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原発推進を明記する「エネルギー基本計画(案)」を許さない!

 今晩(2013年12月14日)配信した「メルマガ金原No.1573」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
 
 エネルギー政策基本法(平成十四年六月十四日法律第七十一号)という法律の第十二条は、以下のように定めています。法律の条文というのは慣れていないと読みにくいものですが、まあ我慢して読んでください。
 
(エネルギー基本計画)
第十二条 政府は、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的
な推進を図るため、エネルギーの需給に関する基本的な計画(以下「エネルギー基本計画」という。)を定めなければならない。
2 エネルギー基本計画は、次に掲げる事項について定めるものとする。
一 エネルギーの需給に関する施策についての基本的な方針
二 エネルギーの需給に関し、長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策
三 エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的かつ計画的に推進するために
重点的に研究開発のための施策を講ずべきエネルギーに関する技術及びその施策
四 前三号に掲げるもののほか、エネルギーの需給に関する施策を長期的、総合的
かつ計画的に推進するために必要な事項
3 経済産業大臣は、関係行政機関の長の意見を聴くとともに、総合資源エネルギ
ー調査会の意見を聴いて、エネルギー基本計画の案を作成し、閣議の決定を求めなければならない。
4 経済産業大臣は、前項の規定による閣議の決定があったときは、エネルギー基本
計画を、速やかに、国会に報告するとともに、公表しなければならない。
5 政府は、エネルギーをめぐる情勢の変化を勘案し、及びエネルギーに関する施策の
効果に関する評価を踏まえ、少なくとも三年ごとに、エネルギー基本計画に検討を加え、必要があると認めるときには、これを変更しなければならない。
6 第三項及び第四項の規定は、エネルギー基本計画の変更について準用する。
7 政府は、エネルギー基本計画について、その実施に要する経費に関し必要な資金
の確保を図るため、毎年度、国の財政の許す範囲内で、これを予算に計上する等その円滑な実施に必要な措置を講ずるよう努めなければならない。
 
 この規定に基づいて、ほぼ3年ごとに(上記5項)「エネルギー基本計画」の見直しが行われてきました。最新の「エネルギー基本計画」は、2010年(平成22年)6月に策定されたものです。
 
「エネルギー基本計画」(平成22年版)
 
 この民主党政権下で策定された(閣議決定されたのは菅直人内閣発足直後)「エネルギー基本計画」の「第3章 第2節 2 原子力発電の推進 (1)目指すべき姿」は以下のように述べていました。
 
(引用開始)
 原子力は供給安定性と経済性に優れた準国産エネルギーであり、また、発電過程において CO2 を排出しない低炭素電源である。このため、供給安定性、環境適合性、経済効率性の3E を同時に満たす中長期的な基幹エネルギーとして、安全の確保を大前提に、国民の理解・信頼を得つつ、需要動向を踏まえた新増設の推進・設備利用率の向上などにより、原子力発電を積極的に推進する。また、使用済燃料を再処理し、回収されるプルトニウム・ウラン等を有効利用する核燃料サイクルは、原子力発電の優位性をさらに高めるものであり、「中長期的にブレない」確固たる国家戦略として、引き続き、着実に推進する。その際、「まずは国が第一歩を踏み出す」姿で、関係機関との協力・連携の下に、国が前面に立って取り組む。
 具体的には、今後の原子力発電の推進に向け、各事業者から届出がある電力
給計画を踏まえつつ、国と事業者等とが連携してその取組を進め、下記の目標の実現を目指す。
 まず、2020 年までに、9基の原子力発電所の新増設を行うとともに、設備利用率
約 85%を目指す(現状:54 基稼働、設備利用率:(2008年度)約 60%、(1998年度)約84%)。さらに、2030 年までに、少なくとも 14 基以上の原子力発電所新増設を行うとともに、設備利用率約 90%を目指していく。これらの実現により、水力等に加え、原子力を含むゼロ・エミッション電源比率を、2020 年までに 50%以上、2030 年までに約70%とすることを目指す。
 他方、世界各国が原子力発電の拡大を図る中、原子力の平和利用を進めてきた
我が国が、原子力産業の国際展開を進めていくことは、我が国の経済成長のみならず、世界のエネルギー安定供給や地球温暖化問題、さらには原子力の平和利用の健全な発展にも貢献する。また、我が国の原子力産業の技術・人材など原子力発電基盤を維持・強化するとともに、諸外国との共通基盤を構築するとの観点からも重要である。こうした認識の下、ウラン燃料の安定供給を確保するとともに、核不拡散、原子力安全、核セキュリティを確保しつつ、我が国の原子力産業の国際展開を積極的に進める。
 なお、我が国は、今後も 、非核三原則を堅持しつつ、原子力基本法に則り、原
子力の研究、開発及び利用を厳に平和の目的に限って推進する。
(引用終わり)
 
