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国会事故調の“提言”を振り返る

 今晩(2013年5月10日)配信した「メルマガ金原No.1351」を転載します。
 
国会事故調の“提言”を振り返る
 
 特別法を制定して国会に設けられた国会事故調(東京電力福島原子力発電事故調査委員会)は、2012年7月5日、「報告書」を国会に提出して解散しました。
 
 その「報告書」において、国会事故調は7つの「提言」を行いました。
 以下に、その要点を掲げます。
 
提言1:規制当局に対する国会の監視
 国民の健康と安全を守るために、規制当局を監視する目的で、国会に原子力係る問題に関する常設の委員会等を設置する。
提言2:政府の危機管理体制の見直し
 緊急時の政府、自治体、及び事業者の役割と責任を明らかにすることを含め、府の危機管理体制に関係する制度についての抜本的な見直しを行う。
提言3:被災住民に対する政府の対応
 被災地の環境を長期的・継続的にモニターしながら、住民の健康と安全を守り、生活基盤を回復するため、政府の責任において以下の対応を早急に取る必要ある。
提言4:電気事業者の監視
 東電は、電気事業者として経産省との密接な関係を基に、電事連を介して、安院等の規制当局の意思決定過程に干渉してきた。国会は、提言1に示した規制機関の監視・監督に加えて、事業者が規制当局に不当な圧力をかけることのないように厳しく監視する必要がある。
提言5:新しい規制組織の要件
 規制組織は、今回の事故を契機に、国民の健康と安全を最優先とし、常に全の向上に向けて自ら変革を続けていく組織になるよう抜本的な転換を図る。たな規制組織は以下の要件を満たすものとする。
提言6:原子力法規制の見直し
 原子力法規制については、以下を含め、抜本的に見直す必要がある。
提言7:独立調査委員会の活用
 未解明部分の事故原因の究明、事故の収束に向けたプロセス、被害の拡大防止、本報告で今回は扱わなかった廃炉の道筋や、使用済み核燃料問題等、国民生活に重大な影響のあるテーマについて調査審議するために、国会に、原子力事業者及び行政機関から独立した、民間中心の専門家からなる第三者機関として(原子力臨時調査委員会〈仮称〉)を設置する。また国会がこのよう独立した調査委員会を課題別に立ち上げられる仕組みとし、これまでの発想拘泥せず、引き続き調査、検討を行う。
 
 そして、同「報告書」は「提言の実現に向けて」として、以下の要請を国会に対して行っていました。
 
(引用開始)
 ここに示した7つの提言は、当委員会が国会から付託された使命を受けて調査・作成した本報告書の最も基本的で重要なことを反映したものである。したがって当委員会は、国会に対しこの提言の実現に向けた実施計画を速やかに策定し、その進捗の状況を国民に公表することを期待する。
 この提言の実現に向けた第一歩を踏み出すことは、この事故によって、日本が失った世界からの信用を取り戻し、国家に対する国民の信頼を回復するための必要条件であると確信する。
 事故が起こってから16カ月が経過した。この間、この事故について数多くの内の報告書、調査の記録、著作等が作成された。そのいくつかには、我々が意を強くする結論や提案がなされている。しかし、わが国の原子力安全の現実を目の当たりにした我々の視点からは、根本的な問題の解決には不十分であると言わざるを得ない。
 原子力を扱う先進国は、原子力の安全確保は、第一に国民の安全にあると
し、福島原子力発電所事故後は、さらなる安全水準の向上に向けた取り組みが行われている。一方、わが国では、従来も、そして今回のような大事故を経ても対症療法的な対策が行われているにすぎない。このような小手先の対策を集積しても、今回のような事故の根本的な問題は解決しない。
 この事故から学び、事故対策を徹底すると同時に、日本の原子力対策を国民の安全を第一に考えるものに根本的に変革していくことが必要である。
 ここにある提言を一歩一歩着実に実行し、不断の改革の努力を尽くすことこそが、国民から未来を託された国会議員、国権の最高機関たる国会及び国一人一人の使命であると当委員会は確信する。
 福島原発事故はまだ終わっていない。被災された方々の将来もまだまだ見えない。国民の目から見た新しい安全対策が今、強く求められている。これはこの委員会の委員一同の一致した強い願いである。
(引用終わり)
 
 ところが、国会の動きはあまりにも鈍いというか、せっかくの「報告書」を棚晒しして恥じないというか、実質何の動きもなく、政権交代後の第183国会でようやく衆議院に「原子力問題調査特別委員会」が設置され、去る4月8日、黒川清元委員長以下、以下の元委員全員(原子力規制委員会委員に就任した大島賢三氏を除く)を参考人として招き、遅ればせながら意見陳述の聴取と質疑が行われました。
 
黒川清(政策研究大学院大学アカデミックフェロー)
石橋克彦(神戸大学名誉教授)
崎山比早子(元放射線医学総合研究所主任研究官)
櫻井正史(預金保険機構理事)
田中耕一(株式会社島津製作所シニアフェロー)
田中三彦(科学ジャーナリスト)
野村修也(中央大学法科大学院教授、弁護士)
蜂須賀禮子(大熊町商工会会長)
横山禎徳(社会システム・デザイナー)
 
 午前・午後合わせて6時間半にも及び長時間の審議日程でしたが、衆議院
TVで録画を視聴できます。
 
開会日 : 2013年4月8日 (月)
会議名 : 原子力問題調査特別委員会 (6時間36分)
 
 また、全編視聴するのは大変だと思いますので、公式会議録も公開されていますので、これを読むという方法もあります。
 
衆議院会議録
  ↓
「第183回国会において設置されている委員会等」の中から「原子力問題調査
特別委員会」を選択してクリック
  ↓
平成25年4月8日の「第3号」をクリック
 
 東電自ら設置したものも含めれば、全部で4つの「事故調」が報告書を公表しており、民間事故調以外はインターネットからダウンロードできますが、東外は書籍の形で市販もされており、政府事故調の報告書は(中間・最終の2冊ということもあって)6,090円と高価ですが、「国会事故調」の「報告書」は、常に充実した594頁の大部なものが1,680円という安価で入手できますので、「一家に一冊」備え置き、折に触れてひもとく価値はあると思います。
 そして、各委員の皆さんの思いを視聴(閲読)した上で、「報告書」に向かいえば、さらに理解が深まるのではないかと思います。
 
 今後とも、国会での審議には注目していきたいと思います。