10/31「原子力災害対策指針」決定(原子力規制委員会)
今晩(10月31日)配信した「メルマガ金原No.1154」を転載します。
10/31「原子力災害対策指針」決定(原子力規制委員会)
中日新聞 Web版 2012年10月31日 10時38分
(抜粋引用開始)
原子力災害対策指針まとまる
原子力規制委員会(田中俊一委員長)は31日午前、原発の重大事故に備えた自治体の防災計画の基準となる「原子力災害対策指針」を決めた。重点的に防災対策を進める区域を、原発の半径8~10キロ圏から30キロ圏に拡大するのが柱。対象の自治体は指針に基づき来年3月末までに防災計画をつくるが、指針には検討中の項目が多く、難航も予想される。(中略)
原発から半径5キロ圏は原子炉冷却水の喪失やメルトダウン(炉心溶融)などの重大事故発生で直ちに避難する予防的防護区域(PAZ)とし、その外側の30キロ圏の緊急時防護区域(UPZ)は放射線量のモニタリング体制など対策を進め、線量に応じて避難や屋内退避をする。5~30キロ圏には、放射線防護や食料備蓄を強化した対策拠点のオフサイトセンター(OFC)を整備する。
積み残しとなっている項目には、住民避難の判断基準になる放射線量の数値や、放射性物質の拡散状況を国と自治体がどう役割分担してモニタリングするかなど。(中略)
避難の判断基準と医療体制整備の要件は年内にまとめ、他は3月末までに結論を出す予定。30キロ圏の自治体は指針のほか、24日に公表(うち6つの原発で訂正)された原発ごとの放射性物質の拡散予測マップも参考にした防災計画作りが求められる。ただし、自治体からは「どう使えばいいのか」との声も出ている。
(引用終わり)
「第8回委員会の配付資料」
「原子力災害対策指針(案)」 ※今日から(案)がとれたのですが
「原子力災害対策指針(案)ポイント」
「会議映像(第8回委員会)」
(1時間36分59秒)
「田中俊一委員長記者会見(10月31日)」
(54分18秒)
中日新聞の記事の中で、「検討中の項目(積み残しとなっている項目)」と指摘されているのは、具体的には以下のような項目です(上記「ポイント」より引用)。
(引用開始)
2.今後の検討事項
○原子力災害事前対策の今後の在り方
・EAL・OIL、緊急事態区分の在り方
・PPAの導入、実用炉以外の 実用炉以外の原子力災害対策重点区域
・一時退避ができる施設
○緊急時モニタリング等の今後在り方
・モニタリング計画の策定等の在り方
・SPEEDIの活用方策
○オフサイトセンターの今後の在り方
・実用炉以外のオフサイトセンター
○緊急被ばく医療の今後の在り方
・緊急被ばく医療設備・資機材、関係医療機関の連携
・緊急被ばく医療設備・資機材、関係医療機関の連携
・安定ヨウ素剤の投与判断の基準
・スクリーニングの技術的課題
○東京電力福島第一原子力発電所への対応
・緊急時被ばく状況から現存被ばく状況・計画的被ばく状況の移行に関する考え方
・除染・健康管理等の在り方、リスク評価を踏まえた原子力災害対策重点区域の在り方
○地域住民との情報共有等の在り方
・住民が必要とする情報について定期的な情報共有の場の設定
(引用終わり)
いずれも重要な項目ばかりで、これらを積み残しながら、とりあえず「指針」を決定する意味というのは何だろうか?と思いますね。
(引用開始)
③ 安定ヨウ素剤の服用
放射性ヨウ素は、身体に取り込まれると、甲状腺に集積し、取りこまれてから数年~十数年後に甲状腺がん等を発生させる可能性がある。この内部被ばくは、安定ヨウ素剤をあらかじめ服用することで防ぐことが可能である。ただし、安定ヨウ素剤の服用は、その効果が服用の時期に大きく左右されること、また、副作用の可能性もあることから、医療関係者の指示を尊重し、合理的かつ効果的な防護措置として実施すべきである。
安定ヨウ素剤の服用の方策は、原子力災害対策重点区域の内容に合わせて以下のとおりとするべきである。
・PAZにおいては、原則として即時避難と同時に投与の指示を行い、住民等が避難所等において、医療関係者の指示の下、安定ヨウ素剤を服用できるようにしなければならない。
・UPZにおいては、避難や屋内待避等の指示がなされた段階で適切な服用ができるようにしなければならないが、具体的な手順については、今後、原子力規制委員会において検討し、本指針に記載する。
放射性ヨウ素は、身体に取り込まれると、甲状腺に集積し、取りこまれてから数年~十数年後に甲状腺がん等を発生させる可能性がある。この内部被ばくは、安定ヨウ素剤をあらかじめ服用することで防ぐことが可能である。ただし、安定ヨウ素剤の服用は、その効果が服用の時期に大きく左右されること、また、副作用の可能性もあることから、医療関係者の指示を尊重し、合理的かつ効果的な防護措置として実施すべきである。
安定ヨウ素剤の服用の方策は、原子力災害対策重点区域の内容に合わせて以下のとおりとするべきである。
・PAZにおいては、原則として即時避難と同時に投与の指示を行い、住民等が避難所等において、医療関係者の指示の下、安定ヨウ素剤を服用できるようにしなければならない。
・UPZにおいては、避難や屋内待避等の指示がなされた段階で適切な服用ができるようにしなければならないが、具体的な手順については、今後、原子力規制委員会において検討し、本指針に記載する。
なお、PAZ及びUPZいずれにおいても、放射性ヨウ素の集積が比較的早い子供については優先的な服用が必要となる点に留意しなければならない。また、安定ヨウ素剤の投与指示は、原子力施設やモニタリング結果等の情報を集約する原子力規制委員会が一義的な判断を行った上で、原子力災害対策本部を通じて、地方公共団体により所定の医療関係者に速やかに伝達されることが必要である。
(引用終わり)
「指針」のこの部分を読んで、私が一番気になったのはアンダーラインを付した部分です。
以前、写真月刊誌「DAYS JAPAN」が行った福島県下の市町村に対する安定ヨウ素剤を住民に服用させたかどうかについてのアンケートへの回答を読んだところ、対象住民のほぼ全員に服用させた(3月15日の午前中に、ということだったと思います)という回答が三春町だけだったことに驚いたものですが、その他の市町村がなぜ服用させなかったかという理由についての回答の多くが、「県や国からの指示を待っていた」(結局指示は来なかった)というものでした。
「指針」によれば、安定ヨウ素剤の投与指示は、「原子力規制委員会」→「原子力災害対策本部(本部長は内閣総理大臣)」→「地方公共団体」(都道府県→市町村)→「所定の医療機関」という経路で「速やかに伝達」されるというのですが、これって実効性があると信じられますか?どこかで伝達経路が断線したら、結局、福島の悲劇の二の舞になるのではと懸念されます。
住民に最も身近な(それだけ住民に関わる情報を豊富に持っている)市町村に独自の判断権限を委ねるようにすべきではないか、というのが私の意見なのですが。
なお、10月30日正午を締切として緊急ネット署名を呼びかけていた「FoE Japan」等の諸団体が、引き続き緊急署名(たった1か月での防災指針の策定は拙速すぎます 被災者・市民の声を盛り込んでください)を呼びかけています(2次締切:11月8日)。