on:
 
   1 北朝鮮とアメリカは、来たるべき首脳会談において、この地域における北朝鮮とアメリカとの軍事的対立の脅威を取り除くため、朝鮮戦争終結させる協定ないしは条約を締結すること
 
1, The DPRK and the US at the upcoming summit, to conclude an agreement to end the Korean War so as to remove the threat of DPRK-US military confrontation from the region.
 
   2 アメリカは、講和条約の一部として、朝鮮半島に駐留するアメリカ軍の完全撤退を達成させるために必要な積極的な措置をとること。米軍基地は朝鮮戦争以来60年以上に及んで存在してきた。そのプレゼンスは、朝鮮人民の主権と独立に対する軍事的な介入を意味している。
 
2, The US to take all necessary and positive measures to accomplish a full withdrawal of the US forces stationed in the Peninsula as part of a peace treaty. The bases have existed for more than 60 years after the Korean War. Their presence represents a military intervention against sovereignty and independence of the Korean people. 
 
 3 北朝鮮は、核兵器の配備を停止し、アメリカ政府が、経済制裁の解除、米韓共同軍事演習の停止、核戦略施設の撤去、韓国駐留米軍の撤退など、北朝鮮に対する敵視政策を放棄するためにとられる処置に応じて、その所持する核兵器を解体すること
 
3, The DPRK to stop developing nuclear weapons and dismantle any nuclear weapons it possessed in accordance with the measures taken by the US Government to relinquish its hostile policies against DPRK such as the lifting economic sanctions, suspending US-ROK joint military exercises, withdrawing nuclear strategic assets, removing the US Forces stationing in Korea.
 
   4 大韓民国は、北からのミサイルの脅威を口実として大韓民国内に設置された終末高高度防衛ミサイル(THAAD)をすべて撤去するなど、アメリカの核の傘を離脱する処置をとること
 
4, The Republic of Korea to take steps to get rid of the US nuclear umbrella, including removal of whole set of the Terminal High Altitude Area Defense Missile (THAAD) system, which has been installed in this country on a pretext of missile threats from the North.
 
   5 日本政府は、外交関係の正常化に向けて北朝鮮との対話を再開し、日本の平和憲法9条に反する北朝鮮に対するアメリカの敵視政策にならった軍事力の拡張などの好戦的な政策をすべて放棄しなければならないこと
 
5,  The Japanese Government to resume dialogue with the DPRK with a view toward normalizing diplomatic relations, and should abandon all militaristic policies such as military expansion similar to the hostile US hostile policies toward DPRK, which runs counter to Japan’s Peace Constitution (Article 9).  
 
 アジア太平洋法律家協会は、南北朝鮮が、対立を止め、再統一を実現するプロセスを加速することを支持し、この板門店宣言を実施するにあたって法律家としての役割を果たすことを約束する。
 
COLAP supports that the South and the North will end their confrontation and speed up a process to realize reunification, when we are always committed to fulfilling our roles as lawyers in implementing the Panmunjom Declaration.
 
2018年5月4日
 
ジーン・マイラー
IADL会長
  Jeanne Mirer
  President, IADL
 
ジテンドラ・シャーマ
COLAP会長
  Jitendra Sharma
  President, COLAP
 
(訳責・新倉修)
 
※PDFファイル
(引用終わり)
 
 なお、今回の「板門店宣言」自体をまだ読んでいないという方もおられるでしょうから、その日本語全訳をご紹介したいと思い、色々検索したところ、何種類かの訳文が出回っていましたので、その中から、「ソウル=共同」と「KOREA.net」の2つの訳文をご紹介しておきます。
 
日本経済新聞 2018/4/27 20:48 
(引用開始)
 韓国の文在寅(ムン・ジェイン)大統領と北朝鮮金正恩キム・ジョンウン朝鮮労働党委員長が27日に署名した「朝鮮半島の平和と繁栄、統一のための板門店宣言」の全文は次の通り。(韓国側発表による)
 
