『原発ゼロ社会への道──新しい公論形成のための中間報告』(原子力市民委員会)について
今晩(2013年12月24日)配信した「メルマガ金原No.1583」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
『原発ゼロ社会への道──新しい公論形成のための中間報告』(原子力市民委員会)について
今年(2013年)の4月15日、「原子力市民委員会」という組織が発足しました。
その模様を報じたOurPlanet-TVの映像とレポートをご紹介します。
(引用開始)
原子力市民委員会が発足~脱原発に向け政策提言
脱原発に向けて政策提言を行うシンクタンク「原子力市民委員会」が15日に発足し、都内で記者会見を開いた。吉岡斉委員(元政府原発事故調査委員会)は、国の原子力政策を批判。「これからは住民の意見を汲み取っていかなければならない」と訴えた。委員会では来年3月までに、脱原子力政策大綱をまとめ、原子力規制委員会や復興庁など関係機関に提言を行う。
原子力市民委員会は、科学者や元原発設計者、弁護士、NGOなど11名から構成される。被災者支援、使用済核燃料・核廃棄物の管理・処分、原子力規制や脱原発に向けた具体的な行程などを議論する4つの部会を設ける。事務局となるNPO法人 高木仁三郎市民科学基金が金銭面でサポートする。
会見の冒頭で河合弘之弁護士(高木基金代表理事)は「『脱原発』の退潮を感じる今こそ、寄せられた寄付金で高い見地に基づいた情報発信をする必要を感じた」と会の設立の経緯について述べた。
井野博満委員(東京大学名誉教授)は、「原発を止めてきたのは市民の力。今後は全体的な展望を作っていくことが大事。そこにこの委員会の役割がある」と説明した。また、福島からの参加となる荒木田岳委員(福島大学准教授)は、「福島では今この瞬間も、人びとが被ばくし続けている。この事態を変えていきたい」と訴えた。
「原子力委員会の議論の内容と政策決定の手続きに大きな疑問を持ってきた」と不満を露わにしたのは、舩橋晴俊委員(法政大学社会学部教授)。「改善すべき点がある。規制委員会がやってこなかった議論と手続きをこの委員会でやっていきたい」と力を込めた。
原子力市民委員会は、科学者や元原発設計者、弁護士、NGOなど11名から構成される。被災者支援、使用済核燃料・核廃棄物の管理・処分、原子力規制や脱原発に向けた具体的な行程などを議論する4つの部会を設ける。事務局となるNPO法人 高木仁三郎市民科学基金が金銭面でサポートする。
会見の冒頭で河合弘之弁護士(高木基金代表理事)は「『脱原発』の退潮を感じる今こそ、寄せられた寄付金で高い見地に基づいた情報発信をする必要を感じた」と会の設立の経緯について述べた。
井野博満委員(東京大学名誉教授)は、「原発を止めてきたのは市民の力。今後は全体的な展望を作っていくことが大事。そこにこの委員会の役割がある」と説明した。また、福島からの参加となる荒木田岳委員(福島大学准教授)は、「福島では今この瞬間も、人びとが被ばくし続けている。この事態を変えていきたい」と訴えた。
「原子力委員会の議論の内容と政策決定の手続きに大きな疑問を持ってきた」と不満を露わにしたのは、舩橋晴俊委員(法政大学社会学部教授)。「改善すべき点がある。規制委員会がやってこなかった議論と手続きをこの委員会でやっていきたい」と力を込めた。
原子力市民委員会メンバー
荒木田岳(福島大学行政政策学類准教授)
井野博満(東京大学名誉教授)
大島堅一(立命館大学国際関係学部教授)
大沼淳一(元愛知県環境調査センター主任研究員)
海渡雄一(弁護士、脱原発弁護団全国連絡会 共同代表)
後藤政志(元東芝 原発設計技術者)
島薗 進(上智大学神学部教授)
舩橋晴俊(法政大学社会学部教授)
満田夏花(国際環境NGO FoE Japan 理事)
武藤類子(福島原発告訴団団長)
吉岡 斉(九州大学副学長、元政府原発事故調査委員会委員)
アドバイザー(略)
荒木田岳(福島大学行政政策学類准教授)