 この9か月後に「3.11」を迎えることになったという訳です。
 そして、それから3年が経過しました。エネルギー政策基本法12条5項に基づき、「エネルギー基本計画」見直しの時期がやってきたのですが、2012年12月の総選挙によって政権は自民・公明連立政権に交替しており、第二次安倍晋三内閣の下で見直し作業が進められてきました。
 
 そして、去る(2013年)12月6日、「エネルギー基本計画に対する意見(案)」についてのパブリックコメントの募集が始まりました。
 
 「意見公募要領」によれば、
 
意見受付期間 平成25年12月6日~平成26年1月6日
意見提出方法等
 ① e-Govの「意見提出フォーム」殻の提出
 ② FAX(03-3501-2305)での提出
 ③ 書面(郵送での提出)  
   宛先 〒100-8931
       東京都千代田区霞ヶ関1-3-1
        資源エネルギー庁長官官房総合政策課
        パブリックコメント受付担当宛
意見の対象 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会・エネルギー基本計画に対する意見(案)について(別添)
 
となっていますが、問題は「意見の対象」です。
 別添のPDFファイルを開けてみると「エネルギー基本計画に対する意見(案) 平成25年12月 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」となっており、この「意見(案)」の内容は、意見公募開始当日(2013年12月6日)に開催された基本政策分科会で審議されたヴァージョンでしょう。
 ・・・というか、12月6日に公開された「意見(案)」は多分それだったはずです。
 12月6日の「基本政策分科会」で審議された「意見(案)」はこれです。
 
 ところが、昨日のニュースを見て驚きました。
 例えば、NHKニュースは以下のように伝えていました。
(引用開始)
新エネルギー基本計画 意見取りまとめ 12月13日 23時41分
 政府が年明けに閣議決定する新しい「エネルギー基本計画」について経済産業省は13日、審議会を開いて意見を取りまとめ、この中で原子力発電については「基盤となる重要なベース電源」だと明記して原発の再稼働に前向きな姿勢を示しました。
 経済産業省は13日夜、「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」を開き、新しい「エネルギー基本計画」について委員の意見を取りまとめました。
 この中で、原子力発電については今月6日に示された素案に比べて位置づけを
明確にし、安定供給、コスト低減、温暖化対策の観点から、安全性の確保を大前提に引き続き活用していく「基盤となる重要なベース電源」だと明記しました。
 この「ベース電源」というのは電気を一定量、安定的に供給する電源を意味し、
原発の再稼働に前向きな姿勢を示した形です。
 ただ、今後の原子力発電の方向性については、依存度を可能なかぎり低くする
とする一方、「必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する」としました。
 また、原発が全体の電力供給に占める割合については現時点で原発の再稼働
が見通せないことから書き込まれませんでした。
 政府は、与党での議論などを踏まえたうえで、来年1月に「エネルギー基本計画」
を閣議決定することにしています。
(後略)
(引用終わり)
 
