wakaben6888のブログ

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水島朝穂氏が記録した品川正治氏との出会い

 今晩(2014年1月20日)配信した「メルマガ金原No.1611」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
水島朝穂氏が記録した品川正治氏との出会い
 
 早稲田大学教授の水島朝穂(みずしま・あさほ)氏が、そのホームページ「平和憲のメッセージ」に毎週掲載されている「今週の直言」には、いつも教えられることが多く、愛読させていただいています。
 
 今日(2014年1月20日)アップされた「直言」は、『辻井喬さんと品川正治さんを悼む』というもので、水島さんが共同代表兼事務局長を務められた「憲法再生フォーラム」を通じて知ったお二人の憲法に対する思いを、「こういう状況だからこそ、ますます存在感を増し、その発言が求められていたお二人の方への追悼文」として書かれたものですが、とりわけ、水島さんが品川正治さんと初めて会われた際の詳細なメモが今回初めて公開されたことに注目しました。
 
  「護憲的財界人と会う 2005年5月20日」と題されたその記録にとどめられた品川さんの発言は、その後、品川さんが講演で語られたり、著書に書かれたりしたこと基本的に同一であるとはいえ、以下の部分などは、非常に興味深く読みました。
 
(抜粋引用開始)
 品川さんも辻井さん(財界人としては堤清二さん)も共通して語るのは、改憲だ、軍拡だという威勢のいい財界人は、トヨタとか三菱とか失敗した企業ばかりで、まともにアジアで商売をやろうとしている企業はみんな護憲だ、と。平和憲法のおかげで、我々は商売ができるのだ、と。そして、護憲的な財界人はたくさんいて、ただ現役のうちにそれをいうと、トヨタと三菱に睨まれるので、みんな黙っているだけだ、と。品川さんは会長を退いて、いまのポストに着くと、国連職員などをやり、彼の部下として働いている人達は、海外で活動する上で一番大事なことは、日本の平和憲法あることだ、というそうである。だから、品川さんは、自分が護憲的発言をすることを、部下はみんな支持してくれるという。
(引用終わり)
 
 私は、水島さんが書き留められていた以上の記述を読みながら、思い出したことがありました。
 それは、2007年6月2日、「九条の会・わかやま」と「憲法9条を守る和歌山弁護士の会」が品川正治さんの講演会「戦争・人間・憲法九条」を共催した後、その録音と格闘して私が文字起こしした原稿を、「九条の会・わかやま」事務局の皆さんにも協力してもらって校正した上で、最終的に、ホームページで公開するためご了解を求めて品川さんにお送りしたところ、品川さん自ら校正して送り返していただいたのですが、その中には、校正というよりは修正といった方が相応しい箇所があったことです。
 
 品川さんが手を入れられた講演録は、現在でも「九条の会・わかやま」ホームページでお読みいただけますが、その質疑応答の中で、以下のような発言をされた部分があります。
 
(引用開始)
 それから、第二の質問の方の問題に関しては、私は、ちょっと違った角度からお答えしますと、私は経済界の中で孤立してません。(笑と拍手)これは、はっきりその点は皆さん方に申し上げとかないといけないんじゃないかと。私自身、例えばこの近辺で言いますと、大阪倶楽部だとか、あるいは関西倶楽部で同じ話をします。これは、経済同友会っていう東京の場合、工業倶楽部っていう場合も、同じ話をします。で、その時も拍手も出ます。それから、私を、ある意味では吊し上げたいと仕組んだ会合もありました。私の意見への反論を期待していたようですが、その質疑が全部執行部に向きまして(笑)、それで質疑打ち切りということになったことも経験しとります。そういう意味では、私自身が孤立してるっていうことは、はっきり言ってないっていうこと。
 それからもう一つ、もっと客観的に考えますとね、日本の今の産業構造は、もう6割
がサービス産業なんです。それから、99%が中小企業なんです。ところが、企業社会っていうのは、はっきりとヒエラルキーが出来上がっています。だから、国民投票のような1対1じゃないんですね。名前を挙げて失礼ですけど、例えば、トヨタ自動車販売会社の社長が1票とすれば、豊田章一郎さんは10万票位っていうのが、ヒエラルキーとして出来上がってる訳なんですね。しかし、国民投票っていうことになれば、1対1なんです。
 私自身、孤立意識っていうのは全然ないっていうのと、それから国際開発センター
っていうのは、そういう格好で海外で仕事をしてるから、9条2項というのがもの凄く大事なんです(拍手)。
(引用終わり)
 
 録音されたCDを聴き直している時間がないので記憶だけで書くのですが、品川さんの実際の発言は、もっと端的にトヨタを批判するトーンが強かったように思います。ただ、損保会社の後輩にいらぬ迷惑を及ぼさないようにとの配慮からか、ややトーンを弱めるように修正されたのだったと思います。
 私は水島さんの文章を読んで、講演会での品川さんの発言の趣旨がようやく本当に理解できたように思いました。
 しかし、それにしても、改憲に突き進むことが本当に日本経済にとって有益だと心底からじている経営者がどれだけいるのでしょうか?
 
(参考)
弁護士・金原徹雄のブログ
品川正治さんを悼む(再掲「品川正治さんから力を貰おう!」)