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自衛隊員等の「服務宣誓」と日本国憲法

 今晩(2013年8月29日)配信した「メルマガ金原No.1466」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自衛隊員等の「服務宣誓」と日本国憲法
 
 「自衛隊法施行規則」(防衛省令)に以下のような規定があることをご存知でしょうか。

第三節 服務の宣誓
(一般の服務の宣誓)
第三十九条 隊員(自衛官候補生、学生、生徒、予備自衛官等及び非常勤
隊員(法第四十四条の五第一項 に規定する短時間勤務の官職を占める隊除く。第四十六条において同じ。)を除く。以下この条において同じ。)となつた者は、次の宣誓文を記載した宣誓書に署名押印して服務の宣誓を行わなければならない。自衛官候補生、学生、生徒、予備自衛官等又は非常勤の隊員が隊員となつたとき(法第七十条第三項 又は第七十五条の四第三項 の規定により予備自衛官又は即応予備自衛官自衛官になつたときを除く。)も同様
とする。
     宣  誓
 私は、我が国の平和と独立を守る自衛隊の使命を自覚し、日本国憲法及び
法令を遵守し、一致団結、厳正な規律を保持し、常に徳操を養い、人格を尊し、心身を鍛え、技能を磨き、政治的活動に関与せず、強い責任感をもつて心職務の遂行に当たり、事に臨んでは危険を顧みず、身をもつて責務の完遂務め、もつて国民の負託にこたえることを誓います。
 
 以上は、正規の自衛隊員に課される服務宣誓であり、自衛官候補生(39条の2)、防衛大学校等の学生(40条)、予備自衛官(41条)、即応予備自衛官(41条の2)、予備自衛官補(41条の3)などに対しては、異なった内容の宣誓義務が課されています。
 ちなみに、予備自衛官以下の「宣誓」には、「日本国憲法及び法令を遵守し」という文言は入っていません。
 
 また、国家公務員についても、以下のような宣誓義務が課されています(職員の服務の宣誓に関する政令・別紙様式)。
 
                  宣   誓   書
 私は、国民全体の奉仕者として公共の利益のために勤務すべき責務を深く自
覚し、日本国憲法を遵守し、並びに法令及び上司の職務上の命令に従い、不
偏不党かつ公正に職務の遂行に当たることをかたく誓います。
 
 これらの規定の根拠が、日本国憲法15条及び99条にあることは言うまでもありません。
 
第十五条 公務員を選定し、及びこれを罷免することは、国民固有の権利である。
2 すべて公務員は、全体の奉仕者であつて、一部の奉仕者ではない。
(3項、4項 省略)
第九十九条  天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その他の公務員は、この憲法を尊重し擁護する義務を負ふ。
 
 ところで、 私がことさら自衛隊員や国家公務員の服務宣誓を持ち出したのは、彼らを統率すべき内閣総理大臣の「あるべき姿」と「現実」との乖離(かいり)が、到底耐え難いまでに大きくなってしまっていることをあらためて指摘しておきたいと考えたからです。
 
 もう少し法令の引用を続けます(これが最後です)。
 
内閣総理大臣の指揮監督権)
第七条  内閣総理大臣は、内閣を代表して自衛隊の最高の指揮監督権を
有する。
 
第六条  内閣総理大臣は、閣議にかけて決定した方針に基いて、行政各部を指揮監督する。
 
 以上のとおり、内閣総理大臣には、自衛隊及び行政各部の最高の指揮監督権限が与えられています。
 自衛隊員や国家公務員が署名押印を求められる宣誓書に「宛先」はないようですが(法令には記載がありません)、仮に誰か1人だけ「服務宣誓書」の宛先を考えるとすれば、「内閣総理大臣」と考えるのが自然でしょう。
 
 ところで、自衛隊員や国家公務員は、日本国憲法を遵守することを誓約することによって、初めてその職につくことが許されます。
 内閣総理大臣には、そのような義務はないのでしょうか?
 残念ながら、内閣総理大臣その他の国務大臣に対し、「日本国憲法を遵守」することを誓約しなければならないという義務を課した規定は、憲法にも、法令にも見当たりません。
 あるのは、憲法99条だけです。
 自衛隊員や国家公務員も、もちろん、日本国憲法99条の憲法尊重擁護義務を課された「公務員」ですが、それとは別に「服務宣誓」の義務が課されています。
 確かに、内閣総理大臣その他の国務大臣は、政治的に選任される特別な立場にありますが、だからといって、自衛隊員や一般職国家公務員よりも、憲法尊重擁護義務の程度が低くて良いなどという理屈はありません。
 逆です。
 政治的に選任された内閣総理大臣等は、その地位の根拠を日本国憲法から直接に与えられた存在です。
 その内閣総理大臣が、自らの地位の源泉である日本国憲法を否定する(遵守しない)ということは「背理」であり、「あり得ない」ことです。
 現行憲法に、内閣総理大臣らに「服務宣誓」義務を課す規定がなく、立憲主義の基本を定めた最高法規の章に、公務員の憲法尊重擁護義務を置くだけにとどめられているのは、そのような「あり得ない」事態など想定していなかったということでしょう。
 
 昭和29年(1954年)の自衛隊創設以来、一貫して維持してきた「専守防衛」の考え方をかなぐり捨て、「集団的自衛権行使容認」に突き進む総理大臣が、日本国憲法の遵守を誓約してその職に就いている自衛隊員を指揮監督しているという恐るべき「背理」について、国会の場で追及する政党はないものか?とかねがね思っていました。
 去る7月の参議院議員選挙において、日本共産党参議院で10人以上の議員を有する院内交渉団体の資格を得たことから、是非「党首討論」でこの点を衝いて欲しいものだと期待しているのです。
 
 最後に、2013年4月27日の「ニコニコ超会議自衛隊ブースを訪れた安倍晋三内閣総理大臣が迷彩服を着て10式戦車に乗ってポーズをとる映像をあらためて眺めておきましょう。これが日本の「現実」なのだということを再確認するために。