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篠田謙一氏が“人類(ホモ・サピエンス)の歴史”を説く(岩上安身氏によるインタビュー)

 今晩(2013年8月19日)配信した「メルマガ金原No.1456」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄」のブログにも同内容で掲載しています。
 
篠田謙一氏が“人類(ホモ・サピエンス)の歴史”を説く(岩上安身氏によンタビュー)
 
 一昨日に続き、再び岩上安身さん(IWJ)によるロングインタビュー映像のご紹介であり、しかも、「憲法問題」とも「原発問題」とも直接の関係はない分野の専門家に対するインューですが、いずれも非常に興味深く勉強になりましたので、皆さまにもご紹介するととしました。
 一昨日の高橋和放送大学教授インタビューのアーカイブ映像は、IWJ会員限定配信でしたが、今日ご紹介する篠田謙一氏(国立科学博物館 人類史研究グループ長)に対するインタビューは、幸いにも、今のところ全編無料で視聴できます。
 
2013/08/15 「6万年前に同じ能力を持った人々がアフリカを出て、世界に広った」――日本人はどこから来たか。DNAが語る系譜 ~岩上安身による篠田謙一氏インタビュー(2時間30分31秒)
 
 いつものように、IWJスタッフによる内容説明を引用しましょう。
 
(引用開始)
 日本人はどこから来たのか。そもそも「日本人」とは何か――。
 人類学の分野では、人類の起源を解き明かそうとする試みが長年行われてきた。数十年前の通説では、「人類は100万年以上前にアフリカを出て世界各地に広がり、長い年月をかけて黒人や白人へと進化した」とされてきた。しかし近年の研究で、この通説は覆された。
 8月15日、国立科学博物館で岩上安身のインタビューに応えた篠田謙一氏(人類史研究グループ長)は、「世界中に広がる人類の歴史はそれほど長くない。人類は皆6万年前にアフリカから出発し、その時には今の私たちと同じ体格・能力を持っていた」と語る。ミトコンドリアDNAを分析することで、人類の起源を解き明かしてきた篠田氏は、さらに日本人の成り立ちにも言及した。
 近年まで、「日本人は万世一系の単一種族」という考え方が主流だった。かつては、縄文人と弥生人の骨の形質が違うのは、農耕が流入して文化が変化したからだ、とする説が正当とされてきた。しかし80年代になり、文化の違いだけでは説明できない形質の違いが明らかになってきた。人類学者の埴原(はにはら)和郎氏は、弥生人は朝鮮半島から農耕と金属器を携えてやってきた渡来系であり、先住民である縄文人と混血し、いまの日本人が形作られたとする「二重構造モデル」を提唱した。
 篠田氏はこの「二重構造モデル」を、DNA分析による科学的な見地からの検証を試みた。日本にしか存在しない「M9b」「M7a」と言われるミトコンドリアは、縄文人に多く含まれるDNAであり、北海道のアイヌや沖縄の人々に色濃く残っているという。そして、日本人に一番多い「D4」と言われるDNAは、弥生人に多く含まれるDNAであり、日本人の他に中国東北部や韓国人に多いという。
 この「D4」の起源を探っていくと、日本人のルーツは、5500年前に中国南東部の揚子江流域で稲作農耕を始めた人々に行き着くという。篠田氏は「我々は、『日本列島』というくくりで考えがちだが、南では南方系、北では北方系、本土では朝鮮半島や中国地域との関係があり、民族的な多様性が生まれている」と語る。
 また篠田氏は、ここ数年ネットを中心に湧き上がっている「男系天皇維持論」の根拠となる、「Y染色体の継承」について「疑似科学だ」と喝破する。篠田氏によれば、男親から男の子へしか継承されない「Y染色体」と言われるDNAは、突然変異しやすく、次の世代のY染色体は全く別物になる可能性があるという。また、どんなに天皇家が貴重なY染色体を持っていたとしても、統計上、同じY染色体を持つ人は日本に10万人はいるという。岩上安身は、「(Y染色体の話は)結局は『血統の優位性』を言いたいのだろう。ナチスにも通じるこうした優生思想は、時に科学を蔑ろにする」と批判した。
 終戦記念日のこの日。日本人とは何かを、人類学の見地からあらためて問い直す、2時間半のインタビュー。
(IWJ・佐々木隼也)
(引用終わり)
 
