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西谷文和さん「モンゴルに核廃棄物最終処分場建設?」(法学館憲法研究所)

今晩(2013年2月1日)配信した「メルマガ金原No.1251」を転載します。
 
西谷文和さん「モンゴルに核廃棄物最終処分場建設?」(法学館憲法究所)
 
 最近も橋本美香さんインタビューをご紹介した法学館憲法研究所WEBサイトの「今週の一言」コーナーに、今週も注目すべき方が登場されました。
 和歌山ではすっかりお馴染みの西谷文和さんです。
 
 今さらとは思いますが、「今週の一言」に掲載された西谷さんの紹介文を引用しましょう。
 
(引用開始)
◆西谷文和(にしたに ふみかず)さんのプロフィール
1960年生まれ。51歳。事務所:吹田市泉町1-22-33-1F。
立命館大学を中退し、大阪市立大学を卒業。1985年から吹田市役所に勤務。
04年末に退職し、現在はフリーランスジャーナリストで「イラクの子どもを救う会」代表。9・11事件後に始まった「テロとの戦い」以降、イラクとアフガンを精力的に取材。大量に使用された劣化ウラン弾の影響と思われる被害の実体を見て、内部被曝の恐ろしさを痛感。被爆国である日本から人道支援を行う必要があると感じたため、03年12月、イラクの子どもを救う会を設立。「中東革命」の勃発に伴い、11年にリビアバーレーン、12年にはシリアを取材し、「アラブの春」の実像に迫った。06年度「平和協同ジャーナリスト基金賞」を受賞。テレビ朝日報道ステーションや読売放送「ニュースten」、MBSテレビ「VOICE」など出演多数。著書に「報道されなかったイラク戦争」「オバマの戦争」(せせらぎ出版)、「戦火の子どもたちに学ん
だこと~アフガン、イラク、福島までの取材ノート~」(かもがわ出版)などがある。
(引用終わり)
 
 今回「今週の一言」で取り上げられたテーマは、モンゴルにおける核廃棄物最終処分場建設計画についてです。
 昨年の5月、日米両国政府がモンゴルに高レベル放射性廃棄物の最終処分建設を計画しているという毎日新聞の記事には驚かされましたが、その後、そのはどうなっているのでしょう?
 これをしっかりとフォローし、現地取材も敢行したジャーナリストが西谷さん以外いるでしょうか?(少なくとも私は知りません)。
 