井野博満(東京大学名誉教授)
大島堅一(立命館大学国際関係学部教授)
大沼淳一(元愛知県環境調査センター主任研究員)
海渡雄一(弁護士、脱原発弁護団全国連絡会 共同代表)
後藤政志(元東芝 原発設計技術者)
島薗 進(上智大学神学部教授)
舩橋晴俊(法政大学社会学部教授)
満田夏花(国際環境NGO FoE Japan 理事)
武藤類子(福島原発告訴団団長)
吉岡 斉(九州大学副学長、元政府原発事故調査委員会委員)
アドバイザー(略)
(引用終わり)
「原子力市民委員会」の充実した公式サイト( http://www.ccnejapan.com/ )から、「設立趣意書」の一部を抜粋してご紹介します。
(抜粋引用開始)
福島原発事故によって日本と世界の人々は、チェルノブイリ事故のような過酷事故が、特殊な国の特殊な原子炉に限られたものではないことを学んだ。そして原発の過酷事故のもたらす巨大な損失を修復することは全く不可能であり、しかも過酷事故リスクは無視できないほど高いということを、身をもって学んだ。原子核エネルギーのコントロールの失敗という、決して起こしてはならない事態を発生させたのである。大きな犠牲によって得られた教訓を生かすためには、脱原発社会の建設という、もうひとつの道を歩む以外にない。
ここにおいて重要になってきたのは、脱原発社会建設のための公共政策上の具体的道筋を、倫理的観点を盛り込みながら本気で考えることである。私たちにはその経験が乏しい。それは従来の政治・行政体制のもとで、脱原発が進むことはほとんどあり得ないと多くの人が考えてきたためである。しかし福島原発事故によってその状況は大きく変わった。脱原発が世論の多数意見となった以上、脱原発に至る最善の具体的道筋をつけることが、今や現実的課題となったのである。その具体的道筋の中核部分をなすのはもちろん公共政策である。ここで現実的というのは、新たな公共政策の実施によって生ずるメリットと、その副作用とを吟味し、冷静な評価を行うことである。
以上のような状況をふまえて、このたび、脱原発社会建設のための具体的道筋について、公共政策上の提案を行うための専門的組織として「原子力市民委員会」を設立することとした。1956年に設立された政府の「原子力委員会」をはじめ、原子力政策に関与する政府の諸組織(原子力規制委員会、経済産業省総合資源エネルギー調査会、復興庁など)に対抗する組織として、脱原発へ向けた原子力政策改革の具体的方針を提案すること、およびそのために必要な調査研究を行い、その成果を公開することが目的である。最低5年以上、できれば10年以上は、この組織を維持したい。
(略)
政府の原子力委員会は、最重要の政策文書として「原子力政策大綱」を定め、それ以外にも多くの専門部会等を設置し、問題別の報告書を発表してきた。また随時、委員会としての見解・声明を発表してきた。
原子力市民委員会は、それに対抗した政策提言活動を進めていきたい。その最重要の報告書となるのは「脱原子力政策大綱」である。設立1周年を目処に、第1回の脱原子力政策大綱を公表したい。基本的には毎年、改訂を加えていく予定である。参加者たちの間で意見の一致がみられない論点については、複数案についてそれぞれ長所・短所を明記して、並記する。無理に一本化する必要はない。また、脱原子力政策大綱以外にも、重要度の高いテーマについて各論的な報告書を随時まとめる。急を要する重要問題については適宜、見解・声明を発表する。さらに、
ここにおいて重要になってきたのは、脱原発社会建設のための公共政策上の具体的道筋を、倫理的観点を盛り込みながら本気で考えることである。私たちにはその経験が乏しい。それは従来の政治・行政体制のもとで、脱原発が進むことはほとんどあり得ないと多くの人が考えてきたためである。しかし福島原発事故によってその状況は大きく変わった。脱原発が世論の多数意見となった以上、脱原発に至る最善の具体的道筋をつけることが、今や現実的課題となったのである。その具体的道筋の中核部分をなすのはもちろん公共政策である。ここで現実的というのは、新たな公共政策の実施によって生ずるメリットと、その副作用とを吟味し、冷静な評価を行うことである。