 かなりの長時間インタビューですが、篠田先生が興味深い話題を非常に分かりやすく解説してくださるので、引き込まれて時間が経つのを忘れるほどです。
 ただ所々で、岩上さんが自らの「問題意識」に基づいたコメントをすると、そこでインタビューの流れが「渋滞」することも事実であり、これを「煩わしい」とか「押しつけがましい」と思われる方もおられるでしょうが(上記説明で「茶色」にした部分はその一例)、そこは、岩上さんの「問題意識」(これ自体は大体同意できるものです)の強さのほとばしりということで、気にしないことにしましょう。
 何しろ、このような貴重なインタビューを誰もが視聴できるようにしてくれているのですから。
 
 しかし、現在地球上に存在する全てのホモ・サピエンスの母系の先祖をたどっていくと(ミトコンドリアDNAは母親からしか引き継がない)、約6万年前のアフリカにたどり着くということは初めて知りました。
 人類発祥の地がアフリカだということは何かで読んだ記憶がありますが、ホモ・サピエンスの歴史って、そんなに短かったのか!と驚きます。
 もっとも、当然のことながら、ホモ・サピエンス(「猿人」「原人」「旧人」に対する「新人」)の誕生自体が6万年前という意味ではなく(篠田先生は約20万年前われていましたね)、現在の地球上の人類にミコンドリアDNAを伝えた最初の女性が6万年前に生きていたということで、その同類の男女はたくさんいたはずですが、他の女性の子孫は途中で全て途絶えたということでしょうね(この理解でいいのかな?)。
 6万年さかのぼれば、地球上の全ての人間の共通祖先にたどり着くということを知ると、比べてどうなるんだとは思うものの、放射性物質の半減期と比較したくなってしまいますね(プルトニウム239=2万4000年)。
 
 時には、科学についての最新の知識を学ぶことも重要だと思いました。
 
(参考サイト)
国立科学博物館 日本人はるかな旅展 バーチャル展示室(2001年)
※12年前の展示資料なので、当然ながら、その後の発見成果は反映されていません。
 
WEBナショナル・ジオグラフィック日本版 2012年3月5日~9日
「研究室」に行ってみた 国立科学博物館 人類史研究グループ 篠田謙一氏
 第1回 インカ帝国の拡大はミイラのしわざ!?
  http://nationalgeographic.jp/nng/article/20120228/300681/
 第2回 インカ帝国は「不死の国」だった!
  http://nationalgeographic.jp/nng/article/20120228/300690/
 第3回 インカ帝国の神話をミイラで証明!
  http://nationalgeographic.jp/nng/article/20120301/301013/
 第4回 ミトコンドリアDNAでわかった人類の歴史
  http://nationalgeographic.jp/nng/article/20120305/301339/
 第5回 ヒトの進化はアフリカ限定だった!
 
篠田謙一著『日本人になった祖先たち―DNAから解明するその多元的構造』 (NHKブックス/2007年2月刊)
※1955年静岡県生まれ。京都大学理学部卒業。博士(医学)。佐賀医科大学助教授を経て現在国立科学博物館人類第一研究室長(刊行当時)。専門は分子人類学。日本や周辺の諸国の古人骨DNA解析を進めて、日本人の起源を追求しているほか、スペインによる制服以前のアンデス先住民のDNA研究から、彼らの系統と社会構造について研究している。
 なお、この著書を読んでみたいと思われた方がおられれば、IWJサイトを通じてAMAZONに注文していただくと、若干ですがIWJにマージンが入ると思いますのでよろしくお願いします。