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今だからこそ「9条の会」!

 今晩(12月19日)配信した「メルマガ金原No.1205」を転載します。

今だからこそ「9条の会」!
 
 今から8年半前の2004年6月10日、「九条の会」アピールが発表されました。
 少し長いですが、全文引用します。
 
(引用開始)
               九条の会」アピール
 日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされています。
 ヒロシマナガサキの原爆にいたる残虐な兵器によって、五千万を越える人命を奪
った第二次世界大戦。この戦争から、世界の市民は、国際紛争の解決のためであ
っても、武力を使うことを選択肢にすべきではないという教訓を導きだしました。
 侵略戦争をしつづけることで、この戦争に多大な責任を負った日本は、戦争放棄
と戦力を持たないことを規定した九条を含む憲法を制定し、こうした世界の市民の
意思を実現しようと決心しました。
 しかるに憲法制定から半世紀以上を経たいま、九条を中心に日本国憲法を「改
正」しようとする動きが、かつてない規模と強さで台頭しています。その意図は、日本を、アメリカに従って「戦争をする国」に変えるところにあります。そのために、集団的自衛権の容認、自衛隊の海外派兵と武力の行使など、憲法上の拘束を実際上破てきています。また、非核三原則や武器輸出の禁止などの重要施策を無きものにしようとしています。そして、子どもたちを「戦争をする国」を担う者にするために、教育基本法をも変えようとしています。これは、日本国憲法が実現しようとしてきた、武力によらない紛争解決をめざす国の在り方を根本的に転換し、軍事優先の国家へ向か
う道を歩むものです。私たちは、この転換を許すことはできません。
 アメリカのイラク攻撃と占領の泥沼状態は、紛争の武力による解決が、いかに非
実的であるかを、日々明らかにしています。なにより武力の行使は、その国と地域の民衆の生活と幸福を奪うことでしかありません。一九九〇年代以降の地域紛争への大国による軍事介入も、紛争の有効な解決にはつながりませんでした。だからこそ、東南アジアやヨーロッパ等では、紛争を、外交と話し合いによって解決するための、地
域的枠組みを作る努力が強められています。
 二〇世紀の教訓をふまえ、二一世紀の進路が問われているいま、あらためて憲
九条を外交の基本にすえることの大切さがはっきりしてきています。相手国が歓迎し
ない自衛隊の派兵を「国際貢献」などと言うのは、思い上がりでしかありません。
 憲法九条に基づき、アジアをはじめとする諸国民との友好と協力関係を発展させ、
アメリカとの軍事同盟だけを優先する外交を転換し、世界の歴史の流れに、自主を発揮して現実的にかかわっていくことが求められています。憲法九条をもつこの国だからこそ、相手国の立場を尊重した、平和的外交と、経済、文化、科学技術などの
面からの協力ができるのです。
 私たちは、平和を求める世界の市民と手をつなぐために、あらためて憲法九条
動する世界に輝かせたいと考えます。そのためには、この国の主権者である国民一人ひとりが、九条を持つ日本国憲法を、自分のものとして選び直し、日々行使していくことが必要です。それは、国の未来の在り方に対する、主権者の責任です。日本と世界の平和な未来のために、日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、「改憲」のくわだてを阻むため、一人ひとりができる、あらゆる努力を、いますぐ始めることを訴えます。
  2004年6月10日
井上 ひさし(作家)   梅原 猛(哲学者)   大江 健三郎(作家)
奥平 康弘(憲法研究者) 小田 実(作家)    加藤 周一(評論家)
澤地 久枝(作家)    鶴見 俊輔(哲学者)  三木 睦子(国連婦人会)
(引用終わり)
 
 そう、あれからもう8年半が過ぎました。
 この間、9人の「九条の会」呼びかけ人のうち、小田実さん、井上ひさしさん、加藤周一さん、三木睦子さんがお亡くなりになりました。
 そして、アピールで懸念されていた教育基本法は第一次安倍政権によって改され(法案提出は小泉政権)、武器輸出も(民主党政権下においても)なし崩しに拡されてきました。
 しかし、何とか「憲法9条」は「改正」されずに残っています。
 
 「九条の会」アピールが、「九条を中心に日本国憲法を「改正」しようとする動が、かつてない規模と強さで台頭しています」と危機感を表明した背景事情は、結局、その年(2005年)11月22日、自民党結党50周年党大会で正式に発表された同党「新憲法案」となって具体化しました。
 
 その前後から、「九条の会」アピールに応える形で、あるいは独自の動きから、全国の様々な地域や職域を基盤としたいわゆる「9条の会」が結成されていきました。
 ちなみに、2004年アピールを発表した「九条の会」と区別するため、憲法9条「改正」阻止を目的に結成された団体を総称して(アラビア数字の)「9条の会」と表記することがほぼ慣例化しています。
 
 私自身が今でも役員にとどまっている唯一の「9条の会」は、紀の川北岸に居住する和歌山市民によって結成された「守ろう9条 紀の川 市民の会」ですが、その設立総会が開かれたのが2005年1月24日であり、今年の1月総会まで私が事務局長を務めていた「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」結成が同年5月13日のことでした。
 
