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村上春樹氏『魂の往き来する道筋』(9/28朝日新聞)

 今晩(9月28日) 配信したばかりの「メルマガ金原No.1120」を転載します。

 

村上春樹氏『魂の往き来する道筋』(9/28朝日新聞)
 
 今日(9月28日)の朝日新聞(朝刊)を手に取られた方は、作家の村上春樹氏の特寄稿『魂の往き来する道筋』を読まれたことと思います。
 
(抜粋引用開始)
 このような好ましい状況(金原注:様々な文化交流の深化など)を出現させるために、長い歳月にわたり多くの人々が心血を注いできた。僕も一人の当事者として、微力ではあるがそれなりに努力を続けてきたし、このような安定した交流が持続すれば、我々と東アジア近隣諸国との間に存在するいくつかの懸案も、時間はかかるかもしれないが、徐々に解決に向かって行くに違いないと期待を抱いていた。文化の交換は「我々はたとえ話す言葉が違っても、基本的には感情や感動を共有しあえる人間同士なのだ」という認識をもたらすことをひとつの重要な目的にしている。それはいわば、国境を越えて魂が行き来する道筋なのだ。
 今回の尖閣諸島問題や、あるいは竹島問題が、そのような地道な達成を大きく破壊してしまうことを、一人のアジアの作家として、また一人の日本人として、僕は恐れる。
(引用終わり)
 
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 村上さんの記事はこちらのページから。
 
 村上さんは、領土問題の本質について、以下のような意見を述べておられます。
 
(抜粋引用開始)
 領土問題が実務課題であることを超えて、「国民感情」の領域に踏み込んでくると、それは往々にして出口のない、危険な状況を出現させることになる。それは安酒の酔いに似ている。安酒はほんの数杯で人を酔っ払わせ、頭に血を上らせる。人々の声大きくなり、その行動は粗暴になる。論理は単純化され、自己反復的になる。しかし賑(にぎ)やかに騒いだあと、夜が明けてみれば、あとに残るのはいやな頭痛だけだ。
 そのような安酒を気前よく振る舞い、騒ぎを煽(あお)るタイプの政治家や論客に対して、我々は注意深くならなくてはならない。一九三〇年代にアドルフ・ヒトラーが政権の基礎を固めたのも、第一次大戦によって失われた領土の回復を一貫してその策の根幹に置いたからだった。それがどのような結果をもたらしたか、我々は知っている。
(引用終わり)
 
 2009年2月15日のエルサレム賞受賞スピーチ、2011年6月9日のカタルーニャ賞受スピーチ『非現実的な夢想家として』に続く、村上春樹さんの非常に重要な発言だと思います。
 是非お読みいただければと思います。