今晩(11月18日)配信した「メルマガ金原No.1172」を転載します。
放射線影響研究所(RERF)と内部被曝問題研
公益財団法人「放射線影響研究所」という組織のホームページを見ると、「日米共同研究機構」という名称も付加されており、「放射線影響研究所は、平和目的のために、原爆放射線の健康影響について調査する日米共同研究機関です」と記されています。
組織の沿革は以下のように説明されています。
(抜粋引用開始)
公益財団法人放射線影響研究所(放影研)は、日本国民法に基づき、日本の外務省および厚生省が所管し、また日米両国政府が共同で管理運営する公益法人として1975年4月1日に発足しました。前身は1947年に米国原子力委員会の資金によって米国学士院(NAS)が設立した原爆傷害調査委員会(ABCC)であり、翌年には厚生省国立予防衛生研究所(予研)が参加して、共同で大規模な被爆者の健康調査に着手しました。1955年に フランシス委員会 による全面的な再検討で、研究計画が大幅に見直され、今日まで続けられている集団調査の基礎が築かれました。
(引用終わり)
ところで、以前(2012年5月14日)、メルマガNo.942として、「『放射線影響研究所』による注目すべき論文」という記事を書きました。
それは、以下の論文をご紹介するためのものでした。
Radiation Research誌 2012年3月号
Studies of the Mortality of Atomic Bomb Survivors, Report 14, 1950–2003:An Overview of Cancer and Noncancer Diseases
Kotaro Ozasa, Yukiko Shimizu, Akihiko Suyama, Fumiyoshi Kasagi, Midori Soda, Eric J. Grant, Ritsu Sakata, Hiromi Sugiyamaa and Kazunori Kodama
Studies of the Mortality of Atomic Bomb Survivors, Report 14, 1950–2003:An Overview of Cancer and Noncancer Diseases
Kotaro Ozasa, Yukiko Shimizu, Akihiko Suyama, Fumiyoshi Kasagi, Midori Soda, Eric J. Grant, Ritsu Sakata, Hiromi Sugiyamaa and Kazunori Kodama
http://www.rrjournal.org/doi/pdf/10.1667/RR2629.1 (英文15頁)
日本語概要版
日本語概要版
「原爆被爆者の死亡率に関する研究、第14 報、1950-2003、がんおよび非がん疾患の概要」
(引用開始)
【今回の調査で明らかになったこと】
1950年に追跡を開始した寿命調査(LSS)集団を2003 年まで追跡して、死亡および死因に対する原爆放射線の影響を、DS02線量体系を用いて明らかにした。総固形がん死亡の過剰相対リスクは被曝放射線量に対して全線量域で直線の線量反応関係を示し、閾値は認められず、リスクが有意となる最低線量域は0-0.20 Gyであった。30歳で1Gy被曝して70歳になった時の総固形がん死亡リスクは、被曝していない場合に比べて42%増加し、また、被爆時年齢が10歳若くなると29%増加した。がんの部位別には胃、肺、肝、結腸、乳房、胆嚢、食道、膀胱、卵巣で有意なリスクの増加が見られたが、直腸、膵、子宮、前立腺、腎(実質)では有意なリスク増加は見られなかった。がん以外の疾患では、循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患でのリスクが増加したが、放射線との因果関係については更なる検討を要する。
1950年に追跡を開始した寿命調査(LSS)集団を2003 年まで追跡して、死亡および死因に対する原爆放射線の影響を、DS02線量体系を用いて明らかにした。総固形がん死亡の過剰相対リスクは被曝放射線量に対して全線量域で直線の線量反応関係を示し、閾値は認められず、リスクが有意となる最低線量域は0-0.20 Gyであった。30歳で1Gy被曝して70歳になった時の総固形がん死亡リスクは、被曝していない場合に比べて42%増加し、また、被爆時年齢が10歳若くなると29%増加した。がんの部位別には胃、肺、肝、結腸、乳房、胆嚢、食道、膀胱、卵巣で有意なリスクの増加が見られたが、直腸、膵、子宮、前立腺、腎(実質)では有意なリスク増加は見られなかった。がん以外の疾患では、循環器疾患、呼吸器疾患、消化器疾患でのリスクが増加したが、放射線との因果関係については更なる検討を要する。
(引用終わり)
ところで、上記論文が、本当に「注目すべき」ものなのか、その射程距離や限界などについて、しっかりとした批評が読みたいと思っているのですが、素人にも腑に落ちるようなものがなかなか見つからないのですよね(どなたか知りません?)。
さて、今年の4月に第1回総会を開いた「市民と科学者の内部被曝問題研究会(内部被曝問題研)」の澤田昭二理事長、守田敏也広報委員長らが、今年の6月、たまたま訪日中であったヨーロッパ放射線リスク委員会会長とドイツ放射線防護協会会長とともに、広島にある放射線影響研究所を訪問しました。
その第一報は、早くから内部被曝問題研のホームページに掲載されていました。
しかし、いずれ澤田理事長による詳細な第二報が掲載予定ということでしたので、ご紹介はそれを待ってからと思っていたのですが、なかなか掲載されず、そうこうするうちに守田敏也広報委員長が、「ABCCと放射線影響研究所」という詳細なレポートを発表されました。
副題に「放射線影響研究所訪問報告とTBS報道特集」とあるとおり、まず最初に、2012年7月28日に放送されたTBS「報道特集」【知られざる”放射線影響研究所”の実態を初取材】の紹介(文字起こし付き)がなされ、その後に、「放射線防護における放影研の位置付」についての説明があり、そして、詳細な6月26日・放影研訪問記となります。
米国の核戦略の忠実な履践者であることを求められ続けてきた放射線影響研究所の研究者に対し、学者としての良心に訴えてデータの提供を求める澤田昭二氏の働きかけを忠実に文字起こしした部分に是非注目していただければと思います。
(付記1)
ブログ「ぼちぼちいこか。。。」管理人さんが、一時帰国している間にも、京都市での講演会に参加して記事をアップされています。11月13日に京都市で開かれた内部被曝問題研・広報委員長の守田敏也氏の講演会「私たちの生活に原発は必要か?~放射能・内部被ばくから原発の必要性を考える~」の模様が紹介されています。
(付記2)
本日(11月18日)、東京・湯島の平和と労働センター・全労連会館において、市民と科学者の内部被曝問題研究会が主催するシンポジウム「-広島、長崎、チェルノブイリ、福島-事実に基づく放射線影響の研究」が行われました。
※ 映像2/3の冒頭から松崎道幸医師による報告があり、これだけでも是非視聴していただきたいと思います。最初に、甲状腺障害についての各種データを博捜した分析を基に、福島の子どもたちの甲状腺検査の結果についての意見が述べられ、続いて、10ミリシーベルト以下の被曝でも有意にガンなどの健康障害が増加するとの諸データの分析結果が報告されています。