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沢田研二さんとドナルド・キーンさん~共鳴する思い~

 今晩(2014年1月5日)配信した「メルマガ金原No.1596」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
沢田研二さんとドナルド・キーンさん~共鳴する思い~
 
 著名な日本文学研究者であるドナルド・キーンさんが、東日本大震災の後、日本国籍取得の意向を明らかにされた時、その思いの深さに感動した人は少なくなかったことと思います。
 キーンさんは、その後、2011年9月に永住目的で来日され、翌2012年3月に日本国籍を取得されました。
 
 そのドナルド・キーンさんが、毎月1回のペースで、東京新聞に連載している「ドナルド・キーンの京下町日記」という随想の最新の原稿が、今日の紙面に掲載されました。
 
東京新聞 2014年1月5日(日)
 
 まず冒頭、歌手の沢田研二さんがキーンさんのことを取り上げて作詞した曲『Uncle Donald』が収録されたCDが送られてきたという話題から書き始められ、多くの読者を驚かせます。
 そして、キーンさんが「音楽好きの私だが歌謡曲には疎く、恥ずかしながら沢田をたこともなければ、名前も知らなかった」と書かれていることにさらに驚くことになります。 
 キーンさんは、私も読んだことがある『音盤風刺花伝』や『音楽の出会いとよろこび』というエッセイ集があるほどの音楽愛好家なのですが、ポップス音楽は全く視野に入っていなかったということでしょう。
 
 沢田研二さんの『Uncle Donald』という曲は、昨年(2013年)3月11日に発売された4曲収録のミニアルバム「Pray」の2曲目に収録されていた曲です。
Pray
Independent Label Council Japan(IND/DAS)(M)
2013-03-11
 
 
 著作権の関係から、沢田さんご本人の歌唱をご紹介できないのは残念ですが、別の方が弾き語りで YouTube にアップした演奏が聴けます。
 
『Uncle Donald』 作詞:沢田研二 作曲:下山 淳
 
 
                                                        この曲については、沢田さんの熱心なファンの皆さんが、さまざまな楽曲解説(考証)をブログに発表されていますが、決定版は以下の記事でしょうね。
 
DYNAMITE-ENCYCLOPEDIA 2013年3月22日
 
 また、ドナルド・キーンさんの公的な(時に少しは私的な)写真をアップしてくれている「『弘知法印御伝記』を上演した越後猿八座の記録」というサイトがあります。サイト管理者とキーンさんとの関係はよく分かりませんが、キーンさんの日々のお元気そうな様子が確認できます。
 『Uncle Donald』が収録されたCDをキーンさんが聴いている様子もアップされています。
 
 
 さて、東京新聞の「東京下町日記」の続きです。
 『Uncle Donald』に聴き入ったキーンさんは、教えてくれた人がいたのでしょう、沢田研二さんが2008年に発表した『我が窮状』という曲に説き及びます。
 
(引用開始)
 沢田は還暦を迎えた六年前、平和主義をうたう憲法九条の行く末を憂えて、バド曲『我が窮状』を発表した。私も同じ思いだ。第二次世界大戦後、日本人一人も戦死していない。素晴らしいことである。そんな憲法を変えようとする空気に、私が息苦しくなるのは戦争体験があるからだろう。新年に、まずは世界の宝といえる日本国憲法をあらためて考えたい。
(引用終わり)
 
 そしてキーンさんは、「私は二度、死んでもおかしくない体験をした」として、沖縄に向かう輸送船の甲板上で遭遇した日本の特攻機による攻撃と、沖縄地上戦における日本兵との遭遇を語った上で、以下のように続けておられます。
 
(引用開始)
 私は海軍通訳士官だった。最前線で撃ち合ってはいない。それでも死の淵(ふち)を見た。ましてや、物量で圧倒された日本兵や爆撃を受けた市民の恐怖たるや想像を絶する。戦争は狂気だ。終戦に日本人のほとんどは胸をなで下ろし「戦争はこりごり」と思っていた。私ははっきりと覚えている。日本人は憲法九条を大歓迎して受け入れた。
 知り合いで憲法起草に関わったベアテ・シロタ・ゴードンもこう証言していた。「人
部門担当の私は、男女平等の概念を盛り込もうとして抵抗を受けた。でも九
条については異論を聞かなかった」
 戦争には開戦理由があっても、終わって十年もすれば何のためだったか分から
なくなることが多い。最近もイラク戦争の大義名分だった大量破壊兵器は見つからず、うやむやになった。そもそも国家による暴力の軍事行動は国際問題を複雑
化し、解決をより難しくする。
 昨年は、言論の自由を制限する特定秘密保護法が成立した。尖閣諸島
竹島をめぐり近隣諸国との関係が緊張した。年末には安倍晋三首相の靖国社参拝に米国からも異例の「失望」が表明された。今年は一転して、私が沢田に「心配ご無用」と一句返せる一年にしたい。
(引用終わり)
 
 以上のキーンさんの文章に特に私が付け加えることはありません。
 ただ、一部に広告収入が上がらないとも伝えられる東京新聞を、関東地方の方は是非(定期購読して)応援していただきたいな、ということを言い添えたいと思います。
 
 最後にドナルド・キーンさんの著書について。
 キーンさんの主著は、何と言っても『日本文学の歴史』全18巻(中央公論社でしょう。私は単行本で全巻揃えた上に、何と全巻「読破」しました。これは、我ながら奇跡的なことです。学問的探求と読者の興味を引きつける配慮が、高いレベルで融合している名著だと思います(なお、中公文庫収録に際して『日本文学史』と改題されたようです)。 

 また、『明治天皇』(新潮社)もお薦めです。「明治天皇記」など、様々な
史料を博捜した上で、淡々と明治という時代を描き出していく手腕は見事です。
 
明治天皇〈1〉 (新潮文庫)
ドナルド キーン
新潮社
2007-02-28

 それから、私が初めて(大学2年のころでしょうか)読んだキーンさんの著書『日
本との出会い』(中公文庫)が忘れられません。今でも入手可能のようですから、是非ご一読をお勧めしたいと思います。