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西本願寺の原発問題についての考え方(西郷章氏の質問に答えて)

 「メルマガ金原」アーカイブス・シリーズというか、西郷章(紀州熊五郎)さんシリーズというか、2011年11月17日に配信したNo.689「西本願寺原発問題についての考え方(西郷章氏の質問に答えて)」を転載します。
 実は、先日、「西郷章さんの『さようなら原発一千万人署名 街頭アピール』」をブログに転載したところ、早速、西郷さんから「お礼と近況報告」ならびに「1千万署名がうまくいったわけについて」という新しい原稿が送られてきましたので、今晩(11月28日)、No.1182として配信しました。いずれ、これもブログに転載したいと思っていますが、そのためには、予備知識としてこれまでの西郷さんの活動報告の文章を読んでおいていただく必要があると考え、まずその第一弾として以下の記事をご紹介することとしました。
 余談ながら、以下の記事を読まれた人は、曹洞宗大本山永平寺が明確に「脱原発」の立場を明らかにしたと思われたかもしれませんが、なかなかことはそう単純ではない、ということについては、昨年開催されたシンポジウムを取材したフリー・ジャーナリスト山本宗補さんのブログなどを参照いただければと思います。
 
西本願寺原発問題についての考え方(西郷章氏の質問に答えて)
 
 和歌山市の西郷章さん(憲法を生かす会・和歌山)には、9条ネットわかやまなどを通じてかねがねお世話になっていましたが、3.11以降の反原発に向けたご努力には瞠目しています。
 西郷さんは、現在、「さようなら原発1000万人署名」に協力すべく、ご自身で1000人の署名を集める目標を立てて奮闘しておられます。先日、その活動をつづった「奮戦記」をお送りいただき、大変感銘を受けました。
 その西郷さんが、メルマガ金原No.631「11/2曹洞宗大本山永平寺が開催する脱原発シンポジウム」の記事を読まれ、その末尾で私が「和歌山県には真言宗の総本山高野山金剛峯寺がありますし、私の住んでいる和歌山市には浄土真宗本願寺派西本願寺の末寺がやたら多いですから、本山に何とか働きかける方法を考えたいですね」と書いたことに目をとめられ、ご自身が門徒であるということもあり、西本願寺本山に質問書を送られたのでした。
 私は、そのことを西郷さんから伺い、自分自身が何も具体的な行動を起こせていないことを恥じざるを得ませんでした(私自身、西本願寺の末寺の檀家の一員なのに)。
 そして、昨日、西郷さんのもとに西本願寺(教学伝道研究センター)から返書が届いたということで、その内容をお知らせいただきました。
 これは、是非多くの方に読んでいただきたい内容でしたので、ご紹介したいと思います。
 1人1人が出来ることを着実に実行していくことの大事さを、自らの実践で示してくださった西郷さんに、心から敬意を表したいと思います。
 

(西郷章氏から西本願寺本山宛の手紙)
 
 拝啓 錦秋の候、貴本山にはますますご清栄のこととお喜び申し上げます。
 平素は国民の平和と幸せのために念仏を唱えてお導き頂いていますことを心から感謝申
し上げます。
 私は「憲法を生かす会・和歌山」という護憲運動にかかわり、現在『脱・原発』署名運動
に取り組んでいる一市民です。突然の非礼を、まずお詫び申し上げ、お許し願いたく思い
ます。
 本日は一点だけ、福島原発事故を受けて、それに関する件でお聞きしたい点があります
のでお伺いさせていただきました。
 まず、私はこの度の原発事故は自然界及び人間社会への大量放射能汚染で、取り返
しのつかない事態を起こした罪は非常に大きく、今後二度とこのような事態を招くことは許
されず、そのためには早急に国内すべての原発を廃炉にすべきだと考えています。
 そのような時に、この事故を受けて曹洞宗・永平寺は「放射能汚染による環境破壊及
び人間や生物への被ばくは、『すべての生き物や自然をいつくしむ』仏教の教えに反すると
して『脱・原発』の方向性を表明いたしました。(資料参照)
 永平寺は、過去に高速増殖炉『もんじゅ』や『ふげん』の命名にかかわった過ちを反省し
た経緯はありますが、「すべての生物や自然をいつくしむ」理念はどこの宗派も同じであろう
と思います。
 私が貴本山にお尋ねしたい件は、今回の原発事故を受けて貴本山としては
 ① どのような見解を持たれたか。
 ② 今後はどのように対応すべきか。
まず、この2点についてお教えいただきたいと思います。
 また、すでに宗門で原発に関する学習会、講演会、その他の行事等、行っているのでし
たらその点についてもお教えいただければ幸いに思います。
 大変簡単ですが以上の点をお願い申し上げ、一方的な非礼をお詫び申し上げ、貴宗
門の今後ますますのご発展をご祈念申し上げ、結びの言葉とさせていただきます。
                                               敬具
 

