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憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

「原発がこわい女たちの会ニュース」第105号が届きました~とりあえずこれで休刊

 2019年2月17日配信(予定)のメルマガ金原.No.3407を転載します。
 
原発がこわい女たちの会ニュース」第105号が届きました~とりあえずこれで休刊
 
 2月13日に松浦雅代さんから、「原発がこわい女たちの会ニュース」NO.105号をお送りいただきました。すぐにご紹介したかったのですが、私の体調の問題もあり、遅くなってしまったことをお詫びします。
 なお、「原発がこわい女たちの会」の公式ブログには、既にNO.105号がアップされています。
 
 松浦さんが書かれた今号の編集後記に、「私個人としましては今回で会の活動・ニュース発行は終わりにさせて頂きます。」と書かれていて、最初にそれを読んだ時には少なからぬ驚きを感じましたが、「毎日更新」していた私のブログも、先ごろ(1月25日)いったん更新が途絶え、その後も4本ほど、簡単な記事を書いただけという状況の中に届いた知らせであっただけに、「なにごとにもいつか終わりは訪れる」という、ある種の達観から納得してしまう部分もあります。
 私のブログ「毎日更新」の中断は、主として私の体調問題が原因でしたが、松浦さんの場合、「原発がこわい女たちの会」の創立時(1987年)の共同代表であった汐見恵さんがお亡くなりになったことも、決断のきっかけの1つになったのかもしれません。
 ブログを続けるかどうかなど、私1人だけの決断で何とでもなりますが、30年以上の歴史と伝統を有し、大きな成果をあげてきた「原発がこわい女たちの会」のような組織の「仕舞い方」というのは難しいものでしょうね。
 松浦さんも、「有志の方で後のことは考えて頂ければ幸いです。」と書かれているとおり、「自分たちが引き継ぐ」という「有志」が現れれば、会としての存続はあり得るという含みは残しつつ、とりあえずの休会宣言と私は受け取りました。
 もちろん、これで松浦さんが反原発の活動から身を引くということではなく、「残された時間を考えるとやり残したことが沢山あります。何もできないかもしれないけど、一つでもいいから自分に納得できる努力をしたいと思います。」(松浦さんから金原宛メールより)というお言葉に、私自身、残された時間を考えざるを得ない年齢・健康状態にあるということもあって、心から共感しました。
 
 松浦さん、まことにお疲れ様でした。今後ともよろしくお願いします。
 

原発がこわい女たちの会ニュース NO.105号・2019年2月11日発行
事務局〒640-0112和歌山市西庄1024-15 ☎・fax073/451/5960松浦雅代方   
原発がこわい女たちの会ブログ http://g-kowai-wakayama.seesaa.net/
 
        2019年2月5日汐見恵さんが87歳でお亡くなりになりました。
                            ご冥福をお祈り致します。
             
 汐見恵さんには「原発がこわい女たちの会」結成時(1987年)に共同代表を引き受けて頂き、「何としても原発を止めたい女たち」が、慣れない反対運動を汐見宅の応接間から手探りではじめたのでした。その2か月後に和歌山県のネットワーク「紀伊半島原発はいらない女たちの会」結成が田辺市であり、各会の代表がそれぞれ共同代表で活動されました。和歌山の原発闘争の一番の山場を会の代表として活動されました。一緒に行動できた上に止める事ができた私たちは幸運でした。チエルノブイリの子どもたちを迎えた時も、LNGを考える関電株主の会の時も世話人会は汐見さん宅の応接間でした。恵さん本当にありがとうございました。

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 この写真は2009年10月16~17日の2日間栃木県の足利工業大学で開催された「第10回風力エネルギー利用セミナー」に参加された汐見文隆・恵夫妻です。(文隆氏は2016年3月20日に92歳で亡くなられています。)これがご夫婦御一緒の最後の旅行になりました。この写真は一緒に参加した松浦が撮影したものです。(写真は2009年10月28日発行の女の会ニュースNO.70号より)
 

中間貯蔵施設の問題            
豊かな海・山・川を子どもたちや孫たちに残そう
それが今を生きる私たちの使命だとして
2018年7月29日「核のゴミはいらん日置川の会」
2018年9月9日「核のゴミはいらん白浜の会」
が結成されました。
 
今までの経過
2017年11月24日  福井県西川知事は関西電力岩根社長と会談し、大飯原発3・4号機の再稼動の条件として、中間貯蔵施設は県外に設置を求め、関電社長は2018年中に県外に候補地を決めると発表した。
2017年12月  白浜町議会12月議会で、中間貯蔵施設の設置について一般質問を受け、白浜町長は「白紙」と答弁する。
2018年1月21日  脱原発わかやま主催で、美浜の会代表の小山英之氏を迎えて田辺市において「中間貯蔵施設はいらない」と題して講演会を開催。
2018年2月20日  「和歌山に中間貯蔵施設はいらない」として小山英之氏の講演会を和歌山市でも開催。市民連合わかやまと子どもたちの未来と被ばくを考える会が共催、上岩出診療所・原発がこわい女たちの会協賛。
2018年2月23日  和歌山県内8団体が「使用済核燃料の中間貯蔵施設は受け入れないとの意思をあらかじめはっきりと表明してください」という要望書を白浜町長に提出する。県内団体7名参加。
2018年3月  白浜町議会3月議会で、中間貯蔵施設の設置に白浜町長は「白紙」と答弁し、申し入れがあれば「話を聞く」と答弁する。
2018年4月16日  避難計画を案ずる関西連絡会(199団体)が「温泉観光とパンダの町・白浜町を核のゴミの捨て場にしないよう使用済核燃料の「中間貯蔵施設」は受け入れないとの意思をあらかじめはっきりと表明してください」と白浜町長に要望書を提出する。京都、兵庫、大阪から9名参加。和歌山の5人も立ち合う。

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※写真は白浜町庁舎前での参加者一同
2018年4月28日  中間貯蔵施設リーフレット7000部を白浜町に新聞折込。
2018年6月  白浜町議会6月議会の一般質問で、中間貯蔵施設の設置について問われた白浜町長は「国や電力会社が申し入れがない中で、受け入れは考えない、申し入れがあれば話を聞く」と答弁する。
2018年7月29日  「核のゴミはいらん日置川の会」結成総会を日置川拠点公民館で開く。100名参加

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※写真は日置川拠点公民館で開催された「核のゴミはいらん日置川の会」結成総会
日置川の海岸沿いに関西電力及び関連会社所有の土地 合計約62ha。
⇒この土地について今後も注視        
2018年8月23日  生活協同組合コープ自然派脱原発ネットワーク(京都)「和歌山の農業や漁業を守るため、また、安心して、白浜に旅行できるよう、使用済み核燃料の中間貯蔵施設を絶対に受け入れないと表明をして下さい。」という要望書を白浜町に提出した。
大阪、京都、奈良、兵庫の各府県から18人が参加林副町長に手渡した。
紀伊民報の報道
台風にもめげず白浜町で一泊して、夜は日置川の歴史を「脱原発わかやま」の代表の冷水喜久夫氏から説明を受けた。
2018年9月6日  請願呼びかけ人20名による、白浜町議会へ「使用済み核燃料の中間貯蔵施設を受け入れないことを求める請願書」(853名署名)提出。
2018年9月6日  白浜町議会9月議会冒頭の所信表明で、白浜町長は「町の将来は観光産業の進展にかかっており、中間貯蔵施設の受け入れはしない、また協議もしない」と明言した。
「核燃施設「協議する考えない」 白浜町長が表明
 和歌山県白浜町の井澗誠町長は6日、原発から出る使用済み核燃料の中間貯蔵施設の受け入れについて「将来的に(電力)事業者などから申し入れがあったとしても協議をする考えはない」と述べた。これまでの議会で「申し入れがない中で受け入れは考えていない」などと述べていたが、拒否する姿勢を明確にした。
 施設を巡っては、県外を含む複数の住民団体から「受け入れないことの表明」を求める要望書が町に出ていた。
 井澗町長は、町議会9月定例会で、提出した案件を説明する前に「これまでも受け入れる考えはないと申し上げてきたが、不安を感じている方もいらっしゃると聞く。この際、真意を伝えるのが責務と考え、改めて私の考えを申し上げる」と切り出した。」(紀伊民報2018年9月7日)
※弁護士・金原徹雄のブログ「白浜町議会(2018年9月6日)で使用済み核燃料中間貯蔵施設を受け入れる意思のないことを表明した井澗(いたに)誠町長の発言全文(書き起こし)」
2018年9月9日  「核のゴミはいらん白浜の会」設立総会を富田農業研修会館で開く。110名参加
2018年11月8日  白浜町立白浜会館で小泉純一郎元首相の「原発ゼロ・核のゴミいらん」~日本の歩むべき道~をテーマに講演会が開催された。「原発ゼロ」と「核のゴミ」を考える会、「核のゴミはいらん白浜の会」、「核のゴミはいらん日置川の会」の3団体の共催。小泉さんは無料で来てくれたそうです。主催者が途中で1500人参加と報告。
2019年1月25日  272団体で福井県に申し入れ。2018年中に県外貯蔵施設の計画地点を公表するという約束を関西電力は果たさず大飯3・4号炉運転再開の了承は取り消してください、と申し入れ。
福井県は2020年を念頭に県外候補地を示すよう求めている、と繰り返すばかり。
 

東電刑事裁判いよいよ結審 
 
【東電刑事裁判(東電福島原発刑事訴訟)とは?】
 2011年6月に福島県民1,324人、11月に全国の13,262人が、東電幹部や経産省保安院幹部などを、原発事故を予測できたのに対策を怠って事故を発生させたとして、検察庁刑事告訴しました。検察庁は2度にわたり全員不起訴の処分を出しましたが、市民からなる検査審査会が2度、起訴をするべきという議決を出し、勝俣恒久東電元会長、武黒一郎元副社長、武藤栄元副社長の3人が強制起訴されました。2017年6月30日の初公判以来36回開かれ、2018年12月26日に論告・求刑、27日に被害者代理人の意見陳述が行われました。今年の3月12日・13日には元経営陣の弁護士による最終弁論が行われ、結審となる予定です。
 
禁錮5年を求刑
検察官役の指定弁護士
 
東京電力・旧経営陣の刑事責任を認める判決を!!
 東京電力勝俣恒久元会長らに業務上過失致死傷罪を求める刑事裁判では、昨年12月に検察官役の指定弁護士が禁錮5年を求刑しました。
 勝俣元会長らは、「自分には権限が無い」「報告された記憶は無い」「事故の責任は無い」などと主張。事故の3年前に15m超と計算された津波への対策に奔走していた社員の証言や、数々の証拠と矛盾しています。
 このような多くの被害を引き起こした原発事故の刑事責任を、誰も問われないことがあってはなりません。
 東京地裁・永渕健一裁判長に、東電旧経営陣の刑事責任を認める判決を求めます!
  福島原発刑事訴訟支援団
  福島県田村市船引町芦沢字小倉140-1
  電話 080-5739-7279
  Eメール:info@shien-dan.org
  ウェブサイト:https://shien-dan.org/
 
厳正判決を求める全国集会
 もう二度と悲惨な原発事故が起こらないように
 責任のある者がきちんと裁かれなければなりません
 厳正な判決が下されるよう求めていきましょう!
日程…2019年3月10日(日)
時間…14:00~16:30(開場13:30)
会場…専修大学神田キャンパス7号館(大学院棟)3階731教室
   (東京都千代田区神田神保町3-8)
   地下鉄神保町駅より徒歩3分
内容…刑事裁判の報告、原発事故被害の報告
 
2019年3月12日(火)第37回公判期日
東京地裁104号法廷 10:00開廷
並行院内集会(参議院議員会館講堂)
11:00~16:00頃(昼休憩をはさむ)
14:00~16:00 井戸謙一弁護士「司法と原発-刑事裁判の意義」
*裁判終了後、同じ会場で公判報告会を行います。
 
2019年3月13日(水)第38回公判期日
東京地裁104号法廷 10:00開廷
※裁判終了後、公判報告会を行います(参議院議員会館B103)。  
 
海渡雄一著 支援団・告訴団監修の新刊が出ました!
『東電刑事裁判で明らかになったこと 予見可能だった原発事故はなぜ起きたか』
A5版/96ページ/並製
価格:1,000円+税
出版:彩流社
ISBN978-4-7791-2535-5 C0036
第27回公判までの経過を網羅。争点のポイントや新たに判明した事実を徹底解説!原発事故刑事裁判のみならず原発問題に関心のある方必携のブックレットです!
 

福島第一原発事故後、甲状腺の悪性ないし悪性の疑いは207人(一人は良性結節)
手術を受けて甲状腺がんと確定した人は166人となりました。
2018年12月27日
 
ここに書かれている数字はあくまで福島県「県民健康調査」検討員会の管轄下の数字であって、漏れているのもありますし、県外は入っていません。白石草さんの特定非営利活動法人[ourplanet-tv]のまとめの部分を転載します。
 
混迷する福島の甲状腺検査~専門家が2時間半議論
投稿者:ourplanet 投稿日時:水, 12/26/2018 - 01:26
福島第一原発事故後、福島県が実施している「県民健康調査」あり方を議論している検討委員会の第33回目会合が27日、福島市内で開催された。甲状腺検査について集中的に取り上げ、インフォームドコンセントのあり方や学校検診などのめぐり、約3時間にわたって議論した。検査により穿刺細胞診で悪性ないし悪性疑いと診断された患者は5人増えて207人(うち一人は良性結節)。手術を受けて、甲状腺がんと確定した患者は2人増えて166人となった。
一方、福島県は今月13日、県議会の公安福祉委員会で、「甲状腺検査サポート事業」により医療費の交付を受けた患者233人すべてが甲状腺がん(疑い)であるとの答弁したことについて、県民健康調査課の鈴木陽一課長は、答弁は誤りだったと述べ、甲状腺がんは77人だと修正した。
甲状腺検査サポート事業の要項によれば、同事業に「申請できるもの」は「甲状腺がん(疑い)」の医療費」に限定されている。また申請者向けの「Q&A」でも、甲状腺がん以外の甲状腺疾患は対象にならないと記載されており、今後、医療費の交付を求める患者に混乱が生じる恐れがある。
県民健康調査甲状腺検査サポート事業について
 
被曝量と甲状腺がんの関係を検討へ~福島県
投稿者:ourplanet 投稿日時: 金, 10/26/2018 - 10:36
原発事故当時18歳以下だった子どもを対象に行われている福島県甲状腺検査をめぐり、検査結果を評価している第11回目「甲状腺評価部会」が開かれ、次回以降、被曝と甲状腺がんとの関係を検討することが決まった。
解析を行うのは、国連科学委員会(UNSCEAR)が2013年に公表した市町村別の甲状腺被曝線量と福島の県民健康調査で見つかっている甲状腺がんの数との関係。UNSCEARが推計している市町村別データをもとに線量ごとのグループを作り、甲状腺がんの数との関係を検討する。次回にデータを公表し、来年11月までに報告書をまとめる。
 
2巡目の解析は実施せず~当初計画は断念へ?
チェルノブイリでは、事故後4年以降に甲状腺がんが増えたとして、福島県甲状腺検査では、2011年から13年にかけて実施した1回目の検査を「先行検査」と位置づけ、2巡目以降のデータと比較する予定だった。しかし、2015年3月に1巡目のデータをもとに「中間とりまとめ」を公表したまま、2年以上の間、2巡目に関する解析も新たな分析も実施していない。
鈴木元部会長は、新たな解析が必要との姿勢を示す一方、1巡目と2巡目を比較する「輪切りの研究はしない」と明言。1巡目と2巡目の甲状腺がんの数を積算したうえで、UNSCEARが公表している市町村別の甲状腺被曝線量と照合し、「Dose-Respons(線量-効果)」関係に基づいて被曝影響を確認していくとの考えを示した。市町村の人口の差が大きいことから、線量ごとにグループなどを作って比較するという。
  