以上のような状況をふまえて、このたび、脱原発社会建設のための具体的道筋について、公共政策上の提案を行うための専門的組織として「原子力市民委員会」を設立することとした。1956年に設立された政府の「原子力委員会」をはじめ、原子力政策に関与する政府の諸組織(原子力規制委員会、経済産業省総合資源エネルギー調査会、復興庁など)に対抗する組織として、脱原発へ向けた原子力政策改革の具体的方針を提案すること、およびそのために必要な調査研究を行い、その成果を公開することが目的である。最低5年以上、できれば10年以上は、この組織を維持したい。
(略)
政府の原子力委員会は、最重要の政策文書として「原子力政策大綱」を定め、それ以外にも多くの専門部会等を設置し、問題別の報告書を発表してきた。また随時、委員会としての見解・声明を発表してきた。
原子力市民委員会は、それに対抗した政策提言活動を進めていきたい。その最重要の報告書となるのは「脱原子力政策大綱」である。設立1周年を目処に、第1回の脱原子力政策大綱を公表したい。基本的には毎年、改訂を加えていく予定である。参加者たちの間で意見の一致がみられない論点については、複数案についてそれぞれ長所・短所を明記して、並記する。無理に一本化する必要はない。また、脱原子力政策大綱以外にも、重要度の高いテーマについて各論的な報告書を随時まとめる。急を要する重要問題については適宜、見解・声明を発表する。さらに、
(引用終わり)
そして、「原子力市民委員会」は、2013年10月7日、『原発ゼロ社会への道──新しい公論形成のための中間報告』を発表しました。
『原発ゼロ社会への道──新しい公論形成のための中間報告』(PDF/本文113頁)
同・要約版(PDF/12頁)
発表にあたってのプレス・リリース(PDF/2頁)
この『中間報告』の目的について、同書の「序章/はじめに」は、「この「原発ゼロ社会への道──新しい公論形成のための中間報告」の目的は、2014年3月までに作成する予定の「脱原子力政策大綱」に盛り込まれるべき主要論点について、あらかじめ原子力市民委員会として、現時点での考え方を示し、今後の活動の一里塚とするとともに、広く国内外の各界各層の方々のご意見をいただく「たたき台」を提供することである」とするとともに、「この中間報告に記載した数々の論点について、皆さまがさまざまな視点からのご意見を寄せてくださることをお願いしたい。また当委員会として中間報告に関して、双方向的な対話の場をできるだけ多く設けるので、ぜひ参加をお願いしたい。それをふまえて「脱原子力政策大綱」の作成作業を進めていきたい」と、今後の予定を述べています。
ここで、『中間報告』の目次を引用しておきます。
(引用開始)
序 章
はじめに
はじめに
0−1 福島原発事故による被害の深刻さ
0−2 原発ゼロ社会を実現すべき理由
0−4 脱原子力政策大綱をどのような方法で作成するか
第1章 福島原発事故の被害の全容と「人間の復興」
第1章の構成と概要
第1章の構成と概要
1−1 福島原発事故の実態と未解明課題
1−2 被害の全貌と本質
1−3 広域汚染の全容と対応策
1−4 健康を守る…──「被ばくを避ける権利」の保障
1−5 農業・漁業の再建と食の安全
1−6 生活と地域の再建のための支援
1−7 損害賠償のあり方
1−8 除染と廃棄物政策
1−9 作業員の健康管理と被ばくの低減
第2章 放射性廃棄物の処理・処分
第2章の構成と概要
第2章の構成と概要
2−1 議論と合意のための「場」の形成
2−2 福島第一原発の事故炉処理、事故廃棄物の処理・処分政策
2−3 核燃料再処理政策の転換
2−4 使用済み核燃料のリスク低減政策
2−5 プルトニウム処理・処分政策(プルサーマル政策を含む)
2−6 高レベル放射性廃棄物の最終処分
