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第192回国会(臨時会)開会の日に「異様な光景」を見た~今後の「改憲論議」に注目!

 今晩(2016年9月26日)配信した「メルマガ金原No.2581」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
第192回国会(臨時会)開会の日に「異様な光景」を見た~今後の「改憲論議」に注目!

 本日(2016年9月26日)、第192回国会(臨時会)が召集されました。会期は11月30日までの66日間です。
 報道等では「臨時国会」と言い習わされていますが、憲法上、国会法上は「臨時会」という用語が使用されています。
 ちなみに、「第192回」というのは、日本国憲法の施行(1947年5月3日)以降に召集された19
2回目の国会(常会、臨時会または特別会)という意味です。
※注「国会会期一覧」衆議院ホームページより)

 なお、雑学風に説明を加えれば、「召集」というのは、「召し集める」(目上の者からの呼び出し・お召し)という語意から、同じような意味で使われる「招集」との使い分けが難しいのですが、国会「召集」については、「招集」では明らかに間違いです。
 典拠は、日本国憲法7条2号の「天皇は、内閣の助言と承認により、国民のために、左の国事に関する行為を行ふ。(略)二 国会を召集すること。」です。
 さらに、この規定の淵源は、大日本帝国憲法7条「天皇帝国議会ヲ召集シ其ノ開会閉会停会及衆議院ノ解散ヲ命ス」にまで遡ります。
 つまり、国会が活動能力を付与されるためには、第三者たる天皇による「召集」という(内閣の助言と
承認に基づく)「国事行為」が必要とされているのです。もちろん、「召集」というような行為を必要とせず、国会が自立的に活動できるようにしようと思えばできますが、そのためには憲法改正が必要です。
 雑学ついでに、地方議会はどうなっているかと言えば、「普通地方公共団体の議会は、普通地方公共団体の長がこれを招集する。」(地方自治法101条)とあり、「召集」ではなく、「招集」という用語が使用されています。
 NHKの放送では、「召集」は「日本の国会、旧日本軍に限定」して使用し、その他の場合には(例えば、米国が予備役を「招集」するというような)「招集」を使うという方針ということですが(NHK放送文化研究所「放送現場の疑問・視聴者の疑問」)、「召集」を使用するのは、いずれも天皇が「召す」
場合であり、さすがにこれを「招集」と言い換えるのははばかられるということかもしれません。
 
 会期は、とりあえず11月30日までと定められましたが、国会法12条は、「1項 国会の会期は、両議院一致の議決で、これを延長することができる。/2項 会期の延長は、常会にあつては一回、特別会及び臨時会にあつては二回を超えてはならない。」とありますので、もちろん会期延長の可能性もあります。
 
 ところで、秋の臨時会(春の臨時会というのはまずないですね。1月に召集するのを「常例」とする常会の会期が150日と法定されていますから)といえば、昨年、安倍内閣が、「内閣は、国会の臨時会の召集を決定することができる。いづれかの議院の総議員の四分の一以上の要求があれば、内閣は、その召集を決定しなければならない。」(日本国憲法53条)という明文の規定に違反して、臨時会の召集を決定しなかったことが思い出されます。
※注 弁護士・金原徹雄のブログ「憲法53条後段に基づく臨時会召集要求と国会の先例について」(2015年10月21日)を参照願います。
 
 さて、私が長々とした前置きを書き連ねながら、臨時会召集の話題を取り上げたのは、先の参院選の結果、衆参両院で改憲に前向きな政治勢力が2/3以上の多数を占めるという事態が現実のものとなって以降、初めて召集された国会であり、そこで改憲論議がどのように進められようとしているのか、重大な関心を持たざるを得ないからです。
 さらに、個人的な事情を付け加えると、10月6日(木)にクローズの学習会で、また、10月22日
(土)には公開講演会(午後2時~/和歌山市・中央コミセン/主催:憲法を生かす会 和歌山)で、改憲の動向を主要なテーマとした講演の講師を務めなければならず、レジュメを書くためにも、安倍晋三首相の「所信表明演説」の内容や、両院の憲法審査会の状況をフォローしなければならないという差し迫った必要もあるからです(「施政方針演説」は常会冒頭で行われる首相の演説を指し、臨時会や特別会冒頭での首相の演説は「所信表明演説」と称するのが普通)。
 
 ということで、首相官邸ホームページに掲載された安倍首相の所信表明演説の原稿全文を読破しました。上記のような必要に迫られなければ、とても読む気になるような文章ではないですけどね。
 なお、首相が原稿を良好ならぬ滑舌で読み上げる動画の視聴は省略しようと思っていたのですが、たまたま朝日新聞デジタルで以下の記事を読み、該当箇所だけは確認のために視聴しました。
 
朝日新聞デジタル 2016年9月26日17時21分
首相の呼びかけで自民議員が起立・拍手 衆院議長は注意

(抜粋引用開始)
 安倍晋三首相が26日の衆院本会議で行った所信表明演説で、領土や領海、領空の警備に当たっている海上保安庁、警察、自衛隊をたたえた際、安倍氏に促された自民党の議員たちが一斉に立ち上がって手をたたき続けたため、約10秒間、演説が中断した。大島理森議長は「ご着席下さい」と議員らを注意した

 安倍氏は演説で「現場では夜を徹し、今この瞬間も海上保安庁、警察、自衛隊の諸君が任務に当たっている」と強調。「今この場所から、心からの敬意を表そうではありませんか」と呼びかけた。これに自民
議員らが呼応して起立。安倍首相も壇上で拍手をした。
(引用終わり)
 
 政府インターネットテレビの中継では、26分以降でこの「異様な光景」(小沢一郎氏談)が見られます。この光景を見て「異様」と思わない人たちが自民党に投票しているのでしょうか。日本の「北朝鮮化」の勢いは止まりませんね。
 
 さて、肝心の所信表明演説ですが、「憲法改正」について触れたのは、末尾の以下の箇所です。
 
憲法はどうあるべきか。日本が、これから、どういう国を目指すのか。それを決めるのは政府ではありません。国民です。そして、その案を国民に提示するのは、私たち国会議員の責任であります。与野党立場を超え、憲法審査会での議論を深めていこうではありませんか。
 決して思考停止に陥ってはなりません。互いに知恵を出し合い、共に「未来」への橋を架けようではありませんか。」
 
 論評の対象とするにしては短か過ぎますが、それでも、文句をつけようと思えばつけられます。例えば、所信表明演説というのは内閣の代表者として行うものであって、与党の代表者として行うものではないのですから、「与野党の立場を超え、憲法審査会での議論を深め」ようという呼びかけは本来筋違いであり、憲法99条の「憲法尊重擁護義務」に抵触する恐れもなしとしません。
 また、「思考停止」というのは、「改憲反対」の立場を暗に指すとも解釈でき、国民のうちに多数存在
する「護憲派」に対するあからさまな侮辱であり、挑発であるという読み方もできます。
 
 さて、議論の主要な舞台は、両院に設置された憲法審査会となります。当面、その審議の動向には注意を怠らないようにしなければなりませんので、それぞれのホームページにリンクしておきます。是非皆さんも注目してください。
 


(付録)
Bob Dylan ライセンス・トゥ・キル の替え歌』 日本語詞・演奏:中川五郎