wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

3/11天皇陛下の「おことば」とマスコミ報道

 「メルマガ金原アーカイブス」として、2012年3月19日に配信したNo.878を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
3/11天皇陛下の「おことば」とマスコミ報道
 
 去る(2012年)3月11日(日)、東京の国立劇場において、政府主催による東日本大震災1周年追悼式が開かれ、天皇・皇后両陛下も参列され、明仁天皇が「おことば」を述べられました。
 宮内庁公式サイトに、その「おことば」が掲載されています。
 
 生中継されたテレビ映像も、動画サイトで視聴することができます。
 
 「おことば」全文を引用します。
(引用開始)
天皇陛下 おことば
東日本大震災1周年追悼式
平成24年3月11日(日)(国立劇場
 東日本大震災から1周年,ここに一同と共に,震災により失われた多くの人々に深く哀悼の意を表します。
 1年前の今日,思いも掛けない巨大地震津波に襲われ,ほぼ2万に及ぶ死者,行方
不明者が生じました。その中には消防団員を始め,危険を顧みず,人々の救助や防災活動に従事して命を落とした多くの人々が含まれていることを忘れることができません。
 さらにこの震災のため原子力発電所の事故が発生したことにより,危険な区域に住む
人々は住み慣れた,そして生活の場としていた地域から離れざるを得なくなりました。再びそこに安全に住むためには放射能の問題を克服しなければならないという困難な問題が起こっています。
 この度の大震災に当たっては,国や地方公共団体の関係者や,多くのボランティアが被
災地へ足を踏み入れ,被災者のために様々な支援活動を行ってきました。このような活動は厳しい避難生活の中で,避難者の心を和ませ,未来へ向かう気持ちを引き立ててきたことと思います。この機会に,被災者や被災地のために働いてきた人々,また,原発事故に対応するべく働いてきた人々の尽力を,深くねぎらいたく思います。
 また,諸外国の救助隊を始め,多くの人々が被災者のため様々に心を尽くしてくれまし
た。外国元首からのお見舞いの中にも,日本の被災者が厳しい状況の中で互いに絆(きずな)を大切にして復興に向かって歩んでいく姿に印象付けられたと記されているものがあります。世界各地の人々から大震災に当たって示された厚情に深く感謝しています。
 被災地の今後の復興の道のりには多くの困難があることと予想されます。国民皆が被
災者に心を寄せ,被災地の状況が改善されていくようたゆみなく努力を続けていくよう期待しています。そしてこの大震災の記憶を忘れることなく,子孫に伝え,防災に対する心掛けを育み,安全な国土を目指して進んでいくことが大切と思います。
 今後,人々が安心して生活できる国土が築かれていくことを一同と共に願い,御霊(み
たま)への追悼の言葉といたします。
(引用終わり)
 
 全文を通読すれば分かるとおり、「おことば」の中には原発事故についての言及が2箇所あります。そして、末尾の「人々が安心して生活できる国土が築かれていくことを一同と共に願い」とある「安心して生活できる国土」とは、地震津波などの自然災害だけを念頭においた表現と解するよりは、原発事故も踏まえた上での「安心して生活できる国土が築かれていくことを」念願するという意だと解する方がはるかに文脈的に自然です。
 
 ところが、この「おことば」をダイジェストして伝えたTVニュースは、原発に関わる部分をカットしていたらしいのです。
 ※ 田中龍作ジャーナル「天皇陛下とローマ法王の脱原発宣言」
 
 実際に、全ての放送局が原発事故に言及された部分をカットして放送したのかどうか、確言はできないのですが、例えば、NHKニュースの例が動画サイトに投稿されていました。
 
 ちなみに、同じ追悼式で野田首相式辞の中で原発事故に言及した部分は、「原発事故との戦いは続いています。福島を必ずや再生させ、美しいふるさとを取り戻すために全力を尽くします。」とある部分ですが、「去年(2011年)の12月に事故は収束したと宣言したのではなかったか?」という揶揄は控えるとしても、どちらが心を打つかなど、比較するのも無意味でしょう。
 
 天皇制についての考え方は人それぞれでしょうが、私個人としては、いかなる政治家よりも憲法尊重擁護義務(日本国憲法99条)を誠実に果たそうとされている「日本国憲法の申し子」(関西学院大学豊下楢彦教授の評言)と言うべき明仁天皇は高く評価しています。
 もっとも、将来、代替わりしても同じ気持ちが続くかどうかは別問題ですが。
 
 明確に「反原発」「脱原発」に踏み切れない国民に対してどのように働きかけるかということを考えた場合、天皇陛下の「おことば」も、田中龍作さんが書かれているように、有力な武器の1つとなし得るのではないかと思い、ご紹介しました。