 「何、これ?」と思いませんか?
 1週間前にパブコメ(意見公募)を開始したばかりなのですよ。その「意見の対象」をさっさと改訂して、国民には「古いヴァージョン」について形だけ意見を聞いたことにしておけば良いというのでしょうか?・・・と頭にきて調べてみました。
 昨日(12月13日)の「基本政策分科会」で配布された「意見(案)」は、たしかに「12月6日版」とは変わっていました(ページ数も増えている)。
 さらに、配布資料の中には「見え消し版」もあり、どこが改訂されたのかがすぐ分かります。
 
 そして、e-Govのパブコメ募集コーナーに掲載された「意見(案)」は?
 素早く「12月13日版」に差し替えられていました。そして、末尾に「備考 委員からの御意見を踏まえ加筆しました」と短い注記が付いていました。
 しかし、ニュースに気がつかなかった人には、この1週間で何が変わったのかちっとも分からないのはフェアではありません。せめて参考資料として、「見え消し版」も掲載すべきです。
 
 それに、12月13日の「基本政策分科会」配付資料を調べていて、「新しいエネルギー基本計画の策定に向けた国民からの御意見(平成25年12月6日~平成25年12月12日)」が掲載されていることに気がつきました。
 12月6日からの1週間に寄せられた国民や各種団体からの意見がまとめられたものです(環境エネルギー政策研究所による「エネルギー基本計画への政策提言」が冒頭に掲載されています)。
 これらは、当然、改訂(加筆?)前の「意見(案)」についての意見だと思うのですが、これらの団体や個人に、「加筆」があったことを個別に連絡したのでしょうかね?
 
 このように、手続面でもひどいものですが、内容はもっとひどいものです。
 60ページ以上もあるため、読み通すだけでも大変ですが、是非一度目を通していただきたいと思います。
 ややこしい経過がありましたが、現在、パブコメ募集がされてる「12月13日版」をあらためてご紹介しておきます。
 
「エネルギー基本計画に対する意見(案) 平成25年12月 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会」(12月13日版)
 
 上記の骨子をまとめたものがあります(要約の正確性は確認していません)。
 
 
「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会 エネルギー基本計画に対する意見の骨子(案)」(12月13日版)
 
