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9/11原子力規制委員会委員長及び委員候補からのメッセージ

 
 本日(9月11日)の「閣議決定」を伝える東京新聞(夕刊)の記事をお読みください。
 
規制委「事後同意も不要」 細野氏言及 19日発足閣議決定
(引用開始)
 政府は十一日午前の閣議で、原子力規制を一元的に担う新組織「原子力規制委員会」を十九日に発足させることを決定した。委員の人事は国会の同意が必要だが、八日に閉会した通常国会で同意を得られなかったため、野田佳彦首相が任命する。細野豪志原発事故担当相は十一日の記者会見で、秋に予定される臨時国会でも事後同意を求めないこともあり得ると表明。国会軽視の姿勢に世論の反発を招くのは必至だ。
 政府は七月下旬、委員長に田中俊一・前原子力委員会委員長代理を起用するなどの人事案を国会に提示した。だが、野党だけでなく、民主党内からも「原子力ムラ」に近いとの反対論が噴出したため、採決を先送りし、通常国会は閉会した。
 原子力規制委員会設置法は、同委の設置期限を今月二十六日と定めている。首相は設置法の付則に盛り込まれた例外規定を適用し、田中氏らを任命することにした。
 政府は臨時国会で事後同意を得たい方針だが、与野党の反発は必至。細野氏会見で、付則には緊急事態の場合は事後同意が必要ないとの内容が盛り込まれていることを念頭に「国会の同意については原子力緊急事態にあるという現状を踏まえ、政府として適切に対応することになろうかと思う」と述べた。
 人事案では、田中氏のほか、中村佳代子・日本アイソトープ協会主査、更田豊志・日本原子力研究開発機構副部門長、島崎邦彦・地震予知連絡会会長、大島賢三・元国連大使を任命する。五氏は十一日、内閣官房参与に任命された。
(引用終わり)
 
 うーん、そこまでやるか・・・というところですが、とりあえず「原子力規制委員会設置法」の該当条文を読んでみましょう。問題は、法7条と附則2条です。
 少し長いですし、弁護士ですら読み解くのが難しいような内容ですが、何とか我慢してお読みください。
 
 
(委員長及び委員の任命)
第七条  委員長及び委員は、人格が高潔であって、原子力利用における安全の確保に関して専門的知識及び経験並びに高い識見を有する者のうちから、両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命する。
 委員長の任免は、天皇が、これを認証する。
 国会の会期中に、原子力災害対策特別措置法(平成十一年法律第百五十六号)第十五条第二項の規定による原子力緊急事態宣言がされている場合その他の特に緊急を要する事情がある場合であり、かつ、委員長及び前条第三項の規定により委員長の職務を代理する委員のいずれもが欠員である場合(以下この項において「緊急任命が必要な場合」という。)において、両議院又はいずれかの議院が緊急任命が必要な場合である旨の文書を添えた第一項の規定による委員長に係る同意の求めがあった日(同項の規定による委員長に係る同意の求めがあった後に緊急任命が必要な場合に該当することとなったときにあっては、その旨の通知を受けた日)から国会又は各議院の休会中の期間を除いて十日以内に当該同意に係る議決をしないとき(他の議院が当該同意をしない旨の議決をしたときを除く。)は、内閣総理大臣は、同項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員長を任命することができる。
 前項の場合において、原子力災害対策特別措置法第十五条第四項の規定による原子力緊急事態解除宣言がされたときその他の特に緊急を要する事情がなくなったときは、その後速やかに両議院の事後の承認を得なければならない。この場合において、両議院の事後の承認の求めがあった国会においてその承認を得られないときは、内閣総理大臣は、直ちにその委員長を罷免しなければならない。
 委員長又は委員につき任期が満了し、又は欠員を生じた場合において、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、第一項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、委員長又は委員を任命することができる。
 第四項の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、第四項中「前項」とあるのは「次項」と、「原子力災害対策特別措置法第十五条第四項の規定による原子力緊急事態解除宣言がされたときその他の特に緊急を要する事情がなくなったときは、その後速やかに」とあるのは「任命後最初の国会において(原子力災害対策特別措置法第十五条第二項の規定による原子力緊急事態宣言されている場合その他の特に緊急を要する事情がある場合であって、その旨の通知が両議院になされたときにおける委員長に係る事後の承認にあっては、当該特に緊急を要する事情がなくなった後速やかに)」と、「委員長」とあるのは「委員長又は委員」と読み替えるものとする。
 次の各号のいずれかに該当する者は、委員長又は委員となることができない。
 破産手続開始の決定を受けて復権を得ない者
 禁錮以上の刑に処せられた者
 原子力に係る製錬、加工、貯蔵、再処理若しくは廃棄の事業を行う者、原子炉を設置する者、外国原子力船を本邦の水域に立ち入らせる者若しくは核原料物質若しくは核燃料物質の使用を行う者又はこれらの者が法人であるときはその役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)若しくはこれらの者の使用人その他の従業者
 前号に掲げる者の団体の役員(いかなる名称によるかを問わず、これと同等以上の職権又は支配力を有する者を含む。)又は使用人その他の従業者
 