「同意書」や「学校検診」をめぐる激論
この日の部会では、ほかに学校検診や検査を受ける際のインフォームドコンセントをめぐり、委員同士で激しく意見が対立。甲状腺検査は「過剰診断を招いている」と指摘する大阪大学の高野徹委員や祖父江友孝委員が、検査の有害性をきちんと数字で示すべきとの考えに対し、神奈川予防医学協会の吉田明委員や、帝京大学ちば総合医療センターの南谷幹史委員など甲状腺の臨床医が反発し、「死亡率ではなく、QOLをあげることが大切」「そのまま放置すれば危険」といった意見が相次いだ。
また高野委員が海外の論文をもとに、米国では、超音波検査ではなく触診が推奨されていると主張すると、鈴木部会長が「文献の読み方にバイアスがかかっているのではないか」とチクリ。南谷委員は「触診は甲状腺を専門とする医師でないと難しい。超音波は侵襲性が低く、これほど適切なものはない」と述べると、伊藤病院の加藤良平委員は「この検査を一般のがん検査と比較するのが間違っている。チェルノブイリ甲状腺がんが多いことを背景にスタートした。将来の子どもたちをどうにかしたいと思ってやっている。子どもの甲状腺がんのフォローアップデータはほとんとない。大人の甲状腺がんとは分けて考えるべき」と指摘した。
 
配布資料
 

原発事故国民が払うツケ
福島の事故での賠償や廃炉、除染などの費用の総額は、国の試算で21.5兆円に膨れている。これからも国民負担は、なし崩し的に増えて行きます。
国は2015年から原賠法改正の議論を始めたが結局、責任明確化の結論が出ず、賠償準備の上限額が据え置きになった。
原子力損害賠償法が2011年の事故後初めて改正かと思いきや、被災者にすぐ賠償できるよう国が電力会社に融資する制度が出来た、と政府は言っているが、当初検討されていた電力会社が支払う賠償に上限を設けて国の責任を明確にする案や、電力会社に保険などで準備させる額の引き上げは見送られた。ゼロ改正に等しい。(2018年12月)
 

福島第一原発事故から8年~
 
原発のない社会をどう創る?今、私たちにできること」
日時:2019年2月17日(日)14:00~16:30
場所:県民交流プラザ和歌山ビック愛9階 会議室C
講師:末田一秀氏(はんげんぱつ新聞 編集委員
主催:子どもたちの未来と被ばくを考える会 
 
「フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2019」
日時:2019年3月10日(日)10:00~16:00 参加無料
場所:和歌山市南コミニテイセンター(旧地場産業振興センター)
    和歌山市紀三井寺856番地 ☎073-494-3755
 
「3・21さようなら原発全国集会」
日時:2019年3月21日(木・祝)
場所:代々木公園B地区
 11:00 出店ブース開店
 12:30 開会 野外ステージ
 13:30 発言
 15:10 デモ出発
 

 汐見恵さんが亡くなったと娘さんから電話を頂いたのは2月5日の夜でした。元気でお正月も3人の娘さんと過ごしたそうです。当日もお昼ご飯に好物のカレーを食べてその後休まれてそのまま亡くなられたそうです。原因が分からないそうです。
 汐見先生が2016年3月20日に亡くなられてから、恵さんは雑賀崎にある特別養護老人ホームに入られていました。
 私は何度か面会に行ったのですが、今年は流感のシーズンが過ぎてからと思っていました。昨年はこの時期面会できませんでしたから。もう一度お会いしときたかった。公私ともに長いおつき合いをしていただきました。
 お葬式は家族葬でした。私はお通夜、告別式に参列させて頂きました。恵さんのお顔がとてもきれいでした。
 2001年5月に泉谷富子さんが亡くなられて、それまで代表2人で開会のあいさつは汐見恵さん。終わりの挨拶が泉谷富子さんということになっていました。女の会結成から14年間。裁判にも大阪まで2人で行って下さっていました。女の会のニュースの発送から始まって、ひじきの袋づめなど3人で作業したのを思い出しながら、汐見恵さんは泉谷富子さんが亡くなられた時、とても気落ちしているように私は思っていました。女たちの会ニュース47号には泉谷富子さんを偲ぶ恵さんの文章が残っていますがその後のニュースの中に恵さんの文章がありません。
 その後も会の講演会(2011年2月まで)には汐見先生とお二人で参加していただいていました。
 恵さん長い間本当にありがとうございました。
 

(記)福島第一原発事故から8年経ちました。9年目、まだまだ問題が山積しています。私個人としましては今回で会の活動・ニュース発行は終わりにさせて頂きます。昨年から会費も徴収しておりません。4人の方が会費を送って下さっていますが今回のニュース発行郵送代に使わせていただきたいと思います。有志の方で後のことは考えて頂ければ幸いです。                                     
                         2019年2月11日  松浦雅

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 2019年2月12日配信(予定)のメルマガ金原(暫定版)番外編を転載します。
 
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 1月26日から左気胸のために入院し、からくも手術を免れて同月30日に退院したことは、既にお知らせしたとおりです(近況報告~今後のメルマガとブログについて/2019年1月31日)。 
 
 その後は、2月7日と11日に2回更新しただけで、以前のような「毎日更新」はやはり当分無理なようです。
 業務復帰後は、極力午後8時までには帰宅し、日付が変わらぬうちに就寝することを心掛けており、この「生活改善」を当分継続しようと思うと、自ずから、ブログに割ける時間も限られるという次第です。
 それでも、色々と発信したい情報もありますし、過去に書いたブログの中で、今でも読んでいただく価値があるのではないか思える「アーカイブ」も紹介したいしということで、今は、Facebookを主要なツールにしています。ブログを書くのに比べれば、Facebookの方が圧倒的に短い時間で発信できますしね。
 基本的に、私はFacebookは「公開」設定で書いています(つまり、「公開」をはばかるようなものは書かない、ということです)ので、事実上、ブログの簡略版のようなものです。
 ただ、過去に書いた記事を探すのは、ブログの方が圧倒的に有利ですから、一長一短ですけどね。
 
 ということで、私のFacebookを「お気に入り(ブックマーク)」に登録して、折々閲覧していただければ幸いです。

改憲4項目の危険性を知り 改憲阻止の闘いを展望する~和歌山障害者・患者九条の会学習会(2019年2月11日)レジュメ

 2019年2月11日配信(予定)のメルマガ金原.No.3406を転載します。
 
改憲4項目の危険性を知り 改憲阻止の闘いを展望する~和歌山障害者・患者九条の会学習会(2019年2月11日)レジュメ
 
 本日(2月11日)午後1時から、和歌山市ふれ愛センター3階研修室1において開催された和歌山障害者・患者九条の会学習会で、「改憲4項目の危険性を知り 改憲阻止の闘いを展望する」というテーマでお話させていただきました。
 同会からご依頼があったのが昨年12月半ば頃で、2か月近い準備期間があるので、お話する内容の構成も、一から考えられるのではないか、などと考えて安請け合いしたものの、それから1月19日の「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」までの1か月間は、「つどい」の準備に明け暮れ、なかなか一からレジュメを書くどころではなくなっていきました。
 それに、同会でお話する際には、視力障害者用にレジュメを点字訳する必要があるため、通常よりも主催者にレジュメの原稿をお送りする締切が早いという事情があったものですから、過去の学習会で使ったレジュメの増補改訂版でいくしかないなと、1月に入ってからは覚悟していたのですが、そこに降って湧いたような左気胸による緊急入院で、もしも手術というようなことになったら、学習会の講師を誰かに代わってもらうしかないだろうが、誰に頼もうか?Y先生なら手堅いけれど、日程が空いているかな?もっともY先生は、昨年も、和歌山障害者・患者九条の会で講師を務めているが・・・とか、いろいろ思い悩んだのですが、幸いにも手術をせずに退院できて、今日の学習会の講師を無事務めさせていただいたという次第です。
 もっとも、退院したのがレジュメ締切の前日であったため、いかに増補改訂版とはいえ、翌日に送るのは無理で、主催者のご理解を得て何日か遅れでお送りしたレジュメが、参加者のために用意されていました。
 
 今回のレジュメのベースとしたのは、昨年(2018年)10月21日に和歌山県伊都郡かつらぎ町のかつらぎ体育センターで開かれた憲法9条を守る伊都・橋本連絡会が主催する第10回 伊都・橋本9条まつりにおいて、「これからの9条改憲NO!の闘い」と題してお話した際のレジュメです。
 時間もなかったため、基本の骨格はそのままで、何箇所かに手を入れたというようなものなので、わざわざブログでご紹介するほどのものではないのですが、私自身の備忘録代わりにアップしておきます。
 
 なお、基本的にはレジュメの記載に従ってお話させていただきましたが、最後の〆として、「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」の最後に、9条ママnetキュッとの笠松美奈さんに朗読・提案していただいた「つどい」からのメッセージを私が朗読しましたので、以下にも該当箇所にメッセージを挿入しておきます(レジュメのPDFファイルにはメッセージはありません)。
 

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日時:2019年2月11日(月・祝) 
会場:和歌山市ふれ愛センター 3階 研修室1
主催:和歌山障害者・患者九条の会
 
              改憲4項目の危険性を知り 改憲阻止の闘いを展望する
 
         弁護士 金 原 徹 雄
 
1 安倍晋三首相による改憲メッセージ(改憲提言)
 2017年5月3日
 ◎読売新聞朝刊インタビュー
 ◎改憲派の集会(公開憲法フォーラム)へのビデオメッセージ
  ①9条1項、2項を残しつつ自衛隊を明文で書き込む
  ②高等教育無償化
 
2 自民党改憲4項目」に集約
(1)2017年10月の衆議院総選挙における自民党の「公約」
 「自衛隊の明記」、「教育の無償化・充実強化」、「緊急事態対応」、「参議院の合区解消」という4項目を明示した上で、「初めての憲法改正を目指します」とした。
(2)2018年3月22日 自民党憲法改正推進本部「とりまとめ」
   3月25日 自民党第85回党大会
   3月26日 自民党憲法改正推進本部「憲法改正に関する議論の状況について」で「条文イメージ(たたき台素案)」を公表。
 
⇒[自衛隊の明記について]
第九条の二 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
② 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
 (※第9条全体を維持した上で、その次に追加)
 
⇒[緊急事態対応について]
第七十三条の二 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
② 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
 (※内閣の事務を定める第73条の次に追加)
第六十四条の二 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の三分の二以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
 (※国会の章の末尾に特例規定として追加)
 
⇒[合区解消・地方公共団体について] 
⇒[教育の充実] 
 
3 本命は9条
 憲法には、軍事組織を前提とした規定が全く存在しない。それは、日本国憲法制定時にそもそも軍事組織が存在しなかったからであるが、その後、日本が独立を回復し(1952年)、さらに自衛隊が発足(1954年)してからも、9条はそのまま維持され、自衛隊は「憲法外」の存在に置かれ続けた。言い換えれば、憲法は、自衛隊憲法上の「正統性」を与えないということによっ て、その立憲主義的統制を及ぼしてきた。
 その結果、自衛隊の存在や行動が「合憲」であることを、政府の側で常に立証(説明)しなければならないということになる。
 伝統的な自民党政権下の論理は以下のとおり。
 ①我が国に対する急迫不正の侵害が生じ
  ②これを排除するために他に適当な手段がなく
  ③我が国に対する武力攻撃を排除するために必要最小限度にとどまる実力の行使は「武力の行使」にあたらない。(旧3要件)
 自衛隊は、そのような必要最小限度の実力の範囲内にとどまるので、「陸海空軍その他の戦力」にあたらず合憲である。(2014年6月までの政府解釈) 
(2)ところが、2014年7月「閣議決定」、15年9月「安保法制」制定
 ①我が国と密接な関係にある他国に対する武力攻撃が発生し、これにより我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆される明白な危険がある場合において
 ②これを排除し、我が国の存立を全うし、国民を守るために他に適当な手段がないときに
 ③必要最小限度の実力を行使することは合憲である。(新3要件)
 ⇒安保法制型自衛隊
  集団的自衛権の否定と一体であった自衛隊合憲論の根拠が崩れてしまった。
(3)自衛隊明記の真の目的とは
 ①「後法は前法を破る」(ローマ法以来の法格言)
  9条をそのまま残しても、それと矛盾する9条の2が新設されれば、9条は上書き消去されることになる。
 ②自衛隊憲法上の「正統性」を付与することにより、従来、自衛隊を「憲法外の存在」とすることによって及ぼしてきた統制のくびきから脱し、世界中で、自由に軍隊としての自衛隊を活動させることを目論んでいる。
 ③もちろん、安保法制についても、国民投票での支持を取り付けることにより、違憲のレッテルをぬぐえるということになる。
(4)「必要最小限度」に惑わされてはならない
 自民党憲法改正推進本部が9条についての「条文イメージ(たたき台素案)」をとりまとめるにあたり、最後まで有力であった別案がある。
 
「九条の二① 我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つための必要最小限度の実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
② 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。」
 
 同党憲法改正推進本部は、「「条文イメージ(たたき台素案)」をたたき台とし、衆参憲法審査会や各党・有識者の意見や議論を踏まえ、「憲法改正原案」を策定し国会に提出する。」と明言している。ここで言う「各党」が、主に公明党日本維新の会を念頭に置いていることは疑いなく(今なら、国民民主党の一部もか)、上記別案が、「各党」とのネゴシエーションの末に(「落としどころ」として)、「憲法改正原案」として復活する可能性はあり得る。
 ちなみに、「必要最小限度の」という文言が入ったとしても、「何のための」必要最小限度なのかが問題であって、「我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つため」では何の限定にもならない。
   
4 緊急事態条項は不要であるばかりか有害で危険
(1)濫用への歯止めがなく、全ては「法律で定めるところにより」
(2)自然災害に限定されていない
(3)国会議員の任期延長は無用かつ有害
(4)自然災害への備えは法律で十分
(5)世界中の憲法に「緊急事態条項」があるというけれど、「緊急事態条項」は戦争をするためのもの
 
5 合区解消と教育について
 
6 草の根「改憲に向けた動き」
(1)「美しい日本の憲法をつくる国民の会」の1000万人「署名」
 彼らの署名用紙には、住所だけでなく郵便番号や電話番号を書く欄がある。
(2)「憲法おしゃべりカフェ」
 和歌山でも開催されている(実行委員会の所在場所は県神社庁内)。
(3)全国の神社が改憲派の拠点に
 神社本庁神社庁の指示で神社が改憲署名集め。
 
7 発議させないための闘い
(1)「改憲派」とは何か?
 公明党は?日本維新の会は?国民民主党は?単純で一色の「改憲派」がある訳ではない。共闘できる可能性のある者を、「改憲派」だとレッテル貼りをして、わざわざ「あちら側」に押しやる(排除する)愚は避けねばならない。
(2)世論喚起のために
 ①3000万人署名の達成を
 ②今まで話しかけたことのない層への働きかけ
 ③SNS活用の抜本的強化
  2017年総選挙における立憲民主党の公式Twitter戦略は見習うべき。
 
