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松崎道幸医師の「意見書」を読んで

 「ふくしま集団疎開裁判」の抗告審(仙台高等裁判所)に、5月20日付で抗告人側から提出された松崎道幸医師作成の「意見書」に、非常に重要な内容が論述されていることを知人の山崎知行医師から教えていただき、それをきっかけとして書いたものです(「メルマガ金原No.1088」として2012年9月2日に配信)。

 

松崎道幸医師の「意見書」を読んで
 
 和歌山県岩出市の医師・山崎知行さんから教えていただいた「意見書」を一読しました。
 作成されたのは、北海道深川市立総合病院内科部長(医学博士)の松崎道幸(まつざきみちゆき)さんです。
 「意見書」の副題は「今、福島のこども達に何が起きているか?-甲状腺障害、呼吸機能、骨髄機能をチェルノブイリ事故等の結果から考察する-」というもので、いわゆる「ふくしま集団疎開裁判」第二審(抗告審)・仙台高等裁判所に対し、抗告人郡山市の子どもたちとその保護者)側から書証(甲第131号証)として提出されたものです。
 抗告申立後、最初のまとまった書証の提出だと思いますが、5月20日付の「証拠説明書」が公式サイトに掲載されており、提出書証にリンクが貼られているものもありますので、非常に有用です。
  
抗告人「証拠説明書」(2012年5月20日)
 
松崎道幸医師「意見書」(甲第131号証)
 別紙1(福島の子どもの甲状腺検診調査結果(本年4月26日発表分))
 別紙2(山下俊一氏らによる長崎県のこども(7~14才)250人の甲状腺調査結果
 (2000年・英語))
 別紙3(主に米国人を対象にした甲状腺検査結果(1993年・英語))
 
 松崎医師の「意見書」は、内外の論文を引用した上で、「甲状腺障害」についての「小括」で次のようにまとめられています。
(引用開始)
1. 内外の甲状腺超音波検査成績をまとめると、10才前後の小児に「のう胞」が発見される割合は、0.5~1%前後である。
2. 福島県の小児(平均年齢10 歳前後)の35%にのう胞が発見されていることは、これ
らの地域の小児の甲状腺が望ましくない環境影響を受けているおそれを強く示す。
3. 以上の情報の分析および追跡調査の完了を待っていては、これらの地域の小児に
不可逆的な健康被害がもたらされる懸念を強く持つ。
4. したがって、福島の中通、浜通りに在住する幼小児について、避難および検診間隔
の短期化等、予防的対策の速やかな実施が強く望まれる。
5. 以上の所見に基づくならば、山下俊一氏が、全国の甲状腺専門医に、心配した親
子がセカンドオピニオンを求めに来ても応じないように、文書を出していることは、被ばく者と患者に対する人権蹂躙ともいうべき抑圧的なやり方と判断せざるを得ない。
(引用終わり)
 
 上記の「小括」で言及されている「福島県の小児の35%にのう胞が発見されている」というのは、福島県が18歳以下の県民に行っている甲状腺検査の第2回目の結果が今年の4月26日に発表(主として警戒区域等となった13市町村の住民が対象)され、35.1%の子どもに「のう胞」が見つかったことを指します。
 
県民健康管理調査「甲状腺検査」の実施状況について(甲第130号証)
 
 また、「山下俊一氏が、全国の甲状腺専門医に、心配した親子がセカンドオピニオンを求めに来ても応じないように」とした文書も証拠として提出されています。
 
「日本甲状腺学会会員の皆さまへ」と題した文書(甲第146号証) 
(抜粋引用開始)
(前略)
 さて、一次の超音波検査で、二次検査が必要なものは5.1㎜以上の結節(しこり)と20.1㎜以上の嚢胞(充実性部分を含まない、コロイドなどの液体の貯留のみのもの)としております。したがって、異常所見を認めなかった方だけでなく、5㎜以下の結節や20㎜以下の嚢胞を有する所見者は、細胞診などの精査や治療の対象とならないものと判定しています。先生方にも、この結果に対して、保護者の皆様から問い合わせやご相談が少なからずあろうかと存じます。どうか、次回の検査を受けるまでの間に自覚症状等が出現しない限り、追加検査は必要がないことをご理解いただき、十分にご説明いただきたく存じます。
 なお、本検査は20歳に至るまでは、2年ごとに、その後は5年ごとの節目検査として長きにわたる甲状腺検査事業となり、全国拠点病院との連携が不可欠であり、今後広く県民へも周知広報される予定です。
 今後とも本検査へのご理解、ご協力をよろしくお願い申し上げます。
                                   平成24年1月16日
  福島県立医科大学 放射線医学県民健康管理センター長    山下俊一
    同    上      臨床部門副部門長(甲状腺検査担当)   鈴木眞一
(引用終わり)
 
 この「セカンドオピニオン拒否」「再検査拒否」の指令と受け取られかねない文書対して、「市民と科学者の内部被曝問題研究会」が、山下俊一氏、福島県知事、厚生労働大臣宛に、「甲状腺検査の他施設での検査拒否を依頼する検査体制に強く抗議し早期発見・早期治療の体制を要請します」という文書を送っいます(8月9日付)。
 
福島県立医科大学放射線医学県民健康管理センター長 山下俊一氏宛
福島県知事 佐藤雄平氏宛

 

 また、8月26日付の毎日新聞に、この問題に関連する注目すべき記事が掲載されていました。

 

毎日新聞WEB版 2012年8月26日
「甲状腺検査:福島県外の子供と比較 内閣府方針」 

 

 私たち夫婦には子どもがなく、ずっと和歌山市に住んでいるのですが、もしも私たちが福島県に住んでおり、子どもの甲状腺検査の結果がA2判定(5.0㎜以下の結節や20.0㎜以下の嚢胞を認めたもの)であり、次の検査は2年後です、と通知されたとしたら、一体どうするだろう?と考えます。
 福島県立医大以外の大きな病院で再検査を受けさせたい、子どものために親として出来ることは何かないのか?、さらに詳しく専門医の意見を聞きたい、と思うのではないでしょうか。

 そう考えて診察を申し込んだ病院から、検査してもらえないという対応をされたとしたら・・・考えただけで胸が苦しくなってきます。

 

 以上は、福島に実際には住んでいない者の“仮定の想像"に過ぎないのですが、私が時々閲覧する福島市で果樹園を営んでおられる方のブログ「福島未来塾・すばる」に、最近、こういう記事が掲載されていたのが目にとまりました。昨年春に高校を卒業されたということですから、現在、大学か専門学校の1年生でしょうか、その息子さんが甲状腺検査を受けた上での想いを、息子さん自身が綴っておられます。

 彼が向き合っている“現実”の重みを前に、私はここでも立ち竦んでしまいそうです。

 

8/30息子の甲状腺検査に行って来ました

 http://blogs.yahoo.co.jp/fukushima_apple/9356271.html