2−7 高速増殖炉政策
2−8 低レベル放射性廃棄物の処分政策
2−9 核施設の廃止後の処理・処分政策
2−10 核セキュリティ政策
第3章 原発ゼロ社会を実現する行程
第3章の構成と概要
第3章の構成と概要
3−1 原発ゼロを実現するための基本的アウトライン
3−2 原子力損害賠償制度の見直し
3−3 持続可能な社会を実現するエネルギーシステムへの転換
3−4 電力需給・経済影響などの緩和措置
3−5 廃炉プロセスと電力会社などの経営問題
3−6 原発ゼロの国民的合意形成プロセスのあり方
3−7 原発輸出と国際的責任
3−8 国際条約・国際協定(二国間協定含む)の包括的な見直し
3−10 原子力に関する情報公開・広報・教育の問題点と改革指針
第4章 原子力規制はどうあるべきか
第4章の構成と概要
第4章の構成と概要
4−1 安全はいかにして実現可能か…─規制の役割と限界─
4−2 新規制基準の構成上の欠陥
4−3 規制基準における耐震性をめぐる問題点
4−4 立地評価を適用しないことの重大性
4−5 設計基準を見直すべきである
4−6 新規制基準の過酷事故対策では事故の進展を防げない
4−7 信頼性に関わる重要な技術課題の欠落
4−8 原発立地・再稼働について同意を求めるべき自治体の範囲と防災対策の問題点
4−9 老朽化原発の20年延長問題
4−10 原子力規制と司法審査
4−11 原子力規制組織および審査の実態と改善策
4−12 原賠法、過酷事故時の賠償・責任問題
4−13 原子力規制の歴史的変遷、世界的動向調査
おわりに
資 料
原子力市民委員会 設立趣意書
原子力市民委員会 設立趣意書
「原子力市民委員会」について
原子力市民委員会 メンバー紹介
原子力市民委員会 開催記録
(引用終わり)
「はじめに」に書かれていた「双方向的な対話の場」としての「意見交換会」が、以下のとおり、様々な地域で開催されています。
※同じ1月11日開催予定の「菊川市」が【大阪】と表示されているのは多分【静岡】の間違いでしょうが。
そのうち、12月16日(月)に東京千代田区の連合会館(旧総評会館)で開催された意見交換会の模様が、共催団体である原子力資料情報室(「原子力資料情報室 第84回 公開研究会」を兼ねていました)によって中継され、録画を視聴できるとともに、2人の講師が使用された資料もダウンロードできます。
講師資料
①舩橋晴俊さん(法政大学社会部教授、 原子力市民委員会座長)
講演映像は3分~39分
講演映像は40分~64分
なお、講演映像65分~は質疑応答・意見交換です。
この日の講師お2人は、ともに社会科学系の研究者(舩橋晴俊さんは社会学、島薗進さんは宗教学)でした。原子力政策を考えるにあたっては、自然科学系の研究成果を踏まえることはもよとより重要ですが、社会科学的視点からの考察が必要不可欠だと思います。
「核と人類は共存できない」という標語に、社会科学(宗教学、倫理学を含む)からこそ説得力ある理論的裏付を与え得るのだと思います。
その意味からも、「脱原子力政策大綱」の策定に、あなたも是非参加してみませんか?
(付記)
私のささやかな「意見」を、2回の「3.11」でお話しし、メルマガ(ブログ)に掲載しています。
2012年3月11日 3.11に思う(「原発問題」と「倫理」について)
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/22695189.html
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/22695189.html
2013年3月11日 もう一度「原発と倫理」(3.11から2年を迎えて)
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/24468242.html
http://blog.livedoor.jp/wakaben6888/archives/24468242.html