8 もしも改憲が発議されたら?
(1)国民投票運動は誰でもできる。
(2)公職選挙法は適用されず、「買収」以外はほとんど罰則もない。
(3)投票期日前14日間はテレビやラジオのCMは流せないが、それ以外の広告は金 さえあれば何でも出来る。
 2016年7月10日の参議院通常選挙の当日、自民党が新聞に掲出した大きな広告を想起して欲しい。同党は全国紙5紙全てに「今日は、日本を前へ進める日。」という広告を出した。
(4)日本会議神社本庁青年会議所など、改憲を強力に主導している団体は言うに及ばず、各種業界団体や企業なども、政党などからの強い要請により、改憲運動のお 先棒をかつぐと見なければならない。
(5)仮に「自衛隊明記」が発議されたら、改憲派は「もしも改正案が否決されたら自衛隊が無くなってしまう。それでもいいのか?」と国民を脅しにかかると見なければならない。従って、我々も、否決した後の自衛隊についてのイメージをしっかりと持つべきである。
[第1案]2014年7月1日「閣議決定」の前(従前の自民党政権民主党政権時代の「専守防衛自衛隊」に戻る。
[第2案]湾岸戦争(1991年)、PKO協力法(1992年)の前、自衛隊の海外派遣を一切認めていなかった時代の自衛隊に戻る。
[第3案]国境警備隊並みに戦力を低下させ災害救助隊機能を強化する。
(6)改憲案は「内容において関連する事項ごとに区分」(国会法68条の3)されており、その改憲案に「賛成」か「反対」かが問われる。そして、1票でも「反対が「賛成」を上回れば改憲を阻止できる(無効票は棄権と同じ扱いとなる)。
 選挙では野党共闘がうまくいかない地域であっても、結論として「安倍改憲に反対」であれば、その理由は問うところではない。立憲的改憲論者の国民民主党支持者であろうが、自衛隊違憲論者の共産党支持者であろうが、専守防衛自衛隊に共鳴する立憲民主党支持者であろうが、投票所に足を運んで「反対」票を投じてくれれば良いのである。
 「改憲阻止」の共闘が不要ということではなく、その共闘の仕方が、選挙などとは大きく異なるということである。
(7)4項目まとめて改憲発議される事態となったら、「自衛隊明記」と「緊急事態条項」に絞って反対運動に注力するという選別が必要になるかもしれない。
(8)「発議させないための運動」は、基本的に「発議された後の運動」にとっても有効である。
(9)それぞれが得意な分野・方法で訴える。従来型の護憲運動にも自信を持つべき。その上で、新たな工夫を積み上げる。例えば、大坂都構想にNOの審判をくだした住民投票や、中央からの金・人・物の大量投入に抗し、様々な立場の住民の意思を結集して勝利を勝ちとった沖縄県知事選などから学ぶことも多いだろう。
 
(参考として)
      「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」
                                 からのメッセージ
 
 私たちは、この「つどい」で、子どもたちや会場の皆さんと一緒に歌うために、「あの青い空のように」という曲を選びました。この曲の歌詞の1行目は、歌う者が自由に替え歌にして、自分たちの思いを歌い上げることが広く行われています。今日私たちが選んだことばは、「力を合わせよう」と「心をつなげよう」でした。
 
 今、私たちが大事にしてきた日本国憲法が、何だかよく分からない理由で変えられようとしています。私たちが、戦争のない平和な暮らしを子どもたちに手渡すことができるのか、その瀬戸際にあるということも学びました。
 私たち1人1人の力はとても小さいけれど、力を合わせれば、きっとできる。必ず子どもたちに私たちの宝物をひきつぐことができる。そのために「力を合わせよう」というメッセージを送ります。
 
 今は幼い子どもたちも、やがては自分で周りを見わたし、自分で考え、自分の足で歩き出します。
 私たちがみんなで力を合わせるためにも、お互いを理解し合い、心を通わせること、世代を超えて心をつなぐことがとても大切です。
 私たちの思いを子どもたちにつなぎ、成長した子どもたちが、平和を願い、そのために自ら行動する人となるように、「心をつなげよう」というメッセージを送ります。
 
 この「つどい」に集まった私たちは、老いも若きも、女性も男性も、互いに1人1人の人格を尊重し、平和を願い、公正を尊ぶという日本国憲法の理念を守り、より良い世界の実現のために全力を尽くすことを誓います。
 
  2019年1月19日 
 
      「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 
       1・19和歌山県民のつどい」 参加者一同
 

【資料1】自民党改憲4項目」条文素案全文(2018年3月26日付・自由民主党憲法改正推進本部「憲法改正に関する議論の状況について」より)
自衛隊の明記について]
第九条の二 前条の規定は、我が国の平和と独立を守り、国及び国民の安全を保つために必要な自衛の措置をとることを妨げず、そのための実力組織として、法律の定めるところにより、内閣の首長たる内閣総理大臣を最高の指揮監督者とする自衛隊を保持する。
② 自衛隊の行動は、法律の定めるところにより、国会の承認その他の統制に服する。
(※第9条全体を維持した上で、その次に追加)
 
[緊急事態対応について]
第七十三条の二 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、国会による法律の制定を待ついとまがないと認める特別の事情があるときは、内閣は、法律で定めるところにより、国民の生命、身体及び財産を保護するため、政令を制定することができる。
② 内閣は、前項の政令を制定したときは、法律で定めるところにより、速やかに国会の承認を求めなければならない。
(※内閣の事務を定める第73条の次に追加)
第六十四条の二 大地震その他の異常かつ大規模な災害により、衆議院議員の総選挙又は参議院議員通常選挙の適正な実施が困難であると認めるときは、国会は、法律で定めるところにより、各議院の出席議員の三分の二以上の多数で、その任期の特例を定めることができる。
(※国会の章の末尾に特例規定として追加)
 
[合区解消・地方公共団体について]
第四十七条 両議院の議員の選挙について、選挙区を設けるときは、人口を基本とし、行政区画、地域的な一体性、地勢等を総合的に勘案して、選挙区及び各選挙区において選挙すべき議員の数を定めるものとする。参議院議員の全部又は一部の選挙について、広域の地方公共団体のそれぞれの区域を選挙区とする場合には、改選ごとに各選挙区において少なくとも1人を選挙すべきものとすることができる。
② 前項に定めるもののほか、選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第九十二条 地方公共団体は、基礎的な地方公共団体及びこれを包括する広域の地方公共団体とすることを基本とし、その種類並びに組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基づいて、法律でこれを定める。
 
[教育の充実]
第二十六条 ①・②(現行のまま)
③ 国は、教育が国民一人一人の人格の完成を目指し、その幸福の追求に欠くことのできないものであり、かつ、国の未来を切り拓く上で極めて重要な役割を担うものであることに鑑み、各個人の経済的理由にかかわらず教育を受ける機会を確保することを含め、教育環境の整備に努めなければならない。
第八十九条  公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の監督が及ばない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
 
自民党憲法改正推進本部は、この「憲法改正に関する議論の状況について」の末尾(憲法改正の発議に向けて)において、以下のように述べている。
憲法改正は、国民の幅広い支持が必要であることに鑑み、4テーマを含め、各党各会派から具体的な意見・提案があれば真剣に検討するなど、建設的な議論を行っていく。
 現在議論中の「条文イメージ(たたき台素案)」は、完成された条文ではなく、この案をもとに衆参の憲法審査会で党の考え方を示し、憲法審査会で活発な議論が行われるよう努める。
 「条文イメージ(たたき台素案)」をたたき台とし、衆参憲法審査会や各党・有識者の意見や議論を踏まえ、「憲法改正原案」を策定し国会に提出する。そのため、衆参憲法審査会では、これまでの丁寧な運営方針を継承し幅広い合意形成を図るとともに、国民各層への幅広い理解に努める。」
 
 
【資料2 現行憲法
[9条]
第九条 日本国民は、正義と秩序を基調とする国際平和を誠実に希求し、国権の発動たる戦争と、武力による威嚇又は武力の行使は、国際紛争を解決する手段としては、永久にこれを放棄する。
2 前項の目的を達するため、陸海空軍その他の戦力は、これを保持しない。国の交戦権は、これを認めない。
 
[緊急事態条項]
現行規定なし
 
参院選「合区」解消等]
第四十七条 選挙区、投票の方法その他両議院の議員の選挙に関する事項は、法律でこれを定める。
第九十二条 地方公共団体の組織及び運営に関する事項は、地方自治の本旨に基いて、法律でこれを定める。
 
[教育の充実]
第二十六条 すべて国民は、法律の定めるところにより、その能力に応じて、ひとしく教育を受ける権利を有する。
2 すべて国民は、法律の定めるところにより、その保護する子女に普通教育を受けさせる義務を負ふ。義務教育は、これを無償とする。
第八十九条 公金その他の公の財産は、宗教上の組織若しくは団体の使用、便益若しくは維持のため、又は公の支配に属しない慈善、教育若しくは博愛の事業に対し、これを支出し、又はその利用に供してはならない。
 
第九十六条 この憲法の改正は、各議院の総議員の三分の二以上の賛成で、国会が、これを発議し、国民に提案してその承認を経なければならない。この承認には、特別の 国民投票又は国会の定める選挙の際行はれる投票において、その過半数の賛成を必要とする。
2 憲法改正について前項の承認を経たときは、天皇は、国民の名で、この憲法と一体を成すものとして、直ちにこれを公布する。
 
 
【資料3 国会法】
  第六章の二 日本国憲法の改正の発議
第六十八条の二 議員が日本国憲法の改正案(以下「憲法改正案」という。)の原案(以 下「憲法改正原案」という。)を発議するには、第五十六条第一項の規定にかかわらず、衆議院においては議員百人以上、参議院においては議員五十人以上の賛成を要する。
第六十八条の三 前条の憲法改正原案の発議に当たつては、内容において関連する事項ごとに区分して行うものとする。
第六十八条の四 憲法改正原案につき議院の会議で修正の動議を議題とするには、第五十七条の規定にかかわらず、衆議院においては議員百人以上、参議院においては議員五十人以上の賛成を要する。
第六十八条の五 憲法改正原案について国会において最後の可決があつた場合には、その可決をもつて、国会が日本国憲法第九十六条第一項に定める日本国憲法の改正(以下「憲法改正」という。)の発議をし、国民に提案したものとする。この場合において、両議院の議長は、憲法改正の発議をした旨及び発議に係る憲法改正案を官報に公示する。
2 憲法改正原案について前項の最後の可決があつた場合には、第六十五条第一項の規定にかかわらず、その院の議長から、内閣に対し、その旨を通知するとともに、これを送付する。
第六十八条の六 憲法改正の発議に係る国民投票の期日は、当該発議後速やかに、国会の議決でこれを定める。 
 
  第十一章の二 憲法審査会
第百二条の六 日本国憲法及び日本国憲法に密接に関連する基本法制について広範かつ総合的に調査を行い、憲法改正原案、日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案等を審査するため、各議院に憲法審査会を設ける。
第百二条の七 憲法審査会は、憲法改正原案及び日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案を提出することができる。この場合における憲法改正原案の提出については、第六十八条の三の規定を準用する。
2 前項の憲法改正原案及び日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案については、憲法審査会の会長をもつて提出者とする。
第百二条の八 各議院の憲法審査会は、憲法改正原案に関し、他の議院の憲法審査会と協議して合同審査会を開くことができる。
2 前項の合同審査会は、憲法改正原案に関し、各議院の憲法審査会に勧告することができる。
3 前二項に定めるもののほか、第一項の合同審査会に関する事項は、両議院の議決によりこれを定める。
第百二条の九 第五十三条、第五十四条、第五十六条第二項本文、第六十条及び第八十条の規定は憲法審査会について、第四十七条(第三項を除く。)、第五十六条第三項から第五項まで、第五十七条の三及び第七章の規定は日本国憲法に係る改正の発議又は国民投票に関する法律案に係る憲法審査会について準用する。
2 憲法審査会に付託された案件についての第六十八条の規定の適用については、同条ただし書中「第四十七条第二項の規定により閉会中審査した議案」とあるのは、「憲法改正原案、第四十七条第二項の規定により閉会中審査した議案」とする。
第百二条の十 第百二条の六から前条までに定めるもののほか、憲法審査会に関する事項は、各議院の議決によりこれを定める。
※102条の9の準用規定が重要
 特に、56条2項本文「議案が発議又は提出されたときは、議長は、これを適当の委員会に付託し、その審査を経て会議に付する。」が準用されながら、同項ただし書「但し、特に緊急を要するものは、発議者又は提出者の要求に基き、議院の議決で委員会の審査を省略することができる。」を準用していないことは重要。これにより、憲法改正原案が提出された後、議長は必ず憲法審査会への付託を行わなければならず、憲法審査会での審査を省略することはできないことになっている。
 また、102条の9第2項により、会期不継続の原則は、憲法改正原案の審査については適用されない。
 
 
【資料4 日本国憲法の改正手続に関する法律】
  第二章 国民投票の実施
   第一節 総則 
国民投票の期日)
第二条 国民投票は、国会が憲法改正を発議した日(国会法(昭和二十二年法律第七十九号)第六十八条の五第一項の規定により国会が日本国憲法第九十六条第一項に定める日本国憲法の改正の発議をし、国民に提案したものとされる日をいう。第百条の二 において同じ。)から起算して六十日以後百八十日以内において、国会の議決した期日に行う。
2 内閣は、国会法第六十五条第一項の規定により国民投票の期日に係る議案の送付を受けたときは、速やかに、総務大臣を経由して、当該国民投票の期日を中央選挙管理会に通知しなければならない。
3 中央選挙管理会は、前項の通知があったときは、速やかに、国民投票の期日を官報で告示しなければならない。
投票権
第三条 日本国民で年齢満十八年以上の者は、国民投票投票権を有する。
 
      第七節 国民投票運動
(公務員の政治的行為の制限に関する特例)
第百条の二 公務員(日本銀行の役員(日本銀行法(平成九年法律第八十九号)第二十六条第一項に規定する役員をいう。)を含み、第百二条各号に掲げる者を除く。以下この条において同じ。)は、公務員の政治的目的をもって行われる政治的行為又は積極的な政治運動若しくは政治活動その他の行為(以下この条において単に「政治的行為」という。)を禁止する他の法令の規定(以下この条において「政治的行為禁止規定」という。)にかかわらず、国会が憲法改正を発議した日から国民投票の期日までの間、国民投票運動(憲法改正案に対し賛成又は反対の投票をし又はしないよう勧誘する行為をいう。以下同じ。)及び憲法改正に関する意見の表明をすることができる。ただし、政治的行為禁止規定により禁止されている他の政治的行為を伴う場合は、この限りでない。
(投票事務関係者の国民投票運動の禁止)
第百一条 投票管理者、開票管理者、国民投票分会長及び国民投票長は、在職中、その関係区域内において、国民投票運動をすることができない。
2 第六十一条の規定による投票に関し、不在者投票管理者は、その者の業務上の地位を利用して国民投票運動をすることができない。
(特定公務員の国民投票運動の禁止)
第百二条 次に掲げる者は、在職中、国民投票運動をすることができない。
一 中央選挙管理会の委員及び中央選挙管理会の庶務に従事する総務省の職員並びに選挙管理委員会の委員及び職員
二 国民投票広報協議会事務局の職員
三 裁判官
四 検察官
五 国家公安委員会又は都道府県公安委員会若しくは方面公安委員会の委員
六 警察官
(公務員等及び教育者の地位利用による国民投票運動の禁止)
第百三条 国若しくは地方公共団体の公務員若しくは行政執行法人(独立行政法人通則法(平成十一年法律第百三号)第二条第四項に規定する行政執行法人をいう。第百十一条において同じ。)若しくは特定地方独立行政法人地方独立行政法人法(平成十五年法律第百十八号)第二条第二項に規定する特定地方独立行政法人をいう。第百十一条において同じ。)の役員若しくは職員又は公職選挙法第百三十六条の二第一項第二号に規定する公庫の役職員は、その地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない。
2 教育者(学校教育法(昭和二十二年法律第二十六号)に規定する学校及び就学前の子どもに関する教育、保育等の総合的な提供の推進に関する法律(平成十八年法律第七十七号)に規定する幼保連携型認定こども園の長及び教員をいう。)は、学校の児童、生徒及び学生に対する教育上の地位にあるために特に国民投票運動を効果的に行い得る影響力又は便益を利用して、国民投票運動をすることができない。
(投票日前の国民投票運動のための広告放送の制限)
第百五条 何人も、国民投票の期日前十四日に当たる日から国民投票の期日までの間においては、次条の規定による場合を除くほか、放送事業者の放送設備を使用して、国民投票運動のための広告放送をし、又はさせることができない。
 