 大韓民国の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国金正恩国務委員長は平和と繁栄、統一を願う全民族のいちずな願いを込め、朝鮮半島で歴史的な転換が起きている意義深い時期である2018年4月27日に、板門店の平和の家で南北首脳会談を行った。
 両首脳は、朝鮮半島にもはや戦争はなく、新たな平和の時代が開かれたことを8千万のわが同胞と全世界に厳粛に宣言した。
 両首脳は、冷戦の産物である長い分断と対決を一日も早く終わらせ、民族的和解と平和繁栄の新たな時代を果敢に切り開き、南北関係をより積極的に改善し発展させていかなければならないという確固たる意志を込め、歴史の地、板門店で次のように宣言した。
 
1 南と北は、南北関係の全面的で画期的な改善と発展を実現することで、途絶えた民族の血脈をつなぎ、共同繁栄と自主統一の未来を早めていくだろう。
 南北関係を改善し発展させることは、全民族のいちずな願いであり、もはや先送りできない時代の切迫した要求だ。
 
(1)南と北は、わが民族の運命はわれわれ自ら決定するという民族自主の原則を確認し、既に採択された南北宣言や全ての合意などを徹底的に履行することで、関係改善と発展の転換的局面を切り開いていくことにした。
 
(2)南と北は、高官級会談をはじめとする各分野の対話と交渉を早期に開催し、首脳会談で合意した内容を実践するため、積極的な対策を立てていくことにした。
 
(3)南と北は、当局間協議を緊密にし、民間交流と協力を円満に進めるため、双方の当局者が常駐する南北共同連絡事務所を開城地域に設置することにした。
 
(4)南と北は、民族的和解と和合の雰囲気を高めていくため、各界各層の多方面の協力と交流、往来や接触を活性化することにした。
 対内的には、(2000年の南北共同宣言が発表された)6月15日をはじめ、南と北にともに意義がある日を契機に、当局と国会、政党、地方自治体、民間団体など、各界各層が参加する民族共同行事を積極的に推進し、和解と協力の雰囲気を高める。対外的には18年アジア大会をはじめとする国際競技に共同で出場し、民族の知恵と才能、団結した姿を全世界に誇示することにした。
 
(5)南と北は、民族分断により発生した人道問題を至急解決するため努力し、南北赤十字会談を開催して離散家族・親戚再会をはじめとする諸問題を協議、解決していくことにした。
 差し当たって、今年8月15日を契機に離散家族・親戚の再会を行うことにした。
 
(6)南と北は民族経済の均衡的な発展と、共同繁栄を成し遂げるため、(07年の南北首脳による)10月4日宣言で合意した事業を積極的に推進していき、一次的に東海線と京義線の鉄道と道路などを連結し、現代化し、活用するための実践的な対策を取っていくことにした。
 
2 南と北は、朝鮮半島で先鋭化した軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するため共同で努力していくだろう。
 朝鮮半島の軍事的緊張状態を緩和し戦争の危険を解消することは、民族の運命と関連する非常に重大な問題であり、われわれ同胞の平和的で安定した生命を保証するための鍵となる問題だ。
 
(1)南と北は、地上と海上、空中をはじめとするあらゆる空間で、軍事的緊張と衝突の根源となる相手に対する一切の敵対行為を全面的に中止することにした。
 差し当たって、5月1日から軍事境界線一帯で拡声器(宣伝)放送やビラ散布をはじめとするあらゆる敵対行為を中止し、その手段を撤廃し、今後非武装地帯を実質的な平和地帯としていくことにした。
 
(2)南と北は、黄海北方限界線一帯を平和水域とし、偶発的な軍事衝突を防止し、安全な漁業活動を保証するための実質的な対策を立てていくことにした。
 
(3)南と北は、相互協力と交流、往来と接触が活性化することに伴うさまざまな軍事的保証対策を講じることにした。
 南と北は、双方間に提起される軍事的問題を遅滞なく協議、解決するため、国防相会談をはじめとする軍事当局者会談を頻繁に開催し、5月中にまず将官級軍事会談を開くことにした。
 
