今晩(2014年1月3日)配信した「メルマガ金原No.1594」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
あと3日(1月6日まで)!新しい「エネルギー基本計画」策定についてパブコメを送ろう
昨年(2013年)12月14日、メルマガ(ブログ)に以下の記事を書きました。
原発推進を明記する「エネルギー基本計画(案)」を許さない!
そこでご紹介したとおり、福島第一原発事故発生後、初めて策定される「エネルギー基本計画」において、原子力発電がどのように位置付けられるかは非常に重要ですが、資源エネルギー庁内で検討してきた総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が取りまとめた「エネルギー基本計画に対する意見(案)」(12月13日版)によれば、原子力発電は、「エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源として引き続き活用していく」とし、核燃料サイクルについても、「引き続き着実に推進する」ことを明言するなど、あたかも2012年夏に行われた「国民的議論」など存在しなかったかのような、とんでもない内容になっています。
だからといって、パブコメをスルーする訳にはいきません。
・・・と思っていたのですが、気がつけばパブコメ提出期限の1月6日がもう目の前に迫っていました。
ということで、今日大急ぎで簡単な意見を書き、e-gobの送信フォーマットから送ろうとしたところ、「字数オーバー」で送れませんでした。WEBサイトの送信フォームで送る場合には、「2000文字以内」(空白も含む)という制限があるのでした。
そこで、やむなく事務所まで出かけてFAXで送信してきました(こちらは字数制限はない)。
「意見公募要領」の要点を摘記します。
意見の対象
総合資源エネルギー調査会基本政策分科会・エネルギー基本計画に対する意見について(別添)
意見受付期間
平成25年12月6日(金)~平成26年1月6日(月)【必着】
意見提出方法等
意見提出方法等
以下のいずれかの方法で(日本語に限る)
① e-Govの「意見提出フォーム」からの提出(2000文字以内)
https://search.e-gov.go.jp/servlet/Opinion
② FAX(03-3501-2305)での提出
② FAX(03-3501-2305)での提出
意見提出様式(別添)に氏名(法人・団体等の場合は、法人・団体名、意見提出者の氏名)と意見を記入の上、上記FAX番号宛に送信する。
※(金原注)私もこの方式で送りましたが、問題は「意見書提出様式」です。e-govのパブコメ募集ページから様式は印刷できますが、要するに、どの案件についてのパブコメをどの係に送るのかが分かりやすいようにという(役所の便宜のための)書式になっています。書き写すと以下のようなものです。
新しい「エネルギー基本計画】策定に向けた御意見の募集について
1 お名前
2 御意見及び理由
要は、以上の内容が分かりやすく書いてあればいいのでしょうから、この様式自体に書き込む必要はないはずです(それにしては要領の書き方が不親切)。
それでも、「この様式を使わなければ無効とされるのでは?」と心配される方は、この様式をプリントアウトして、「1 お名前」欄に氏名を書き(住所等のデータは不要)、「2 御意見及び理由」欄に「別紙(○枚)のとおり」と記載した上で、自分が書いた意見を後ろに付けて送信するという方法をとれば万全ですが、まあ、そこまでしなくてもと思いますがね。
③ 書面(郵送)での提出
意見提出様式(別添)に氏名(法人・団体等の場合は、法人・団体名、意見提出者の氏名)と意見を記入の上、下記宛先に送付する。
〈宛先〉
※(金原注)意見書提出様式(別添)についてはFAXと同じです。ただ、あと3日しかないので、郵送というのは期限内に届かないというリスクがありますから、今から送る人には、送信フォーム(2000文字以内)かFAXでの送信を推奨します。
さあ、あとは意見を書くだけです。送信フォームから送る場合の制限字数2000文字というのは案外少ないですよ。
参考として私が(最終的にFAXで)送った意見を末尾に添付しておきますが、これで(空白部分もカウントして)3260文字という表示が出て、送信フォームでは送れませんでした。
簡単な内容でも良いので、自分が普段から考えている意見を堂々と政府に伝えてください。
なお、それでも何か参考になるサイトがあれば見てみたい、という方のために、以下のサイトをご紹介しておきます。これが一番よくまとまっているようです。
「避難の権利」ブログ より
新しい「エネルギー基本計画」策定に向けた意見
資源エネルギー庁 長官官房総合政策課
パブリックコメント受付担当 御中
2014年1月3日
(住所)〒640-8142
和歌山市三番丁6番地 関西電電ビル4階
金原徹雄法律事務所
(氏名) 金 原 徹 雄 (弁護士)
(意見の趣旨)
1 総合資源エネルギー調査会基本政策分科会が2013年12月13日に策定した「エネルギー基本計画に対する意見(案)」は、何ら国民的議論を踏まえることなく、著しく利害関係者に偏った委員構成によって拙速に策定されたものであって、その正当性に重大な疑義があり、いったん撤回の上、真に国民の意思を反映した「エネルギー基本計画」とするためのプラットフォームを再構築すべきである。
2 「総合資源エネルギー調査会基本政策分科会・エネルギー基本計画に対する意見(案)」(12月13日版/以下「意見(案)」という)によれば、原子力発電について、「エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源として引き続き活用していく」としているが、これは、福島第一原子力発電所事故を踏まえた新たな「エネルギー基本計画」として、全く妥当性も正当性も欠いている。原子力発電については、速やかに全面的な撤退・廃炉の方
