広瀬隆さんの講演「原発、人権、そして憲法」(8/17 マガ9学校 第29回)
今晩(2013年9月30日)配信した「メルマガ金原No.1498」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
広瀬隆さんといえば、「舌鋒鋭い反原発の闘士」というイメージが強烈ですが、去る(2013年)8月17日、カタログハウス本社・地下2階セミナーホールで開かれた「マガ9学校」第29回における広瀬隆さんの講演の演題は、「原発、人権、そして憲法~福島第一原発事故を日本近代史から読み解く」というものでした。
その講演の模様がYouTubeにアップロードされていますのでご紹介します。
第1部)明治維新から日本敗戦まで(1時間08分14秒)
第2部)日本国憲法の誕生(41分02秒)
「歯切れ良く」「舌鋒鋭い」語り口はいつも通りですが、原発問題プロパーの話題は第1部の冒頭20分程度であり、以降は、「明治維新」から「日本国憲法誕生」までの「日本近代史」が広瀬節で滔々と語られていきます。
ちなみに、冒頭で語られたのは以下の2つの話題でした。
※「弁護士・金原徹雄のブログ」参照
※同誌では、独自計測に基づく「実測 放射能汚染マップ」が、
8月号 福島市街、千葉県柏市、同県松戸市
9月号 福島県双葉町、同県大熊町
と掲載されています。
第2部では、もっぱら日本国憲法制定史が語られます。「押し付け憲法論」に反駁したいという方のための「早分かり講座」となるかどうか、意見は別れるところかもしれませんが、とにかく視聴している間は説得力十分です。
見終わった後、「自分で同じことを語れるか?」と自問し、「この部分を説得力をもって語る自信がない」というところが見つかれば、そこは自分で勉強すればよいわけです。
私から具体例を1つ挙げてみましょうか。
広瀬さんは、GHQ草案の下敷きとなった鈴木安蔵らの憲法研究会案を高く評価するのですが(そのこと自体に異論はありません)、実は同案には「軍」に関する規定はないものの、「戦争放棄」「戦力不保持」「交戦権否認」など、その後の「9条」に取り込まれた原則も書かれていません(これらは1946年2月3日の「マッカーサー・ノー
ト」が初出です)。
従って、「9条押し付け論」に反駁するためには、憲法研究会案を持ち出すだけでは十分ではありません。
反論の根拠として、「幣原喜重郎9条発案説」を挙げる人があるかもしれませんし、「1946年4月10日施行の総選挙(初めて女性に参政権が認められた)で民主的に選出された国民代表(衆議院)によって構成された第90回帝国議会において慎重審議された」ことによって正統性は付与されており「押し付け論」は意味がない、とい
う考えもあり得るでしょう。あるいは、「押し付けで何が悪い、良いものは良いのだ」と開き直るという考え方もあり得ます。
いずれにしても、自分なりの「この憲法は自分たちのものだ」という自信に裏付けを与えるための土台を提供してくれる(仕上げは自分でやらねばなりませんが)講演として貴重なものだと思いますので、視聴をお薦めしたいと思います。
憲法研究会「憲法草案要綱」(1945年12月26日)
ラウエル「私的グループによる憲法改正草案(憲法研究会案)に対する所見」(1946年1月11日)
極東委員会の関与