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ある地域9条の会の総会議案書「情勢分析」パート(第1稿)

 今晩(2014年1月30日)配信した「メルマガ金原No.1622」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
ある地域9条の会の総会議案書「情勢分析」パート(第1稿)
 
 本日(2014年1月30日)夕刻から、憲法9条を守る和歌山弁護士の会の第10回総会があり、その後の懇親会兼新入会員歓迎会にも出席していたため、今晩配信るメルマガ(ブログ)の素材を探して執筆している時間がありません。
 そこで、メルマガ(ブログ)のために書いたものではありませんが、私が役員をしている、ある地域9条の会の3月に開く総会のための議案書(の内の私の執筆部分)を掲載することにします。
 この地域9条の会では、複数の役員で議案書を分担執筆するのですが、私の担当するパートは「情勢分析」です。
 仕事の合間をみて、資料も見ずに書き流した第1稿ですから、はなはだ不十分なものですが、ある地域9条の会が新たな1年を前に、自分たちの置かれた状況をどう認識すべきかということについて、私なりの考えをまとめたものです。
 
    ある地域9条の会の総会議案書「情勢分析」パート(第1稿)
 
1 現在の危機の段階
 2013年12月6日、国民各層の広汎な反対世論を無視し、国会は特定秘密保
護法案を可決成立させた。また、それに先立ち、国家安全保障会議設置法(日本NSC法)も成立し、安倍政権の目指す「戦時法」体制は着々と整備されつつある。
 同月中には、PKO法審議時の政府答弁も無視し、国家安全保障会議(4大臣会
議)において、南スーダンに派遣されている自衛隊から韓国軍への弾薬供与が決定され、同月17日には、「国家安全保障戦略」「防衛計画の大綱(改訂)」「中期防衛力整備計画(平成26年度~)」が閣議決定され、自衛隊の運用、装備などを「平体制」から「(準)戦時体制」に移行させようという動きが顕著である。
 さらに、その総仕上げとしての、「集団的自衛権行使容認への憲法解釈の変更(
議決定想定)」「国家安全保障基本法案」が控えているというのが現状である。
 とりわけ、「国家安全保障基本法案」については、2012年に自民党総務会が承
した案によれば、集団的自衛権行使や集団的安全保障措置への参加を容認し、器輸出も原則解禁する内容となっており、憲法9条を事実上「死文化」させる一種の全権委任法と言わざるを得ない。
 
