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井戸川克隆双葉町長からのメッセージ「町民の皆さまへ」

 今晩(12月21日)配信した「メルマガ金原No.1207」を転載します。

井戸川克隆双葉町長からのメッセージ「町民の皆さまへ」
 
 かねてから、議会との関係がうまくいっていないとは聞いていましたが(2回にわたっ不信任案が上程されて「否決」)、まさか「全会致」で不信任決議が可決されは思っていませんでした。
 福島第一原発5号機と6号機が立地する福島県双葉郡双葉町(ふたばまち)の井戸川克隆(いどがわかつたか)町長のことす。
 
 福島民報東京新聞(埼玉版)の記事をご紹介しておきます。
 
福島民報 2012年12月21日
双葉町長の不信任可決 町議会 中間貯蔵施設めぐり対立
(抜粋引用開始)
 双葉町議会は20日、埼玉県加須市で12月定例議会最終本会議を開き、井戸川克隆町長の不信任決議案を全会一致で可決した。東京電力福島第一原発事故による汚染土壌を搬入する中間貯蔵施設をめぐり、井戸川町長が11月8日の県と双葉郡町村長の協議会を欠席したことが主な理由。井戸川町長は職しない場合、地方自治法に基づき、10日以内に町議会を解散できる。解散しない場合は失職する。週明けにも態度を表明する予定。井戸川町長は、「町長頑張れと言う町民もいる」と町長職を続ける考えを示唆し、現時点では辞職せず町議会を解散する公算が大きい。
(中略)
 提案理由説明で岩本議員は「町長は町民の声を聞く努力をせず、町民との間に
乖離(かいり)があり、自分の考え方に固執している」と指摘。井戸川町長が県と双葉郡町村長の協議会を欠席したことに「町民、双葉郡民、県民の多くが驚き、落
胆した」と批判した。
 さらに中間貯蔵施設に関する賛否はあるとしながらも「県内の除染から出る汚染
土壌やがれきなどの処分問題は避けて通れず、復興への大きな妨げになっている」と訴え、「町長は自分の町、自分の考えだけで事に当たろうとした」と主張した。
(後略)
(引用終わり)
 
東京新聞(埼玉版) 2012年12月21日
双葉町議会が町長不信任決議 避難区域再編にも影響

 http://www.tokyo-np.co.jp/article/saitama/20121221/CK2012122102000135.html
(抜粋引用開始)
(前略)
 不信任決議案の提出者の岩本久人氏は、可決後に「町長の言動をみると、町民に寄り添った対応がおろそかになっている」と批判。一方で「こうした事態を招いた責任の一端は議会にもある。町民の審判を仰ぐ覚悟はある」とも語った。
 井戸川町長は本会議で「仕事を多く抱えた中でこうした決議をされることは残念。町民がいがみ合うことなく、原発事故の原因者に権利を要求するような取り組みをしてほしい」と訴えた。
(中略)
◆町民「争っている場合か」
 双葉町の役場機能と避難所がある旧騎西高校(加須市)では、町民が「不信
任可決」を伝えるテレビニュースに見入った。大川一男さん(57)は「町長が町民の意見を聞かないというが、町議がどれだけ、われわれの声を聞いたのか」と憤る。三十代の女性は「いま町長が辞めたら、生活再建や復興に向けた国との調整も一からやり直し。何年分後退するのか」と危惧する。
 渡部三重子さん(64)は「争っている場合じゃない」と語気を強める。「避難生活が長引くほど不満が内部へ向かってしまう。将来の町を見据えて頑張らなくてはいけないときなのに」と話した。
 一方、福島県郡山市仮設住宅で暮らす女性(77)は「この仮設に町長は一度も来たことがないと思う。忙しいのは分かるが、おかしい。町長にはもっと前から議会の意見を聞き、円満に解決してほしかった」と語った。
(引用終わり)
 