  第三章 国民投票の効果
第百二十六条 国民投票において、憲法改正案に対する賛成の投票の数が第九十八条第二項に規定する投票総数の二分の一を超えた場合は、当該憲法改正について日本国憲法第九十六条第一項の国民の承認があったものとする。
2 内閣総理大臣は、第九十八条第二項の規定により、憲法改正案に対する賛成の投票の数が同項に規定する投票総数の二分の一を超える旨の通知を受けたときは、直ちに当該憲法改正の公布のための手続を執らなければならない。
※投票総数=憲法改正案に対する賛成の投票の数及び反対の投票の数を合計した数
 
 
【資料5 衆参両院の会派状況】
衆議院(2019年2月5日現在)]
 定数 465人
 欠員 2人
  自由民主党            282人
  立憲民主党・無所属フォーラム  68人
  国民民主党・無所属クラブ    38人
  公明党                29人
  日本共産党              12人
  日本維新の会             11人
  社会保障を立て直す国民会議   7人
  社会民主党市民連合        2人
  希望の党                  2人
  未来日本                  2人
  無所属                    10人
 ※現在の総議員463人の2/3は309人
 
参議院(2019年2月10日現在)]
 定数 242人
 欠員   1人
  自由民主党・国民の声      125人
  国民民主党・新緑風会       27人
  立憲民主党・民友会・希望の会  27人
  公明党                    25人
  日本維新の会希望の党      15人
  日本共産党                14人
  無所属クラブ                 2人
  沖縄の風                   2人
  各派に属しない議員           4人
 ※現在の総議員241人の2/3は161人
 

「子どもたちの未来と被ばくを考える会」からのお知らせ~2/17末田一秀氏講演会、3/10フクシマを忘れない!和歌山アクション2019、2/24森松明希子さんと「映像'19」

  2019年2月7日配信(予定)のメルマガ金原.No.3405を転載します。
 
「子どもたちの未来と被ばくを考える会」からのお知らせ~2/17末田一秀氏講演会、3/10フクシマを忘れない!和歌山アクション2019、2/24森松明希子さんと「映像'19」
 
 1月31日にお届けした「近況報告~今後のメルマガとブログについて」で、「しばらく休載とさせていただきます。」と書いた「メルマガ金原(暫定版)」と「弁護士・金原徹雄のブログ」を復活させます。
 とはいえ、当分「毎日更新」は無理なので、ぼちぼち様子を見ながらということになります。
 
 2月に入ってからも、メルマガとブログは休んでいたものの、その代わりに、Facebookで元気に(?)発信を続けていました(圧倒的に短い時間で発信できますからね)。
 
 とりわけ、【弁護士・金原徹雄のブログ~アーカイブから】シリーズで旧作をご紹介するのはなかなか楽しい作業です。昨日まで、以下のような旧作を紹介しました。
 
中川五郎さんのバラッド「関東大震災朝鮮人差別三部作」をあらためて聴く」(2018年11月24日)
 
「再掲:「5党合意」「附帯決議」「閣議決定」をどう読むか~安保法制の「しばり」とするために」(2018年8月25日)
 
真宗大谷派東本願寺)「宗憲」と宗務総長による「憲法解釈変更」批判」(2014年5月31日)
 
「“平和主義と天皇制”~「戦後レジーム」の本質を復習する」(2018年8月30日)
 
「関良基氏(拓殖大学教授)が語る「明治維新の正体」(2018年8月8日)~「長州レジーム」とは何か?」(2018年8月10日)
 
「「内閣総理大臣の孤独な闘い~天皇制と日本の若者を救った幣原喜重郎(この仮説は知っておく価値がある)」(2015年5月30日)
 
 以上の旧作シリーズと併せ、本来なら個別にブログで取り上げても良い材料を、とりあえずFacebookで速報することもしていましたが、その中に、私も世話人に名前を連ねる「子どもたちの未来と被ばくを考える会」関連の企画2つのご紹介と、昨年8月26日に同会が講演会の講師にお招きした森松明希子さんが毎日放送の「ドキュメンタリー映像」で三度取り上げられるという番組告知をFacebookで発信しましたので、今日はその3つをまとめてご紹介することにしました。
 ただ、ブログを休んでいることにより、「帰宅時間が早くなった」「睡眠時間が増えた」という明らかな生活改善が見られましたので、【弁護士・金原徹雄のブログ~アーカイブから】で取り上げているような「大作」は当分無理で、今日のところも、Facebookに掲載した内容をそのまま転載するだけでご勘弁いただこうと思っています。
 それでは、早速以上の3つの情報を順次ご紹介します。
 
【講演会のお知らせ~子どもたちの未来と被ばくを考える会】
※チラシ記載情報を転記します。
 
福島第一原発事故から8年~
原発のない社会をどう創る?今、私たちにできること』
末田一秀さん 講演会 
 
推し進められる再稼働、福島事故の引き続く被害、行き場のない核のごみ…。
原発をとりまく問題はどれも深刻です。けれど、悲観していても始まりません。
末田さんのお話を聞き、原発のない、安心して暮らせる社会を創るために、私たちにできることを一緒に考え、明るく行動していきましょう♪
 
≪日時≫ 2019年2月17日(日)14:00~16:30
≪会場≫ 県民交流プラザ ビッグ愛9階 会議室C
  (和歌山市手平2丁目1-2 ☎073-435-5200)
≪講師≫ 末田一秀氏 (はんげんぱつ新聞 編集委員) 
(profile)1957年、大阪府生まれ。核のごみや原子力防災等の問題に長年取り組み、HP「環境と原子力の話」で情報発信中。「地方自治のあり方と原子力」(七つ森書館)編集、共著。他に、「検証福島第一原発事故」「原発を再稼働させてはいけない4つの理由」「原発ゴミは負の遺産―最終処分場のゆくえ」など共著。   
 
入場無料・キッズスペースあり
主催:子どもたちの未来と被ばくを考える会
問合せ:073-451-5960(松浦)

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【フクシマを忘れない!原発ゼロへ 和歌山アクション2019】
※チラシ記載情報を転記します(なお、チラシには明記されていませんが、午後の講演会場は5F多目的ホールだと思います)。
 
▼[午後の部]13:40~15:25(受付13:00 開会13:30)
【講演】故郷、フクシマに想いを寄せて
講師:青田勝彦・青田惠子夫妻
【青田勝彦氏】
元高校教員で、40年以上前から福島で反原発住民運動に参加
1975~1982年、福島第二原発差し止め訴訟の原告団の一員となる
2011年の原発事故により、南相馬市から滋賀県大津市に避難
2013年、滋賀県民の福井原発訴訟の原告団に参加
【青田惠子氏】
2011年の原発事故により、夫勝彦氏とともに、大津市に避難
避難後、古着や裁ち屑を用いた布絵で故郷の原風景を描き、各地で展覧会・講演会・詩の朗読会等を開催
2013年、夫とともに福井原発訴訟の原告団に参加
※保育(13:30~15:25)あります。ご希望の方は3/5までに下記事務局までお申込みください。
 
2019年3月10日(日)
10:00~16:00 入場無料 申込不要
和歌山市南コミュニティセンター
(旧地場産業振興センター)和歌山市紀三井寺856番地 TEL 073-494-3755
 
▼[午前の部]10:00~12:00
4F和室 おしゃべり交流会~フクシマの原発事故について考えよう~
フクシマの原発事故から8年。和歌山までは、なかなか話題になりませんが、放射能原発・防災・未来へ向けて…それぞれに思うところがあるのでは?思いを自由におしゃべりする会
です。コーヒー・紅茶etc お飲物も準備★絵手紙に思いをしたためるコーナーも♡
お子様連れも大歓迎♪ぜひ、お気軽にご参加ください。
主催:子どもたちの未来と被ばくを考える会 問合せ:090-8481-0553(松永)
 
3F活動室(中1) 「被災地の今」報告会
福島の被災地視察に行った和歌山大学の学生からの報告
主催:政治をなおそうデモ実行委員会
 
5F多目的ホール 原発関連DVD上映
主催:原発をゼロにする和歌山県民の会
 
主催:フクシマを忘れない! 原発ゼロへ 和歌山アクション2019 実行委員会
原発をゼロにする和歌山県民の会・子どもたちの未来と被ばくを考える会・政治をなおそうデモ実行委員会)
実行委員会事務局 TEL 073-423-2261 FAX 073-436-3243 和歌山市松原通3-20 和歌山県教育会館内

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【森松明希子さんが取り上げられる番組「原発事故から8年~避難家族の記録~(仮)」】
(森松さんのFacebookから引用します)
映像’14,映像16とお世話になった毎日放送さんに
映像’19でも取り上げていただくことになりました。
本来なら、私生活をさらすことは本意ではありませんが、
それでも、原発事故被害が無かった事にされ続けている現状、
事実を伝え続けていくださるメディアの存在は
私にとっては希望です。
報道の自由」は私たちの基本的人権でもある「知る権利」を支えるものです。民主主義の根幹です。
どんなふうに編集放送されるのかは私にもわかりませんが、
できるだけ多くの皆さまにご覧になって頂きたいですm(_ _)m
 
【TV放送】2019年2月24日(日)深夜24時50分~
原発事故から8年~避難家族の記録~(MBS毎日放送「映像’19」)」
 
※見られない地域の皆さまは、テレビ局にガンガンお電話してくださって、見られるようにして〜て言っていただいて大丈夫です(^^)
とくに見ていただきたのは、内閣総理大臣福島県知事。
私は避難していてもこの8年間、ずっと福島県民ですので。
でも避難先の関西ローカル番組なのですよね。。。
この国のリーダーたちは、本気で「自己責任」と言い放ち続けるのでしょうか。放置し、無視し続けること自体が間断なく人権を侵害しているということに、いい加減気づいてほしいと思うのです。
そして、裁判官の皆さまにもぜひご覧になっていただきたいと思うのですが・・・裁判官ってTV観るのかしら。。。

近況報告~今後のメルマガとブログについて

  2019年1月31日配信(予定)のメルマガ金原.No.3404を転載します。
 
近況報告~今後のメルマガとブログについて
 
 私のブログを毎日閲覧してくださる方がいるのかいないのか、確認のしようがありませんが、ブログのベースとなっている「メルマガ金原(暫定版)」をお送りしている数十人の方々の中には、「毎日送られてきていた『メルマガ金原』が、ここ数日届かないのは何故だろう?」と思ってくださっている方がもしかしたら何人かおられるかもしれませんのでご報告しておきます。
 
 先週の土曜日(1月26日)に左肺から空気が漏れて肺が収縮してしまう気胸(ききょう)との診断を受け緊急入院しました。幸い、胸の外からチューブを入れて胸膜腔内の空気を抜く処置によって空気の漏れが止まり、手術までせずに済み、昨日退院しました。
 今回は左肺でしたが、実は2008年10月には右肺が気胸を起こし、やはり同じような期間入院したことがあり、主治医からは、再発の危険性も十分にあると警告されて退院しました。
 
 気胸となる直接のきっかけは様々にあるようで、論証などできぬものの、私が勝手に想像するところでは、
〇10年前の右気胸の際には、発症の前夜、「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が主催するシンガーソングライター横井久美子さんのコンサート準備の際、滅茶苦茶重い音響機器の運搬を手伝った(素晴らしい音響で横井さんには喜んでいただけたものの、費用を値切ったので人手が足りなかった)が身体に応えた。
〇今回の左気胸は、10年前ほどはっきりした理由は分からぬながら、発症(1月24日夕方)の前週(1月19日)に開催した「危ないぞ!みんなで止めよう安倍改憲 1・19和歌山県民のつどい」開催準備のため、徹夜まではしなかったものの、日付が変わってから帰宅することが何日か続き、「つどい」が終わった後も、「つどい」準備のために後回しにしていた本来業務に追われ、睡眠不足が続いて疲労が累積していた。
といったようなことではないかと思っています。
 
 以上は、気胸が発症する最後のトリガーを引いたのが何であったかについての私自身の分析(想像)ですが、そもそも肺の病変の主原因は長年にわたる喫煙であると、医師を含め、多くの人は疑っていないようです。
 確かに、私が長い間煙草を吸っていたことは事実ですが、2008年の右気胸を機にきっぱりと禁煙し、今や煙草と縁を切って10年以上が経過したのですけどね。 
 既に禁煙しているので、今さら二重に禁煙する訳にもいかないし、少しでも再発のリスクを低減するためには、上記2回を教訓として、身体や神経に過大なストレスをかけぬように心掛けることくらいしか思いつきません。
 身体へのストレスを避けるというのはともかく、神経にストレスがかかるのは、弁護士という仕事を続ける以上、避けがたい面がありますが、それでも、極力睡眠不足に陥らぬように、ということには気をつけねばと思っています。
 
 ということで、2013年1月24日からスタートした「弁護士・金原徹雄のブログ」の「毎日更新」記録は、ちょうど6年と2日が経過した2019年1月25日でストップしましたが(ざっと計算したら2,193日連続更新と出ましたが、合ってますかね?)、ブログのベースとなっている「メルマガ金原(暫定版)」(暫定版というのは、いったん技術的な理由で休止したものを、仮に復旧させたという趣旨ですが、休止中もブログは更新していました)を含め、しばらく休載とさせていただきます。
 さらに、更新再開となっても、当面「毎日更新」は無理だと思います。
 2011年3月28日に「メルマガ金原」を25人の知人に配信し始めた時、自らに課した責任を投げ捨てるつもりはありませんが、状況の変化に応じたアジャストが必要な時期になったということなのだろうと思います。
 「弁護士・金原徹雄のブログ」の復活をご期待ください(何だかすぐに復活するような気もしますが)。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/メルマガ金原関連)
2013年3月2日
メルマガ、ブログ、そして Facebook 再説 前編
2013年3月2日
メルマガ、ブログ、そして Facebook 再説 後編
2013年10月2日
メルマガ配信1500号到達!ありがとうございました(付・米国政府と安倍政権の微妙な関係)
2015年2月13日
メルマガ2000号到達!ありがとうございます~この500日で振り返る日米関係
2016年7月2日
普通の国民に見て貰いたい~柳澤協二さん講演動画のご紹介(付・「メルマガ金原」2500号到達ありがとうございます)