針を打ち出すべきである。
(意見の理由)
第1 手続の正当性について
1 福島第一原発事故の後、今後の我が国のエネルギー政策の中で原子力発電をどのように位置付けるかにつき、2012年夏に大規模な「国民的議論」が行われ、9万件近く寄せられたパブリックコメントの実に87%が原発ゼロシナ
リオを支持したこと、その結果を受けて「革新的エネルギー・環境戦略」(2012年9月)に2030年代に原発稼働ゼロとする方針が示されたことについてどのように評価するかにつき、「意見(案)」に全く言及がないのはいかなる理由からか。
たしかに、2012年12月の総選挙によって政権は交代したかもしれないが、わずか半年にも満たない期間で、「国民的議論」の結果(国民の多数の意向)が大きく変わることなどあり得ない。
新政権が新たな「エネルギー基本計画」を検討するにあたっては、まさに2012年夏の「国民的議論」の結果をこそ出発点としなければならないはずであって、これを完全に無視して進めた検討作業は、根本的に正当性を欠いており、到底容認できない。
2 その上、今回パブリックコメント募集の対象となった「意見(案)」についても、12月6日に開始された当初示されていた「意見(案)」(12月6日版)が、そのわずか1週間後に開催された基本政策分科会において改訂され(12月13日版)、パブコメの対象自体が変更されてしまうという異常な事態が生じた。e-govにおける「意見募集中案件詳細」の「備考」欄では、12月13日直後には「委員からの御意見を踏まえ加筆しました」とされていたものが、その後「「エネルギー基本計画に対する意見」がとりまとまりました」なる意味不明の文言に差し替えられるなど、この不手際を隠蔽しようとしているのではないかとの疑念さえ生じさせる。
第2 内容の正当性について(原子力発電の位置付け)
1 「意見(案)」「第3章 新たなエネルギー需給構造の実現に向けた取組」「第1節 原子力政策の基本方針と政策の方向性」「1.原子力政策の基本方針」は、「エネルギー需給構造の安定性を支える基盤となる重要なベース電源として引き続き活用していく」 としているが、この方針は絶対に容認できない。
「意見(案)」は、その根拠として、「原子力発電は、燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃料だけで供給が維持できる準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もない」などを挙げるが、これらの個別論点についても大いに疑問があるばかりか(「準国産エネルギー」という意味不明の用語や「運転コスト」「運転時には」など、都合の良い局所的部分だけを取り出し、不都合な部分を無視するその欺瞞的な態度)、もう一度福島のような過酷事故が生じた場合に我が国の国民・国土が被る致命的な(再生不可能な)ダメージや、仮に事故が起きないとしても、原発を稼働すれば不可避的に発生する放射性廃棄物の処理を後続世代に(気が遠くなるほどの長期間)押し付けざるを得ないという究極の世代間モラルハザードについての実質的な考慮を何ら伺うことができない。
「意見(案)」は、この点について、「万が一事故が起きた場合に被害が大きくなるリスクを認識し、事故への備えを拡充しておくことが必要である。さらに、原子力利用に伴い確実に発生する使用済核燃料は、世界共通の悩みであり、将来世代に先送りしないよう、現世代の責任として、その対策を着実に進めることが不可欠である」と記述しているが、誰が読んでも、何の内容も無い戯れ言としか受け取れない。
2 「意見(案)」は、上記」「1.原子力政策の基本方針」に続く「2.具体的施策の方向性」において、「核燃料サイクルについて(略)引き続き着実に推進する」「プルサーマルの推進、六ヶ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工等を着実に進める」「高速炉等の研究開発に取り組む」として、核燃料サイクルの推進をうたいあげているが、そもそも技術的に可能なのであれば、今日まで、何故かくも進展がなかったのかについての合理的説明があってしかるべきであるが、それはない(できないはずである)。第一、核燃料サイクル推進を掲げるのであれば、これまでの失敗を総括した上で、将来の展望を語るのが筋というものであるが、その前提として、過去に蕩尽した国費について誰がいかなる責任をとった(とる)のかということを説明することが不可欠なはずである。さらにいえば、福島第一原発事故を真摯に反省するというのであれば、原発政策を推進してきた者のうち、誰がいかなる責任をとったか、あるいはとるべきかについて言及のない「反省」などあり得ないと思われる。
3 「福島の教訓」は、「事故は必ずいつかどこかで起こる」ということであったはずである。これは、人間の営みに「無謬」ということがあり得ない以上、当然のことである。だからこそ「リスク管理」が重要になるのであるが、さらに「福島の教訓」はそれに加え、「原発の過酷事故による被害は取り返しがつかない」ということを教えてくれた。「意見(案)」において、「万が一事故が起きた場合に被害が大きくなるリスクを認識し、事故への備えを拡充しておくことが必要である」と起案した者(委員でも官僚でも)は、まず、いまだに仮設住宅での生活を余儀なくされている多くの原発避難者1人1人の面前でこの「意見(案)」を読み上げてその意見を聞くべきである。
現在、日本中で1基の原子力発電所も稼働していないにもかかわらず、どこでも停電など起きていない。それにもかかわらず、致命的なリスクに目をつぶって原子力発電を推進しようとする者は、人間をはじめとする命や自然よりも、自己の利得を優先する者と言われても反論できないはずである。
自然科学的知見や経済合理性からも、原子力発電に未来がないことは明らかと思われるが、それと並び、あるいはそれ以上に、倫理的観点からその存在を容認できない原子力発電から速やかに撤退することを求める。
以 上