2 安倍政権の復古的性格
 以上のとおり、戦後最も危険な政権であることが誰の目にも明らかとなった第2次安
政権であるが、同政権は、戦後長らく続いた自民党政権(3年余の民主党政権代をその延長線上で理解してもよい)と同じ基本政策(日米安保体制堅持など)を志向している面はありながら、明らかにそこから逸脱した異質な性格を有している。それを総括すれば、「保守」から「極右」へ、「現実主義」から「歴史修正主義」へということになると思われる。
 そのことを象徴する出来事を3つ掲げる。
① 2013年4月28日
 政府は、沖縄県などからの強い反発にもかかわらず、「主権回復・国際社会復帰を
念する式典」を強行し、強いて臨席を求めた天皇・皇后退席時に「万歳三唱」が行われた。
② 2013年10月3日
 来日した米国のケリー国務長官ヘーゲル国防長官が連れ立って千鳥ヶ淵戦没者
苑を訪れて献花し、同行した国務省職員は報道関係者に対し、「米国のアーリントン墓地に最も性格が近いのが千鳥ヶ淵なのでここに来た」と明言した。
③ 2013年12月26日
 安倍晋三首相が靖国神社に参拝し、米国政府は直ちに「失望した」(当初は駐日使館から、後に国務省報道官から)との声明を公表した。
 これらの動きは、安倍政権の「歴史修正主義」「復古主義」の本性と、他面ではその
「矛盾」を象徴する出来事であった。
 ①は、サンフランシスコ平和条約発効(1952年4月28日)を記念するという名目で
かれたものであるが、②によって米国政府が明確な警告を発したにもかかわらず強行された③の靖国参拝があれほど世界中から非難された根本的な原因は、第2次世界大戦後、日本が国際社会に復帰するにあたって連合国(共産圏を除く)との間で締結したサンフランシスコ平和条約(その中には東京裁判を受け入れることも含まれている)基づく国際秩序を否定しようとしていると受け取られたからに他ならない。そして、世界各国、有力メディアの懸念や怒りは「正しい」と言わざるを得ない。
 今、我々は、そのような政権を選択している国民であると世界から見られていることを
する必要がある。
3 危機を克服するための展望
 安倍政権の危険性、異質性を訴え、広範な国民各層の結集をはかることが絶対に
要であるが、そのための基盤となり得る動きを3点あげておく。
① 憲法96条(改正規定)先行改憲論が立憲主義の根幹を揺るがすものであるとし
て、いわゆる改憲派の学者も加わって圧倒的な批判の世論を盛り上げたこと。
② 結果として国会通過を阻止できなかったとはいえ、特定秘密保護法案について、
読売、産経を除くほぼ全ての主要紙(日経を含む)が反対の論陣を張り、学者、文化人の多くが反対の意思表示を行い、多くの市民と連帯したこと。
③ 米海兵隊新基地建設を絶対に受け入れないと表明する稲嶺進市長を再選させ
た沖縄県名護市長選挙をはじめ、国が強引に推進しようとする反動的政策に、地方からNOの声を突き付ける動きが顕在化していること。
 1で述べたとおり、当面、明文改憲というよりは解釈改憲、立法改憲の危機が差し
迫っており、残された時間はあまりない。
 私たちは、①~③のような勇気づけられる動きを結びつけ、戦後築きあげてきた国の
在り方を根本的に破壊しようとする企てを阻止するための統一戦線を展望しなければならない。
 
 以上が「情勢分析」パート(第1稿)ですが、実は、上記の「3 危機を克服するための展望」に書き加えようかどうしようかと迷った末、とりあえず掲載しないことにした部分を「オプション」として付け加えておきます。
 
3の2 危機を克服するための展望(オプション)
 今、日本が直面している危機を克服するためには、これまでの既成観念にとらわれてはならず、極論すれば、「白い猫でも黒い猫でも、鼠をとる猫は良い猫だ」セオリーを受け容れる覚悟さえ必要かもしれない。
 そのような観点から見れば、現時点で、安倍政権を打倒できる(またその動機もある)大の力の保有者は米国合衆国政府である。

 

 12月26日の靖国参拝で「失望した」という異例の声明を出したオバマ政権の忍耐がいつまで続くのか、ということは注視していく必要がある。おそらく、尖閣をめぐる日中間の緊張が高まれば高まるほど、米国政府の忍耐は限界に近づいていくであろう。
 一定レベルの日中間の緊張は米国の国益に適うとしても、実際に武力紛争にまで至り、米国が日中間の紛争に「巻き込まれる」事態を、米国政府は決して容認できないはずである(民主党であろうが共和党であろうが)。そのような事態は決定的に米国国益を損なうからである。
 もっとも、これは究極の「他力本願」であり、しかも、日本の政権の命運は米国政府の思いのまま、という悪例をさらに1つ付け加えることの弊害も決して小さくないので、これをあてにする訳にはいかない。
 もう一つ、これまで「9条の会」の働きかけが弱かった保守的な層に訴えかける素材して、法99条の「憲法尊重擁護義務」を捨てて顧みない安倍政権と、誠実にこれを守ろうとされ天皇・皇后両陛下を対比させ、憲法の平和主義を守ることこそが、皇室の意向に沿うことなのだと説得することは十分考慮に値する。
 9条の会の中には「反皇室」の立場に立つ人もおり、そういう人たちにこの方策をお勧めする訳にはいかないが、日本国憲法が、個人の尊重基本的人権の尊重)、民主主義、平和主義などと並び、象徴天皇制を採用したことを受容する者にとって、天皇皇后両陛下が昨年(2013年)のそれぞれの誕生日にあたって公表・発言された文章・おことばは、周到に考え抜かれた「護憲論」であり、これを私たちの運動に活用するのは当然のことである。