「日本アニメーション映画クラシックス」(since1917)のご紹介

  2019年1月25日配信(予定)のメルマガ金原.No.3403を転載します。
 
日本アニメーション映画クラシックス」(since1917)のご紹介
 
 2013年1月24日にスタートした「弁護士・金原徹雄のブログ」のカテゴリーに、「映画」はありますが、「アニメーション」はありません。そもそも、設定するカテゴリーには「漢字2字」の名称を与えるという決まり(?)を何とはなしに作ってしまったため、いまさら「アニメ」というカテゴリーも作りにくい。
 とはいえ、今まで全くアニメーションを取り上げなかった訳ではありません。ということで、思い出したものを巻末に掲げてみましたが、結局、宮崎駿さんと『戦争のつくり方』だけでした。しかも、ブログの中で具体的に取り上げた宮崎作品は、CHAGEASKAの楽曲『On Your Mark』のプロモーション・フィルムとして作った7分弱のショートクリップだけでした(宮崎駿監督の引退会見と“技術が支える思想性”について)。
 
 宮崎駿さんの引退宣言以降、映画館で観たアニメーションは、ディズニー/ピクサーの『インサイド・ヘッド』(2015年)が最後であり、ましてやアニメに限らず、テレビで視るのはドキュメンタリー番組だけなので、そもそも今どんな作品が作られているかも知りません。
 
 そんな私がブログでアニメーションを取り上げるとすれば昔の作品に決まっています。もちろん、『風の谷のナウシカ』や『となりのトトロ』や『千と千尋の神隠し』のあのシーン、この台詞について蘊蓄を傾けるのも楽しいとは思いますが、少しはいる私のブログの読者にとって、あまりお役に立つとも思えません。
 
 今日ご紹介しようとするのは、とっても古い日本のアニメーションです。
 私自身、行きたいと思いながらその機会のなかった東京国立近代美術館フィルムセンターが、昨年4月1日に東京国立近代美術館から独立し、新組織「国立映画アーカイブ」となったということはニュースで知ってはいましたが、そのホームページを閲覧したのは今日が初めてでした。
 
 そのホームページから外部リンクになるのですが、「日本アニメーション映画クラシックス」公式ホームページに飛ぶことができます。このサイトの成り立ちなどを、国立映画アーカイブのページでの説明から引用しましょう。
 
(引用開始)
 日本でアニメーションが誕生したとされる1917年から100年目に当たる2017年を記念して開設されたwebサイト。
 平成28年度「文化芸術振興費補助金(美術館・歴史博物館重点分野推進支援事業)」の「映画におけるデジタル保存・活用に関する調査研究(BDCプロジェクト)」のもと、デジタル化や保存技術に関わる実践的な調査研究ならびにコレクション公開の新たな方法を試みるための調査研究の成果として、東京国立近代美術館フィルムセンター(現 国立映画アーカイブ)と国立情報学研究所(NII)が共同で構築しました。
 フィルムセンター所蔵のフィルムからデジタル化された、1917年から1942年までの日本アニメーション映画64本を公開。また「大藤信郎記念館」ではフィルムセンターが所蔵する「大藤信郎コレクション」の一部が閲覧可能。さらに、現存する日本最古のアニメーション映画『なまくら刀』(1917年幸内純一/別名:塙凹内名刀之巻[はなわへこないめいとうのまき])も閲覧できます。
※本サイトは2018年4月1日に設置された国立映画アーカイブが、引き続き運営しております。サイトの内容や記述情報は原則的に、2017年12月末日時点のものです。
(引用終わり)
 
 
 何しろ64作品も公開されていますので、じっくり観るには時間がかかりますが、幸い、短い作品が大半なので、少しずつでも観ていけば、日本アニメ史草創期の作品の一端に触れることができます。
 「作品一覧」のページを開けてみると、「作品なんでもランキング」、「キャラクターセレクション」、「私の選ぶこの作品」など、様々な切り口から鑑賞する作品が選べるようになっています。
 
 とりあえず、私は、「国産アニメーション映画が誕生した1917年に公開された現存する最古の作品」である「なまくら刀(別名:塙凹内名刀之巻[はなわへこないめいとうのまき])の[デジタル復元・最長版][白黒ポジ染色版]を観てみました。もちろん、サイレントです(64作品の内トーキーは4本だけ)。
 
なまくら刀[デジタル復元・最長版][白黒ポジ染色版](寺内純一/1917年/4分/サイレント/白黒(染色))
 
 これが現存最古の日本アニメーションかと思うと、なかなか感慨深いものがありますね。
 ただ、字幕による説明が少なく、最初のうちはストーリーの展開がよく分かりませんでしたが、要は、研ぎ屋に刀を研ぎに出し、大枚4両(かな)も払った侍が、試し切りがしたいという悪い考えにとりつかれて試みるが、みじめに失敗するという物語のようです。
 
 皆さんも、折に触れて「日本アニメーション映画クラシックス」に収録された作品に親しまれてはいかがでしょうか。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/アニメーション関連)
2013年9月9日
宮崎駿監督の引退会見と“技術が支える思想性”について ※追記あり
2014年12月8日
宮崎駿さんが言わずにいられなかったこと~アカデミー賞名誉賞受賞スピーチと記者会見における発言から(一部文字起こし)
2015年7月26日
江戸川乱歩宮崎駿~『幽霊塔』をきっかけに昔の情熱が蘇る
2015年12月10日
アニメーション『戦争のつくりかた』一般公開はもう少し先ですが
2016年2月11日
アニメーション『戦争のつくりかた(what happens before war?)』が公開されました

「辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明」(2019年1月24日)を読む

  2019年1月24日配信(予定)のメルマガ金原.No.3402を転載します。
 
辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明」(2019年1月24日)を読む
 
朝日新聞デジタル 2019年1月24日19時15分
憲法学者131人声明 埋め立て強行が憲法を「空洞化」
(抜粋引用開始)
 米軍普天間飛行場沖縄県宜野湾市)の移設に伴う名護市辺野古沿岸部の埋め立て工事に対し、全国の憲法研究者有志が24日、反対声明を発表した。「(工事の)強行は、基本的人権の尊重、平和主義、民主主義、地方自治という日本国憲法の重要な原理を侵害、空洞化するもの」と批判した。24日までに131人が賛同している。
(略)
 会見した武蔵野美術大の志田陽子教授は、沖縄の民意がある一方、安倍政権も選挙で選ばれたという指摘に対し、「請願権」や「表現の自由」を保障していることから「憲法は、選挙で選んだから全権委譲したという考えをとっていない」と解説。「具体的な政策について、市民が考え直してほしいと真剣に求めているとき国政担当者は真剣に聞くべきだ。憲法上、地方と国政は上下関係ではなく、対等。国政担当者は県民投票までは工事を中止し、結果が出た後は誠実な協議を行う必要がある」と語った。
 静岡大の笹沼弘志教授は、県民投票を実施しないと表明した自治体が相次いだことに「なぜ沖縄で意見対立が生じているのか。政府の強引な姿勢が、沖縄の人びとの意思を踏みにじり、分断をもたらしている点をまず考えるべきだ」と話した。
(引用終わり)
 
琉球新報電子版 2019年1月24日 16:32
「民主主義、地方自治の侵害」「辺野古唯一は欺瞞」 憲法学者辺野古新基地建設反対の声明 131人が賛同
(抜粋引用開始)
 【東京】稲正樹(いな・まさき)・元国際基督教大教授ら憲法学者の有志一同が24日、都内の衆院議員会館で会見し、辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明を発表した。
(略)
 稲氏によると、辺野古新基地建設問題に対して憲法学者の有志が声明を出すのは初めて。国内には憲法学者は500~600人いるとみられる。賛同者は引き続き募る。
(略)
 稲氏は「辺野古の基地建設は日本国民にとっての問題だ。住民の意思を一顧だにしない基地建設は住民自治という憲法地方自治の本旨に反する」と指摘した。県民投票は「沖縄の本当の民意とは何かを明らかにする大事な機会だ」と述べた。
 笹沼弘志静岡大教授は「民主主義の根幹に関わる問題。われわれが辺野古の問題を日本国民全体の問題として議論せず、放置することで沖縄の人の人権を傷つけ踏みにじっている」と強調した。
 志田陽子武蔵野美術大教授は「県民の反対は憲法が保障する意思表明の在り方の一つで、決して軽視、黙殺してはならない。無視した土砂の一方的な投入は憲法の許容する限度を超えている」と述べた。県民投票の結果については「国政担当者は少なくとも民意がどのようになるか誠実に聞く必要がある」と求めた。
 石川裕一郎聖学院大教授は「基地建設の合理性ではなく、明らかに沖縄への嫌がらせ、ハラスメントの要素もある。性暴力にも似ている。圧倒的な力で弱い者に有無を言わせずする手法は、現政権のさまざまな局面を思い出させるもので、辺野古はその象徴的な場として表れている」と話した。
 飯島滋明名古屋学院大教授は「安倍自公政権が沖縄で行っているのはまさに『法の支配』の蹂躙で、中国などに対して法の支配を順守せよと主張する資格はない」と強調した。
 声明は内閣と防衛省、外務省、自衛隊沖縄県など公的機関に加え、全政党に送付する。さらに今後、賛同者で何らかのアピール行動も検討している。
(引用終わり)
 
 本日(1月24日)午後、衆議院第1議員会館地下1階第6会議室において、「辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明」を発表する記者会見が行われました。
 今日記者会見が行われるということは、4日ほど前から事前報道もなされていましたので、注目していました。記者会見に出席されたのは、新聞各紙WEBサイトに掲載された写真や上記琉球新報電子版の記事などから、
  稲 正樹さん(元国際基督教大学教授)
  志田陽子さん(武蔵野美術大学教授)
  笹沼弘志さん(静岡大学教授)
  石川裕一郎さん(聖学院大学教授)
  飯島滋明さん(名古屋学院大学教授)
の5名であったようです。
 
 この記者会見が開かれるということを志田陽子先生のFacebookで知った私は、
すぐに、昨年10月26日に行政法研究者有志が「辺野古埋立承認問題における日本政府による再度の行政不服審査制度の濫用を憂う」を発表した際、稲正樹先生がご自身のFacebookで「行政法学者が頑張っています。憲法学者も続こう!」と檄を飛ばされたことを思い出しました。
 ・・・だから声明を出すことになった、訳ではないでしょうが。
 
 本日発表された「辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明」の全文をアップしたサイトがないかと探したところ、琉球新報電子版が声明全文をアップしていました。以下に、全文転載させていただきます。
 ただ、本日現在の賛同者131名のリストは引用していませんので、お知りになりたい方はリンク先の琉球新報サイトでご確認ください。
 
 ところで、「 賛同者で何らかのアピール行動も検討している」って何だろう?気になりますね。
 
(引用開始)
                辺野古新基地建設の強行に反対する憲法研究者声明
 
 2018年9月30日、沖縄県知事選挙において辺野古新基地建設に反対する沖縄県民の圧倒的な民意が示されたにもかかわらず、現在も安倍政権は辺野古新基地建設を強行している。安倍政権による辺野古新基地建設強行は「基本的人権の尊重」「平和主義」「民主主義」「地方自治」という、日本国憲法の重要な原理を侵害、空洞化するものである。私たち憲法研究者有志一同は、辺野古新基地建設に関わる憲法違反の実態及び法的問題を社会に提起することが憲法研究者の社会的役割であると考え、辺野古新基地建設に反対する声明を出すものである。
 辺野古新基地建設問題は、憲法9条や日本の安全保障の問題であると同時に、なによりもまず、沖縄の人々の人権問題である。また、選挙で示された沖縄県民の民意に反して政府が強引に建設を推し進めることができるのか、民主主義や地方自治のあり方が問われているという点においては日本国民全体の問題である。政府が新基地建設をこのまま強行し続ければ、日本の立憲民主主義に大きな傷を残すことになる。こうした事態をわれわれ憲法研究者は断じて容認できない。直ちに辺野古埋立ての中止を求める。
 
1 「民主主義」「地方自治」を侵害する安倍政権
 沖縄では多くの市民が在沖米軍等による犯罪や軍事訓練、騒音などの環境破壊により、言語に絶する苦しみを味わってきた。だからこそ2014年、2018年の沖縄県知事選挙では、沖縄の市民にとってさらなる基地負担となる「辺野古新基地建設」問題が大きな争点となった。そして辺野古新基地建設に反対の立場を明確にした翁長雄志氏が県知事に大差で当選し、翁長氏の死後、玉城デニー氏もやはり大差で当選した。沖縄の民意は「新基地建設反対」という形で選挙のたびごとに示されてきた。ところが安倍政権はこうした民意を無視し、新基地建設を強行している。こうした安倍政権の対応は日本国憲法の原理たる「民主主義」や「基本的人権の尊重」、「平和主義」、そして「民主主義」を支える「地方自治」を蹂躙する行為である。「外交は国の専属事項」などと発言し、新基地建設問題については沖縄が口をはさむべきではない旨の主張がなされることもある。しかし自治体にも「憲法尊重擁護義務」(憲法99条)があり、市民の生命や健康、安全を守る責任が課されている以上、市民の生命や健康に大きな影響を及ぼす辺野古新基地建設に対して沖縄県が発言するのは当然である。安倍政権の辺野古新基地建設の強行は、「地方自治」はもちろん、日本の「民主主義」そのものを侵害するものである。
 
2 沖縄県民が辺野古新基地建設に反対する歴史的背景
 そもそも沖縄の市民がなぜここまで辺野古新基地建設に強く反対するのか、私たちはその事情に深く思いを寄せる必要がある。
 アジア・太平洋戦争末期、沖縄では悲惨な地上戦が行われた。日本の権力者は沖縄の市民に徹底抗戦を命じた。ところがそのような徹底抗戦は、本土決戦を遅らせるための「時間稼ぎ」「捨て石」にすぎなかった。沖縄に派兵された日本の軍隊及び兵士の中には、沖縄の市民から食料を強奪したり、「スパイ」とみなして虐殺したり、「強制集団死」を強要するなどの行為に及んだ者もいた。「鉄の暴風」と言われるアメリカ軍の激しい攻撃や、日本軍の一連の行為により、犠牲となった沖縄の市民は9万4千人以上、実に県民の4人に一人にも及ぶ。アジア・太平洋戦争での日本軍の行動は、沖縄の市民に「軍隊は国民を守らない」という現実を深く印象付けることになった。
 その後、アジア・太平洋戦争終結し、沖縄が米軍に占領された時代でも、「軍隊は国民を守らない」という現実は変わらなかった。朝鮮戦争や冷戦など、悪化する国際情勢の中、日本に新しい基地が必要だと判断した米軍は、いわゆる「銃剣とブルドーザー」により沖縄の市民から土地や田畑を強奪し、家屋を壊して次々と新しい基地を建設した。現在、歴代日本政府が危険だと主張する「普天間基地」も、米軍による土地強奪で建設されたという歴史的経緯を正確に認識する必要がある。さらには米軍統治下でも、度重なる米兵犯罪、事故、環境破壊等により、沖縄の市民は耐えがたい苦痛を受け続けてきた。
 
3 沖縄における「基本的人権」の侵害
 米軍や米軍人等により、沖縄の市民が耐えがたい苦しみを受けている状況は現在も変わらない。在沖米軍や軍人たちの存在により、憲法で保障されたさまざまな権利、とりわけ「平和的生存権」や「環境権」が著しく侵害、脅かされてきた。
 
 ①平和的生存権憲法前文等)の侵害
 「平和的生存権」とは、例えば「いかなる戦争及び軍隊によっても自らの生命その他の人権を侵害されない権利」として理解され、豊富な内容を有するものだが、沖縄ではこうした権利が米軍人等による凶悪犯罪、米軍機の墜落事故や部品などの落下事故、住民の生活を顧みない軍事訓練により侵害され、脅かされ続けている。その上、いざ米軍が戦争などをする事態に至れば、沖縄が攻撃対象となる危険性がある。2001年のアメリ同時多発テロの際、沖縄への観光客や修学旅行者は大幅に減少した。こうした事実は、有事となれば沖縄が米軍の戦争に巻き込まれて攻撃対象となると多くの人々が認識していることを示すものである。
 
