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「小泉純一郎の『原発ゼロ』」(毎日新聞・風知草)を読んで

 今晩(2013年8月26日)配信した「メルマガ金原No.1463」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
小泉純一郎の『原発ゼロ』」(毎日新聞・風知草)を読んで
 
 小泉純一郎元総理大臣が、どうやら「脱原発」派に“転向”したらしいということは、2011年後半ころから時々耳にしていましたが、なかなかまとまった主張、発言、文章などが目に触れる機会がなく(IWJもインタビューには成功していないですよね?)、れほど世間的に注目を浴びることなく現在まで来たように思います(私の認識不足かもしれませんが)。
 
 ただ、早い段階から「脱原発宣言」を行った城南信用金庫の吉原毅(よしわらつよし)理事長が、慶應義塾大学経済学部で小泉純一郎氏の後輩にあたり、ともに加藤寛氏の教え子であったこと、その加藤寛氏(2013年1月30日逝去)が、最晩年に「脱原発」を強く主張していたことなどが思い合わされ、小泉氏の「脱原発」も、単なるポーズではないだろう、とは思っていました。
 
メルマガ金原No.1163「加藤寛氏の“ただちに原発をゼロに!“メッセージ」
 
 その小泉元総理が、日立、東芝などの原発推進企業の幹部と「呉越同舟」でフィンランド、ドイツへの視察旅行を行ったということを、今日(2013年8月26日)の毎日新聞のコラム「風知草」(山田孝男同紙専門編集委員)で知りました。
 
毎日新聞 2013年08月26日 <風知草>
小泉純一郎の『原発ゼロ』」 山田孝男
 
(抜粋引用開始)
 脱原発、行って納得、見て確信--。今月中旬、脱原発のドイツと原発フィンランドを視察した小泉純一郎元首相(71)の感想はそれに尽きる。
 三菱重工業、東芝、日立製作所原発担当幹部とゼネコン幹部、計5人が同行した。道中、ある社の幹部が小泉にささやいた。「あなたは影響力がある。考えを変えて我々の味方になってくれませんか」
 小泉が答えた。
 「オレの今までの人生経験から言うとね、重要な問題ってのは、10人いて3人が賛成すれば、2人は反対で、後の5人は『どっちでもいい』というようなケースが多いんだよ」
 「いま、オレが現役に戻って、態度未定の国会議員を説得するとしてね、『原発は必要』という線でまとめる自信はない。今回いろいろ見て、『原発ゼロ』という方向なら説得できると思ったな。ますますその自信が深まったよ」
 3・11以来、折に触れて脱原発を発信してきた自民党の元首相と、原発持を求める産業界主流の、さりげなく見えて真剣な探り合いの一幕だった。
 呉越同舟の旅の伏線は4月、経団連企業トップと小泉が参加したシンポジウムにあった。経営者が口々に原発維持を求めた後、小泉が「ダメだ」と一喝、一座がシュンとなった。
 その直後、小泉はフィンランドの核廃棄物最終処分場「オンカロ」見学を思い立つ。自然エネルギーの地産地消が進むドイツも見る旅程。原発関連企業に声をかけると反応がよく、原発に対する賛否を超えた視察団が編成された。
(略)
 帰国した小泉に感想を聞く機会があった。
 --どう見ました?
 「10万年だよ。300年後に考える(見直す)っていうんだけど、みんな死んでるよ。日本の場合、そもそも捨て場所がない。原発ゼロしかないよ」
 --今すぐゼロは暴論という声が優勢ですが。
 「逆だよ、逆。今ゼロという方針を打ち出さないと将来ゼロにするのは難しいんだよ。野党はみんな原発ゼロに賛成だ。総理が決断すりゃできる。あとは知恵者が知恵を出す」
 「戦はシンガリ(退却軍の最後尾で敵の追撃を防ぐ部隊)がいちばん難しいんだよ。撤退が」
 「昭和の戦争だって、満州(中国東北部)から撤退すればいいのに、できなかった。『原発を失ったら経済成長できない』と経済界は言うけど、そんなことないね。昔も『満州は日本の生命線』と言ったけど、満州を失ったって日本は発展したじゃないか」
(略)
(引用終わり)
 
 いかがでしょう。まことに歯切れが良く、現役首相時代を彷彿とさせるという印象を持たれた方も多いのではないでしょうか(そのような印象を与えることに協力しようというマスコミ記者の筆致まで現役当時並みです)。
 この調子で、規制緩和、イラク派兵などを推進したことを忘れる訳にはいきませんが、せめて1つくらい、後世に誇れる「良いこと」をしていって欲しいものだと思います。
 小泉氏の「原発ゼロ」の主張が本気なら、いかに現役国会議員でないとはいえ、具体な政治的動きがあってしかるべきでしょう。
 今回の毎日新聞「風知草」への記事掲載(当然、小泉氏の意向に添ったものと考えるのが常識です)が、小泉氏の打った「第一着手」であることを願いたいところです。

 

 ところで、今回の「視察旅行」の費用はどこから出ているのだろう?