 内情が分からないので、町長と議会の対立の真の理由が判然としないのですが、どうやら、除染土などの「中間貯蔵施設」をめぐる対立がポイントの一つのようです。他にも、以下のような指摘をする新聞もありますが。
 
読売新聞(埼玉版) 2012年12月21日
福島・双葉町議会 解散の公算大
(抜粋引用開始)
◆町長と議会の対立、全町避難後に顕在化
 井戸川町長と議会の対立は、昨年3月の全町避難後、間もなく顕在化した。
一部の議員から、井戸川町長が役場機能を福島県外に移し、専決処分を繰返したことに、「独断」などと非難の声が噴出。町民の福島県内回帰が進むと、役場機能を福島県内に戻すべきだ」との批判が相次いだ。今年6、9月の議は、役場機能の帰還を巡って対応の遅さが目立った井戸川町長に対し、2回にわたり不信任決議案が提出された。
(引用終わり)
 
 不信任案が可決された20日付で、町のホームページにある「町長からのメッセジ」に、新しい「町民の皆様へ」という文章がアップされました。
 少し長くなりますが、これは是非、全文読んでいただきたいと思います。急いでかれたものか、推敲されていない箇所がいくつかありますが、あえてそのまま引用します(アンダーラインは金原による)。
 
井戸川克隆町長からのメッセージ「町民の皆様へ」 2012年12月20日
(引用開始)
 町民の皆様、皆様の苦しみは計り知れないものです。毎日、皆様と話し合いできれば良いのですが、なかなか叶えられませんことをお詫び申し上げます。
 私が一番に取り組んでいますのが、一日も早く安定した生活に戻ることです。葉町はすぐには住めませんが、どこかに仮に(借りに)住むところを準備しなければなりません。そこで、国と意見が合わないのは避難基準です。国は年間放射線量20mSvを基準にしていますが、チェルノブイリでは悲惨な経験から年間5mSv以上は移住の義務と言う制度を作りました。
 私たちは、この事故で最大の被ばくをさせられました、町民の皆様の健康と家
の継承を守るために、国に基準の見直しを求めています。この基準がすべてです。仮に住む場合は安全でなければなりません。子供たちには、これ以上被ばくはさせられませんし、子どもたちが受ける生涯の放射線量は大きなものになります。事故から25年が経ったウクライナの子供たちには働くことができないブラブラ病が多く発生
しているそうです。
 私はこのようなことが一番心配です。
町は絶対に事故を起こさないと言われて
発と共生してきました。しかし、今は廃虚にさせられ、町民関係も壊されました。自然も、生活も、生きがい、希望やその他すべてを壊されました。一方どうでしょう。これほど苦しんでいる私たちの思いは、皆さんが納得いくものになっていないのです。これを解決するのが先だと訴えています。
 私が皆さんに多くの情報を出さないと叱られていることは十分承知しています。したくても出せないのです。納得のいくような情報を国に求めていますが、出してこないのです。国とは隠し事のない交渉をすることを求め続けてきています。町民の皆様を裏切ることは決していたしません。これから多くの情報を出していきます。
 放射線の基準に戻りますが、ICRP(国際放射線防護委員会)勧告を採用していると国では言いますが、国際的に採用している訳ではありません。ヨーロッパには独自の基準があり、アメリカでも自国の基準を作って国民を守っています。最近のICRP勧告では日本を非難しています。もう1~20mSvを採用しなさいと言っています。これは大変なことで、区域見直しも賠償の基準も変わってきます。
 このような中で冷静にと言っても無理かもしれません。このような環境に置かれ
ているのだから、皆さんの要望を常に政府、与党には伝えてきました。政争に振り回され
て進んでいません。
 福島県内に避難している町民を県外に移動してもらう努力はしましたが、関
係機関の協力は得られずにいます。しかも盛んに県内に戻す政策が進行しています。県に理由を聞いても納得のいく返事は来ません。町民(県民)の希望を国に強く発信して頂きたいと思います。
