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オバマ大統領と安倍首相、それぞれの“演説”とその“帰結”

 今晩(2013年9月29日)配信した「メルマガ金原No.1497」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
オバマ大統領と安倍首相、それぞれの“演説”とその“帰結”
 
 安倍晋三首相は、9月23日からカナダ・米国を訪問し、26日には国連総会における一般討論演説を行いました。テレビ・新聞等で「さわり」だけ見たり読んだりした人は多いと思いますが、首相官邸ホームページに、今回の北米訪問中に行った首相の3回の演説について、その映像と文字起こしが掲載されていますので、ご紹介しておき
ます。
 
平成25年9月25日(ハドソン研究所)
2013年ハーマン・カーン賞受賞に際しての安倍内閣総理大臣スピーチ
※このスピーチにおいては、「もし皆様が私を、右翼の軍国主義者とお呼びになりたいのであれば、どうぞそうお呼びいただきたいものであります」という部分が大きく取り上げられましたが、私がより注目すべきだと思ったのは、上記発言の直後に述べた以下の言葉です。
まとめとして言うならば、日本という国は、米国が主たる役割を務める地域的、そしてグローバルな安全保障の枠組みにおいて、鎖の強さを決定づけてしまう弱い環であってはならない、ということです」 
 
平成25年9月25日
ニューヨーク証券取引所 安倍内閣総理大臣スピーチ
 
平成25年9月26日
第68回国連総会における安倍内閣総理大臣一般討論演説
 
 さて、第68回国連総会で演説した世界の首脳は何も安倍首相だけではありません。とりわけ、米国のバラク・オバマ大統領が非常に注目すべき演説を行ったということが、デオニュース・ドットコムの神保哲生さんによって報じられています。
 
ビデオニュース・ドットコム ニュースコメンタリー(2013年9月27日収録・28日公開)
「国連総会演説・暴走アメリカを諫めるブラジルとそれを持ち上げる日本」(40分36秒)
 
 私は、オバマ大統領の国連演説(9月24日)の中で、神保さんが指摘されたような驚くべき見解が表明されていたことなど全く知りませんでした。
 上記映像の1分57秒~3分7秒の部分にオバマ演説の「さわり」が通訳付きで流れます。
 以下に通訳された演説を書き起こします。
 
(引用開始)
 この機会に、中東と北アフリカに対するこれまでのアメリカの政策と今後私の任期中の政策を説明させてください。
 アメリカは、中東と北アフリカにおける核心的な利益を守るために、軍事力を含むあらゆる国力を使用する用意があります。湾岸戦争の時と同様、アメリカは同盟国や友好国に対する外からの攻撃に立ち向かいます。
 アメリカは、中東と北アフリカからの資源の自由な流通を確保します。アメリカ自身は、輸入石油への依存度を着実に減らしていますが、世界の多くの国が今でも両地域からのエネルギー供給に依存しており、それが遮断されれば、世界経済が不安定化しかねません。
 アメリカは、アメリカ国民を脅かしているテロのネットワークを解体します。可能な限り友好国の能力を高め、他国の主権を尊重し、テロの根本要因に対処します。しかし、国をテロ攻撃から守るために必要な時は直接的な手段をとります。
(引用終わり)
 
 この演説をどう理解したら良いのでしょうか?
 一応文脈的には「中東・北アフリカ」に地域を限定しているものの、言っていることの中身は「全地球規模」で同じことを考えていると解釈すべきでしょうね。
 つまり、アメリカにとっての「核心的な利益」を守るためであれば、国連安全保障理事会の決議がなくても、また国連憲章51条の自衛権の行使と言える場合でなくても、アメリカは独自の判断で軍事力を行使すると、場所もあろうに国連総会で宣言したということなのです。
 さらに、アメリカをテロ攻撃から守るという名目さえあれば(イラク戦争の時もそういう理屈もあったような)、いつでも武力を用いることに躊躇しないという宣言もついています。
 
 さて、そこで「日本」です。
 オバマ大統領の国連総会演説の翌日、安倍首相はハドソン研究所において、集団的自衛権の行使に強い意欲を示し、それが「日本という国は、米国が主たる役割を務める地域的、そしてグローバルな安全保障の枠組みにおいて、鎖の強さを決定づけてしまう弱い環であってはならない」からであると明言しているのです。
 これを安倍首相の「ポチ宣言」と名付けるかどうかは個々人の判断に委ねるべきことですが、それほどまでにして「忠誠心」を示す対象であるアメリカの大統領が、事実上、国連憲章などあってなきが如き「ドクトリン」を発表しているのですから、安倍政権が目指す日本の将来像も自ずから具体的に見えてきたと言わねばなりません。
 
 そういえば、以下のような政府高官の発言も同じ文脈で理解すべきでしょうね。
 
 「高見沢将林(のぶしげ)内閣官房副長官補(安全保障・危機管理担当)は十九日、自民党の安全保障問題に関する合同会議で、集団的自衛権の行使容認に関して「日本の防衛を考えるとき、自衛隊が地球の反対側に絶対に行かないとは言えない」と、自衛隊の海外派遣に地理的制限は設けるべきではないとの考えを示した」(2013年9月20日・東京新聞朝刊より)
 
 また、9月14日の読売テレビの番組で石破茂自民党幹事長が述べたという「集団的自衛権は、国連の概念であって、地理的にどうのこうの、相手がどうのこうのじゃない。必要であれば遠くでも行くし、必要でなければ近くでも行かない」という発言も、まさにぴったり平仄が合うというものです(同日・朝日新聞デジタルより)。
 
 オバマ大統領の演説の中の「アメリカ自身は、輸入石油への依存度を着実に減らしていますが、世界の多くの国が今でも両地域(注:中東・北アフリカ)からのエネルギー供給に依存しており、それが遮断されれば、世界経済が不安定化しかねません」というくだりも、イランと米国(あるいはイスラエル)の間に戦端が開かれ、イランがホルムズ海峡を封鎖する(機雷を敷設する?)という事態となった場合、集団的自衛権は行使できないという憲法上の制約を取り払ってしまっていれば、当然、アメリカは日本の自衛隊の「出兵」を求めるだろうということですね。
 もっとも、イランが「海峡封鎖」などという挙に出なくても、今の議論状況なら、自衛隊の「出兵」が現実味を帯びるはずです。
 

 

 「集団的自衛権」を認めるというのはまさにそういうことなのだという想像力を、どれだけ多くの国民に持ってもらえるか、私たちのこれからの努力がまさに求められています。