 ②「環境権」(憲法13条、25条)の侵害
 次に在沖米軍により、「良好な環境を享受し、これを支配する権利」である「環境権」が侵害されてきた。たとえば米軍の軍事訓練が原因となって生じる「米軍山火事」は1972年の沖縄復帰後から2018年10月末までに620件も存在する。沖縄県の資料によれば、嘉手納基地や普天間基地周辺の騒音は、最大ピークレベルでは飛行機のエンジン近くと同程度、平均ピークレベルでも騒々しい工場内と同程度の騒音とされている。こうした騒音のため、学校での授業にも悪影響が生じるなどの事態も生じている。米軍基地内からの度重なる燃料流出事故の結果、土壌や河川が汚染され、沖縄の市民の生活や健康への悪影響も懸念されている。沖縄にはあらゆる種類の「基地公害」があり、沖縄の市民は「環境権」侵害行為にも苦しめられてきた。
 
4 「平和主義」の侵害
 歴代日本政府は、「沖縄の基地負担の軽減」「抑止力の維持」を理由に辺野古新基地建設を進めてきた。しかし辺野古に建設が予定されている新基地には、航空機に弾薬を搭載する「弾薬搭載エリア」、航空機専用の燃料を運搬するタンカーが接岸できる「燃料桟橋」、佐世保強襲揚陸艦「ワスプ」などの接岸できる、全長272mの「護岸」など、普天間基地にはない新機能が付与されようとしている。普天間基地には現在、「空飛ぶ棺桶」「未亡人製造機」と言われるほど墜落事故が多い「オスプレイ」が24機配備されているが、辺野古新基地には100機のオスプレイが配備されるとの情報もある。以上のような辺野古新基地の建設は、「沖縄の基地負担の軽減」どころか「基地負担の増大」「基地機能の強化」であり、米軍の「出撃拠点基地」「後方支援基地」「軍事訓練基地」としての機能が一層強化される。辺野古新基地建設は基地機能の強化となるものであり、憲法の基本原理である「平和主義」とは決して相いれない。
 
5 「辺野古が唯一の選択肢」という安倍政権の主張の欺瞞
 安倍政権は、東アジアにおける抑止力として在沖米軍基地が不可欠と説明する。しかし、沖縄に駐留している海兵隊は今後、大幅に削減されることになっている。しかも第31海兵遠征隊(31MEW)は半年以上も沖縄を留守にする、ほとんど沖縄にいない部隊である。実際に東アジア有事を想定した場合、兵力は少なすぎる。第31海兵遠征隊に組み込まれるオスプレイやヘリコプター運用のための航空基地が必要とされるために普天間から辺野古に移転されるが、第31海兵遠征隊は自己完結性を持たず、長崎県佐世保強襲揚陸艦が沖縄に寄港し、海兵隊を積載して任務にあたる。安倍政権による「辺野古が唯一の選択肢」との主張は欺瞞といわざるを得ない。
 
6 おわりに
 日本本土の約0.6%しかない沖縄県に全国の米軍専用施設の約70.6%が集中するなど、沖縄には米軍基地の負担が押し付けられてきた。そこで多くの沖縄の市民は、これ以上の基地負担には耐えられないとの思いで辺野古新基地建設に反対してきた。ところが安倍政権は沖縄の民意を無視して基地建設を強行してきた。2018年12月14日には辺野古湾岸部で土砂投入を強行した。ここで埋め立てられているのは辺野古・大浦湾周辺の美しい海、絶滅危惧種262種類を含む5800種類以上の生物だけではない。「基本的人権の尊重」「民主主義」「平和主義」「地方自治」といった、日本国憲法の重要な基本原理も埋め立てられているのである。辺野古新基地建設に反対する人たちに対しては、「普天間の危険性を放置するのか」といった批判が向けられることがある。しかし「普天間基地」の危険性を除去するというのであれば、普天間基地の即時返還を求めれば良いのである。そもそも日本が「主権国家」だというのであれば、外国の軍隊が常時、日本に駐留すること自体が極めて異常な事態であることを認識する必要がある。「平和」や「安全」が重要なことはいうまでもないが、それらは「軍事力」や「基地」では決して守ることができないことを、私たちは悲惨な戦争を通じて歴史的に学んだ。アメリカと朝鮮民主主義人民共和国の最近の関係改善にもみられるように、紛争回避のための真摯な外交努力こそ、平和実現には極めて重要である。日本国憲法の国際協調主義も、武力による威嚇や武力行使などによる紛争解決を放棄し、積極的な外交努力などを通じて国際社会の平和創造に寄与することを日本政府に求めている。東アジアの平和は「抑止力」などという、軍事的脅迫によって達成されるものではない。辺野古新基地建設は、平和的な外交努力などによる平和構築を目指す日本国憲法の精神にも逆行し、むしろ軍事攻撃を呼び込む危険な政治的対応である。私たち憲法研究者有志一同は、平和で安全な日本、自然豊かな日本を子どもや孫などの将来の世代に残すためにも、辺野古新基地建設に対して強く反対する。
                                                                             以上
 
※2019年1月24日段階131名が賛同(リストはリンク先をご覧ください)
(引用終わり)
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/最近の辺野古をめぐる声明等)
2018年10月27日
行政法研究者有志による声明「辺野古埋立承認問題における日本政府による再度の行政不服審査制度の濫用を憂う」(2018年10月26日)を読む
2018年12月12日
沖縄弁護士会辺野古新基地建設が、沖縄県民にのみ過重な負担を強い、その尊厳を踏みにじるものであることに鑑み、解決に向けた主体的な取り組みを日本国民全体に呼びかけるとともに、政府に対し、沖縄県民の民意を尊重することを求める決議」を読む
2019年1月13日
沖縄弁護士会「「辺野古米軍基地建設のための埋立ての賛否を問う県民投票条例」に基づく県民投票が全県下で実施されることを強く求める会長声明」を読む

情報の真偽は自分の目で確認しなければならない~平成26年度東京大学教養学部学位記伝達式における石井洋二郎学部長の式辞から

  2019年1月23日配信(予定)のメルマガ金原.No.3401を転載します。
 
情報の真偽は自分の目で確認しなければならない~平成26年度東京大学教養学部学位記伝達式における石井洋二郎学部長の式辞から
 
 皆さんは、「レファレンス協同データベース」をご存知でしょうか?同データベースWEBサイトによると、以下のように説明されています。
 
レファレンス協同データベースとは?
(引用開始)
レファレンス協同データベースは、国立国会図書館が全国の図書館等と協同で構築している、調べ物のためのデータベースです。
事業概要
目的
レファレンス協同データベース事業は、公共図書館大学図書館学校図書館専門図書館等におけるレファレンス事例、調べ方マニュアル、特別コレクション及び参加館プロファイルに係るデータを蓄積し、並びにデータをインターネットを通じて提供することにより、図書館等におけるレファレンスサービス及び一般利用者の調査研究活動を支援することを目的とする事業です。
実施要項及び参加規定 (略)
データ概要 (略)
レファレンス事例   
参加館で行われたレファレンスサービス(質問回答サービス)の記録です。利用者の方々からの質問に、どのように回答したのかが記載されています。
(後略)
(引用終わり)
 
 本を貸し出すだけが図書館の役割ではない、ということが、以上の記載を読むだけでも分かりますが、実は、レファレンス協同データベースに掲載された1つのレファレンス事例をご紹介したくて、以上の説明をまずしたのでした。その事例というのは、以下のとおりです。
 
レファレンス事例詳細
(引用開始)
提供館 国士舘大学図書館・情報メディアセンター
事例作成日 2007年04月14日
登録日時 2007年04月14日 11時40分
更新日時 2015年04月11日 11時22分
質問 
 東大総長のいった「太った豚になるよりは、痩せたソクラテスになれ」の出典を知りたい。
回答 
 J.S.Mill ”Utilitarianism”より。(J.S.ミル「功利主義論」、「世界の名著38」収録)
 chapter II "What Utilitarianism Is"(第2章「功利主義とは何か」)
"It better to be a human being dissatisfied than a pig satisfied; better to be Socrates dissatisfied than a fool satisfied." 
 訳は「満足した豚であるより、不満足な人間であるほうがよい。満足した馬鹿であるより、不満足なソクラテスであるほうがよい。」(関義彦訳,世界の名著38,中央公論社,1967)
 大河内の式辞はこの言葉の意訳であると思われる。
回答プロセス
 60年安保の頃、東京大学の卒業式で総長の言った言葉とわかっていたので、1950年代末より1960年代の東京大学総長を調査した。「東京大学百年史」 資料三.東京大学出版会,1986.に歴代総長一覧があり、1957-1963茅誠司、1963-1968大河内一男とわかった。昭和史全記録.毎日新聞社,1986.で調べると大河内一男のみの記載あり、p.736 1964.3.28 「東大卒業式で大河内一男総長はJ.S.ミルの言葉「ふとった豚になるよりは、痩せたソクラテスになれ」と告辞」とあった。さらに東京大学歴代総長式辞告辞集.東京大学出版会,1997.にて確認すると第十八代総長大河内一男 卒業式昭和39年3月28日の項があり、「・・・昔J.S.ミルは「肥つた豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい」と言つたことがあります。・・・」とわかった。
 J.S.ミルの著作を確認するため、百科事典、人名辞典等のミルの項を捜すが、本事項の記載は全くなかった。そこでネットにて「痩せたソクラテス」「ミル」で検索すると個人のブログに「功利主義」からの出典という書き込みを発見した。ベンサム、J.S.ミル(世界の名著38).中央公論社,1967.に収録されている「功利主義論」を確認した。訳文の記載位置から原典の文章を探し原文も確認。
備考
 平成26年教養学部学位記伝達式(卒業式)式辞 において当時の東京大学教養学部石井洋二郎氏がこのことについて触れている。
 東京大学として公式の席におりてこの事例につき、初めての発言と思われる。詳細は上記調査と同じである。
 東京大学大学院総合文化研究科・教養部HP 平成26年教養学部学位記伝達式 式辞
(引用終わり)
 
 以上の事例をご紹介したのは、その「備考」でも触れられている、東京大学教養学部平成26年度学位記伝達式における石井洋二郎学部長(当時)の式辞を、いつかはご紹介したいと思っていたところ、たまたま「レファレンス協同データベース」の事例に気がついたので、まずはこちらをご紹介しようと思ったのです。
 ちなみに、「備考」欄の引用先URLは、現在では以下に変更となっています。
 
 石井学部長の式辞は、まずその前段で、「1964年の3月、当時の総長であった経済学者の大河内一男先生が語ったとされる有名な言葉」である「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」を例示し、今はやりの言葉で言えば「ファクトチェック」を試みます。そこでは、上記「レファレンス事例」でも紹介されている出典を掲げた上で、①この言葉は、大河内総長が自ら思いついた表現ではなく、J.S.ミルの「功利主義論」における表現を引用したものであること、②その引用も、「下手をすると、これは「資料の恣意的な改竄」と言われても仕方がないケース」であることを明らかにします。ここまでは、上記の「レファレンス協同データベース」を読んでも大体分かりますよね。
 しかし、石井学部長の式辞にはまだ続きがあるのです。その部分を引用してみましょう。
 
(引用開始)
 ところが、間違いはこれだけではないんですね。じつは、大河内総長は卒業式ではこの部分を読み飛ばしてしまって、実際には言っていないのだそうです。原稿には確かに書き込まれていたのだけれども、あとで自分の記憶違いに気づいて意図的に落としたのか、あるいは単にうっかりしただけなのか、とにかく本番では省略してしまった。ところがもとの草稿のほうがマスコミに出回って報道されたため、本当は言っていないのに言ったことになってしまった、というのが真相のようです。これが第三の間違いです。
 つまり、「大河内総長は『肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ』と言った」という有名な語り伝えには、三つの間違いが含まれているわけです。まず「大河内総長は」という主語が違うし、目的語になっている「肥った豚よりも痩せたソクラテスになれ」というフレーズはミルの言葉のまったく不正確な引用だし、おまけに「言った」という動詞まで事実ではなかった。というわけで、早い話がこの命題は初めから終りまで全部間違いであって、ただの一箇所も真実を含んでいないのですね。にもかかわらず、この幻のエピソードはまことしやかに語り継がれ、今日では一種の伝説にさえなっているという次第です。
(引用終わり)
 
 ここまで読むと、「レファレンス協同データベース」の事例(国士舘大学図書館・情報メディアセンター)が「備考」欄で石井洋二郎学部長による式辞をフォローしてくれたのですから、そこで述べられた第3の間違いも紹介しておいて欲しかったと思いますよね。
 それでも、このデータベースまでたどり着き、備考欄でリンクされている東大教養学部の学部長式辞コーナーに掲載された式辞を全部読んだ人は、石井学部長が卒業生に語りかけた内容を理解することができたのですが、やがて、リンク先頁に掲載される式辞が、後年のものに差し替えられてしまった後に閲覧した人は、自分で「東京大学平成26年教養学部学位記伝達式(卒業式)式辞/石井洋二郎」というキーワードを入力して検索し直さない限り、大河内総長が、実は原稿に書いていた「昔J・S・ミルは『肥った豚になるよりは痩せたソクラテスになりたい』と言ったことがあります」という部分を飛ばして読まなかったという逸話には気がつきません。
 
 ところで、石井洋二郎学部長が以上の例を挙げた上で、卒業生に伝えたかった後段もご紹介しておきましょう。
 
(引用開始)
 さて、そこで何が言いたいかと申しますと、まず、皆さんが毎日触れている情報、特にネットに流れている雑多な情報は、大半がこの種のものであると思った方がいいということです。そうした情報の発信者たちも、別に悪意をもって虚偽を流しているわけではなく、ただ無意識のうちに伝言ゲームを反復しているだけなのだと思いますが、善意のコピペや無自覚なリツイートは時として、悪意の虚偽よりも人を迷わせます。そしてあやふやな情報がいったん真実の衣を着せられて世間に流布してしまうと、もはや誰も直接資料にあたって真偽のほどを確かめようとはしなくなります。
 情報が何重にも媒介されていくにつれて、最初の事実からは加速度的に遠ざかっていき、誰もがそれを鵜呑みにしてしまう。そしてその結果、本来作動しなければならないはずの批判精神が、知らず知らずのうちに機能不全に陥ってしまう。ネットの普及につれて、こうした事態が昨今ますます顕著になっているというのが、私の偽らざる実感です。
 しかし、こうした悪弊は断ち切らなければなりません。あらゆることを疑い、あらゆる情報の真偽を自分の目で確認してみること、必ず一次情報に立ち返って自分の頭と足で検証してみること、この健全な批判精神こそが、文系・理系を問わず、「教養学部」という同じ一つの名前の学部を卒業する皆さんに共通して求められる「教養」というものの本質なのだと、私は思います。
(略)
 さて、かく言う私も、この3月で教養学部長の任期は終了いたします。また、それと同時に、駒場の教員としても退職いたします。いささか恥ずかしげもなく月並みな言い方をすれば、今日は皆さんの卒業式であると同時に、私自身の卒業式でもあるわけです。人生のひとつの区切りを皆さんと一緒に迎えることができたというのは、何かのご縁かもしれませんが、ともあれこの壇上から式辞を述べるのも、これが最後の機会となりますので、私は大河内総長の「痩せたソクラテス」でもなく、濱田総長の「タフでグローバル」でもなく、自分自身が本当に好きな言葉を皆さんに贈って、この式辞を終えたいと思います。
 それはドイツの思想家、ニーチェの『ツァラトゥストゥラ』に出てくる言葉です。
 
きみは、きみ自身の炎のなかで、自分を焼きつくそうと欲しなくてはならない。きみがまず灰になっていなかったら、どうしてきみは新しくなることができよう!
 
