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「主権回復の日」式典と天皇陛下

 今晩(2013年4月4日)配信した「メルマガ金原No.1315」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「主権回復の日」式典と天皇陛下
 
 今日(2013年4月4日)午前に行われた記者会見において、菅義偉(すがよしひで)官房長官は、来る4月28日(日)に政府主催で挙行するとしている「主権復の日」式典の開催を見直す考えのないことを明らかにしました。官邸ホームページで公開されている記者会見映像の5分~7分のところです。
 式典の名称を変えるつもりはないか?と質問した記者もいましたが、言下に否定しています。
 
 当然予想されたことではありますが、このまま事態が推移すれば、4月28日には「式典」が挙行され、天皇皇后両陛下も臨席を余儀なくされることになるわけです。
 
 これを特定の政治目的のために天皇を利用するものとして批判するということは当然あってしかるべきことであり、昨日(4月3日)、福島瑞穂党首が式典に出席しないことを明らかにした社民党が、今日の又市幹事長記者会見において、式典自体の中止を求めていくと明らかにした中でも、「天皇の政治利用」批判がその主要な理由の一つとされていました
 
 ところで、「『主権回復の日』式典と天皇」については、また別の側面からの批判も可能であり、元外交官の天木直人さんの意見がその代表例でしょうか。
 天木さんが3月30日と4月4日のブログに掲載した記事を是非お読みいただきたいと思います。
 
 
 3月30日の記事の末尾の部分を引用します。
 
(引用開始)
 すなわち沖縄が昭和天皇によって日本から切り離され米軍の占領下に置かた事は、もはや周知の事実だ。そしてそんな沖縄に最も心を痛めてこられたの今上天皇・皇后両陛下である。そんな天皇・皇后両陛下が、沖縄がボイコッするような式典に嬉しい気持ちで出席されるはずがない。
 そうなのだ。賢明な読者ならもうお分かりだろう。安倍首相の「主権回復の日」
式典強行は、天皇・皇后両陛下を苦しめ、悲しませることになる。右翼がこれに反発しなければ嘘だ。それでも安倍首相は、「主権回復の日」の式典を強行するというのか・・・
(引用終わり)
 
 天木さんが書いている「沖縄が昭和天皇によって日本から切り離され米軍の領下に置かれた事」というのは、既にかなり広く知られるようになってきたとは思いますが、昭和天皇の「沖縄メッセージ」(時に「天皇メッセージ」とも)と言われるもので、基礎資料は、沖縄県が米国国立公文書館から入手して沖縄県公文書館サイで公開しています。

 同サイトの資料説明文を引用してみましょう。
 
(引用開始)
 同文書は、1947年9月、米国による沖縄の軍事占領に関して、宮内庁御用の寺崎英成を通じてシーボルト連合国最高司令官政治顧問に伝えられた天皇の見解をまとめたメモです。
内容は概ね以下の通りです。
(1)米国による琉球諸島の軍事占領の継続を望む。
(2)上記(1)の占領は、日本の主権を残したままで長期租借によるべき。
(3)上記(1)の手続は、米国と日本の二国間条約によるべき。
メモによると、天皇は米国による沖縄占領は日米双方に利し、共産主義勢力影響を懸念する日本国民の賛同も得られるなどとしています。
1979年にこの文書が発見されると、象徴天皇制の下での昭和天皇と政治の関わりを示す文書として注目を集めました。天皇メッセージをめぐっては、日本本土の国体護持のために沖縄を切り捨てたとする議論や、長期租借の形式をとることで潜在的主権を確保する意図だったという議論などがあり、その意図や政治的・外交的影響についてはなお論争があります。
(引用終わり)
 
 沖縄県公文書館は、政治的配慮からか、メッセージの評価について「両論併記」していますが、シーボルトメモにある「天皇は、沖縄(および必要とされる他の島じま)にたいする米国の軍事占領は、日本の主権を残したままでの長期租借―二十五年ないし五十年あるいはそれ以上―の擬制にもとづくべきであると考えているなどを読むと、とても潜在的主権を確保する意図だった」とは思えませんがね。
 原文と翻訳はこちらのサイトで読めます。
 
 そして、今上陛下(明仁天皇)と「沖縄」です。
 1975年、皇太子として初めて沖縄を訪問した際に火焔瓶の出迎えを受けながらひめゆりの塔事件)、その後、昨年(2012年)11月まで、前後9回にわたって沖縄を訪問された天皇陛下は、昨年12月の誕生日記者会見において、縄について次のように述べられています。
 
(抜粋引用開始)
沖縄は,いろいろな問題で苦労が多いことと察しています。その苦労があるだけに日本全体の人が,皆で沖縄の人々の苦労をしている面を考えていくということが大事ではないかと思っています。地上戦であれだけ大勢の人々が亡くなったことはほかの地域ではないわけです。そのことなども,段々時がたつと忘れられていくということが心配されます。やはり,これまでの戦争で沖縄の人々の被った災難というものは,日本人全体で分かち合うということが大切ではないかと思っています。
(引用終わり)
 
 私は、時々、自分こそ真正な「保守主義者」ではないか、と思うことがあります。
 先日も、東京・新大久保での人種差別デモで在特会が振り回す日章旗を見て、「日の丸がかわいそうだ」と述べる鈴木邦男さん(「一水会」顧問)の発言に心から共感しましたし、今回の天木直人さんによる意見表明にも心を揺さぶられました。
 私はこうも考えます。日本の極右政治家やその取り巻きは、自分たちに都合の良い「天皇制」が好きなのであって、決して天皇陛下を敬愛などしていないと。
 皆さんはどう思われるでしょうか?