 2012年11月に行われたモンゴル取材時のレポートが、「イラクの子どもを救う会ブログに掲載されています。
 
 
 それでは、法学館憲法研究所「今週の一言」に掲載された西谷さんのレポートを読んでみましょう。
 
(引用開始)
モンゴルに核廃棄物最終処分場建設?
リード
 国民の多数が「原発ゼロ」を願っているのに、「小選挙区マジック」で自民党
圧勝し、安倍内閣の下で原発がまたまた再稼働されそうだ。関電の社長で、電事業連合会の会長である八木氏は、さっそく再稼働を要望しているし、東電関電の株式も急騰している。ひたすら原発の再稼働に走る原子力ムラが、最も頭を悩ませているのが、「核廃棄物の最終処分」だ。昨年5月、毎日新聞が「日米が核処分場極秘計画 モンゴルに建設」とスクープ記事を発表した。その後、この疑惑は水面下に潜ってしまったが、計画は生きている。昨年11月、そのモンゴ
ルに飛んだ。
本文
 「寒いなー。道路、かちかちに凍ってるやん」。首都ウランバートルは「世界で最
も寒い首都」だ。11月で零下10度、1月はマイナス30度近くまで下がる日もある。
 そんなウランバートルで車をチャーターし、東北東へ約700キロ、中国、ロシアと
の国境地帯である「マルダイ・ウラン鉱山」をめざす。
 道路は舗装されておらず、目印になる建物も何もない中、運転手のドルチョは
「長年の経験とカン」だけで、大平原に刻まれたワダチを行く。東部の拠点都市チョイバルサンで一泊。さらにほとんど誰も住んでいない大平原を6時間ほどドラ
イブして、ようやく「マルダイ・ウラン鉱山」に到着。
 「ウランの露天掘り」だった。1996年まで旧ソ連ウランを採掘し、撤退。大き
な穴に水が溜まり、その水が氷結している。ガイガーカウンターを地面に置くと、ピ
ー、ピー警報音が鳴り出して、0.4マイクロ。
 産出されたウランは貨車でシベリアに運ばれ、濃縮加工された上で、シベリア鉄
道で旧ソ連の各地へ送られた。一部はチェルノブイリなど原発の燃料になっただろ
うし、一部は旧ソ連核兵器に使用されただろう。
残土と立て札
 鉱山の傍らに、「ウラン残土置き場」がある。「KEEP OUT」と英語で書かれた
看板が立ててあるが、モンゴルの遊牧民は何のことか分からないだろう。
 残土置き場に近づくだけでピー、ピー警報音が鳴り出す。測ったら24マイクロ。
これは福島の双葉町浪江町など、「原発直近のホットスポット」と同レベル。ウランの恐ろしさをあらためて痛感する。
 私は、このマルダイ周辺に「核物質最終処分場」が作られるのでは?と疑ってい
る。以下、その理由を述べる。
 福島原発事故を経験した日本では、おそらく今後、「原子力発電所の新規建
設」は難しいだろう。原子力ムラが生き残るためには、外国に原発を輸出するしかない。日本が原発を輸出しようとしている国は、ベトナム、トルコ、サウジ、インド…。特にベトナムではロシアに次いで日本が受注。すでに候補地も決まっている。原輸出をめぐって、ロシアや韓国としのぎを削る日本。その際のセールスポイントは、
「包括的燃料サービス」。
 「あなたの国の原発から出たゴミは残しません、日本が責任もって回収いたしま
す」というもの。えっ?ではベトナム原発から出た核のゴミを日本に持ち帰るの?
処分場までの核のゴミの輸送ルート
 ご存知の通り、日本の各原発の敷地内には、すでに使用済み核燃料がほぼ
満杯。青森県六ヶ所村のプールもほぼ満杯。とても受け入れる余裕はない。
 そこでモンゴルの大草原が狙われた。広大な土地に、少ない人口密度。そして
モンゴルはウランの生産国。「ゴミは生産地に送り返せば良い」のだ。
 逆にモンゴル政府からすれば「ウラン輸出で儲けて、核のゴミ処理で儲ける」こと
ができる。ここに日本とモンゴルの利害は一致し、計画は水面下で進められている
のだ。
 広大なモンゴルで、マルダイは、最も埋められる可能性が高い場所だ。それは①
首都ウランバートルから遠い②少数民族遊牧民の村で、反対運動が起こりにくい③西風が吹けば放射能は中国へ流れる④ウラン鉱山があり、生産地へ戻す、という建前(包括的燃料サービス)が成り立つ。⑤すでに調査のための予算がモンゴル国会を通過している。⑥将来、日本から核のゴミを運ぶことになれば、一番近
い鉱山がマルダイ。
 この地図は、「モンアトム・ジャパン」という大阪市に本社を置く企業が作成したも
の。「モンアトム」はモンゴル政府直轄の原子力企業で、「モンアトム・ジャパン」は、
その日本支社という関係だ。
 311の衝撃はいずれ冷めていくだろう。メディアが福島の事故をそれほど流さなく
なる頃、人々の記憶から震災と原発事故が消え去っていく頃、この計画は表面化
し、一気に進んでいくのではないか?
 ウラン鉱山のそばに遊牧民のゲルがあった。零下10度の寒風が吹き付ける中、
夫婦で家畜に水をやっていた。「最近、井戸の水位が下がっている」と遊牧民のおじさん。そばで中国系企業がウラン鉱山を掘っている。水脈を切ったのか。それとも
地球温暖化の影響で雨が少なくなったのか。おそらく両方だろう。
 何も知らない遊牧民に核のゴミを押し付けていいのか?
 処分場ができてしまえば、原発は再稼働のハードルをクリアしてしまう。「トイレな
きマンション」にトイレを無理矢理、貧しい外国に押し付けてしまおうということだ。こ
れはモンゴルだけの問題ではなく、私たち自身の問題でもある。
(引用終わり)
 
 メルマガ金原No.1243でお知らせしたとおり、来る2月11日(月・祝)に、西谷さんの講演会が和歌山市勤労者総合センターで行われます。
 ご都合のつく方は是非ご参加ください。
 
戦火の子どもたちに学んだこと―アフガン、イラクから福島までの取材ノート (13歳からのあなたへ)