 皆さんも、自分自身の燃えさかる炎のなかで、まずは後先考えずに、灰になるまで自分を焼きつくしてください。そしてその後で、灰の中から新しい自分を発見してください。自分を焼きつくすことができない人間は、新しく生まれ変わることもできません。私くらいの年齢になると、炎に身を投じればそのまま灰になって終わりですが、皆さんはまだまだ何度も生まれ変われるはずです。これからどのような道に進むにしても、どうぞ常に自分を燃やし続け、新しい自分と出会い続けてください。
 もちろん、いま私が紹介した言葉が本当にニーチェの『ツァラトゥストゥラ』に出てくるのかどうか、必ず自分の目で確かめることもけっして忘れないように。もしかすると、これは私が仕掛けた最後の冗談なのかもしれません。
 皆さんの前に、輝かしい未来が開けますように。そして皆さんが教養学部で、この駒場の地で培った教養の力、健全な批判精神に裏打ちされた教養の力が、ますます混迷の度を深めつつあるこの世界に、やがて新しい叡智の光をもたらしますように。
 万感の思いを込めて、もう一度申し上げます。皆さん、卒業おめでとう。
  平成二十七年三月二十五日
                                                  東京大学教養学部長 石井洋二郎
(引用終わり)
 
 私が石井洋二郎先生の東京大学教養学部平成26年度学位記伝達式における式辞を知ったのは、半年ほど前のことだったでしょうか。いずれブログで紹介したいと思いつつ、つい機会を逸して今まで来てしまったのですが、今日、是非この式辞を取り上げたいと思ったについては理由があります。
 それは、昨日のブログ(放送予告「変貌する自衛隊」(NNNドキュメント@2019年1月27日)とブログ素材2件のご紹介/2019年1月22日)の後半でご紹介した、もしかしたら今後のブログの素材にするかもしれないと思って昨日Facebookでシェアした投稿のうちの1つに関わる問題です。  http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/52946742.html
 その投稿につき、後に付記した部分も含めて再度リンクします。
 
【素材1 竹中平蔵を批判する看板を立ててビラを配った東洋大学4年生】
金原コメント「たった1人でも「やるべきだ」と思ったことをやるのが「勇気」というものだということを思い出させてくれます。自分が東洋大学の学生だったとして「できるだろうか?」と自問しています。
※ちなみにこの行動は昨日(21日)行われたようです。学生ご本人のFBでも公開設定で投稿されています。
 
 この投稿は、内海信彦さんという方が、船橋秀人さんという東洋大学4年生が、「大学キャンパスで東洋大学教授竹中平蔵の講義と、竹中平蔵が行って来た犯罪的な行いに抗議して、単身で立て看を立て、ビラ撒きを行いました。学生の反応はいまひとつ、立て看は10分で撤去されたそうです。大学当局は、彼を呼び出して二時間半も尋問して、「学則に違反する行動」として、「学生の本分」から外れ、「大学の秩序」を乱したと決めつけて、卒論審査も済んでいる彼に「退学処分」を警告したそうです。」と記述した上で、船橋さんから貰ったビラの文章を転記して紹介するというもので(投稿日:1月21日23:04)、写真も5枚付いていました。
 昨日(22日)、私のFacebook友達の1人がシェアしていたために気がつき、内海さんとも船橋さんともFacebook友達でも何でもありませんでしたが、基本的に「フェイクではない」と判断しましたので、私も以上の文章を付けてシェアしました。
 その判断の根拠の1つは、掲載された写真の1枚が、配布されたビラとおぼしく、内海氏が転記した文章がその写真のとおりであり、おそらくは起案者からデータの提供を受けている可能性が高いと考えたこと、大学当局が看板を撤去する写真をタイミング良く撮影するためには、立て看板やビラを作った学生本人と事前の打ち合わせがあったと考えるのが自然であること、などによります。
 
 さて、その後、この内海信彦さんの投稿は瞬く間にシェアを広げ、この稿を書いている1月23日(水)21時20分現在、「3,755」件のシェアが行われており、さらにこの件を取り上げるネット上の記事も散見されるようになってきました。
 
藤田孝典「東洋大学生の竹中平蔵氏批判の背景にある若者の貧困とワーキングプア
 
 それだけであれば、私が石井洋二郎先生の式辞を取り上げようということにはならなかったと思いますが、問題は、この「投稿」をシェアしたり、コメントしたりした人たちの姿勢にとても違和感を感じたということにあります。
 
 勇気をもって抗議に立ち上がった学生を賞賛・支持するコメントにはそう違和感は感じませんが(実際、私が書いた文章もそういうトーンのものでした)、中には、この投稿をシェアすることを利用して、ここぞとばかりに竹中平蔵批判を行う人も多く、これはどうなんだ?それをやりたければまず自分が行動したら?という印象は否めません。
 さらに、慎重にシェア元の投稿を読んでいれば、そういういことになるはずはないと思うのですが、問題の学生が退学処分になる、と断定する投稿まで出回っており、さらにそれを無自覚にシェアする人多数という状況を目の当たりにすると、これはいけない、と思わざるを得ません。
 まさに、石井洋二郎先生が言われた「そうした情報の発信者たちも、別に悪意をもって虚偽を流しているわけではなく、ただ無意識のうちに伝言ゲームを反復しているだけなのだと思いますが、善意のコピペや無自覚なリツイートは時として、悪意の虚偽よりも人を迷わせます。そしてあやふやな情報がいったん真実の衣を着せられて世間に流布してしまうと、もはや誰も直接資料にあたって真偽のほどを確かめようとはしなくなります。」という言葉通りの状況が目の前で進展していると思いましたので、今日のブログは石井先生の4年前の式辞をご紹介しようと決めたという次第です。
 
 ちなみに、立て看板を立て、チラシを配布した当事者である船橋秀人さん本人のFacebookを閲覧すると、「公開」設定で、「私船橋秀人が、立て看&ビラ撒きへの取り調べに対して、東洋大学の学生部の人間から退学勧告されたのは本当です。この青線の表現に該当するとの指摘を受けました。」という投稿(おそらく学生部の職員から渡されたとおぼしいラインマーカーが引かれた学則写しの写真付き)がなされていました。
 
 今日のブログは、単なる他人に対する批判ではなく、自らを戒めるためにこそ書いたものであると申し上げて、この稿を終えることにします。
 
(弁護士・金原徹雄のブログから/大学式辞関連)
2014年3月27日
山本健慈和歌山大学学長の「平成25年度卒業式式辞」
2014年5月27日
岡村吉隆和歌山県立医科大学学長の「平成26年度 入学式式辞」
2015年2月6日
退任前にもう一度読み返す山本健慈和歌山大学学長の「平成25年度卒業式式辞」(付・予告3/3退任記念シンポジウム)
2015年3月25日
山本健慈和歌山大学学長 最後の卒業式式辞(付・予告4/29山本健慈氏講演会「学び続ける自由と民主主義~不安の時代に抗して」)
2015年4月6日
3人の大学人からのメッセージ(大谷實同志社総長、田中優子法政大学総長、山本健慈和歌山大学(前)学長)

放送予告「変貌する自衛隊」(NNNドキュメント@2019年1月27日)とブログ素材2件のご紹介

  2019年1月22日配信(予定)のメルマガ金原.No.3400を転載します。
 
放送予告「変貌する自衛隊」(NNNドキュメント@2019年1月27日)とブログ素材2件のご紹介
 
 この番組「変貌する自衛隊」の放送予告を取り上げようかどうしようか、少し躊躇しました。
 大いに興味を覚える内容ではあるのですが、「NNNのカメラは、南シナ海における海自艦と中国海軍の息詰まる神経戦や、東シナ海における日米共同での実戦さながらの上陸訓練をとらえた。」とあるとおり、取材受け入れ側である自衛隊によるアレンジの枠内での「密着取材」である訳で、「自衛隊、そして日本の国防はどこへ向かうのか」という番組の意図がどこまで実現できたのか、わずか20秒の予告映像を眺めながら、かなりの懸念を抱いたというのが正直なところです。
 
 とはいうものの、やはり見てみたいという誘惑に勝てず、取り上げることにしました。予告映像の冒頭に出てくるのは空母化が取り沙汰されている「いずも型護衛艦」なのでしょうね。
 
日本テレビ系列 2019年1月28日(月)午前0時55分~(日曜深夜)
NNNドキュメント'19「変貌する自衛隊
(番組案内から引用開始)
発足から60年あまり。自衛隊は今、その姿を大きく変えつつある。
戦後タブーとされてきた「空母」の保有、そして「米海兵隊」を模した精鋭部隊の創設。
戦力の増強がはかられる一方で任務にも変化が。
NNNのカメラは、南シナ海における海自艦と中国海軍の息詰まる神経戦や、東シナ海における日米共同での実戦さながらの上陸訓練をとらえた。
超大国の新たな世界戦略も影を落とす中、自衛隊、そして日本の国防はどこへ向かうのか。
ナレーター/國井千聖  制作/日本テレビ  放送枠/30分
再放送   
2019年2月3日(日)11:00~ BS日テレ
2019年2月3日(日)5:00~/24:00~ CS「日テレNEWS24
(引用終わり)
 
NNNドキュメント 2019/1/27「変貌する自衛隊」(20秒)
 
 ただ、30分枠(正味は25分もないでしょう)で伝えられることには限りがあるはずで、この次には、自衛隊を「外から」取材する番組も観てみたいですね。
 
(追記)
 結局、今日のブログは、次回のNNNドキュメントのご紹介ということに落ち着いたのですが、「ブログ毎日配信」のための素材探しの段階で、気になったものを、とりあえずFacebookでシェアしておくということがよくあります。
 今日、そのようにしてシェアした素材を2つご紹介しておきます。これらの素材を発展させてブログを書くことになるかどうかは分かりませんが、注目したいと思っています。
 
【素材1 竹中平蔵を批判する看板を立ててビラを配った東洋大学4年生】
金原コメント「たった1人でも「やるべきだ」と思ったことをやるのが「勇気」というものだということを思い出させてくれます。自分が東洋大学の学生だったとして「できるだろうか?」と自問しています。」
 
【素材2 アフガニスタン大干ばつと大水害~中村哲医師からの報告】
金原コメント「何ヶ月か毎に西日本新聞に掲載される中村哲医師のアフガニスタンからの報告、2018年12月3日に掲載されたものです。実は、ペシャワール会のホームページに掲載される中村医師からの写真レポートでは、アフガニスタン全土で進行する大干ばつの状況に加え、洪水による被害の報告も散発的にあったりしたのですが、現地報告の最新版(昨年11月1日時点)に「11月1日夜半から午前中にけて、ケシュマンド山脈南麓の各地で再び集中豪雨が発生した。数十分から数時間の短期大量降雨で断続的。雨量は前回(10月)をはるかに上回り、かつ広範囲に及んだ。一回の集中豪雨としてはPMSが2003年に観察し始めてから、最大規模。マルワリード用水路は全線にわたって再度寸断された。復旧には長時日を要すると思われ、現在調査中である。」として、大きな被害を受けた用水路の写真が掲載されていたので、とても心配していました。  
ペシャワール会への寄付・入会について⇒

日本弁護士連合会「長期低排出発展戦略の策定に関する意見書」(2019年1月18日)を読む

  2019年1月21日配信(予定)のメルマガ金原.No.3399を転載します。
 
日本弁護士連合会「長期低排出発展戦略の策定に関する意見書」(2019年1月18日)を読む
 
 私のブログでは、日本弁護士連合会が公表する様々な意見書をご紹介する機会が多いのですが、その中でも、よくご紹介する分野とそうでない分野、有り体に言えば、得意分野と不得意分野があることは避けられません。
 
 今日ご紹介するのは、1月18日に採択された「長期低排出発展戦略の策定に関する意見書」であり、COP21で採択されたパリ協定(2015年12月12日)が「世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに,1.5℃に抑えるよう努力するとの長期目標を掲げ(同協定第2条第1項(a)),全ての締約国に対し,その達成に向けた「温室効果ガス低排出型の発展のための長期的戦略」を2020年までに作成し,提出することを求めて」おり、さらに「2016年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットの首脳宣言において,G7諸国は,2020年よりも十分先立って「長期的な温室効果ガス低排出発展戦略」(以下「長期低排出発展戦略」という。)を策定・提出することを約束しており,アメリカ,カナダ,ドイツ,フランス,イギリスは既に提出しているが,日本はいまだ策定・提出に至っていない。」という状況を踏まえ、「これまでの国における議論を踏まえ,長期低排出発展戦略に盛り込むべき内容について,意見を述べるものであ」り(意見書の前文から)、「環境問題ど真ん中」に属する意見書です。
 
 一応、私のブログ(弁護士・金原徹雄のブログ)にも「環境」というカテゴリーは設けているものの、2013年1月のブログ開設以来、「憲法」カテゴリー837件、「原発」カテゴリー480件などに比べ、「環境」カテゴリー41件というのは、明らかに見劣りしますよね。「経済」カテゴリー15件、「技術」カテゴリー13件に比べればましですが。
 
 私自身、「環境」は不得意分野です、などとは言えない立場であったりもするので、せめて日弁連の主張くらいはフォローしなければ、ということで、この最新の意見書を全文ご紹介することにしました(脚注は引用していませんので、リンク先でご確認ください)。
私自身の勉強のために取り上げたという面もあるブログですが、関心を持たれる方の目に留まれば幸いです。
 
日本弁護士連合会 2019年1月18日
長期低排出発展戦略の策定に関する意見書
※1月21日付けで内閣総理大臣経済産業大臣及び環境大臣宛てに提出。
(引用開始)
                     長期低排出発展戦略の策定に関する意見書
 
                                                2019年(平成31年)1月18日
                                                                  日本弁護士連合会
 
 国連気候変動枠組条約第21回締約国会議(COP21)は,2015年12月12日,気候変動の脅威に対する世界的な対応を強化することを目的として,パリ協定を採択した。同協定は,世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つとともに,1.5℃に抑えるよう努力するとの長期目標を掲げ(同協定第2条第1項(a)),全ての締約国に対し,その達成に向けた「温室効果ガス低排出型の発展のための長期的戦略」を2020年までに作成し,提出することを求めている(同協定第4条第19項及びCOP21決定第36項)。
 2016年5月に開催されたG7伊勢志摩サミットの首脳宣言において,G7諸国は,2020年よりも十分先立って「長期的な温室効果ガス低排出発展戦略」(以下「長期低排出発展戦略」という。)を策定・提出することを約束しており,アメリカ,カナダ,ドイツ,フランス,イギリスは既に提出しているが,日本はいまだ策定・提出に至っていない。
 これについて,国は,2018年7月31日に「パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会」を設置し,長期低排出発展戦略の策定に向け,検討を進めている。
 本意見書は,これまでの国における議論を踏まえ,長期低排出発展戦略に盛り込むべき内容について,意見を述べるものである。
 