附則
(最初の委員長及び委員の任命)
第二条  この法律の施行後最初に任命される委員の任期は、第八条第一項本文の規定にかかわらず、四人のうち、二人は二年、二人は三年とする。
 前項に規定する各委員の任期は、内閣総理大臣が定める。
 この法律の施行の日が国会の会期中である場合であり、かつ、この法律の施行の際原子力災害対策特別措置法第十五条第二項の規定による原子力緊急事態宣言がされている場合において、両議院又はいずれかの議院が原子力緊急事態宣言がされている旨の文書を添えた第七条第一項の規定による同意の求めがあった日(同項の規定による同意の求めがあった後に原子力緊急事態宣言がされたときにあっては、その旨の通知を受けた日)から国会又は各議院の休会中の期
間を除いて十日以内に当該同意に係る議決をしないとき(他の議院が当該同意をしない旨の議決をしたときを除く。)は、内閣総理大臣は、同項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから、この法律の施行後最初に任命される委員長又は委員を任命することができる。
 第七条第四項の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、第七条第四項中「前項」とあるのは「附則第二条第三項」と、「されたときその他の特に緊急を要する事情がなくなったとき」とあるのは「されたとき」と、「委員長」とあるのは「委員長又は委員」と読み替えるものとする。
 この法律の施行後最初に任命される委員長及び委員の任命について、国会の閉会又は衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、内閣総理大臣は、第七条第一項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから委員長及び委員を任命することができる。
 第七条第四項の規定は、前項の場合について準用する。この場合において、第七条第四項中「前項」とあるのは「附則第二条第五項」と、「原子力災害対策特別措置法第十五条第四項の規定による原子力緊急事態解除宣言がされたときその他の特に緊急を要する事情がなくなったときは、その後速やかに」とあるのは「任命後最初の国会において(原子力災害対策特別措置法第十五条第二項の規定による原子力緊急事態宣言がされている場合であって、その旨の通知が両議院になされたときにあっては、同条第四項の規定による原子力緊急事態解除宣言がされた後速やかに)」と、「委員長」とあるのは「委員長又は委員」と読み替えるものとする。 
 
 さて、以上の法律の解釈です。
 本来、規制委員会の委員長及び委員は、法7条1項に基づいて、「両議院の同意を得て、内閣総理大臣が任命」するのが本則なのですが、結局これをせず、国会は閉会してしまいました。
 そうなると、附則2条5項が適用可能となるのです。
  「この法律の施行後最初に任命される委員長及び委員の任命について、国会の閉会又は
  衆議院の解散のために両議院の同意を得ることができないときは、閣総理大臣は、第七
  条第一項の規定にかかわらず、同項に定める資格を有する者のうちから委員長及び委員を
  任命することができる。」
 ほとんど詐欺のようなものですね。
 それよりも問題なのは、附則2条6項です。
 読替規定がややこしいので、読み替えた後の文章にしてみましょう。
  「附則第二条第五項の場合において、任命後最初の国会において(原子力災害対策特
  別措置法第十五条第二項の規定による原子力緊急事態宣言がされている場合であって、
  その旨の通知が両議院になされたときにあっては、同条第四項の規定による原子力緊急事
  態解除宣言がされた後速やかに)議院の事後の承認を得なければならない。この場合に
  おいて、両議院の事後の承認の求めがあった国会においてその承認を得られないときは、内
  閣総理大臣は、直ちにその委員長又は委員を罷免しなければならない。」
 
