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警戒せよ!自民党「国家安全保障基本法案」

 9月26日に投開票される自由民主党総裁選挙の1回目投票では、おそらく石破茂政調会長(元防衛相)がトップとなるのではないかと報道されています。

 最終的に同氏が自民党総裁になるのかどうか、今の段階では分かりませんが、我が国の将来の方向性に重大な影響を及ぼす事態が進行中であるということに、多くの人の注意を喚起したいと思います。

 そこで、去る7月6日に配信した「メルマガ金原No.1014/警戒せよ!自民党『国家安全保障基本法案』」を再録することとします。

 

 警戒せよ!自民党「国家安全保障基本法案」
 
 本日(7月6日)は、恒例の首相官邸前抗議行動が行われる金曜日ですが、見過ごすことのできない報道がありましたので、これを取り上げたいと思います。
 
日本経済新聞WEB版 2012年7月6日(金)19:25
集団的自衛権の行使可能に 自民、安保基本法案を提出へ
(引用開始)
 自民党は6日の総務会で、憲法改正によらず集団的自衛権の行使を可能とすることを柱とした「国家安全保障基本法案」を了承した。次期衆院選のマニフェスト(政権公約)に同法案の早期制定を盛り込み、選挙後の国会に法案を提出する方針だ。
集団的自衛権は同盟国などへ武力攻撃があった場合、自国が直接攻撃を受けていなくても攻撃を実力で阻止する権利。
 法案では「国連憲章に定められた自衛権の行使については、必要最小限度とする」と明記。「必要最小限度」は個別的自衛権だけでなく集団的自衛権も含むとの立場をとり、歴代政権が現行憲法上認められないと解釈してきた集団的自衛権を容認する。
 法案化を主導した石破茂元防衛相は記者会見で「憲法9条集団的自衛権行使できないことはない。政策判断でやってきた」と述べ、改憲しなくても同法案が成立すれば集団的自衛権の行使はできるようになるとの考えを強調した。
(引用終わり)
 
 自民党政務調査会調査役・田村重信氏のブログに、「国家安全保障基本法案(概要)」が掲載されていました。
 法案(概要)の全てが問題ですが、とりわけ、集団的自衛権の行使を明文で認め10条、多国籍軍への参加に道をひらく11条、武器輸出を公然と認める12条に目しながらお読みください。
 
たむたむの自民党vs民主党田村重信) 2012年07月06日
自民党・国家安全保障基本法案(概要)が総務会で了承される
(引用開始)
 今日、自民党の総務会で「国家安全保障基本法案(概要)」が了解されました。
 これは、石破茂安全保障調査会長が中心で作成したもの。
 今後は、政権公約に明記され、選挙の結果、政権・与党になった場合に、法案化
れることになります。
 
           国家安全保障基本法案 (概要)
 
第1条 (本法の目的)
 本法は、我が国の安全保障に関し、その政策の基本となる事項を定め、国及び地
公共団体の責務と施策とを明らかにすることにより、安全保障政策を総合的に推進し、もって我が国の独立と平和を守り、国の安全を保ち、国際社会の平和と安定を図ることをその目的とする。

第2条 (安全保障の目的、基本方針)
 安全保障の目的は、外部からの軍事的または非軍事的手段による直接または間
の侵害その他のあらゆる脅威に対し、防衛、外交、経済その他の諸施策を総合して、これを未然に防止しまたは排除することにより、自由と民主主義を基調とする我が国の独立と平和を守り、国益を確保することにある。
2 前項の目的を達成するため、次に掲げる事項を基本方針とする。
一 国際協調を図り、国際連合憲章の目的の達成のため、我が国として積極的に
寄与すること。
二 政府は、内政を安定させ、安全保障基盤の確立に努めること。
三 政府は、実効性の高い統合的な防衛力を効率的に整備するとともに、統合運
用を基本とする柔軟かつ即応性の高い運用に努めること。
四 国際連合憲章に定められた自衛権の行使については、必要最小限度とするこ
と。

第3条 (国及び地方公共団体の責務)
 国は、第2条に定める基本方針に則り、安全保障に関する施策を総合的に策定
し実施する責務を負う。
2 国は、教育、科学技術、建設、運輸、通信その他内政の各分野において、安
全保障上必要な配慮を払わなければならない。
3 国は、我が国の平和と安全を確保する上で必要な秘密が適切に保護されるよ
う、法律上・制度上必要な措置を講ずる。
4 地方公共団体は、国及び他の地方公共団体その他の機関と相互に協力し、安
全保障に関する施策に関し、必要な措置を実施する責務を負う。
5 国及び地方公共団体は、本法の目的の達成のため、政治・経済及び社会の発
展を図るべく、必要な内政の諸施策を講じなければならない。
6 国及び地方公共団体は、広報活動を通じ、安全保障に関する国民の理解を深
めるため、適切な施策を講じる。

