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「福島県外への避難に壁~年末で住宅支援打ち切り」(OurPlanet-TV)

 今晩(12月25日)配信した「メルマガ金原No.1212」を転載します。
 
「福島県外への避難に壁~年末で住宅支援打ち切り」(OurPlanet-TV)
 
 今日は、昨日 OurPlanet-TV にアップされた映像作品「福島県外への避難に壁〜年末で住宅支援打ち切り」をご紹介します。
 講演会のユースト中継などとは異なり、14分余りに編集されたドキュメンタリーなので、容易に視聴できると思います。
 You Tube(14分09秒)
 
(番組案内・引用開始)
 福島県は12月28日、県外へ避難する時の住宅支援である「借り上げ住宅」の新規受付を打ち切る。原発事故以降、高い線量が続いている福島県。今年5月に福島市が実施したアンケート調査では、回答者全体の33%の人が、また乳幼児や小学生のいる世帯の半分以上が「できれば避難したい」と考えていることが分かっている。
 福島県が県外へ避難している人の呼び戻しに力を入れる中、「借り上げ住
宅」の新規受付打ち切りの理由については、県は「国(厚生労働省)から再三要請された」と説明。しかし、厚生労働省は「打ち切りを決めたのは県であり、
県の意向を尊重している」とし、意見は食い違う。
 福島県郡山市で小学生の息子さんと中学生の娘さんと家族で生活する野口
時子さんは、子どもの被ばくについて気をつかいながら避難するタイミングを待っている。今回の打ち切りで「県外避難の選択が奪われる」と訴える野口さんと、
福島県の避難者支援課の藤田英明主幹に話しを聞いた。
(引用終わり)
 
 福島県(避難者支援課)がホームページで公表した「借上げ住宅」についての新針(pdfファイル)は以下のとおりです。
 
「県外借上げ住宅の新規受付終了について」
「県内自主避難者への借上げ住宅支援について」
 
 大まかに言えば、福島県からの避難者が避難先で「家賃6万円以下(5人以上世帯は9万円以下)」の民間住宅に「借上げ住宅」として居住する場合、そのを福島県が負担(最高9割まで国が補助)するというものですが、この制度の新規受付を今年の12月28日で了するということです。
 
