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福島で暮らすということ~佐々木るりさんの場合(付・「言論の自由」封殺事件)

 今晩(2013年7月27日)配信した「メルマガ金原No.1341」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
福島で暮らすということ~佐々木るりさんの場合(付・「言論の自由」封殺事件)
 
 まずは、この短い映像(3分29秒)をご覧ください。
 
 冒頭で青いジャンパーを着た男性が名刺を渡しながら、「私、間違いなくお預かりします。あとでお返しします」と言っているように聞こえますね。この名刺には自民党国議員秘書の肩書が書かれていたそうです。
 その後、女性に執拗に住所、連絡先などを尋ねる男性の声が聞こえていますが、彼ら(の一人)は「警察の者」と名乗っていたのだそうです(官職氏名は名乗らず)。
 青いジャンパーの男性が「預かって」いったボードには次のように書かれていました。
 
総理、質問です
原発廃炉に
賛成?反対?
 
 「みんな楽しくHappy♡がいい♪」に上記映像の文字書き起こしが掲載されています。
 
 この「事件」が起きたのは、2013年7月4日(木)午前9時過ぎ、福島駅前の某デパート前で安倍晋三自民党総裁による参議院議員選挙遊説の第一声が行われようとしていた際のことで、警察官らに取り囲まれ、持参したボードを自民党議員秘書り上げられた女性は、福島県二本松市に住む佐々木るりさんという方でした。
 
 この事件については、NPJ代表の梓澤和幸弁護士を団長(?)とする弁護団が結成され、7月9日に記者会見が行われました。
 
 IWJによるユースト中継が行われましたが、会員以外の方はダイジェスト映像だけ視聴できます(会員登録→ http://iwj.co.jp/join/ )
 
 記者会見の模様については、やはり「みんな楽しくHappy♡がいい♪」に文字起こしが掲載されていますので、その内容を読むことができます。
 
※実は、You Tubeにも映像がアップされています。もっとも、IWJの了解の下にアップされたとは考えにくいのですが。
 
 また、7月18日に開かれた弁護団による2回目の記者会見の模様はまだIWJで視聴できます。
 
 この「事件」を大きく報じたメディアは、やはりここだけですかね。
 
2013年7月14日
東京新聞こちら特報部 ニュースの追跡
「首相の考えを聞けないの? 参院選演説で聴衆のボード没収」
 
 ネットの世界では非常に有名になった「事件」ですが、テレビや新聞だけが情報源という人(東京新聞読者を除く)にとっては、「そんなことがあったの?」ということかもしれず、ことの重大性もすぐにはのみこめないかもしれませんが、これはとんでもない「大事件」です。
 詳しくは、梓澤弁護士の熱弁に耳を傾けていただきたいのですが、この「事件」を見過ごすようなことがあれば、民主主義社会の根底が堀り崩されるのを容認するのも同然です。
 私たち1人1人が、自分の意見を自由に表明する権利が保障されてこそ、民主主義も国民主権も、その実質が担保されているのであって、この自由が権力者の都合でいかようにでも封殺できるということになれば、その瞬間からその国は「民主主義国家」から「全体主義国家」に看板の掛け替えをしなければなりません。
 
 ここで、表現の自由に関する、日本国憲法(現行憲法)と自民党改憲案を比較しておくことも無駄ではないでしょう。
 
第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、これを保障する。
2 検閲は、これをしてはならない。通信の秘密は、これを侵してはならない。
 
自民党「日本国憲法改正草案」
第二十一条  集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を
行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。 
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。
 
 自民党改憲案のとおり、「表現の自由」が「公益及び公の秩序」に反してはならないとされたならばどういう社会が出現するのかについて、まだ改憲もされないうちから、自民党国会議員秘書や自民党総裁の警備にあたる警察官は「先取り」をしていたのです。7月4日にたった1人で二本松市からやってきた女性から、まだ頭上に掲げも
しない前にボードを取り上げた彼らには、何の「やましさ」もなかったのでしょう。自民党総裁兼総理大臣の街頭演説が何の波風も立たずに進行することこそが、彼らにとっての「公益」であり「公の秩序」であったからであり、その前では、一民間女性の「表現の自由」など、塵芥(ちりあくた)のようなものに過ぎなかったということです。
 そこには、彼らこそが「権力」であり、何が「公益」であり、「公の秩序」であるかを判断できるのは自分たちであるという思いこみがあったことも疑いありません。
 これほど分かりやすい「現物教育」があるでしょうか?
 今後、様々な場所で「草の根憲法学習会」を企画していく際(実際、やりたいと思っています)、これほどの教材はまたとないかもしれません。
 
 さて、被害者の佐々木るりさんは、「チーム二本松」理事長で真宗大谷派の真行副住職である佐々木道範さんの奥さんでもあり、様々なところで発言されているので、その映像などをご覧になった方も多いと思います。
 岩上安身さんによるインタビュー「百人百話」にも第47話として取り上げられていました。
 
 その縁で、この「事件」後の7月20日、岩上安身さんによる佐々木るりさんへの緊急インタビューが行われましたが、これも全編視聴するには会員登録が必要です。
 
 実は、佐々木るりさんについては、「事件」の一月半前の5月17日、OurPlanet-TVの白石草さんによるインタビューシリーズ「ふくしまの声」第3回として、「悩みながら、揺れながら」がアップロードされており、機会をみてご紹介しようと思っていました(40分)。
 
 
 福島にとどまって家族とともに暮らすということがどういうことか、是非、佐々木るりさんのお話に耳を傾けていただきたいと思います。
 そして、この動画を視聴されたら、もう一度冒頭の映像に戻り(佐々木さん自身が撮影録音した映像です)、佐々木さんが何故「総理、質問です 原発廃炉 賛成?反対?」と書いた手製のボードを持って福島駅まで出向かなければならなかったのか、そしてそのボードを掲げることも出来ず、自民党関係者や警察官に取り囲まれ、そのボードを取り上げられてどういう気持ちになったか、「わがこと」として想像してみてください。
 1人でも多くの方に、(少なくとも)この2つの映像をご覧いただきたいと思います。
 
(参考サイト)