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石破茂自民党幹事長の「軍法会議」発言と東京新聞こちら特報部の目の付け所

 今晩(2013年7月18日)配信した「メルマガ金原No.1422」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
石破茂自民党幹事長の「軍法会議」発言と東京新聞こちら特報部の目の付け所
 
 今から約3か月前の(2013年)4月21日、 TBS系のBS局「BS-TBS」の報道番組「週刊BS-TBS報道部」に出演した石破茂自民党幹事長の発言が、今頃になって話題となっています。
 
 まずは、その石破幹事長の発言に耳を傾けてみましょう。
 
 発言の一部を文字書き起こししてくれた人がいます。
 
 文字起こしから一部を抜粋します。
 
(引用開始)
今の自衛隊員の方々が「私はそんな命令は聞きたくないのであります、私は今日かぎりで自衛隊をやめるのであります」、言われたらああそうですかという話になるわけですから。「私はそのような命令にはとてもではないが従えないのであります」といったらめいっぱいいって懲役7年なんです。で、この、これは気をつけてモノを言わなければいけないんだけど、人間ってやっぱり死にたくないし、ケガもしたくないし、「これは国家の独立を守るためだ、出動せよ」って言われた時、死ぬかもしれないし、行きたくないなと思う人は、いないという保証はどこにもない。だからその時に、それに従え、それに従わなければその国で起きる最高刑である、死刑がある国には死刑、無期懲役なら無期懲役、懲役300年なら300年、そんな目に会うくらいだったら出動命令に従おうっていう、「お前は人を信じないのか」って言われるけど、やっぱり人間性の本質ってのから目をそむけちゃいけないと思うんですよ。今の自衛官たちは服務の宣誓というのをして、「事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂に務め、もつて国民の負託にこたえる」っていう誓いをして、自衛官になってるんですよ。でも、彼らのその誓いだけがよすがなんですよ。本当にそれでいいですかっていうのは問わねばならない。軍事法廷っていうのは何なのかっていうと、すべては軍の規律を維持するためのものです。
(引用終わり)
 
 視聴者も少なかったであろう3か月前のこのBSの番組(動画サイトにアップされている画像の音質・画質もぱっとしないものだけ)が、にわかに注目されることになったのは、7月16日付の東京新聞こちら特報部に以下のような記事が掲載されたことによります。まずは、見出しを並べてみましょう。
 
東京新聞 こちら特報部 2013年7月16日
平和憲法に真っ向背反
石破自民幹事長もくろむ「軍法会議」
BS番組で9条改憲後の設置力説
持論展開・・・「死刑」「懲役300年」
 
 以上のとおり、見出しは徹底的に石破発言批判を強調しているのですが、記事体をよく読んでみると、戦前の軍法会議の実態や、現役自衛官が警務隊に違法な嫌疑をかけられた実例などにも取材し、多角的に問題の本質に迫ろうとしています。
 参院選投票日の5日前というこの時期、あえて「センセーショナル」な見出しを4つも並べた特集を掲載した東京新聞の勇気と見識、それに目の付け所に敬意を表するため、メルマガ&ブログで取り上げることにしました。
 
 ところで、石破氏の発言について、私が根本的に許せないと思うのは、「死刑」、「無期懲役」、「懲役300年」という部分ではありません。彼は、軍法会議の存在を正当化するため、「これは国家の独立を守るためだ、出動せよ」という前提を勝手に措定した上で、「敵前逃亡」や「抗命」に厳罰を科すのが「軍の規律を維持」する上で当然としているのですが、まず第一に、彼は徹頭徹尾、「規律の維持を命じる側」に身を置いて全てを発想しています。
 第二に、真に独立を守るために侵略に立ち向かうという、将来ともあるかどうか分からぬような想定を掲げながら、最もありそうな、「米国の指揮下における海外兵」を命じられた際の「抗命」に、「死刑」や「無期懲役」や「懲役300年」を科すということをあえて言わない不誠実さ、もっと端的に言えば「卑怯な態度」は許し難いといます。

 

 私は、自衛隊員やその家族にこそ、この記事を是非読んでもらいたいものだと思います。