「メルマガ金原」アーカイブス・シリーズです。2012年4月28日に配信したNo.923「議員に『表現の自由』はないのか?(真鶴町議会の議員辞職勧告決議をめぐって)」です。
前日の4月27日、神奈川県真鶴町議会が、ごみ焼却灰の県外搬出について「放射能の拡散につながる」として反対である旨 twitter で発言した村田知章議員に対して辞職勧告決議を行ったということを知り、急遽、決議に至る経緯をネットで調べられるだけ調べてメルマガに書いたものです。
既に半年近く前のことですが、あらゆる局面で「憲法的価値」をないがしろにする風潮が目に余る現在、決して忘れてはならない「事件」であると思い、ブログに転載することにしました。
なお、村田議員は、勧告にもめげず、現在もしっかりと真鶴町議会議員を務めておられます。
http://www.town-manazuru.jp/giin_meibo.html
ただ、問題となった twitter をはじめブログなども現在は更新されていないようで、情報発信はもっぱら Facebook を利用されているようです。
http://www.facebook.com/tomoaki.murata
(付記) 以下に引用している神奈川新聞の記事については、現在でも公式サイトに全文掲載されていますので、そのまま引用させていただきました。ただ、村田議員の問題の tweet については、もしかすると現在では削除されているかもしれませんが、その内容が分からなければ、論旨をご理解いただけないと思いますので、引用させていただいたことをお断りします。
埋め立てを中止しているのは、湯河原町真鶴町衛生組合が運営する「湯河原美化センター」の最終処分場。
12年度末に満杯となる見通しのため、かさ上げによる7年間の延命化に向けた環境影響調査を昨年7月に開始。直下の地下水から同12月、摂取すると腎機能障害などを引き起こすカドミウムが国の環境基準値(1リットル当たり0・003ミリグラム以下)を超えているとの結果が出た。
センターは両町の中心部から離れた山中にあるため周辺に住宅はなく、生活用水などへの影響もないとみている。
ただ、付近の井戸水はカドミウムが不検出だったことから、衛生組合は「もともと土壌に含まれているのではなく、周囲に有害物質が染み出るのを防ぐ処分場のゴムシートが破損し、地下に漏れた以外に考えられない」と原因を分析。12月中旬に埋め立てを中止して以降、1日約8トン発生する焼却灰や不燃物を特殊な袋に入れて敷地内に置く形でしのいでいる。
受け入れ可能な民間の最終処分場を探し、処分委託する方向で対策を検討しているが、衛生組合の試算では、焼却灰を運び出す際の運搬費を含む委託コストは1トン5万円前後に上り、年間では約1億円の負担増となる。また、「東日本大震災で発生したがれきや廃棄物処理が大きな課題となっている現状では、そもそも受け入れ先の確保が難しい」とみられるだけに、担当者は頭を抱えている。
両町とも財政事情が厳しく、処分場の新設は今のところ視野に入っていない。昨年末に開かれた湯河原町議会常任委員会で、衛生組合組合長の冨田幸宏・湯河原町長は「まず毎日出るごみの処分を進めなければならず、処分場の新設を話し合う段階ではない」と答弁し、解決には時間がかかるとの見通しを示した。今月17日には衛生組合の臨時議会が開かれ、この問題が報告される。
◆湯河原美化センター
湯河原町(人口約2万7千人)、真鶴町(同約8千人)で発生した一般廃棄物を処理。両町による衛生組合が1977年から運営し、運び込まれたごみを焼却処分する中間処理施設と、焼却灰を埋め立てる最終処分場がある。処分場の容量は6万6千立方メートル、年間二千数百トンを埋め立てている。
(引用終わり)
組合によると、焼却灰と一部の不燃物については、1月中旬に奈良県内の業者と処分委託契約を締結。運搬は藤沢市内の業者が請け負い、大型トラックで週3回搬出している。焼却灰などは1日約8トン発生するため、衛生組合が一時保管しているが、今月中にもなくなる見込みという。
瓶やガラス、陶器は土木資材などに再資源化するため、2月初旬に千葉県内の業者と契約を結び、3月中旬から運び出す。委託費用として、同組合は11年度補正予算で約2200万円、12年度予算で約9200万円を計上した。
同処分場では、地下水から基準を上回るカドミウムが検出されたことが発覚し、昨年12月中旬に埋め立てを中止した。汚染原因は現在も調査中という。
(引用終わり)