 全部読んでパブコメに意見を送るのは手に余るという方には、とりあえず以下の部分(23頁~29頁)だけでも読まれてはどうでしょうか。
 
第3章 新たなエネルギー需給構造の実現に向けた取組
第1節 原子力政策の基本方針と政策の方向性
1.原子力政策の基本方針
(1)原子力政策の出発点-東京電力福島第一原子力発電所事故の真摯な反
(2)エネルギー政策における原子力の位置付けと政策の方向性
「大きく変化する国際的なエネルギー需給構造の中で、深刻なエネルギー制約を抱える我が国が、エネルギー安全保障の強化、経済性のあるエネルギー源の確保、温室効果ガス排出の抑制という重大な課題に対応していくためには、多様かつ柔軟な電源オプションを確保することが必要である。
 原子力発電は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年に
わたって国内保有燃料だけで供給が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源として引き続き活用していく。
 原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電
所の効率化などにより可能な限り低減させる。その方針の下で、我が国のエネルギー制約を考慮し、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、必要とされる規模を十分に見極めて、その規模を確保する。
 いかなる事情よりも安全性を最優先し、国民の懸念の解消に全力を挙げる前提の
下、世界で最も厳しい水準の新規制基準の下で原子力規制委員会によって安全性が確認された原子力発電所について再稼動を進める。
 また、万が一事故が起きた場合に被害が大きくなるリスクを認識し、事故への備えを
拡充しておくことが必要である。
 さらに、原子力利用に伴い確実に発生する使用済核燃料は、世界共通の悩みで
あり、将来世代に先送りしないよう、現世代の責任として、その対策を着実に進めることが不可欠である。
 今後、原子力政策を進めるに当たっては、以下のとおり、具体的な施策を実施す
る。」
2.具体的施策の方向性
(1)福島の再生・復興に向けた取組
(2)不断の安全性向上と安定的な事業環境の確立
(3)対策を将来へ先送りせず、着実に進める取組
 ①使用済燃料対策の抜本強化と総合的な推進
  1)高レベル放射性廃棄物の最終処分に向けた取組の抜本強化
  2)使用済燃料の貯蔵能力の拡大
  3)放射性廃棄物の減容化・有害度低減のための技術開発
 ②核燃料サイクル政策の着実な推進
核燃料サイクルについては、六ヶ所再処理工場の竣工遅延やもんじゅのトラブルなどが続いてきた。このような現状を真摯に受け止め、これら技術的課題やトラブルの克服など直面する問題を一つ一つ解決することが重要である。その上で、使用済燃料の処分に関する課題を解決し、将来世代のリスクや負担を軽減するためにも、放射性廃棄物の減容化・有害度低減や、資源の有効利用等に資する核燃料サイクルについて、これまでの経緯等も十分に考慮し、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、引き続き着実に推進する。
 具体的には、安全確保を大前提に、プルサーマルの推進、六ヶ所再処理工場
の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工等を着実に進める。また、国際公約に従ってプルトニウムの適切な管理と利用を行うとともに、米国や仏国等と国際協力を進めつつ、高速炉等の研究開発に取り組む。
 もんじゅについては、これまでの取組の反省と教訓の下、実施体制を再整備する。
その上で、新規制基準への対応など稼働までに克服しなければならない課題への対応を着実に進めるとともに、もんじゅ研究計画に従い、高速増殖炉の成果のとりまとめ等を実施する」
(4)国民、自治体、国際社会との信頼関係の構築
 ①東京電力福島第一原子力発電所事故を踏まえた広聴・広報
 ②立地自治体等との信頼関係の構築
 ③世界の原子力平和利用と核不拡散への貢献
 
 安倍自公政権が進めようとするとんでもない政策は、誇張ではなく「枚挙にいとま無し」なので、私たちにしてもどこに重点を置いたものやらという状態です。
 
 特定秘密保護法が成立した直後からだけでも、
 
12月11日 共同通信 「安保戦略「国際貢献に一層関与」 武器輸出推進を明記」
 
12月11日 共同通信 「政府、共謀罪創設を検討 組織犯罪処罰法改正で」
※菅官房長官は次期通常国会への提出はないと表明したようですが。
 
12月13日 東京新聞 「オスプレイ17機導入明記 次期中期防の全容判明」
 
12月14日 東京新聞 「教育行政「首長に権限」 中教審、教委改革で答申」
 
というようなニュースが連日報じられ、いささか呆然とせざるを得ません。
 
 とはいえ、いつまでも呆然とばかりもしていられないので、戦線拡大を、戦力疲弊という観点から悲観するばかりではなく、これまで連帯できていなかった層とも手を結べるチャンスが拡大するのだという位置付けが必要となってくると思います。
 ということで、前から分かっていたことですが、現政権が、原発推進一辺倒で、ブレーキは全く装着されていないことがはっきりとした「エネルギー基本計画」(案)の内容を急速に周囲に広め、「原発推進を許さない」世論のたかまりを目指すべきです。
 「パブコメ送っても無視されるだけでしょう?」という意見もあるでしょうが、それを言い出せば、「デモしたって何も変わらないでしょう?」とか「選挙に行ったって何も変わらないでしょう?」と言うのと同じことです。
 あなたの選挙区で共産党候補に投票しても死票になったかもしれません(そんな経験は私も何度もしています)。でも、
  自民党候補10万票で当選  共産党候補1万票で落選
と、
  自民党候補6万票で当選  共産党候補5万票で落選
って同じだと思いますか?
 棄権した人が5万人いたとして、その半分の人が投票所に足を運んでいれば、結果は違ったものになったかもしれません。

 

 世の中を変えていくのは(良くするのも悪くするのも)私たち国民1人1人の意見と行動によるのだということを自覚すれば、目に見えた効果があろうとなかろうと、自ずからなすべきことは分かるはずです。