wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

第3次アーミテージ・レポート『米日同盟―アジアの安定を保持する―』(再配信)

 今晩(2013年2月11日)配信した「メルマガ金原No.1261」を転載します。
 
第3次アーミテージ・レポート『米日同盟―アジアの安定を保持する―』(再配信)
 
 本稿は、2012年10月30日に配信したメルマガ金原No.1153「第3次アーミテージレポート『米日同盟―アジアの安定を保持する―』」を一部補訂して再配信するものです。
 
 10月27日付の「しんぶん赤旗」に、以下のような記事が掲載されていました。
 
集団的自衛権行使で足並み 民・自幹部 日米共同シンポで
(引用開始)
 玄葉光一郎外相、自民党の石破茂幹事長らが26日、海外での武力行使を可能とする集団的自衛権の行使へそろって前のめりの姿勢を示しました。都内で開かれた日本経済新聞と米戦略国際問題研究所(CSIS)の共同主催によるシンポジウムでの発言です。
 玄葉外相は特別講演で、「私は集団的自衛権(の行使)について強い問題意識を持っている。まずはわが国自身がどのように主体的に防衛力を整備するかが大事」と発言。今年4月に野田佳彦首相が訪米しオバマ米大統領と共同声明を出したことに触れ、「日米同盟の中でわが国がさらなる役割と責任を果たす。弾道ミサイル、宇宙、サイバー、海洋など幅広い分野で安保協力を強化する」と強調し、共同訓練、共同の警戒監視・偵察活動、施設の共同使用を含む日米の「動的防衛協力」をぐとしました。
 石破氏も特別講演し、「軍隊の規定のない日本国憲法は独立国の憲法とは言えない」と憲法を攻撃。そのうえで、「5年、10年で憲法改正を必ずやる自信はないが、それまでいまのままでいいとは思わない。自民党は、次の総選挙で国家安全保基本法案を国民の前に提示し審判を仰ぐ。そのポイントは集団的自衛権の行使を可能にする条文を持っていることだ」と述べ、“立法改憲”で集団的自衛権の行使を可能にする意思を明らかにしました。
 シンポには前原誠司国家戦略担当相、自民党の林芳正元防衛相も参加。米側からはキャンベル国務次官補、アーミテージ元国務副長官らが参加しパネル討論しました。
(引用終わり)
 
 上記のシンポジウムは、「第9回 日経・CSIS共催シンポジウム 指導者交代と日米中トライアングルの行方」というものでしたが、その「顔ぶれ」はこういう面々です。
 いやあ、壮観というか何というか・・・。
 
 ところで、この戦略国際問題研究所(Center for Strategic and International Studies, CSIS)というシンクタンクから、今年の8月15日、リチャード・L・アーミテージジョフ・S・ナイ共同執筆による「米日同盟―アジアの安定を保持する―」というレポートというか提言というか勧告というか、が発表されました。
 評者によっては、「第3次アーミテージ・レポート」とも言います。
 
 ちなみに、第1次と第2次はどんなものであったかについて、とりあえず、ウイキペィアでは以下のように説明されています。
(引用開始)
アーミテージの名が一般に広く知られるようになったきっかけとして、2000年に対日外交の指針としてジョセフ・ナイらと超党派で作成した政策提言報告「アーミテージ・レポート」(正式名称:INSS Special Report "The United States and Japan: Advancing Toward a Mature Partnership")の存在が挙げられる。この報告書では、日本に対して有事法制の整備を期待する内容が盛り込まれた。2001年9月11アメリカ同時多発テロ事件を受けて、日本側に共闘を求めた。この時にいわゆる「Show the FLAG」(旗幟を明らかにしろ)発言があったとされる。(中略)
2007年2月には、政策シンクタンク戦略国際問題研究所(CSIS)において再度超党派による政策提言報告「第二次アーミテージ・レポート」(正式名称:"The U.S.-Japan Alliance: Getting Asia Right through 2020”)を作成・発表、日米同盟を英米のような緊密な同盟関係へと変化させ、東アジアの地域秩序の中で台頭する中国を穏健な形で秩序の中に取り込むインセンティブとすることなどを提言している。
(引用終わり)
 
 さて、その「第3次アーミテージ・レポート」です。原文と日本語訳(筑紫建彦氏訳とIWJ共同訳)がネットで読めます。
 
原文“The U.S.-Japan Alliance anchoring stability in asia”
Richard L. Armitage .Joseph S. Nye
 
翻訳『米日同盟―アジアの安定を保持する―』
リチャード・L・アーミテージ、ジョセフ・S・ナイ 筑紫建彦訳 
 
翻訳『米日同盟ーアジアに安定を定着させるー』
斉藤みどる、佐野 円、伊藤勉、原田尚子 共訳(分担翻訳) 
和訳監修:山崎淑子
※分担訳なので訳者によるレベルの差が結構あります。最初のエネルギー問題などを翻訳された方の訳文は非常に読みやすいです。
 
 彼ら「ジャパン・ハンドラーズ」から日本に対する「御宣託」とも「バイブル」とも言われる「アーミテージ・レポート」ですが、これを読み込んでおけば、我が国の「従米」政治家・マスコミ・財界人・評論家などが何を言い出すかは、100%に近く正確に予測できるとさえ言われています。
 
