今晩(2013年10月8日)配信した「メルマガ金原No.1506」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
昨日(2013年10月7日)、「九条の会」は、3人の呼びかけ人(大江健三郎氏、奥平康弘氏、澤地久枝氏)と事務局長の小森陽一氏らが都内で会見を開き、「集団的自衛権行使による『戦争する国』づくりに反対する国民の声を」と題するアピールを発表しました。
その模様を、共同通信は次のように伝えました。
(引用開始)
憲法9条を守ろうと2004年に結成された市民団体「九条の会」が7日、都内で記者会見し、集団的自衛権行使容認に向けた動きなどをめぐり「日本国憲法は大きな試練の時を迎えている。『戦争する国』づくりに反対する」とのアピールを発表した。
(引用終わり)
この会見は、IWJが中継し、「期間限定」で視聴できます。
早速、昨日発表されたアピールをご紹介しようと思うのですが、実は、「九条の会」公式サイト( http://www.9-jo.jp/ )のどこを探しても見当たりません。
ネット検索して見つけたサイトから孫引きしておきますが、会見冒頭で大森事務局長が読み上げた内容と「ほぼ」一致していますので、これが発表されたアピールそのものだと思います。
(引用開始)
「集団的自衛権行使による『戦争する国』づくりに反対する国民の声を」
日本国憲法はいま、大きな試練の時を迎えています。安倍首相は、「憲法改正は私の歴史的使命」と憲法の明文を変えることに強い執念をもやす一方で、歴代内閣のもとでは「許されない」とされてきた集団的自衛権行使に関する憲法解釈を転換し、「戦争する国」をめざして暴走を開始しているからです。
日本が武力攻撃を受けていなくともアメリカといっしょに海外で戦争するという集団的自衛権の行使が、「必要最小限度の範囲」という政府の従来の「自衛権」解釈から大きく逸脱することは明白です。それどころか、日本やアメリカの「防衛」ではなく、日米同盟を「世界全体の安定と繁栄のための『公共財』」(防衛省「防衛力の在り方検討に関する中間報告」)とみなし、世界中のあらゆる地域・国への武力介入をめざす体制づくりです。
この企ては、本来なら衆参両院の三分の二以上と国民投票における過半数の賛成という憲法「改正」の手続きを経なければ許されない内容を、閣議決定だけで実現してしまうものです。そのため、長年にわたり集団的自衛権行使を違憲とする政府の憲法解釈を支えてきた内閣法制局長官の入れ替えまでおこないました。麻生副総理が学ぶべきと称賛したナチスがワイマール憲法を停止した手口そのものです。これは立憲主義を根本からつき崩すものであり、とうてい容認することはできません。
それだけではありません。安倍内閣は、自衛隊を戦争する軍隊にするために、海外での武力行使に関する制約をすべて取り払い、「防衛計画の大綱」の再改定により、「海兵隊的機能」や「敵基地攻撃能力」など攻撃的性格をいちだんと強めようとしています。
「戦争する国」づくりにも足を踏み入れようとしています。すでに安倍内閣は、防衛、外交に関する情報を国民から覆い隠し首相に強大な権限を集中する「特定秘密保護法案」や日本版NSC(国家安全保障会議)設置関連法案などを臨時国会に提出しようとしています。自民党が作成した「国家安全保障基本法案」では、「教育、科学技術、運輸、通信その他内政の各分野」でこれらの「安全保障」政策を優先させ、軍需産業の「保持・育成」をはかるとしているばかりでなく、こうした政策への協力を「国民の責務」と規定しています。これを許せば、憲法の条文には手をふれないまま自民党が昨年四月に発表した「日本国憲法改正草案」における第九条改憲の内容をほとんど実現してしまいます。
戦前、日本国民はすべての抵抗手段を奪われ、ズルズルと侵略戦争の泥沼に巻き込まれていった苦い経験をもっています。しかし、いま日本国民は国政の最高決定権をもつ主権者であり、さらに侵略戦争の教訓を活かした世界にも誇るべき九条を含む日本国憲法をもっています。いまこそ日本国憲法を守るという一点で手をつなぎ、歴史の教訓に背を向ける安倍内閣を草の根からの世論で包囲し、この暴走を阻むための行動にたちあがりましょう。
2013年10月7日
九条の会
(引用終わり)
(引用終わり)
思えば、2004年6月10日、最初の「九条の会」アピールの冒頭の一文は「日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされています」というものでした。
今回のアピールが、それとほぼ同一の文章で始まらざるを得なかったのも、大きな危機感のなせるわざでしょうが、客観的な状況が、2004年当時とは比較にならぬほど悪化していることは、会見での3人の呼びかけ人のお話からも伺われるところです。
なお、「九条の会」では、このアピールを踏まえ、来る(2013年)11月16日(土)に東京都内で第5回「九条の会」全国交流集会を開催すること、集会でのシンポジウムには、柳澤協二氏(元内閣官房副長官補)と浦田一郎氏(明治大学教授)が登壇予定であることが、大森事務局長から発表されました。
ところで、余計なお世話かもしれませんが、「九条の会」オフィシャルサイトをもっと見やすく、利用しやすい、若い人たち(高齢者もそうですが)が頻繁に訪問したくなるようなサイトに生まれ変わらせようという、技能と意欲を持った篤志家はいないものでしょうか?