両町の家庭ごみを焼却している湯河原町真鶴町衛生組合などによると、2月に実施した焼却灰の検査で、1キログラム当たり144~490ベクレルの放射性セシウムが検出された。国の基準値(8千ベクレル)は下回っていたものの、外部からの指摘で検査結果を知った処理業者が今月7日、衛生組合に受け入れを中止する意向を伝えた。処理業者は「放射性物質の影響は未知数。地元に不安の声もあるので迷惑は掛けられない」と説明。御所市などにも、受け入れ反対を訴える声が相次いで寄せられたという。
衛生組合の最終処分場(湯河原町吉浜)では昨年12月、カドミウムによる地下水汚染が発覚。埋め立てを中止するとともに、新たな処分先として今年1月末から奈良の処理業者に焼却灰の埋め立てを委託、これまでに約320トンを運び出していた。
組合担当者は「残念な結果だが、新たに受け入れ先を探すしかない」と対応に苦慮。1日約8トン発生する焼却灰は大型の袋に入れ、敷地内に仮置きしている。環境省廃棄物対策課は「不安の声が上がるのは分かるが、科学的には問題がない数値。安全性を周知していくしかない」としている。
(引用終わり)
県外搬出は地下水汚染発覚後の1月から始まり、両町の衛生組合は奈良県の民間処分場に焼却灰の埋め立てを委託。これについて村田町議は3月3日、「関東の焼却灰は関西に比べ放射能汚染度が高い。奈良県の業者への委託は放射能の拡散につながるので、私は反対である。少なくとも県内で処理すべき」などと書き込んだ。
関係者によると、その前後から焼却灰の受け入れを疑問視する別の書き込みや抗議が相次ぎ、民間処分場は同7日に受け入れを中止。組合は別の搬出先を探す必要に迫られ、「現在は町外に一時保管している」という。組合が2月に行った焼却灰の検査では1キログラム当たり144~490ベクレルの放射性セシウムが検出されたものの、国の基準値(8千ベクレル)は下回っていた。
こうした経緯や状況は衛生組合にも報告され、村田町議からの聞き取りも行ったが、道義的責任を問う声が一部で上がり、今月24日に開かれた真鶴町議会の議会運営委員会などで、辞職勧告決議案を提出することが報告された。
発議したのは、青木嚴、青木繁の両町議で「書き込んだ内容は法的には問題ないが、町議員として騒動の一因をつくった社会的、道義的責任がある」(青木嚴町議)などと理由を説明している。
村田町議は神奈川新聞社の取材に対し、「考え方は今も変わらない。(今回の件に伴う)両町の関係悪化は避けたいが、辞職勧告は表現の自由を侵害しかねないもの」などと話している。
決議では、村田町議の書き込みについて「配信後の影響を考慮しない行為。住民生活に必要不可欠な処分場の検討をせず、安易に緊急避難的な措置を否定した」と指摘。「社会的、道義的責任を回避するものではない」などとして、速やかな辞職を勧告した。
採決は、村田町議と神野秀子議長、退席した1人を除く9人で行われ、7人が賛成、2人が反対した。質疑や討論はなかった。
勧告を受け、村田町議は「再三申し入れた議会での弁明の機会が与えられず、残念。決議内容は表現の自由を侵害しかねず、憲法違反の可能性がある。今後の対応については、弁護士と相談したい」と語った。
焼却灰の県外搬出は、処分場地下水から基準値を超えるカドミウムが検出されたのが原因。1月に奈良県の民間業者に埋め立てを委託したが、書き込み後の3月7日、放射能への懸念から受け入れを拒否され、現在は町外で一時保管しているという。
(引用終わり)
議員辞職勧告された経緯は、4月25日の神奈川新聞の記事を参照いただければ幸いです。
■神奈川新聞(4月25日)「ツイッターに「放射能が拡散」、真鶴町議が焼却灰の県外搬出で/神奈川」
http://headlines.yahoo.co.jp/hl?a=20120425-00000010-kana-l14
再三の申し入れにも関わらず弁明の機会を与えられませんでした。
残念なことです。
多くの方から応援のメッセージをいただき、とても励みとなりました。
引き続き、この問題に対して誠意をもって対応して行きたいと思っております。
どうぞよろしくお願いいたします。
ツイッターでの発信は、今回の件で厳重注意という処罰と合わせて当面の間の自粛処分を受けており、当面の間は休止させていただいております。
ブログでの発信は、自粛処分の対象ではありません。
今回は、弁明のために緊急を要するものと判断し、ブログでの発信を行います。
私の弁明を下記に掲載いたします。
真鶴町議会議員 村田知章