 ほんの一例ですが、このレポートが出た直後(8月19日)、早速、産経新聞は「主張」(社説)において「御宣託」の提灯持ち記事を掲載し、恭順の意を表しました。
(抜粋引用開始)
アーミテージ報告 同盟強化へ日本は奮起を
 アーミテージ元米国務副長官ら超党派の知日派による新たな報告は、中国や北
朝鮮の脅威の高まりを直視し、日米同盟の危機を克服するために日本の奮起を促したことが最大の特徴といえる。
 とりわけアジア太平洋の安定に不可欠な同盟が日本の混迷により「危機に瀕(ひ
)している」との厳しい指摘を深刻に受け止めたい。
 現実に北方領土尖閣諸島竹島などで日本の弱さにつけ込む動きが急増して
る。日本が自らの潜在力をフルに発揮し、「より強固で対等な同盟」を目指すよう改めて求めている点も、極めて妥当というべきだ。
 日本の平和と安全を確保するためにも、野田佳彦政権は報告を真剣に受け止め、
同盟の強化充実に全力を注いでもらいたい。
(略)
 具体的提言として、報告は「集団的自衛権の行使容認」という従来の宿題に加え、中国の海洋進出に対抗するための日米相互運用・共同対処能力の向上、南シナ海での共同監視活動などを挙げた。
 エネルギー安全保障では日本の原発再稼働と安全性の向上を推奨し、通商面
環太平洋戦略的経済連携協定(TPP)への日本の参加を求めた。日韓の歴問題では、日米韓の再結束のために米政府が積極的な外交努力を果たすよう提言している。
 いずれも有意義といえるが、報告で何よりも問われているのは日本の意思だ。脅
が高まりつつあるとき、一方が頼りにならなければ同盟の存在意義は失われる。
 日本が世界の一流国の責務を認識して一層の同盟強化へ向かうのか、それとも
流国への転落に甘んじるかの「決断を下すときだ」と報告が率直に問いかけているのは重い。野田政権が真っ先に自らに問うべきもそこにある。
(引用終わり)
 
 野田首相に対し、「ご主人様からの指示にちゃんと従うように」と指図している訳でが、それにしても、産経の論説委員は、こんな文章を書いていて恥ずかしくなかったのでしょうかね?
 
 とにかく、「第3次アーミテージ・レポート」の「日本への勧告」の部分を以下に引用ておきます(筑紫建彦氏訳による)。じっくりとお読みください。
 冒頭で、野田内閣の原発再稼働を賞賛し、さらに将来的にも「安全な原子炉の設計と健全な規制の実施を推進するリーダーシップを引き受けるべきである」と勧告していることにも注目してください。
 
(引用開始)
<日本への勧告>
●原子力発電の慎重な再開は、日本にとって正しく責任ある前進である。原子炉を
再起動させることは、2酸化炭素の排出を2020年までに25%削減するという東京の野心的な案を可能にする唯一の方法である。再起動はまた、高いエネルギー価格が円高とあいまって、日本からエネルギー依存型の重要な産業を[海外に]追い出さな
いことを確実にするのに役立つ賢明なものである。フクシマからの実地の教訓に学びつつ、東京は安全な原子炉の設計と健全な規制の実施を推進するリーダーシップを引き受けるべきである。
●東京は、海賊行為と戦い、ペルシア湾の海運を防護し、シーレーンを確保し、イラ
ンの核計画でもたらされているような地域の平和への脅威に立ち向かう多国間の努力への積極的な関与を続けるべきである。
●TPP交渉への参加に加えて、日本は、この報告書で説明されているCEESAのよ
うな、より野心的で包括的な交渉を検討すべきである。
●この同盟が潜在能力を十分に実現させるには、日本は、韓国との関係を複雑にし
続けている歴史問題に向き合うべきである。東京は、長期的な戦略的展望において2国間の結びつきを検証し、根拠のない政治的声明を出すことを避けるべきである。3カ国の防衛協力を強化するため、東京とソウルは、延期されたGSOMIAとACSA
の防衛協定を締結し、3国間の軍事的関与を継続すべきである。
●東京は、民主主義的なパートナー諸国、特にインド、オーストラリア、フィリピン、台
湾とともに、地域的フォーラムへの関与を続けるべきである。
●役割と任務の新たな見直しにおいて、日本は、日本の防衛および地域的な不測
の事態において米国とともに行う防衛を含む責任分野を拡大すべきである。この同盟は、日本の領域をかなり超える、より強健で、共有され、共通運用可能な「情報・監視・偵察」の能力と作戦を要求している。米軍と自衛隊が、平和時、緊張、危機お
よび戦争という安全保障の全局面において十分に協力して対応することを許すのは、日本側の責任当局であろう。
ホルムズ海峡を封鎖するというイランの意図が言葉で示され、またはその兆候が出
た際は、日本は単独でこの地域に掃海艇を派遣すべきである。日本はまた、航海の自由を確保するため、米国と協働して南シナ海の監視を増やすべきである。
●東京は、2国間および国家の安全保障上の秘密を防護するため、防衛省の法的
権限を強化すべきである。
●PKOへのより十分な参加を可能にするため、日本は、必要な場合には武力をもっ
て市民や他の国際的平和維持要員を防護することを含めるため、平和維持要員の許容範囲を拡大すべきである。
(引用終わり)