3 南と北は、朝鮮半島の恒久的で強固な平和体制構築のため、積極的に協力していくだろう。
 朝鮮半島で非正常な現在の休戦状態を終わらせ、確固たる平和体制を樹立することは、もはや先送りできない歴史的課題だ。
 
(1)南と北は、いかなる形態の武力も互いに使用しないという不可侵合意を再確認し、厳格に順守していくことにした。
 
(2)南と北は、軍事的緊張が解消され、互いの軍事的信頼が実質的に構築されるのに伴い、段階的に軍縮を実現していくことにした。
 
(3)南と北は、休戦協定締結65年となる今年、終戦を宣言し、休戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制を構築するため、南北米3者、または南北米中4者会談の開催を積極的に推進していくことにした。
 
(4)南と北は、完全な非核化を通して核のない朝鮮半島を実現するという共通の目標を確認した。
 南と北は、北側が講じている主動的な措置が朝鮮半島非核化のために非常に意義があり重大な措置だという認識を共にし、今後それぞれ自らの責任と役割を果たすことにした。
 南と北は、朝鮮半島非核化に向けた国際社会の支持と協力を得るため、積極的に努力することにした。
 
 両首脳は、定期的な会談と直通電話を通じ、民族の重大事を随時、真摯に議論し、信頼を強固にし、南北関係の持続的な発展と朝鮮半島の平和と繁栄、統一に向けた良い流れをさらに拡大していくために共に努力することにした。
 差し当たって、文在寅大統領は今秋、平壌を訪問することにした。
 
 2018年4月27日
 
 
 大韓民国 大統領 文在寅
 
 朝鮮民主主義人民共和国 国務委員会 委員長 金正恩
(ソウル=共同)
(引用終わり)
 
KOREA.net 報道資料
韓半島の平和と繁栄、統一に向けた板門店宣言  2018.04.27
(引用開始) 
大韓民国の文在寅大統領と朝鮮民主主義人民共和国金正恩国務委員長は、平和と繁栄、統一を念願とする全同胞の一致した志向を込めて、韓半島の歴史的な転換が起こっている重要な時期に、2018年4月27日に板門店の「平和の家」で、南北首脳会談を行った。
 
両首脳は、韓半島ではもはや戦争は起きず、新たな平和の時代が開かれたことを8千万の我が同胞と全世界に厳粛に闡明した。
 
両首脳は、冷戦の産物である長い分断と対決を一日も早く終息させ、民族の和解と平和繁栄の新たな時代を果敢に作り出しながら、南北関係をより積極的に改善し発展させていかなければならないという確固たる意志を込めて、歴史の地である板門店で次のように宣言した。
 
1.南と北は、南北関係の全面的で、画期的な改善と発展を成し遂げることにより、分断された民族の血脈を繋ぎ、共同繁栄と自主統一の未来を早めていく。 南北関係を改善し発展させることは、我が民族の一様な望みであり、これ以上、先送りできない時代の差し迫った要求である。
 
① 南と北は、我が民族の運命は我々自身が決定するという民族自主の原則を確認し、過去の南北宣言とすべての合意を徹底的に履行することにより、関係改善と発展の転換的局面を開いていくことにした。
 
② 南と北は、高官級会談を始めとする各分野の対話と交渉を早期に開催し、首脳会談で合意された問題を実践するための積極的な対策を立てていくことにした。
 
③ 南と北は、当局間の協議を緊密に行い、民間交流と協力を円滑に確保するために、双方の当局者が常駐する南北共同連絡事務所を開城地域に設置することにした。
 
④ 南と北は、民族の和解と団結の雰囲気を盛り上げていくために、各界各層の多様な協力と交流往来と接触を活性化することにした。
 
内においては6・15を始め、南と北の双方において意義のある日を機に、当局と国会、政党、地方自治団体、民間団体など各界各層が参加する民族共同行事を積極的に推進して和解と協力の雰囲気を盛り上げながら、外においては2018年のアジア競技大会を始めとする国際競技に共同進出し、民族の知恵と才能、団結した姿を全世界に誇示することにした。
⑤ 南と北は、民族分断により発生した人道的問題を早急に解決するために努力し、南北赤十字会談を開催し、離散家族・親戚の再会を始めとする諸問題を協議解決していくことにした。
 