 「細野豪志原発事故担当相は十一日の記者会見で、秋に予定される臨時国会でも事後同意を求めないこともあり得ると表明」と報じられたその根拠はこれです。
 確かに、「原子力緊急事態解除宣言」がなされない限り、事後承認を求める必要はないように読めます。
 しかし、あの「福島第二原子力発電所」についての原子力緊急事態の解除が宣言されたのでさえ、ようやく昨年12月26日のことだったのです。
 格納容器や原子炉の内部がどうなっているのか、相当長期間にわたって誰にもわからないはずの「福島第一原子力発電所」についての原子力緊急事態が、一体いつ「解除宣言」されるというのでしょうか?
 福島第一原発についての原子力緊急事態宣言は当分解除されないということを前提としてこの法律の規定を読み直してみると、
  ○最初の委員長及び委員の任命→附則2条5項
  ○国会閉会中の委員長・委員の補充→法7条5項
という2つの規定を駆使すれば、たとえ国会で到底同意の得られそうもない委員長・委員候補者であっても、「国会閉会中」でありさえすれば国会の同意なしで総理大臣が任命でき、しかも国会の事後承認は、原子力緊急事態解除宣言の後でよいというのですから、当分、事後承認すら必要ないということになります。
 こういう「悪知恵」を誰が思いついたのか知りませんが、とんでもない欠陥法であることがわかりました(これは「解釈」では対応できないでしょう)。
 こうなれば、原子力規制委員会設置法自体の廃止法案を国会で成立させる立法運動が必要となるかもしれません。
 それを可能とする政治勢力を国会に送り込む必要があります。現状の国会情勢を見ているだけでは絶望的になってきますが・・・。
 しかし、「絶望」ということばは私たちの辞書にあってはならないのです。
 
 ところで、内閣官房ホームページに、何と「原子力規制委員会委員長及び委員候補からのメッセージ」なるものが堂々と掲載されていました(一応「内閣官房参与の就任にあたって」となっていますが)。
 鉄面皮というか、盗っ人猛々しいというか、腹立たしい限りですが、この怒りを力に変えるため、是非皆様にもお読みいただこうと思い、最後にこれを引用することにしました。
 とりあえず、5人の内、特に問題な「田中俊一」「中村佳代子」「更田豊志」の3氏の「メッセージ」を引用します)。
 
(引用開始)
■田中俊一・内閣官房参与
 原子力規制行政への信頼が完全に失墜している中で発足する原子力規制委員会は、国民の厳しい目をしっかりと受け止めながら、規制の強化を行うことが責務です。
 東京電力福島原子力発電所事故への反省を一時も忘れることなく、独立性と透明性を確保し、電力事業者と一線を画した規制を必ず実現させなければなりません。想定外の事故が起こることを常に念頭において、すべての規制について不断の改善を行い、日本の原子力規制を常に世界で最も厳しいレベルのものに維持して参ります。
 放射線による影響の不安と向き合って毎日を過ごしている人がいるということが、私の心から離れることはありません。JCO臨界事故の経験や、これまでに得た知識、私が持ちうるすべてを、原子力の安全を確保するための新たな規制に注ぎこむ決意です。
■中村佳代子・内閣官房参与
 東京電力福島原発事故のようなことは二度と起こしてはなりません。管理することができない、あるいは、信頼することができない科学や技術は使用してはならないと思います。また、原子力や放射線についての知識や情報を国民の一人一人が等しく共有することが大切であると考えます。放射線による影響への不安と向き合っている人に寄り添い、『放射線や原子力が何であるか』をわかり合えるようにするために努力したいと思います。
■更田豊志・内閣官房参与
 原子力規制委員会において自分に課せられた任務は、国内外から得られる最新の知見や技術、リスク情報をもって原子力の諸活動が与える危険を可能な限り正確に把握し、これに的確に対処するための基準や体制の整備を進めることだと認識しています。常に、「どれだけ危険性が把握できたか」という姿勢で規制に臨みたいと思います。
(引用終わり)
 
(参考)
 この人事の問題点を要領よく整理した日本弁護士連合会の「原子力規制委員会委員の人事案の見直しを求める会長声明」(8月3日)を是非ご参照ください。
 
20012年9月11日  和歌山弁護士会の一会員 記す