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潮平芳和氏『民主主義よ、死ぬな』を読む

 今晩(2014年1月25日)配信した「メルマガ金原No.1617」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 

 

潮平芳和氏『民主主義よ、死ぬな』を読む
 
 2014年1月19日に投開票の行われた沖縄県名護市長選挙において、辺野古への米海兵隊新基地建設に断固反対する現職の稲嶺進氏が歴史的勝利を収めてから間もなく1週間が過ぎようとしています。
 しかし、この選挙結果をうけても、政府・与党の辺野古新基地建設推進の方針は全く変わっていません。 
 
MSN産経ニュース 2014年1月20日12時50分
政府「市長権限は限定的」 普天間移設推進の意向
(抜粋引用開始)
 政府は、19日の沖縄県名護市長選で米軍普天間飛行場(同県宜野湾市)の移設反対派現職の稲嶺進氏が再選したことに関し「名護市長の権限は限定されている」(菅義偉官房長官)として名護市辺野古への移設実現を推進する考えだ。
 菅氏は20日の会見で「埋め立てについては沖縄県仲井真弘多知事から承認を頂いている。支障は生じない」とけん制。同時に「粘り強く理解を求め進めていくのが政府の役割だ」と述べ、市長との協議を通じて移設を進めたいとの意向を示した。
(略)
 自民党石破茂幹事長は選挙結果を「厳粛に受け止める」としながらも「辺野古の新基地の完成は急がなければならない。丁寧に説明しながら着実に進めるしかない」と強調した。党本部で記者団の質問に答えた。
(引用終わり) 
 
2014年1月20日 菅義偉官房長官 記者会見映像
2014年1月20日 石破茂自民党幹事長 記者会見映像
 
 その方針を早速印象付けようとしてか、選挙のわずか2日後である1月21日、沖縄防衛局は、米軍普天間飛行場の名護市辺野古への代替施設建設に向け、設計や生物調査など3件について受注業者を公募する入札を公告しました。 
 
2014年1月21日
沖縄防衛局WEBサイトに掲載された入札公告(公募型プロポーザル)
 
 このような政府の対応を見て、私たち本土の人間は、「こんな民主主義を否定する暴挙は許されない」という声を上げたでしょうか?
 そう自らに問わざるを得ない文章が、今徐々に広がり、読まれつつあります。
 琉球新報論説委員長だったと思います)の潮平芳和(しおひら・よしかず)さんが書かれた『民主主義よ、死ぬな』という文章です。
 掲載したのは「Peace Philosophy Centre」であり、掲載に至った事情が次のように説明されています。
 
(引用開始)
沖縄のジャーナリスト・潮平芳和氏(琉球新報)のフェースブックでの投稿を見て、拡散許可をお願いしたところ、加筆修正して当ブログに寄稿いただいた。名護市長選が辺野古基地は要らない」との民意を確実に日米政府に示した2日後の暴力。我々は、この事態を放置するとしたら人の道にもとるとしか言い様がない。@PeacePhilosophy
(引用終わり)
 
 そんなに長い文章ではありません。是非一語一語かみしめながら熟読してください。
 
Peace Philosophy Centre  Wednesday, January 22, 2014
潮平芳和:民主主義よ、死ぬな
 
 潮平さんの基本的な現状認識を示したのは以下の部分です。
 
「沖縄で今起きていることは、人間としての尊厳、誇り、平和的生存権、自らの未来は自ら決めるという自己決定権の問題なのだ。これを放置するほど、21世紀の民主主義は劣化してしまったのだろうか?決してそうではないと、私は確信する。」 
 
 その上で、日本人にこう問いかけます。
 
「日本国民に問いたい。沖縄に対する執拗なまでの構造的差別、理不尽な暴力を、沖縄以外の46都道府県の国民は見て見ぬ振りを続けるのか。あるいは無視するのだろうか。
 それとも沖縄に連帯して、普天間の閉鎖・撤去、県外・国外移設を後押ししてくれるのか。民主主義を自分たちの手に取り戻す用意はあるのか。」
 
 そして、その問いかけは、キャロライン・ケネディー駐日米国大使と米国政府にも向かいます。
 
「この沖縄の夢を、米国はなおも踏み潰し、歴史に汚名を刻み続けるのか。独立宣言の精神や米国民主主義の良心を呼び覚まし、行動するときではないのか。これまでの対沖縄政策の過誤を根本から改めるつもりはないのか。バラク・オバマ米大統領にはそれくらいの決断はたやすいはずだ。」 
 
 その上で、結びの言葉が叫びとなってほとばしり出ます。
 
「多くの県民が胸の内に秘めているのではないか。非暴力の異議申し立てを決して止めない。マハトマ・ガンディーに思いを馳せながら、沖縄の行く末を見据えている沖縄住民は決して少なくない。強欲な覇権主義植民地主義には、いつか歴史の審判が下される日が来る。
沖縄から訴えたい。この国(日本)の民主主義よ、死ぬな。米国の民主主義よ、世界の民主主義よ、死ぬな。」
 
 この文章を読んでどう感じられたでしょうか?
 深読みをすれば、こういう読み方も可能かもしれません。日本人への問いかけよりも、米国への問いかけの方に熱が入っていると。
 つまり、民主主義の精神を呼び覚ますという文脈から考えて、まだしも米国への呼びかけの方が効果があり得る。日本人に「民主主義」を訴えても期待できないという「絶望」を感じる、といったような読み方です。
 また、最後の一つ前の段落を、「琉球独立宣言」と読み込むことも不可能ではないでしょう。
 しかし、私が強く感じたのは、「悲しみ」とともに、かすかな「希望」と明確な「決意」ということでした。
 この作者は、絶望しそうになりながら、まだその手前で踏みとどまろうとしていると、そのように私は受け取りました。
 あとは、私たちの側でこの問いかけをどう内面化し、具体的な行動に移すかです。
 
(参考サイト)
 潮平さんの文章に出てくる用語の解説が読めるサイトをいくつかご紹介しておきます。
フランクリン・ルーズベルト米大統領が提唱した『四つの自由』」
日本国憲法第95条に基づく沖縄自治州基本法」(試案) 
「偉大な黒人指導者キング牧師は「私には夢がある」と語った」
「万国の津梁(しんりょう)」
「米国独立宣言」
「マハトマ・ガンディー」