第4条 (国民の責務)
 国民は、国の安全保障施策に協力し、我が国の安全保障の確保に寄与し、もっ
て平和で安定した国際社会の実現に努めるものとする。

第5条 (法制上の措置等)
 政府は、本法に定める施策を総合的に実施するために必要な法制上及び財政上
の措置を講じなければならない。

第6条 (安全保障基本計画)
 政府は、安全保障に関する施策の総合的かつ計画的な推進を図るため、国の安
全保障に関する基本的な計画(以下「安全保障基本計画」という。)を定めなければならない。
2 安全保障基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 我が国の安全保障に関する総合的かつ長期的な施策の大綱
二 前号に掲げるもののほか、安全保障に関する施策を総合的かつ計画的に推進
するために必要な事項
3 内閣総理大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、遅滞なく、安全
保障基本計画を公表しなければならない。
4 前項の規定は、安全保障基本計画の変更について準用する。
 
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 別途、安全保障会議設置法改正によって、
安全保障会議が安全保障基本計画の案を作成し、閣議決定を求めるべきこと
安全保障会議が、防衛、外交、経済その他の諸施策を総合するため、各省の施策
を調整する役割を担うことを規定。
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第7条 (国会に対する報告)
 政府は、毎年国会に対し、我が国をとりまく安全保障環境の現状及び我が国が安
全保障に関して講じた施策の概況、ならびに今後の防衛計画に関する報告を提出しなければならない。

第8条 (自衛隊)
 外部からの軍事的手段による直接または間接の侵害その他の脅威に対し我が国を
防衛するため、陸上・海上・航空自衛隊を保有する。
2 自衛隊は、国際の法規及び確立された国際慣例に則り、厳格な文民統制の下
に行動する。
3 自衛隊は、第一項に規定するもののほか、必要に応じ公共の秩序の維持に当た
るとともに、同項の任務の遂行に支障を生じない限度において、別に法律で定めるところにより自衛隊が実施することとされる任務を行う。
4 自衛隊に対する文民統制を確保するため、次の事項を定める。
一 自衛隊の最高指揮官たる内閣総理大臣、及び防衛大臣は国民から選ばれた
文民とすること。
二 その他自衛隊の行動等に対する国会の関与につき別に法律で定めること。

第9条 (国際の平和と安定の確保)
 政府は、国際社会の政治的・社会的安定及び経済的発展を図り、もって平和で
安定した国際環境を確保するため、以下の施策を推進する。
一 国際協調を図り、国際の平和及び安全の維持に係る国際社会の取組に我が
国として主体的かつ積極的に寄与すること。
二 締結した条約を誠実に遵守し、関連する国内法を整備し、地域及び世界の平
和と安定のための信頼醸成に努めること。
三 開発途上国の安定と発展を図るため、開発援助を推進すること。なおこの実施
に当たっては、援助対象国の軍事支出、兵器拡散等の動向に十分配慮すること。
四 国際社会の安定を保ちつつ、世界全体の核兵器を含む軍備の縮小に向け努
力し、適切な軍備管理のため積極的に活動すること。
五 我が国と諸国との安全保障対話、防衛協力・防衛交流等を積極的に推進す
ること。

第10条 (国際連合憲章に定められた自衛権の行使)
 第2条第2項第4号の基本方針に基づき、我が国が自衛権を行使する場合には、
以下の事項を遵守しなければならない。
一 我が国、あるいは我が国と密接な関係にある他国に対する、外部からの武力攻
撃が発生した事態であること。
二 自衛権行使に当たって採った措置を、直ちに国際連合安全保障理事会に報告
すること。
三 この措置は、国際連合安全保障理事会が国際の平和及び安全の維持に必要
な措置が講じられたときに終了すること。
四 一号に定める「我が国と密接な関係にある他国」に対する武力攻撃については、
その国に対する攻撃が我が国に対する攻撃とみなしうるに足る関係性があること。
五 一号に定める「我が国と密接な関係にある他国」に対する武力攻撃については、
当該被害国から我が国の支援についての要請があること。
六 自衛権行使は、我が国の安全を守るため必要やむを得ない限度とし、かつ当該
武力攻撃との均衡を失しないこと。
2 前項の権利の行使は、国会の適切な関与等、厳格な文民統制のもとに行われ
ければならない。