 この福島県の新方針の問題点を端的に理解するためには、11月に日本弁護士連合会が発表した会長声明をお読みいただくのが便宜だろうと思います。
(引用開始)
区域外(自主)避難者への借上げ住宅制度の適用継続及び拡充を求める会長声明
 福島県は、本年11月5日、福島原子力発電所事故に伴う避難区域外から県内の別の地域に避難した住民について民間借上げ住宅支援の対象とすること、及び福島県外の借上げ住宅について新規受付を本年12月28日で終了することを発表した。
 災害救助法に基づく借上げ住宅制度は、受入先都道府県が民間賃貸住宅を借り上げ、被災地からの避難者に対して提供し、その費用を福島県に求償し、最終的に最大9割を国費で負担する仕組みである。福島県では、現在でも県内外に15万人以上が避難しているところ、同制度は、低線量被ばくによる健康影響等を懸念して避難を行った避難者の生活基盤の安定にとって欠かせない仕組みとなっている。
 これまで、避難区域外から県外に避難した避難者には、借上げ住宅による支援が提供されていた一方、県内でより放射線量の低い地域に避難した避難者には、同制度が適用されてこなかった。この取扱いに何ら合理性がないことは、当連合会も7月11日付け「福島県内区域外(自主)避難者への民間賃貸住宅借上げ制度の適用を求める会長声明」で指摘してきたところである。
 今回の発表により、県内区域外避難者も借上げ住宅による支援の対象とされることになる。これまでに支払った家賃額に対する援助がなされない、支援対象が子ども・妊婦のいる世帯に限られるなど、いまだに問題点は残っているものの、内区域外避難者への支援が一歩前進したことは評価に値する。福島県には、今回の措置について周知を徹底することが期待される。また、厚生労働省は、速やかに県内区域外避難者への借上げ住宅支援について、国庫負担の対象とするべきである。
 一方、県外借上げ住宅の新規受付終了については、大きな問題をはらんでいることを指摘せざるを得ない。福島県は、県外区域外避難者への借上げ住宅の新規受付けを12月28日で終了するとし、また県内区域外避難者への同制度の適用も同日までが受付期間とされた。これにより、12月28日以降に区域外避難を開始した避難者は、借上げ住宅制度による支援を受けることができないことになる。
 現在でも、福島県の多くの地域において、公衆の追加被ばく限度である年間1mSvを超える放射線量が観測されている。福島市が5月に行った意識調査の結果によれば、8割以上の市民が外部被ばくや内部被ばくの影響について「大いに不安」「やや不安」としており、全体の3分の1、乳幼児や小学生のいる世帯の半分以上が「できれば避難したい」と回答している。現在必要なのは、避難を希望する世帯に、その選択を可能にするための支援を提供することである。本年6月21日に成立したいわゆる「原発事故子ども・被災者支援法」は、一定の放射線量を上回る地域からの避難について自己決定を行うことができるよう支援することを基本理念として定め(同法第2条第2項)、避難先における住宅の確保に関する施策を講じるとしており(同法第9条)、借上げ住宅の新規受
付終了は、同法の理念や規定にも反するものである。同法に基づく支援の開始までは時間がかかることが見込まれる中、区域外避難者への切れ目のない支援を実現するためにも、借上げ住宅の受付は当面の間継続されるべきである。
 福島県は、新規受付終了の理由として、県外への避難者が減少傾向にあることを挙げているが、上記意識調査の結果からわかるとおり、新規避難者が減少傾向にあるのは避難者に対する支援が不十分であるからであって、むしろ避難者への支援の継続・充実こそが現在求められている。
 したがって、当連合会は、福島県に対し、県内区域外避難者への支援をさらに充実すると同時に、県内外の区域外避難者への借上げ住宅支援について、当面の間新規受付を継続するよう求めるとともに、厚生労働省に対し、同支援の継続中はこれを全て国庫負担の対象とするよう求める。
  2012年(平成24年)11月14日
                       日本弁護士連合会
                       会長  山岸 憲司
(引用終わり)  
 
 例えば、福島市ホームページを閲覧すると、「市内各支所等の環境放射線測定結果【市測定】」というコーナーがあり、12月21日公表分には以下のような計測結果が掲載されています(地上1mで計測)。
 「蓬莱支所(芝)」12月21日が1.18μシーベルト/時で、年換算すると10.3ミリシーベルト/年、「市役所東棟(コンクリート)」12月21日が0.71μシーベルト/時で、年換算6.2ミリシーベルト/年。
 この数字を見れば、諸般の事情によってとどまっている人の多くが、できれば避難したいと考えるのも当然と思われます。
 下に引用する子ども・被災者支援法の基本理念(第2条2項)に従い、「居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還」のいずれについても、住民1人1人の選択権を実質的に保障する施策が早急に求められています。
 
(参考サイト) 
 上記番組や日弁連・会長声明でも言及されている福島市が5月に実施した「放射能に関する市民意識調査」の結果は下記サイトで閲覧し、報告書をダンロードすることができます。
 
2 日弁連・会長声明が援用している原発事故子ども・被災者支援法の第2条2項、第9条は以下のような規定です。
(基本理念)
第二条  
 被災者生活支援等施策は、被災者一人一人が第八条第一項の支援対象地域における居住、他の地域への移動及び移動前の地域への帰還についての選択を自らの意思によって行うことができるよう、被災者がそのいずれを選択した場合であっても適切に支援するものでなければならない。
(支援対象地域以外の地域で生活する被災者への支援)
第九条  国は、支援対象地域から移動して支援対象地域以外の地域で生活する被災者を支援するため、支援対象地域からの移動の支援に関する施策、移動先における住宅の確保に関する施策、子どもの移動先における学習等の支援に関する施策、移動先における就業の支援に関する施策、移動先の地方公共団体による役務の提供を円滑に受けることができるようにするための施策、支援対象地域の地方公共団体との関係の維持に関する施策、家族と離れて暮らすこととなった子どもに対する支援に関する施策その他の必要な施策を講ずるものとする。