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小林恭子氏のリポートで知る“敗戦国の悲哀”~ところで日本は“戦勝国”でしたっけ?

 今晩(2013年12月13日)配信した「メルマガ金原No.1572」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 

 

小林恭子氏のリポートで知る“敗戦国の悲哀”~ところで日本は“戦勝国”でしたっけ?
 
2013年12月9日 安倍晋三内閣総理大臣記者会見 より
(冒頭発言から抜粋引用開始)
 日本の外交・安全保障政策の司令塔たる、いわゆる日本版NSC国家安全保障会議を設置する法案については、民主党、日本維新の会との協議を通じて、修正を行い、みんなの党にも御賛同をいただいて成立をいたしました。先般、中国によって力を背景とした一方的な防空識別区の設定が行われましたが、日本を取り巻く安全保障環境が一層厳しさを増している現実があります。他方で、いかなる状況にあっても、国民の生命と財産は断固として守り抜いていかなければなりません。こうした点について、与野党の立場を超えて認識を共有できたからこそ、幅広い合意のも
と、法案を成立させることができたと考えています。
 国家安全保障会議は、早速、先週発足いたしました。今後、このNSCが各国のNSCとの間で情報のやりとりを活発に行ってまいります。今年1月のアルジェリアでの人質事件の際には、イギリスのキャメロン首相から情報提供を受けましたが、こうした情報交換を進めることが、国民の生命と財産を守ることにつながると確信しています。NSCの新たな事務局長には、すぐにでも各国NSCとの連携と密にするため、1月から世界を飛び回ってもらわなければならないと考えています。
 しかし、世界各国では、国家秘密の指定、解除、保全などには明確なルールがあります。そのため、我が国がこうした秘密情報の管理ルールを確立していなければ、そうした外国からの情報を得ることはできません。さらに、提供された情報は、第三者に渡さないのが情報交換の前提であります。いわゆるサード・パーティー・ルールです。その上でチェック機能をどうつくるかが課題となりました。日本を守っている航空機や艦船の情報が漏えいしてしまうという事態になれば、国民の安全が危機に瀕することになります。また、人命を守るためには、何としてもテロリストへの漏えいを防止しなければならない、そういう情報があります。国民の生命と財産を守るためには、国家安全保障会議の設置とあわせて、一刻も早く、特定秘密保護法を制定することが必要でありました。
(引用終わり)
 
 ちなみに、上記記者会見は、首相官邸で行われるものとしては、実に10月1日以来の開催でした。その間、外遊先での内外記者会見はあったものの、これほど記者会見を忌避する総理も珍しいと思います。そもそも、内閣記者会には鋭い突っ込みを入れる記者などほとんどいないというのに。よほど質疑応答に自信がないのだろうか。
 
 さて、上記記者会見の中の、日本版NSC国家安全保障会議)と特定秘密保護法への言及を抜き出したのは、以下の文章を一読し、非常に感心したことによります。
 それは、在英ジャーナリストの小林恭子さんが週刊東洋経済の(2013年)11月30日号に書かれた「『スノーデン』で大揺れ 敗戦国ドイツの悲哀」という記事(ご自身のブログ「小林恭子の英国メディア・ウォッチ」に転載されたもの)でした。
 そんなに長いものではありませんので、是非、リンク先をお読みいただきたいのですが、私が特に関心をひかれた部分を抜粋してご紹介します。
 
(抜粋引用開始)
 ドイツのメルケル首相の携帯電話が米国家安全保障局(NSA)によって盗聴されている――そんな衝撃的な疑惑が明らかになったのは10月の独誌の調査によってだった。
(略)
 世界の主要国が互いにスパイ行為を行っていることはどの国の首脳陣も認識しているが、外交には表と裏がある。首相クラスの電話の会話を同盟国が盗聴し、かつその事実を知らなかった、とは対外的にも国内的にも二重の恥だ。
(略)
 10月末、米大統領広報官は、メルケルの携帯電話を過去に盗聴していたことを事実上認めた。一方のキャメロン英首相の携帯電話については過去、現在、将来も盗聴していないとし、英独の差が出た。
 そもそも米国は英国、カナダ、オーストラリア、ニュージーランドとともに「ファイブ・アイズ」と呼ばれる協定を結び、諜報情報を共有するとともに、互いへのスパイ活動を禁じている。この協定は米英2国間で第2次世界大戦後に始まり、独仏は加盟していない。
(略)
 ドイツにはミニNSAともいえる連邦情報局(BND)がある。現在はNSAからの諜報情報に大きく依存しているが、ゆくゆくはさらに組織を拡大することを独政府は望んでいる。
 現実主義者のメルケルは、ファイブ・アイズのような関係を米国と持つために、次の一歩を進めている。11月第1週に自国の情報機関幹部らを米国に送ったのだ。
 これは、独米間の「信頼関係の再構築」の一環として、NSAやCIA幹部らにドイツからの情報収集の詳細を聞きだし、「二国間同士でスパイ行為を行わない」との確約取り付けを狙ったものだった。
 しかし、11月12日付けの独シュピーゲル誌が伝えたところでは、ドイツ側は新たな情報を得ないまま帰国したようだ。米側は、スノーデンが持っているドイツ関連情報、スノーデンが業務を離れた5月以降の諜報情報を「ドイツ向けパッケージ」として提供する用意があると持ちかけただけだったという。
  ファイブ・アイズの長い歴史、9・11テロの実行犯らが独ハンブルグで飛行機の運転研修を受けていた、といった要素を考慮しても、実に冷たい対応といえる。
(略)
 巨大な情報網を築くNSA、その子分的存在のGCHQ。この米英連携による諜報情報の収集体制に、事実上頼らざるを得ない欧州。この構図はスノーデン後も変わらない。米政府側がどれほど好き勝手に情報を収集していても、欧州は文句を言いながらそれについていかざるを得ない。
 スノーデンは、NSAの強権ぶりと米英と欧州諸国との力関係を、残酷に浮き彫りにしたといえる。
(引用終わり)
 
 ドイツにしてこれが現状とすれば、日本がNSCを作ろうが、特定秘密保護法を作ろうが、アメリカが日本にドイツ以上の待遇を与えると考える根拠などとても想像できないのですが、自民党・公明党の皆さん(それ以外にもいっぱいいますが)は、何か私たちの知らない「特別な情報」でも持っているのでしょうかね(それは「秘密」かな)。
 
 何も考えていない政治家ならともかく、よもや「優秀」で知られる日本の官僚が、「ファイブ・アイズ」並の待遇を日本が受けられるなどと信じているとは思えませんから、彼らには彼らなりの独自の「思惑」がきっとあるのでしょうね。
 その「思惑」は、特定秘密保護法を子細に分析すれば透けて見えてくるはずのものなのでしょう。
 
(参考)
2013年11月30日の日本経済新聞にファイブ・アイズに関する記事が掲載されています。
「英語圏に『スパイ倶楽部』」=米の盗聴疑惑、欧州などの批判の矛先=
 
 

(付録)
『いつのまにか』 中川五郎
作詞:山内 清 作曲:中川五郎