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 別途、武力攻撃事態法と対になるような「集団自衛事態法」(仮称)、及び自衛
隊法における「集団自衛出動」(仮称)的任務規定、武器使用権限に関する規定が必要。
 当該下位法において、集団的自衛権行使については原則として事前の国会承認
を必要とする旨を規定。
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第11条 (国際連合憲章上定められた安全保障措置等への参加)
 我が国が国際連合憲章上定められ、又は国際連合安全保障理事会で決議さ
た等の、各種の安全保障措置等に参加する場合には、以下の事項に留意しなばならない。
一 当該安全保障措置等の目的が我が国の防衛、外交、経済その他の諸政策
と合致すること。
二 予め当該安全保障措置等の実施主体との十分な調整、派遣する国及び地
域の情勢についての十分な情報収集等を行い、我が国が実施する措置の目的・任務を明確にすること。

 本条の下位法として国際平和協力法案(いわゆる一般法)を予定。

第12条 (武器の輸出入等)
 国は、我が国及び国際社会の平和と安全を確保するとの観点から、防衛に資す
る産業基盤の保持及び育成につき配慮する。
2 武器及びその技術等の輸出入は、我が国及び国際社会の平和と安全を確保
するとの目的に資するよう行われなければならない。特に武器及びその技術等の輸出に当たっては、国は、国際紛争等を助長することのないよう十分に配慮しなければならない。
(引用終わり)
 
 この法案策定の主導的役割を担った石破茂氏(元防衛大臣)は、自民党政調会長を退任する直前の昨年8月、テレビ朝日のインタビューに応じ、核抑止力のために原発は全廃すべきではないと公言した政治家であったことをまざまざと思い出しました(メルマガ金原No.514参照)。
 そのインタビューの文字起こしから抜粋して引用します。
(抜粋引用開始)
 原子力発電というのがそもそも、原子力潜水艦から始まったものですのでね。日本以外のすべての国は、原子力政策というのは核政策とセットなわけですね。ですけも、日本は核を持つべきだと私は思っておりません。しかし同時に、日本は(核を)作ろうと思えばいつでも作れる。1年以内に作れると。それはひとつの抑止力ではあるのでしょう。それを本当に放棄していいですかということは、それこそもっと突き詰めた議論が必要だと思うし、私は放棄すべきだとは思わない。
(引用終わり)
 
 今回の「国家安全保障基本法案」の自民党・政策会議への提出にあたって、石破氏が自身のブログに書いた文章も読んでおきましょう。
 
石破茂オフィシャル・ブログ 2012年5月25日(金)
(抜粋引用開始)
 集団的自衛権の行使を可能とする国家安全保障基本法がようやく自民党の政会議において近々審議される運びとなりました。
 「集団的自衛権の行使は可能とするべきだが、そのためには解釈の変更・基本法
の制定によるのではなく、あくまで憲法の明文改正が必要だ」とする立場も一部に根強く、党議決定までにはまだ道のりは遠いと言わざるを得ません。
 しかし、現行憲法においても論理的に行使不可能が導き出されるわけではなく、わ
が国の周辺情勢の変化からこれを認めることは喫緊の課題でありますし、日本が真の独立主権国家となるために何としても必要なことと信じておりますので、いかなる困難があっても実現したいと願っています。
(引用終わり)
 
 原発再稼働、消費税増税、オスプレイ配備に反対する沖縄の民意を完全無視など民主党政権にはほとほと愛想をつかした人が多いと思いますが、とはいえ、自党はこれですからね。
 石破氏が「党議決定までにはまだ道のりは遠いと言わざるを得ません」と書いてからまだ1か月半も経っていないというのに、総務会での承認まで来てしまいました。
 もはや政党の体をなしていない民主党はもとより、かつては「穏健な保守主義」という「重し」が曲がりなりにも存在していた自民党も、もはやそのような存在はほぼ滅し、タガが外れてしまっていると言わざるを得ません。
 つくづく、小選挙区制というのはとんでもない選挙制度だという思いがしきりですが、総選挙が近づく今の状況では、そんなことも言っていられません。
 少しでも「民の声」に近い候補者・政党に票を集めるしかないでしょうし、周囲の人により賢明な投票行動をとってもらえるよう、重要と思われる情報を伝える努力を怠らないことが必要です。
 この「国家安全保障基本法案」の危険性も、特に重大な問題の1つだと思い、ご紹介することとしました。
 
(必読文献)
集団的自衛権とは何か』(岩波新書) 豊下楢彦(関西学院大学教授)著
集団的自衛権とは何か (岩波新書)