第1 意見の趣旨
 国は,長期低排出発展戦略の策定に当たっては,1のとおり温室効果ガスの排出削減目標を改め,その目標の達成のために2~5を踏まえた政策措置を盛り込んだ上で,同戦略を速やかに気候変動枠組条約の事務局に提出すべきである。
1 IPCC特別報告書「1.5℃の地球温暖化」(2018年10月8日公表)を踏まえ,世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて1.5℃に抑えることを明記し,「2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す」とするこれまでの国の長期目標を引き上げ,温室効果ガスの排出を実質ゼロに近づけたものとすべきである。
 また,同目標に至る経路として,2030年の削減目標を2013年度比26%削減(1990年度比では18%削減)とする現行の目標を,1990年度比40%以上削減に引き上げ,2040年には1990年度比60%以上の削減とすることを明記すべきである。
2 建物の断熱性能規制を強化するなど,エネルギー消費の削減及びエネルギー需給における高効率化を誘導する仕組みを導入すべきである。
3 石炭火力発電所の新設は計画中及び工事中のものを含めて認めず,既設の石炭火力発電所についても早期に廃止させる方針を明確にし,その実現のための措置を導入すべきである。
4 再生可能エネルギーの主力電源化を明確に示し,2050年における再生可能エネルギーの導入目標を設定するとともに,現行では22~24%とされている2030年の電源構成における再生可能エネルギーの割合を少なくとも30%まで引き上げ,その実現に向けた送電網の整備などの政策措置を盛り込むべきである。
 また,再生可能エネルギーの導入によって環境に悪影響を及ぼす事態とならないよう適切な法制度の整備を行うなど,再生可能エネルギーの拡大が地域の環境に悪影響をもたらさないための措置を導入すべきである。
5 低コストで排出量の削減を可能にするために,効果的なカーボンプライシング(炭素の価格付け)を導入・強化すべきである。
 
第2 意見の理由
1 気候変動による影響と対策の緊急性
 既に世界の平均気温は産業革命以前に比べて1℃上昇しており,広範囲にわたるサンゴ等の生態系の消失,極端な気象現象の増加,風水害や熱波による死傷者の増加,感染症リスクの地域的拡大,食糧安全保障への悪影響などが生じているが,そのような悪影響は気温上昇とともに更に増加することが,国連気候変動に関する政府間パネル(以下「IPCC」という。)の第5次評価報告書(2014年3月発表)などから明らかになっている。
 また,2018年10月8日に公表されたIPCC特別報告書「1.5℃の地球温暖化」(以下「1.5℃特別報告書」という。)は,産業革命以前からの気温上昇を1.5℃にとどめたとしても温暖化の悪影響によるリスクは現在よりも高まり,自然災害が多発,激甚化する上,2℃の上昇になればその影響は更に拡大し,とりわけ生態系に深刻なダメージを与えると指摘した。その上で,近年の度合いで気温上昇が続けば,2040年頃に1.5℃の気温上昇に達する可能性が高く,1.5℃の気温上昇にとどめ,安定化させるためには,現在の各国の削減目標では大幅に足りず,2030年までに世界全体で温室効果
スの排出量を2010年のレベルに比べて40%~50%削減し,2050年前後に実質排出ゼロにする必要があること,とりわけ今後10年の削減が重要とした。
 気候変動による現在及び将来世代への深刻な影響のリスクを最小化するためには,各国が2030年の削減目標を引き上げ,対策を強化し,パリ協定の目標を確実に達成することが急務である。
2 持続可能な発展に向けて
 世界では,1990年代から,エネルギー転換や高効率化によってエネルギー使用量及び二酸化炭素排出量を削減しつつ経済成長を実現する流れが生じており,近年,日本でもその傾向が見られるようになってきている。
 さらに,パリ協定の採択・発効を受けて,2050年までに温室効果ガスの排出を実質ゼロにし,全てのエネルギーを再生可能な自然エネルギーでまかなうようにすることを宣言する大企業も現れ,その部品・原材料等の供給や流通網の全体にわたる脱炭素化への取組を求める流れが加速している。
 また,2015年9月の国連サミットでは,気候変動対策を含む17の持続可能な開発目標(SDGs)を2030年までに達成することを目指す行動計画(持続可能な開発のための2030アジェンダ)が採択され,広く企業や自治体などの行動指針となりつつある。
 長期低排出発展戦略においては,脱炭素化に向けたこうした社会全体のゴールを明確にして広く社会に共有し,企業を始めとした全ての部門でSDGsの実現と併せて取り組み,持続可能な社会へと転換を図る好機とすべきである。
 同時に,脱炭素社会に向けての変革の取組は,全ての部門・関係者の理解と支持の下,社会全体で取り組むことが不可欠であり,雇用機会の確保等に留意すべきことは言うまでもない。国際労働機関が2018年5月14日に発刊した「世界の雇用及び社会の見通し2018年版-仕事でグリーン化」によれば,世界の平均気温の上昇を産業革命以前に比べて2℃より十分低く保つことを目指すことで,2030年までに化石燃料関連事業を中心とした600万人分の雇用の消失があるものの,再生可能エネルギー関連事業やリサイクル等関連事業などで2400万人分の雇用が創出され,1800万人分の純増が見込まれると試算されている。ポーランドのカトヴィツェで2018年12月に開催された国連気候変動枠組条約第24回締約国会議(COP24)では,脱炭素化の過程で生じる産業構造や雇用機会の変化に対し,新たな雇用の創出,教育訓練,社会的支援策など公正な移行を実現する取組の重要性を確認した「連帯と公正な移行のためのシレジア宣言」が採択されたところである。
3 長期低排出発展戦略に盛り込むべき事項
 以上のような観点から,長期低排出発展戦略においては,少なくとも以下の内容を盛り込んだものとし,速やかに策定・提出するべきである。
(1) 2050年削減目標の引上げ及び同目標に至る道筋の明示(意見の趣旨第1項)
 パリ協定と科学の要請に基づく脱炭素化への道筋を明確にし,これを国内外に示していくことは,持続可能な経済社会へと転換していくために不可欠である。
 国は,「第4次環境基本計画」(2012年4月閣議決定)において2050年までに80%の温室効果ガスの排出削減を目指す(以下「2050年目標」という。)とし,パリ協定の目標を受けて策定された「地球温暖化対策計画」(2016年5月閣議決定)においても,基準年を示さないまま,2050年目標を維持した。
 一方で,欧州委員会はCOP24を前にEUとしての長期低排出発展戦略案をまとめ,2050年までに温室効果ガスの排出実質ゼロを目指すとするなど,先述した1.5℃特別報告書の警告を真摯に受け止める声が世界的に高まっている。
 このような世界の流れを踏まえ,日本においても,2050年までに温室効果ガスの排出を80%削減するとの目標を引き上げ,実質排出ゼロに近づけたものとすべきである。
 これは,産業革命以降,先進国の一員として世界に先駆けて豊かさを享受するために大気中の二酸化炭素を大量に排出してきた日本の責務でもある。
 また,2016年5月に策定された「地球温暖化対策計画」においても,2050年目標に向けた具体的な道筋はいまだ描かれていない。
 二酸化炭素は長期にわたり大気中にとどまり蓄積し続け,その累積量と気温上昇が比例関係にあることから,当連合会は,2050年に至るまで直線的に排出量を削減する必要性を指摘してきたところである。
 2030年の削減目標は,現行では2013年度比26%削減(1990年度比では18%削減)とされている。これは,経済産業省が公表した「長期エネルギー需給見通し」(2015年7月16日公表)及びこれに基づく「第5次エネルギー基本計画」(2018年7月3日閣議決定)で示された電源構成を前提とするもので,不十分である。
 
 今般,長期低排出発展戦略を策定するに当たっては,長期目標に向けた具体的な道筋として,京都議定書以来,削減目標の基準年とされてきた1990年を基準年とした上で,パリ協定の目標と整合するよう,2050年までの過程にある2030年の削減目標を少なくとも1990年度比40%以上削減に引き上げ,2040年の削減目標についても1990年度比60%以上削減とすべきである。
(2) エネルギー消費量の削減と高効率化(意見の趣旨第2項)
 日本における温室効果ガス排出のうち,約9割をエネルギー起源二酸化炭素が占めているところ,エネルギー利用の高効率化やエネルギー消費の少ない製品への転換等によってエネルギー消費量を削減することが二酸化炭素排出削減に不可欠である。
 特に,建物の断熱性能規制の強化,並びに自動車や,工場・事業所及び家庭の設備・機器におけるエネルギー効率の向上を促す仕組みの導入が必要である。
 また,廃熱利用の徹底等による熱利用の促進等,エネルギー供給におけるエネルギー消費量の削減を誘導する仕組みも導入すべきである。
(3) 石炭火力発電からの速やかな脱却(意見の趣旨第3項)
 事業用石炭火力発電からの二酸化炭素排出は,日本の二酸化炭素排出量全体の約22%を占めている。
 石炭は安価であるが,化石燃料の中でも深刻な健康被害をもたらす大気汚染物質を多く含み,発電量当たりの二酸化炭素の排出量が最も多く,高効率石炭火力発電でも天然ガス火力の約2倍の二酸化炭素を排出する。1.5℃特別報告書は,2050年にも二酸化炭素の排出を実質ゼロとするよう求めるものであり,発電部門における石炭火力からの脱却がまず求められる。
 2017年11月に開催された国連気候変動枠組条約第23回締約国会議(COP23)では,カナダ政府とイギリス政府の主導で,欧州11か国及び米ワシントン州を含む25か国及び3つの自治体が「脱石炭連盟」を発足し,石炭火力からの段階的な撤退を訴えた。同連盟に加盟する国や自治体はその後も増えており,脱石炭火力の流れは世界的に拡大している。
 しかるに,日本では,100基を越える石炭火力発電所が稼働する中,東日本大震災による原子力発電所事故後の2012年以降,新たに50基を超える新設計画が出現し,現時点でも,工事中のものを含め,多くの石炭火力発電所の新設計画が進行中であり,パリ協定の要請に逆行する状態となっている。
 長期低排出発展戦略においては,計画中・工事中にかかわらず,石炭火力発電所の新設は認めず,既設の石炭火力発電所についても早期に廃止させる方針を明確にし,石炭火力発電からの脱却を明確に位置付けるべきである。
 また,「第5次エネルギー基本計画」(2018年7月3日閣議決定)においても途上国への高効率石炭火力発電を「低炭素型インフラ輸出」と位置付けて導入を支援するとしているが,今世紀半ばに世界全体での脱炭素化が求められているのであるから,途上国への輸出も認めるべきでない。
(4) 再生可能エネルギーの主力電源化のための政策の推進(意見の趣旨第4項)
 当連合会は,「パリ協定の実施のための国内法制度の整備に関する意見書」(2017年2月16日),「パリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を求める意見書」(2018年6月15日)などで,パリ協定の下でのエネルギー・環境政策は,化石燃料からの脱却とともに,原子力発電所の稼働,新増設を前提とするのではなく,原子力からの脱却を前提とすべきことを指摘してきたところである。このような化石燃料原子力に代わる真に持続可能なエネルギー源は再生可能エネルギーをおいて他にない。近年,世界では,
再生可能エネルギーによる発電の設置コストが大きく低減しており,今後も更に低減が見込めることから,投資が急速に拡大している。
 しかし,「第5次エネルギー基本計画」(2018年7月3日閣議決定)では再生可能エネルギーの主力電源化が盛り込まれたものの,その具体的内容は明らかでなく,主力電源化に不可欠の送電網の有効活用と拡充,送配電事業における電力システム改革など,再生可能エネルギーの大幅導入のために解決すべき課題は先送りされたままである。
 2012年7月に固定価格買取制度(FIT制度)が導入されて以降,太陽光発電を中心に普及が進んでいるが,現状では世界の潮流に大きく後れをとっている上,原子力発電と石炭火力発電をベースロード発電と位置付け,これらの送電網への接続を優先し,再生可能エネルギーの接続枠の空き容量不足を理由とする接続拒否や出力抑制措置が行われている。こうした状況の下では,再生可能エネルギー事業者の収支予測が困難になり,再生可能エネルギー拡大の動きが失速しかねない状況にある。
 よって,2050年における再生可能エネルギーの導入目標を設定するとともに,2030年の導入目標を30%以上に引き上げ,2050年に至る拡大の経路を定めて再生可能エネルギーの主力電源化の意思を明確に示し,電力自由化を進め,送配電網の整備,再生可能エネルギーの送電網への優先接続及びそれに伴う需給管理システムの整備など,その実現のための措置を推進すべきである。
 同時に,再生可能エネルギーの拡大が地域の環境に悪影響をもたらすものであってはならず,自然保護や健全な環境の維持に相反するような事業(大規模な森林伐採による太陽光パネルの設置や環境破壊行為を伴うような方法で生成された一部の輸入バイオマスなど)を抑止するための規制(適切な環境アセスメントや土地利用に関する規制など)を速やかに整備すべきである。
(5) 脱炭素化を促進する効果的なカーボンプライシング(炭素の価格付け)の導入・強化(意見の趣旨第5項)
 カーボンプライシング(炭素の価格付け)とは,二酸化炭素に価格を付け,企業や個人が二酸化炭素の排出にコストを負うことで,二酸化炭素の排出削減を促す施策を指し,主な施策としては化石燃料の使用に伴う二酸化炭素に応じて課税する「環境税(炭素税)」,大規模排出事業者やその事業所ごとに二酸化炭素の排出量に上限を設け,超過分及び不足分を取引する「国内排出量取引制度」がある。このようなカーボンプライシングの導入・強化は,脱炭素とエネルギー消費の高効率化のための積極的な経済的インセンティブとして有効である。カーボンプライシングを積極的に導入してきた国では,炭素生産性(二酸化炭素のトン量当たりのGDP)を高め,脱炭素経済へと移行させる役割が確認されている。さらに,脱炭素に向かうESG投資を活性化させる役割もある。
 発電所や一定規模を超える排出量を有する大規模工場等を対象とする「国内排出量取引制度」は,排出削減のための経済的インセンティブとしての有効性が確認されており,EUや米国東西部の州に加え,中国や韓国でも導入されているが,日本ではいまだ導入されていない。
 また,日本は,従来の石油石炭税に上乗せする形で二酸化炭素排出量に応じた「地球温暖化対策のための税」を2012年に導入したが,これらの税の合計を,燃料別に二酸化炭素排出1トン当たりに換算して比較した場合,石炭が最も安く,地球温暖化対策のための税は税率が1トン当たり289円で,国際的にも税率は低いなど,温室効果ガスの排出を実質ゼロに近づける社会への移行を促すカーボンプライシングがなされているとは言えず,不十分である。
 したがって,日本でも実効性のある制度設計の下に,早急にカーボンプライシングの導入・強化を図るべきである。
                                                                             以上
 
(参考サイト)
〇パリ協定(2015年12月12日)
〇パリ協定長期成長戦略懇談会(パリ協定に基づく成長戦略としての長期戦略策定に向けた懇談会)
IPCC特別報告書『1.5℃の地球温暖化』の政策決定者向け要約を 締約国が承認(国際連合広報センター)
IPCC 第5次評価報告書(気象庁
〇世界の雇用及び社会の見通し2018年版-仕事でグリーン化(エグゼクティブ・サマリー、日本語訳)(ILO)
〇環境基本計画(環境省
地球温暖化対策計画(環境省
〇パリ協定の実施のための国内法制度の整備に関する意見書(日本弁護士連合会・2017年2月16日)
〇パリ協定と整合したエネルギー基本計画の策定を求める意見書(日本弁護士連合会・2018年6月15日)
〇長期エネルギー需給見通し(経済産業省
〇エネルギー基本計画について(資源エネルギー庁