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伊藤真氏の自民党「日本国憲法改正草案」批判

 今晩(2013年3月23日)配信した「メルマガ金原No.1302」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
伊藤真氏の自民党日本国憲法改正草案」批判
 
 弁護士で伊藤塾塾長、そして法学館憲法研究所所長でもある伊藤真(いとうまこと)さんが、自らが主宰する法学館憲法研究所サイトに、「自由民主党『日本国憲法改正草案』について」という論考を発表されています。
 最初に掲載されたのは今年(2013年)1月31日でしたが、その後随時更新されており、現在掲載されているのは3月8日に更新されたver.5です。
 
 とにかく、現在の「憲法の危機」を1人でも多くの人に理解してもらうにはどうしたらよいか?ということを突き詰めていくと、迂遠なようですが、日本国憲法の何が素晴らしいのか、何を守らなければならないのか、ということを心底から納得してもらうしかないのではと思っています。
 そして、逆説めきますが、日本国憲法の何が素晴らしいのか?ということを理解する一番の早道は、自民党日本国憲法改正草案」が、何をなきものにしようとしているかを学ぶことだろうと思います。
 これほどの反面教師はめったにあるものではありません。
 それだけ、自民党改憲案が露骨に「反憲法的」であるということなのですが。
 
 その意味からも、自民党日本国憲法改正草案」を総括的に分析した伊藤真さんの論考は貴重なものだと思い、ご紹介することとしました。
 少しずつでも全編をお読みいただきたいのですが、冒頭で伊藤さんが集約された自民党憲案の問題点は以下の4点です。
 ①立憲主義から非立憲主義
 ②平和主義から戦争をする国へ
 ③天皇の元首化と国民主権の後退
 ④権利拡大には後ろ向き、義務拡大には前のめり
 
 高校の教科書などで挙げられる日本国憲法の三大原則といえば、「恒久平和主義」「国民主権」「基本的人権の尊重」ですが、上記②~④がこれらをいずれも「後退」もしくは「抹殺」しようとしていることは言うまでもありません。しかし、より根本的な問題は「立憲主義から非立憲主義へ」です。
 ここでいう「立憲主義」とは、国民の自由・権利を守るために、国家力の行使に制限を加えることを憲法の本質とする考え方のことです。
 日本国憲法は、もちろん「立憲主義」に立脚する憲法ですが、これまで、日本国憲法の基本原則として「立憲主義」を挙げることなど(私の知る範囲では)なかったはずです。
 なぜかと言えば、近代市民革命以降、世界で作られた憲法のほとんどが「立憲主義」に立脚しており、あえて「原則」として挙げるまでもない当然の「前提」だと誰もが思っていたからです。
 そもそも、「立憲主義」に立脚した憲法のみを「近代的意義の憲法」とするのが説なのですから、「立憲主義」に立脚しない「憲法」など、論理矛盾であって「あ得ない」ものです。
 その「あり得ない」「憲法のようなもの」を作ろうというのが自民党日本国憲法正草案」です。
 
 ご紹介した伊藤さんの論考においても、自民党「草案」に「国民の義務」が次から次へと頻出する「反立憲主義」ぶりが明らかにされていますが、ここで皆さんに1つ問をしてみたいと思います。
 大日本帝国憲法・第2章「臣民権利義務」(第18条~第32条)の中で、臣民明確な義務を課している条項はいくつあったでしょうか?
 正解は2つです。
第20条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ兵役ノ義務ヲ有ス
第21条 日本臣民ハ法律ノ定ムル所ニ従ヒ納税ノ義務ヲ有ス
 
 最後に、大日本帝国憲法の規定をもう1箇条ご紹介しておきます。それは「改正」について定めた第73条です。現在、日本国憲法第96条の改正規定を「改正」して、発議要件を各議院の「3分の2」から「2分の1」にしようという動きが急ですが、この「3分の2」条項が明治憲法由来の要件であることを知っておいても悪くはないと思います。
第73条 将来此ノ憲法ノ条項ヲ改正スルノ必要アルトキハ勅命ヲ以テ議案ヲ帝国議会ノ議ニ付スヘシ
2 此ノ場合ニ於テ両議院ハ各々其ノ総員三分ノニ以上出席スルニ非サレハ議
事ヲ開クコトヲ得ス出席議員三分ノ二以上ノ多数ヲ得ルニ非サレハ改正ノ議決ヲ為スコトヲ得ス
 
(参考サイト1)
 
(参考サイト2/「メルマガ金原」より)