弁明に先立ち、ツイッターでの発言をした背景を説明させていただきます。
真鶴町は、3.11に伴う福島第一原発事故の影響による放射能汚染対策において、全国に先駆けて先進的な施策を行ってきた町です。
早い段階から放射線簡易測定器の導入や貸出しを行ったり、小学校の給食の放射線測定を自治体独自に行ったり、日々幼稚園・小学校・中学校施設での放射線測定を行ったりと、真鶴住民の健康や命を守る町の姿勢にわたくしは大変誇りを感じておりました。
そんななか、 3月2日の神奈川新聞の記事で、湯河原町真鶴町衛生組合の焼却灰が、奈良県の民間業者に搬出されているという事実を知りました。また、湯河原町真鶴町の両町のホームページに、湯河原町真鶴町の焼却灰から、飛灰で642~1516ベクレル、主灰で165~257ベクレルであるという測定結果が公表されています。当該の焼却灰は最大490ベクレルです。
これは国の定める放射性物質汚染対処特別措置法の基準である8000ベクレルよりははるかに低いものの、一般ゴミとして処理することができるとされる国のクリアランスレベルの100ベクレルをはるかに超えるものです。
確かに私は、真鶴町の住民代表として、真鶴町のみなさんの健康と安全をどの自治体の住民よりも優先的に配慮する使命があります。
しかし、今全国各地で起きている放射性物質で汚染された焼却灰受け入れに反対する住民感情を考えたとき、この事実を黙認することが、将来的に奈良県民から真鶴町民に対する恨みをかうだけでなく、奈良県住民、特に焼却灰の持ち込みによる土壌汚染を心配する奈良県の農家の方たちからの真鶴町に対する、損害賠償請求の危険も生じることもありうるのではないかと危惧しました。
そこで、こうした将来起こりうるかもしれない事態を懸念し、ツイッターという場を借りて自らの議員としての一意見を述べさせていただきました。
次に、辞職勧告決議文に対して、私の弁明を述べさせていただきます。(太字は決議文の一部です)
「カナロコの掲載記事直後の発信であり、関東の焼却灰という発言が、あたかも湯河原町真鶴町衛生組合の焼却灰と誤認されたことにより、大きな影響を受けた。これは、配信後の影響を考慮しない行為であった。」についてですが、湯河原町真鶴町の焼却灰も、関東の焼却灰であり、「誤認」という言葉の意味が理解しかねます。
また、「大きな影響」についてですが、この大きな影響というのが「奈良県業者からの焼却灰受け入れ拒否」ということをさすのでしたら、奈良県業者がそもそも私のツイッター発言だけで受け入れを拒否した場合にのみ、この表現は成立すると思います。
しかし焼却灰受け入れを奈良県民が知ったきっかけは、そもそも神奈川新聞で公になっていた事実からです。
「配信後の影響を考慮しない行為」については、反対に私としては、将来的に奈良県民から真鶴町が恨みをかう危険性、さらには半永久的土壌汚染をもたらしたという理由で損害賠償請求を受ける危険性があることを危惧し、そのことを事前に防止したいと行った発言行為であり、軽率な発言というよりも、むしろ事後の将来にわたる影響を十分に考慮した上でのものであります。
また、私の発言は「関東の焼却灰は関西に比べ放射能汚染度が高い」と一般論を述べているもので、虚言には当たらないものと考えます。
「議員として、住民生活に必要不可欠な処分場の検討をせず、安易に緊急避難的な措置を否定した。」についてですが、たしかに、議会や委員会では自らの発言が、実際の町政の方向性にただちに影響を与えるもので、その表現内容や表現方法については一般人よりも表現の自由にある程度の制限が生じうることも理解しています。しかし憲法21条で保障された表現の自由の場の提供というツイッターの社会的性質からは、その表現方法や表現内容については、守秘義務に逸脱するなどの場合をのぞき、公人にも個人と同様、表現内容や表現方法は発言者の自由にゆだねられるものであるという認識です。それに対する制限を加えることにつながるツイッター発言に基づく辞任勧告決議案提出行為そのものが、表現の自由の侵害という重大な憲法違反行為と考えます。
公人としての議員にも、ツイッターの場での表現の自由が保障されることは、住民の知る権利に資するものだと思っております。
私はこの奈良県への焼却灰搬出を黙認することこそ、真鶴町住民を代表する真鶴町議員としての責務を果たしていないものと考えました。
以上をかんがみまして、議員の皆様に今回の辞任勧告決議の再考をお願いしたい所存です。
以上
(引用終わり)