当面の間、来たる8・15を機に離散家族・親戚の再会を進めることにした。
 
⑥ 南と北は、民族経済の均衡ある発展と共同繁栄を達成するために、10・4宣言で合意された事業を積極的に推進して行き、一次的に東海線および京義線鉄道と道路を接続して近代化し、活用するための実践的な対策を取っていくことにした。
 
2.南北は、韓半島で尖鋭な軍事的緊張状態を緩和し、戦争の危険を実質的に解消するために共同で努力していくものである。
 
韓半島の軍事的緊張状況を緩和し、戦争の危機を解消することは民族の運命に関わるとても重要な問題で、我が民族の平和で安定した生活を保証するために要となる問題である。
① 南と北は、地上と海上、空中を始めとするすべての領域で軍事的緊張と対立の基となる相手に対する一切の敵対行為を全面停止することにした。
 
当面、5月1日から軍事境界線一帯で拡声器放送とビラ散布を始めとするすべての敵対行為を停止し、その手段を撤廃し、今後の非武装地帯を実質的な平和地帯にしていくことにした。
 
② 南と北は西海の北方限界線一帯を平和水域とし、偶発的な軍事的衝突を防止し、安全な漁労活動を確保するための実際的な対策を立てていくことにした。
 
③ 南と北は、相互協力と交流、往来と接触が活性化されることによる様々な軍事的保障対策を取ることにした。
 
南と北は、双方の間に提起された軍事的問題を遅滞なく協議解決するために、国防長官会談を始めとする軍事当局者会談を頻繁に開催し、5月中にまず、将官級軍事会談を開くことにした。
 
3.南と北は、韓半島の恒久的で強固な平和体制の構築のために積極的に協力していく。 韓半島で非正常な停戦状態を終息させ、確固たる平和体制を樹立することは、これ以上先送りできない歴史的課題である。
 
① 南と北は、いかなる形態の武力も互いに使用しないことについての不可侵合意を再確認し、遵守していくことにした。
 
② 南と北は、軍事的緊張が解消され、互いの軍事的信頼が実質的に構築されるのに従って、段階的に軍縮を実現していくことにした。
 
③ 南と北は、停戦協定締結65年になる今年、終戦を宣言し、停戦協定を平和協定に転換し、恒久的で強固な平和体制構築のための南・北・米3者または南・北・米・中4者会談の開催を積極的に推進していく。
 
④ 南と北は、完全な非核化を通じて核のない韓半島を実現するという共通の目標を確認した。
 
南と北は、北側が取っている主動的な措置が韓半島の非核化のために非常に意義があり、大きい措置だという認識を共にして、今後それぞれ、自己の責任と役割を果たすことにした。
 
南と北は、韓半島の非核化のための国際社会の支持と協力を得るために積極的に努力することにした。
 
両首脳は、定期的な協議と直通電話を通じて、民族の重大事を頻繁かつ真剣に議論して信頼を強固にし、南北関係の持続的な発展と韓半島の平和と繁栄、統一に向けた良い流れをさらに拡大していくため共に努力することにした。
 
当面して文在寅大統領は、今年の秋に平壌を訪問することにした。
 
2018年4月27日
 
 
大統領
文在寅
 
朝鮮民主人民共和国
国務委員会委員長
(引用終わり)
 
(参考サイト)
板門店宣言」原文
[全訳] 6.15南北共同宣言(2000年6月15日)
[全訳] 10.4南北首脳宣言(2007年10月4日)