 現在、全国で「9条の会」がどれだけあるのか、正確な数字を把握している人は誰もいないと思います(全国どころか、和歌山県だけでも正確なところは分からない)。というのも、「憲法9条を守りたい」という一点で結集した団体であればそれは立派な「9条の会」なので、全国組織があって、その下部組織としての県連があるというような組織では全くなく、それこそ、ご夫婦・親子とその友人たちだけで「○○○9条の会」を名乗っても一向に構わないという融通無碍なところが特徴だからです。
 従って、「九条の会」にしても、呼びかけ団体ではあっても、決して上部団体ではないのです(だから正確な団体数の把握など誰にもできない)。
 ただ、数千までは結構早い段階で到達したように記憶するのですが、その後、ペースが著しく鈍化し、一万到達というようなニュースも聞きませんので、いまだに数千のままなのかもしれません。
 
 新しい「9条の会」結成のペースが著しく鈍化したと書きましたが、それは、既存の「9条の会」の活動力の鈍化と併行したものです。
 私が関与している「9条の会」は、先に名前を挙げた2団体の他に、あと4団体ありますが、その内の1つ(地域9条の会/そういえばここでも役員だったような)はここ何年か「休眠状態」でした(ようやく眠りから目覚めかけというところですが)。
 残る5つの「9条の会」は、結成以来、休眠することなく活動を継続しているだけ上出来なのかもしれませんが、やや活動がルーティン化していたことは否めません。そして、それは全国の多くの「9条の会」が抱えていた問題でもあると思います。
 「ルーティン化」と言っても、その意味するところは色々ありますが、企画のマンネリ化ということだけではなく、役員・会員の高齢化(もともと高齢者が多く関わって設立されたところが多い上に、新しい人がほとんど入ってこない)ということも深刻な問題です(その点憲法9条を守る和歌山弁護士の会」は、弁護士大増員時代の余波により、結構若手会員がいるのですが、これは例外)。
 
 厳しい目で見れば、「9条の会」停滞状況とも言える中で行われた第46回衆議院議員総選挙の結果、にわかに「憲法9条の危機」が誰の目にも明らかな姿を現しました。
 改憲を公然と主張している自民党、日本維新の会、みんなの党(いずれ「改憲三派連合」と称されるかもしれません)の3党合計で、衆議院480議席中の367議席を占め(自民294、維新54、みんな18)、悠々と衆議院の2/3を超える勢力を確保しているのです。
 
 また、改憲発議だけではなく、衆参両院の過半数で足りる「国家安全保障基本法」集団的自衛権の行使を明文で容認する)を議員提案によって国会上程しようという自民党の動きも非常に懸念されます。
 
 今のところ自民党と連立を組むであろう公明党による抑制がどこまで効くかが頼みの綱という、非常に心許ない状況です。
 自民党が、公明党との連立を解消して、維新・みんなと連立を組み直すという悪夢のシナリオ小選挙区で当選してきた自民党議員の大半が公明党の支持母体による選挙支援を受けていたであろうことを考えると、そう簡単に現実化するものではないと楽観視したい気持ちはあるのですが(維新やみんなに他党の候補者を支援できる支持基盤などあるとは思えませんから)、いつ「殿ご乱心」ということにならないとも限りませんし、公明党の「平和志向」がどこまで本物かという問題もありますので、いつまでも公明党頼りという訳にもいきません。
 
 そこで、タイトルに掲げた「今だからこそ『9条の会』!」なのです。
 2004年アピール当時をはるかに上回る危機的状況の中で、全国の「9条の会」が今立ち上がらなくてどうするのか、ということです。
 今から思えば、2005年11月22日「新憲法草案」をはるかに凌ぐ反動的な「日本国憲法改正草案」が、今年の4月27日に自民党から公表されていたのですから、全国の「9条の会」が、もっと早期に本気で活動を再活性化させていなければならなかったのです。
 「休眠状態」の9条の会はたたき起こし、マンネリ化傾向が目立っていた9条の会は、いかにして新しい人に加わってもらうかを真剣に考えて行動を起こす必要があります。
 
 12月16日の投票日に、比例区で「改憲三派連合」に投票した有権者はこれだけいました。
 
自民党   16,345,544人(27.66%)
維新の会  12,038,767人(20.37%)
みんなの党  5,125,072人(8.67%)
 
 来年夏の参議院議員通常選挙において、上記3党に投票した人のうちどれだけの人を護憲(あるいは「当面改憲はしない」)政党へ投票先を替えるよう得できるか、今回「棄権」した人に投票所に足を運び、「改憲三派連合」以外政党に投票するようにどれだけ説得できるか、全国の「9条の会」の力量が今まさに試されようとしています。
 
 そのような中で、「9条の会」の運動が、「脱原発」の運動とどう関わるのか(あるいは関われないのか)が大事なポイントの一つとなると考えていますが、あまり長くなり過ぎたので、この点についてはいずれあらためて書いてみたいと思います。