wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

豊下楢彦氏講演会「北東アジアの非核平和の展望-尖閣諸島問題を中心に-」のご紹介

 今晩(2013年4月19日)配信した「メルマガ金原No.1330」を転載します。
 
豊下楢彦氏講演会「北東アジアの非核平和の展望-尖閣諸島題を中心に-」のご紹介
 
 政治学者として、国際関係論、外交史などの分野で顕著な業績をあげられた豊下楢彦(とよした・ならひこ)氏が、関西学院大学法学部教授を退官されました。2013年1月11日に最終講義が行われたようです。
 
 その大きな業績の割には、インターネット環境で視聴できる講演会などの映像があまり見当たらないのが残念でしたが、2012年9月1日(土)、兵庫県保険医協会において行われた学習会での「北東アジアの非核平和の展望-尖閣諸島題を中心に-」と題された講演がIWJ兵庫によって中継され、今でもアーカイブ映像を視聴できることに気がつきました(最初の28分頃まで音声レベルが低くて聴き取りにくいのが難点ですが)。
 
 豊下氏は、2012年11月、岩波現代文庫から、文庫オリジナルとして『「尖閣問題」とは何か』という新著を刊行されており、上記講演はその執筆中に行われたものです。
 
 豊下氏の上記新著は、名著の誉れ高い
  『安保条約の成立ー吉田外交と天皇外交ー』(1996年・岩波新書
  『集団的自衛権とは何か』(2007年・岩波新書
  『昭和天皇・マッカーサー会見』(2008年・岩波現代文庫
とともに、1人でも多くの国民が味読すべきものだと思います。
 なお、この3冊の著書をご紹介した私の旧稿をブログ「あしたの朝 目がさめら」に転載しておりますので、ご一読いただけると幸いです。
 
 「尖閣問題」の本質は「アメリカの意思」を抜きにしては語れないことを白日の下に明らかにした新著の末尾の部分、書名ともなった「『尖閣問題』」とは何か」を最後に引用します。
 
(引用開始)
 翻って、石原都知事によるセンセーショナルな「尖閣購入」方針のうちあげは、それがワシントンで行われたにもかかわらず、「尖閣問題」において決定的な鍵をにぎる「米国ファクター」を完全に覆い隠したものであった。石原氏の狙いは、尖閣問題」をひたすら、日本と中国との「ゼロサム」関係に絞り込み、両国関係の緊張を「軍事紛争」のレベルにまで高めようとするところにあった。
 こうした「軍事シナリオ」は、日中間に「尖閣問題」という紛争の火種を打ち込んできた米国にとっては、その策略のツケが回ってきたことを意味しており、中国との戦争に巻き込まれる危険性に直面させるものであった。かくして米国は、「中国の脅威」に対処すべく軍事戦略の再編を急ぐ一方で、中国との戦略対話を深めて協調関係を強化し、問題の「平和的解決」に努めているのである。
 つまり、米国がその一部を管理下におく無人の島々をめぐって、世界第二位と第三位の経済大国同士が軍事衝突の危険性を孕みつつ対峙しあうという今日の状況は、まさに「日米関係とは中国問題に他ならない」といわれる本質的な問題が凝縮的に表現されているのである。とすれば、「尖閣問題」とは何かという課題は、つまるところ、戦後日本外交のあり方を根底から見直す必要性を提起している、と言えるのである。
(引用終わり)