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3/6「乗り越えなければならない『壁』がある」(環境省)

 「メルマガ金原」アーカイブス・シリーズとして、2012年3月10日に配信したNo.865を転載します。
 災害廃棄物(がれき)広域処理問題の関西における現在の焦点は大阪市の試験焼却ですが、以下は、それまでやや腰が定まらなかった私の「がれき問題」についての態度を決定付けた環境省の政府広報を取り上げたものです。
 とにかく、この広告を見て「これはひどい」という感想を持たない人を私は信用できません。
 
3/6「乗り越えなければならない『壁』がある」(環境省
 
 去る2012年3月6日(火)の朝日新聞に、見開き2面を使った特大全面広告(カラー)が掲載されました(追記:この広告は朝日と読売の2紙に出稿されました)。
 実は、私も事務所で朝日新聞を購読しているのですが、昼食後に事務所でざっと目を通すだけであり、たまたまこの日はランチ・ミーティングがあったこともあって、新聞は読んでいませんでしたので、気がつくのが遅れました。
 
 この広告の写真を掲載してくれたブログを1つご紹介します(共産党の横浜市議会議員さんのブログでした)。
 
復興を進めるために、
乗り越えなければならない「壁」がある
 
      2012.2.24 宮城県 石巻市
 
                          みんなの力で
                          がれき処理
 
 この広告出稿にどれだけの税金が投入されたのか知りませんが(大金が費やされたに違いありませんが)、これは「恐るべきこと」だと思いました。
 こういうやり方が「あり」だとすれば、米海兵隊・普天間基地の俯瞰写真をバックに(あるいは、中国初の航空母艦や北朝鮮のテポドン発射の写真をコラボレーションして)、
 
日本の安全を守るために、
乗り越えなければならない「壁」がある
 
      2012.3.10 沖縄県 宜野湾市
 
                          みんなの力で
                          辺野古移転(防衛省)
                           
という2面ぶち抜き全面広告がいつ登場しても不思議ではありません。
 
 民主党政権、特に野田政権になってからの日本政府は「異常」です。
 あるいは「政府の体を為していない」と言ってもよいかもしれません。
 
 しかし、これを「異常」と思わない国民の層が、どうやら分厚く存在するらしいということにも目を向ける必要があります。
 今回の意見広告の写真を掲載したブロガーが、上記の共産党横浜市議会議員のうなまともな感覚の人ばかりなどと思ったら大間違いであり、たとえば、こういう反応が「普通」かもしれないのです(コメント欄もお読みください)。
 
 そういう中で、この広告を「情緒的」と批判した阿部守一長野県知事の見識には敬服しました(それにしても「連合長野」ががれき受入を要請するとは・・・)。
(引用開始)
長野知事「情緒的」と批判 がれき処理の環境省広告 
2012年3月9日(東京新聞=共同)
 長野県の阿部守一知事は9日、環境省が一部全国紙に掲載した、東日本大震災のがれきの広域処理に理解を求める広告について「国が情緒的な広告を載せるのはいかがなものか」と批判した。がれき受け入れを求める連合長野の中山千弘会長との会談で発言した。
 広告は山のように積まれたがれきの写真とともに、岩手、宮城両県では処理が長引くとして協力を求める内容。福島県を除く全国の朝日新聞6日付朝刊に掲載された。環境省は6日、岩手、宮城両県の広域処理をめぐるPRを実施すると発表している。
 知事は「国民が知りたいのは、政府が責任持って(がれき処理を)やるということ。それを伝えなければいけない」と指摘。
(引用終わり)
 
 なお、この「広告」にとどまらず、環境省は、「広域処理情報サイト」という専用ホームページさえ作っています(このサイトの運営にも多大の税金を投入しているはずです)。
 
 ちなみに、この「広告」に言及した政治家の発言も紹介しておきます。最もまともな見を述べたのは田中康夫氏でしょう。
(引用開始)
12/03/08 笑止千万!「みんなの力で瓦礫処理」◆日刊ゲンダイ
 「みんなの力で、がれき処理 災害廃棄物の広域処理をすすめよう 環境省」。数千万円の税金を投じた政府広報が昨日6日付「朝日新聞」に出稿されました。それも見開き2面を丸々用いたカラー全面広告です。
 “笑止千万”です。何故って、環境省発表の阪神・淡路大震災の瓦礫は2000万トン。
東日本大震災は2300万トン。即ち岩手・宮城・福島3県に及ぶ後者は、被災面積当たりの瓦礫(がれき)分量は相対的に少ないのです。
 「静岡や大阪等の遠隔地が受け入れるべきは『フクシマ』から移住を望む被災者。岩手
や宮城から公金投入で運送費とCO2を拡散し、瓦礫を遠隔地へ運ぶのは利権に他ならず。良い意味での地産地消で高台造成に用いるべき。高濃度汚染地帯の瓦礫&土壌は『フクシマ原発周囲を永久処分場とすべき」。
 「『広域処理』なる一億総懺悔・大政翼賛の『絆』を国民に強要する面々こそ、地元首
長の発言を虚心坦懐に傾聴せよ!」。
 ツイッターで数日前に連続投稿した僕は、その中で戸羽太・陸前高田市長、伊達勝身・
岩泉町長、両名の“慧眼”発言も紹介しました。
 「現行の処理場のキャパシティーを考えれば、全ての瓦礫が片付くまでに3年は掛かる。そ
こで陸前高田市内に瓦礫処理専門のプラントを作れば、自分達の判断で今の何倍ものスピードで処理が出来る。国と県に相談したら、門前払いで断られました」。
 「現場からは納得出来ない事が多々有る。山にしておいて10年、20年掛けて片付けた方
が地元に金が落ち、雇用も発生する。元々、使ってない土地が一杯あり、処理されなくても困らないのに、税金を青天井に使って全国に運び出す必要がどこに有るのか?」。
 阪神・淡路大震災以前から、産業廃棄物も一般廃棄物も「持ち出さない・持ち込ませな
い」の域内処理を自治体に行政指導してきた政府は何故、豹変したのでしょう? 因(ちな)みに東京都に搬入予定の瓦礫処理を受け入れる元請け企業は、東京電力が95.5%の株式を保有する東京臨海リサイクルパワーです。
 これぞ産廃利権!仙谷由人氏と共に東電から献金を受け(朝日新聞1面既報)、父君
が北関東の産廃業界で重鎮の枝野幸男氏、同じく東電が重用する細野豪志氏に「李下に冠を正さず」の警句を捧げねば、と僕が慨嘆する所以です。
 「復興を進めるために、乗り越えなければならない『壁』がある。」と件の全面広告には大
書きされています。呵々。乗り越えるべき「壁」は、「業界の利権が第一。」と信じて疑わぬ「政治主導」の胡散臭さではありますまいか?!
(引用終わり)
 
 他方、エネルギー政策については傾聴に値する見解を披瀝している自民党の河野太郎氏は、がれき広域処理推進派です(このQ&Aで論点がかなり整理されているのが取柄でしょう)。
 
(追記その1)
 環境省のこの広告が「不正広告」ではないかという視点から追究した環境行政改革フォーラム副代表の池田こみちさんの文章も是非ご参照ください。
 
(追記その2)
 その後の「災害廃棄物(がれき)広域処理問題」(特に関西における)については、このブログに掲載した以下の記事などをお読みください。