 町民の皆さん、損をしないでください。財産には目に見えるものと見えないものが有りますので、区別しなければなりません。目に見えるものは形や重みのあるもの価値が直ぐに判断できるものです。見えないものは未来です。一番心配なのは健康で、被ばくによる障がいであります。ウクライナでは障がいに要する費用が国家の財政を破綻させるような事態になっています。今のウクライナが25年後の日本であってはならないのです。子供に障がいが出ればとんでもない損害です。この見えない、まだ見えていない損害を十分に伝えきれていないもどかしさがあります。まだ発症していないからとか、発症したとしても被ばくとは関係がないと言われる恐れがあります。水俣病のように長い年月をかけて裁判で決着するような経験を町民の皆さんにはさせたくありません。
 昨年の早い時期から町民の皆さんの被ばく検査を国、東電、福島県にお願い
し、被ばく防止も合わせてお願いしてきました。しかし、思うようになっていません、原発事故による放射能の影響下に住むことについて拒むべきです。
 損について一部しか言いきれていませんが、一番大きなこと、何年で帰れるかについて申し上げます。今は世界一の事故の大きさのレベル7のままだということ。溶けた核燃料の持ち出し終了が見通せないこと。処理水をどうするのか、核物質の最終処分はどのようにいつまで終わるのかなど多くの要因を考慮して、木村獨協大学准教授が最近の会議の席上、個人の見解として双葉町は場所によっては165年帰れないと発言しました。私には可か不可の判断できませんが、大変重要な言葉だと思います。半分としても80年だとしたら、この損害は甚大なものです。
 また、被ばくの影響についても責任者に対して担保をとっておく必要があります。
 中間貯蔵施設については、議論をしないまま、調査だから認めろと言いますが、の費用の出どころを確かめることが重要です。この施設は30年で県外に出すと国は言っていますが、約束は我々とはまだ出来ていません。この施設の周りには人が住めません。六ヶ所村では2km以内には民家がないようで、双葉町では町の中心部が殆ど入ってしまいます。では、どうするのかの議論が先です。ボーリング調査を行うのは着工です。予算の構成を見ますと、整備事業の下に調査費が付いています。これは行政判断としては着工になります。着工の事実を作らせないために、私は非難覚悟で止めていることをご理解ください。
 十分すぎるほど議論して町民の皆さんの理解の下に進めるべきです。日本初
事業です。双葉町最大の損害で、確かな約束を求める事をしないまま進めてはやがて子供たちに迷惑をかけます。新政権とじっくり話し合いをして、子供たちに理解を貰いながら進めます。このように、私たちには大きな損害があることをご理解ください。
 寒さが一段と厳しくなりました、風邪や体力の低下に気をつけて予防を心がけてください。これからもお伝えします。
    平成24年12月20日
                    双葉町長 井戸川 克隆

(引用終わり)
 
 井戸川町長からのメッセージに対比すべきは議会による不信任決議案(全文)なのですが、残念ながら見つけることができませんでした。
 従って、これは推測の域を出ないのですが(憶測と言われるかもしれませんが)、そらく、双葉町議会の議員の皆さんは、自分たちを「現実派」だと自認しているのではないでしょうか。
 町民のうちのどのくらいの人が井戸川町長の主張を支持しているのか、部者には全くうかがう術がありませんし、仮に町長を批判する住民が多数を占めているのだとしても、それをとやかく言う資格は私たちにはありません。
 しかし、上記の「町長からのメッセージ」を読む限り、決して整った文章ではないものの、心を打たれずにはいられませんでした。
 皆さんはいかがだったでしょうか?
 
(参考サイト)
OurPlanet-TV
【再掲】不信任が可決された双葉町長の井戸川町長インタビュー
 
天木直人のブログ
脱原発を唱える者たちよ、いまこそ井戸川町長の下に結集せよ!