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「広島 平和宣言 2013」を読む

 今晩(2013年8月6日)配信した「メルマガ金原No.1441」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「広島 平和宣言 2013」を読む
 
 広島への原爆投下から68年目の今日8月6日、今年も平和記念公園開催された広島平和記念式典において、松井一實市長が「平和宣言」を読み上げました。
 広島は、起草委員会方式をとる長崎とは異なり、「長年、市長が有識者などから平和に関する意見をお聞きして、それを参考にしながら、宣言文を作るという方法を採ってきておりました」(2011年5月30日開催の定例会見での松井市長の発言)とあるように、最終的な文責は市長が負うという方式がとられてきていました。
  記者会見テキスト
  記者会見映像
 最終的に市長が書き上げる広島方式は現在も踏襲されていますが、上記記者会見にあるとおり、2011年以降は、被爆者の高齢化が進み体験を語れる者が少なくなる中、被爆者から寄せられた体験談を直接「平和宣言」に盛り込むことになったということのようです。
 
 それでは、早速、今年の平和宣言を読んでみましょう。既に「今年も脱原発に触れず」とか、「核拡散防止条約(NPT)再検討会議の準備委員会で、核兵器の非人道性に関する共同声明に賛同しなかったことを批判していない」とかいうようなマスコミ報道を目にされているかもしれませんが、先入観なしに、まず虚心に「宣言」に向かうのが読む者の礼儀だろうと思います。
 その上で、評価すべき点、物足りない点について自分なりの意見を形成するというのが筋道でしょう。
 なお、広島「平和宣言」は、広島平和記念資料館サイトに1997年以降の「平和宣言」が掲載されています。
 
2013年平和宣言(テキスト)
(引用開始)
 「あの日」から68年目の朝が巡ってきました。1945年8月6日午前8時15分、一発原子爆弾によりその全てを消し去られた家族がいます。「無事、男の子を出産して、家族みんなで祝っているちょうどその時、原爆が炸裂。無情にも喜びと希望が、新しい『生命いのち』とともに一瞬にして消え去ってしまいました。」
 幼くして家族を奪われ、辛うじて生き延びた原爆孤児がいます。苦難と孤独、病に耐えながら生き、生涯を通じ家族を持てず、孤老となった被爆者。「生きていてよかったと思うことは一度もなかった。」と長年にわたる塗炭の苦しみを振り返り、深い傷跡は今も消えることはありません。
 生後8か月で被爆し、差別や偏見に苦しめられた女性もいます。その女性は結婚はしたものの1か月後、被爆者健康手帳を持っていることを知った途端、優しかった義母に「『あんたー、被爆しとるんねー、被爆した嫁はいらん、すぐ出て行けー。』と離婚させられました。」放射線の恐怖は、時に、人間の醜さや残忍さを引き出し、謂われのない風評によって、結婚や就職、出産という人生の節目節目で、多くの被爆者を苦しめてきました。
 無差別に罪もない多くの市民の命を奪い、人々の人生をも一変させ、また、終生にわたり心身を苛み続ける原爆は、非人道兵器の極みであり「絶対悪」です。原爆の地獄を知る被爆者は、その「絶対悪」に挑んできています。
 辛く厳しい境遇の中で、被爆者は、怒りや憎しみ、悲しみなど様々な感情と葛藤し続けてきました。後障害に苦しみ、「健康が欲しい。人並みの健康を下さい。」と何度も涙する中で、自らが悲惨な体験をしたからこそ、ほかの誰も「私のような残酷な目にあわせてはならない。」と考えるようになってきました。被爆当時14歳の男性は訴えます。「地球を愛し、人々を愛する気持ちを世界の人々が共有するならば戦争を避けることは決して夢ではない。」
 被爆者は平均年齢が78歳を超えた今も、平和への思いを訴え続け、世界の人々が、その思いを共有し、進むべき道を正しく選択するよう願っています。私たちは苦しみや悲しみを乗り越えてきた多くの被爆者の願いに応え、核兵器廃絶に取り組むための原動力とならねばなりません。
 そのために、広島市は、平和市長会議を構成する5,700を超える加盟都市とともに、国連や志を同じくするNGOなどと連携して、2020年までの核兵器廃絶をめざし、核兵器禁止条約の早期実現に全力を尽くします。
 世界の為政者の皆さん、いつまで、疑心暗鬼に陥っているのですか。威嚇によって国の安全を守り続けることができると思っているのですか。広島を訪れ、被爆者の思いに接し、過去にとらわれず人類の未来を見据えて、信頼と対話に基づく安全保障体制への転換を決断すべきではないですか。ヒロシマは、日本国憲法が掲げる崇高な平和主義を体現する地であると同時に、人類の進むべき道を示す地でもあります。また、北東アジアの平和と安定を考えるとき、北朝鮮の非核化と北東アジアにおける非核兵器地帯の創設に向けた関係国の更なる努力が不可欠です。
 今、核兵器の非人道性を踏まえ、その廃絶を訴える国が着実に増加してきています。また、米国のオバマ大統領は核兵器の追加削減交渉をロシアに呼び掛け、核軍縮決意を表明しました。そうした中、日本政府が進めているインドとの原子力協定交渉は、良好な経済関係の構築に役立つとしても、核兵器を廃絶する上では障害となりかねません。ヒロシマは、日本政府が核兵器廃絶をめざす国々との連携を強化することを求めます。そして、来年春に広島で開催される「軍縮・不拡散イニシアティブ」外相会合においては、NPT体制の堅持・強化を先導する役割を果たしていただきたい。また、国内外の被爆者の高齢化は着実に進んでいます。被爆者や黒い雨体験者の実態に応じた支援策の充実や「黒い雨降雨地域」の拡大を引き続き要請します。
 この夏も、東日本では大震災や原発事故の影響に苦しみながら故郷の再生に向けた懸命な努力が続いています。復興の困難を知る広島市民は被災者の皆さんの思いに寄り添い、応援し続けます。そして、日本政府が国民の暮らしと安全を最優先にした責任あるエネルギー政策を早期に構築し、実行することを強く求めます。
 私たちは、改めてここに68年間の先人の努力に思いを致し、「絶対悪」である核兵器の廃絶と平和な世界の実現に向け力を尽くすことを誓い、原爆犠牲者の御霊に心から哀悼の誠を捧げます。
   平成25年(2013年)8月6日
                               広島市長 松 井 一 實
(引用終わり)
 
2013年平和宣言(映像)
 上記「広島平和記念館」サイトに8月8日以降にアップロードされるそうです。
 「弁護士・金原徹雄のブログ」では、8月8日以降に映像を追加します。
 
2013年平和記念式典ダイジェスト映像