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2012年の憲法状況を振り返る

 今晩(2013年1月28日)配信した「メルマガ金原No.1247」を転載します。

2012年の憲法状況を振り返る
 
 以下は、私が役員(運営委員)をしている地域9条の会の年次総会議案書の一部として分担執筆した「情勢分析」のパートを転記したものです。
 総会議案書自体は、この素案をベースに役員会で練り上げていくことになるの、以下はあくまで私の個人的意見です(議案書とメルマガを別々に書いている時間がないので流用したという面もあります)。
 
情勢分析 2012年の憲法状況を振り返る
 
 格段に深刻化した憲法をめぐる情勢を振り返るとき、総花的に事実経過を並る煩は避け、以下の4つのトピックに絞って分析したい。
 4月 自民党「日本国憲法改正草案」公表
 6月 民・自・公「三党合意」により問題法案が続々成立
 10月 米海兵隊「MV22オスプレイ」を沖縄県普天間基地に配備
 12月 衆議院議員総選挙で自民党圧勝
 
1 自民党「日本国憲法改正草案」公表
 自民党は、2012年4月27日、「日本国憲法改正草案」を公表した。同党は、2005年に「新憲法草案」を公表しているので、7年ぶりの新たな改憲案であるが、その反動性はさらに顕著となり、「9条(平和主義)」の問題にとどまらず、「立憲主義」の否定という根本的な思想的対立の様相を呈している。
 個々の条文ごとにその問題点を指摘する余裕はないが、憲法前文の全面的書き換えによる平和主義、国民主権原理の事実上の抹殺、9条2項の戦力不保持条項の削除と国防軍の創設(9条の2)、基本的人権の上位に「公益及び公の秩序」を置く国家主義思想の復活、立憲主義や天賦人権思想に対するあからさまな「敵意」など、これは単に個々の条項の適否というレベルをはるに超えた、「憲法は一体何のためにあるのか?」という根本的問題についての伝統的思想(「人類の多年にわたる自由獲得の努力の成果」日本国憲法97条/この条項も自民党は完全削除しようとしている)に対する「宣戦布告文書」と解するしかない。
 
2 民・自・公「三党合意」により問題法案が続々成立
 2012年6月下旬、会期末を迎えた国会では、当時の与党・民主党と、野党であった自民党、公明党の「三党合意」によって、きわめて重大な問題を抱えた法案が次々と成立した。
 例えば、以下のような法案である。
○「原子力基本法」の目的条項に「我が国の安全保障に資することを目的とて」という条項を挿入。
○「独立行政法人宇宙航空研究開発機構法」(JAXA法)の「平和の目的に限り」との文言を削除し、宇宙の軍事利用にJAXAを従事させることができるよにした。
○違法ダウンロードに刑事罰を科す「著作権法」の「改正」が行われた。
○抜本的な改正を約束していたはずの障害者自立支援法」が、看板を掛け替えただけの「障害者総合支援法」となった。
 内容的にも大問題であるが、その成立過程がさらに問題である。
 憲法により「国の唯一の立法機関」(41条)とされた国会には、充実した審議を通じて、国民各層の間にある多様な意見を集約する機能が期待されていると言うべきであるが、かくも重要で様々な意見(異見)があり得る法案について、会期末間際の与野党による「談合」でバタバタと決めてしまうというインフォーマルなプロセス自体、実質的には民主主義の否定と言わねばならない。
 年末の総選挙によって衆議院の勢力図が激変し、自民・公明両党が再び政権の座に着いたが、このような国会の機能不全が改善されるかどうか、予を許さない。
 
3 米海兵隊「MV22オスプレイ」を沖縄県普天間基地に配備
 沖縄県の全県挙げての反対の意思表明にもかかわらず、米国は、2012年10月上旬、MV22オスプレイ(12機)を沖縄県普天間基地に配備し、日本政府もこれを唯々諾々と容認する姿勢に終始した。
 オスプレイは、従来配備されていたヘリコプターに比べると、兵員輸送力や航続距離などが飛躍的に向上しているなどと喧伝されているが、それが日本の安全を守るために何の役に立つのか?という根本的疑問もさることながら、試験段階で墜落事故を頻発させ、正式配備後も重大事故が続くオスプレイを、世界一危険な普天間基地に配備することの不合理さを訴える沖縄県民の一致した声に、我が国の為政者が一切耳をかさないという「異常さ」こそがこの問題の本質であると思われる。
 戦後綿々と続く「米国従属」路線からの訣別なくして、「オスプレイ」「辺野古」「高江」などの「沖縄問題」の解決はあり得ないという認識が必要である。もちろん、「琉球処分」以来の沖縄への「犠牲の強要」こそが根源的な問題ではあるのだが。
 
4 衆議院議員総選挙で自民党圧勝
 2012年12月16日に実施された第46回衆議院議員総選挙において、与民主党の壊滅的敗北、自民党の地滑り的大勝という選挙結果を受け、安倍晋三を首班とする自民・公明連立政権が誕生した。
 この選挙では、自民党よりもさらに右寄りの日本維新の会が相当数の議席を確保したばかりでなく、既存政党の中では唯一議席も絶対得票数も増やしたみんなの党も改憲を主張していることから、こと衆議院に関しては、
改憲勢力が3分の2以上の圧倒的多数を占めることとなった。
 これに対し、伝統的護憲政党の退潮は顕著であり、共産党は9議席から8議席に議席を減らし、社民党に至っては、衆議院でわずか2議席を有するだけとなり、今夏の参議院議員選挙の結果次第では、政党要件の喪失
の危機すら迎えかねない。
 この総選挙における各政党への有権者の投票行動を分析すると、2009年の前回選挙(この時自公両党は大敗して政権を失った)に比べ、自民党は選挙区でも比例区でも、絶対得票数を減らしており、前回民主党を支持した層の大量棄権及び日本維新の会やみんなの党への投票先の変更が、結果として、安定的な基礎票のある自民・公明両党の議席著増をもたらしたと思われる。
 結局、民主党に絶望した有権者の受け皿となるべきリベラル勢力の結集し投票先がついに誕生せず(日本未来の党が、到底そのような内実をえていなかったことは明らかだろう)、かといって、伝統的護憲政党への支にも結びつかなかったことが、今日の危機的状況をもたらしたと考えられる。
 
5 とりあえずの総括
 2012年9月に行われた自民党総裁選挙は、同党の変質、端的にいえば保守政党」から「極右政党」への変貌ぶりを印象付けるイベントであった。
 5人の候補者が、揃いも揃って集団的自衛権行使容認を表明するという、かつての自民党では考えられないような光景が展開された。
 そもそも、今の日本では、「保守」と「リベラル」が対峙するという図式自体が成り立っていない。「保守」は「極右」に吸収され、「リベラル」は消滅寸である(小選挙区の弊害がまざまざと現れている)。
 この状況を打開するためにどのような方策があり得るのか。7月の参議院議員通常選挙まで残された時間はあまりにも少ない。
 自民党の変質を従来からの伝統的支持層に訴えても、長年の投票行動を変えさせることは容易ではないと思われる。
 これに対し、昨年12月の総選挙に際して投票所から去った1000万人以上の有権者に、「棄権は日本をより危機的な方向に追いやることになる」と訴え、投票所に足を運び、少なくとも「自民」「維新」「みんな」の改憲諸政党外の政党への投票を呼びかける努力をする方が、まだしも効果があるかもしれない。
 何よりも、改憲阻止を訴える広汎な市民運動の高まりが最も重要であことは言うまでもない。