(浄土真宗本願寺派・教学伝道研究センターから西郷章氏宛の返書)
 
 謹啓
 慈光照護のもと、貴台におかれましては、益々ご健勝のこと慶賀に存じ上げます。
 平素より、宗門の活動にご高配賜り、厚くお礼申しあげます。
 さて、ご質問されました内容は
 ① 原発事故を受けての見解
 ② 今後どのように対応すべきか
という二項目でしたが、内容として重なるところも多いので、まとめての回答とさせていただき
ます。
 この度の原発事故は、高度な科学技術に対して宗教者がどのような態度をとるべきであ
るかという問いを、我々念仏者に改めて突きつけました。
 大谷光真門主は、『本願寺新報』大遠忌法要11月特集号等において、文明のありか
たそのものを問うなかで、現状における原発との共存について、深い憂慮を示しています。
 震災以来現在に至るまで、原発を利用し続けることの困難さを思い知らされるような情
報が、毎日のように聞こえてきます。原発に関する情報の多くは、高度に専門的なものであり、専門家の間ですら意見の対立があることは確かですが、専門外の我々が原発問題
を考えるときには、何らかの情報源に拠らざるを得ない面もあるかと思います。
 その一方で、念仏者として、原発の問題を考えることは可能であり、重要なことです。こ
こでは、念仏者としての立場から、二つのことを申し上げたいと思います。
 まず一つは、人間の能力には限りがあると言うことです。原子力のエネルギーは極めて巨
大であり、それゆえに制御が困難であることを、今回の事故によって我々は思い知らされました。私という人間は、過ちを犯すことから逃れられない存在であるという仏教の価値観が、
改めて見直されなければならないと考えます。
 二つには、人間の欲望には限りがないということです。人間の欲望を野放しに肯定してゆ
くことの危うさも、今回の事故を通じて思い知らされたことの一つです。快適さや利便性を得るためならば手段を選ばないような、私自身の欲望こそがまず問題とされなければ、原発みならず、エネルギー問題の根本的な解決の道は見えてこないでしょう。また、原発に関する議論や対話を行う上でも、ただ自己を肯定し、正当性を主張するばかりでは、生産的な
結論を得ることは難しいように思われます。
 今後も否応なく、科学技術は一層の進歩を遂げてゆくことでありましょう。そうした中、粘
り強く人間の在り方、すなわち欲望によって無明の闇を作り出す我々の在り方について、警鐘を鳴らし続けてゆくことこそが、現代社会に存在する我々宗教者の役目であると考えます。また、原発問題に対する具体的な見解の表明に向けては、専門家を招いて学習の場を設
けるなど、実態についての正確な理解を深めて、取り組んでゆきたいと考えております。
                         合掌
   2011(平成23)年11月14日
                   浄土真宗本願寺派
                   教学伝道研究センター
 西郷 章 様 
                         謹白
 
 

(西郷章氏から西本願寺宛の礼状)
 
 前略 先に福島原発事故を受けての考え等についてお伺いしましたところ『親鸞聖人750回大遠忌法要』のお忙しい中にもかかわりませず、ご丁寧な返答を得ましたことを、本当にうれしく思います。心からお礼申し上げます。
 貴本山の、今回の原発事故に対する受け止め方、及び今後の姿勢につきましては、
現代人間社会が求める理念に全くかなうものとして非常に心強さを感じました。
 そして、この教えは私たち国民の大きな心の支えとなることでしょう。
 私たちは本当に弱小組織ですが、そのようなものたちでも貴本山の教えに勇気をもら
い、力を合わせて立ち上がれば、必ず原発を廃絶し、放射能の危害から子孫たちと国
民を救うことができると思います。
 どうか念仏を唱えて私たちを見守っていただけますように心からお願い申し上げます。
 大変簡単ですが、西本願寺が今後とも、広く国民に親しまれ、なお一層繁栄されます
ことをご祈念申し上げ、お礼の言葉に替えさせて頂きます。
 有難うございました。
                                                              草々