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wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

自民党「日本国憲法改正草案」の思想(憲法と法治主義を守るために)

憲法 講演
 今晩(2014年2月5日)配信した「メルマガ金原No.1628」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
自民党日本国憲法改正草案」の思想(憲法法治主義を守るために)
 
 昨日お送りした「集団的自衛権と国家安全保障基本法案~憲法法治主義守るために~」の続編として「自民党日本国憲法改正草案』の思想(憲法と法治主義を守るために)」をお送りします。
 昨日のメルマガ(ブログ)でご説明したとおり、この原稿は、来週2月13日(木)に和歌山県平和フォーラムからの依頼で行う講演会のためのレジュメ(というより講演用シナリオですね/もっともこの通り話すとは限りませんが)として書いたもので、昨日お送りした部分に引き続き、自民党日本国憲法改正草案」の基本的性格を大掴みするための論述を付け加えたものです。
 従って、全体としての演題は「集団的自衛権と国家安全保障基本法案そして自民党改憲案~憲法法治主義を守るために~」となります。
 
 もう一度、13日の講演会の概略を転記しておきます。
 
2014年 春季連続講演会
戦争ができる国
戦争をしようとする国づくりを
許さない。
 
日時 2014年2月13日(木)18:00~20:00
会場 和歌山県勤労福祉会館プラザホープ 2F多目的室
日本国憲法について考えよう―自民党の「憲法改正案」を阻止しよう―
講師 金原徹雄氏(弁護士)
■主催:和歌山県平和フォーラム ■後援:部落解放同盟和歌山県連合会
【お問い合わせ】和歌山県平和フォーラム
 和歌山市雑賀屋町9 宮田ビル TEL:073-425-4180
 
 なお、章立てのために付した番号は、昨日掲載した前半からの通し番号となっています。
 
 
           自民党日本国憲法改正草案」の思想
           ~憲法法治主義を守るために~
     
                                 弁護士 金 原 徹 雄
 
4 自民党日本国憲法改正草案」の思想
(1)国民は「国家」のために

憲法制定権力の基本思想は、その前文に端的にあらわれることが多く、自民党「草
案」も例外ではない。以下の「草案」前文を読んでどう思われるだろうか?
 https://www.jimin.jp/policy/policy_topics/pdf/seisaku-109.pdf
(草案 前文)
日本国は、長い歴史と固有の文化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家
であって、国民主権の下、立法、行政及び司法の三権分立に基づいて統治される。
 我が国は、先の大戦による荒廃や幾多の大災害を乗り越えて発展し、今や国際社
会において重要な地位を占めており、平和主義の下、諸外国との友好関係を増進し、世界の平和と繁栄に貢献する。
 日本国民は、国と郷土を誇りと気概を持って自ら守り、基本的人権尊重するとと
もに、和を尊び、家族や社会全体が互いに助け合って国家を形成する
 我々は、自由と規律を重んじ、美しい国土と自然環境を守りつつ、教育や科学技
術を振興し、活力ある経済活動を通じて国を成長させる
 日本国民は、良き伝統と我々の国家を末永く子孫に継承するため、ここに、この憲
法を制定する。」
 端的に言って、この前文を起草した者は、「国家」のことしか考えていない。ようやく
第3段落以降、主語が「日本国民は」「我々は」となるものの、結局、国家を「形成」し、「成長」させ、「子孫に継承」するために国民は存在する、すなわち、国民のために国家があるのではなく、国家のために国民があるとの強固な思想に貫かれている。
 日本国憲法の前文と是非読み比べていただきたい。
 http://law.e-gov.go.jp/htmldata/S21/S21KE000.html
 日本国憲法は、13条において「すべて国民は、個人として尊重される。」と
の根本原則を定め、これを基本として様々な基本的人権を保障しており、その拠って立つ思想は、国民のために国家があるというものである。
(2)「公益及び公の秩序」>「国民の自由及び権利(人権)」
 前項で述べた国家主義思想と結局は共通することであるが、「草案」の人権に関す
る基本認識について述べておく。
 要点は、天賦人権思想を否定して、人権を、国家によって容認された限りで保障
されるもの、言い換えれば、国家から与えられたものとしていることである。
 そのことを最も端的に表明しているのが「草案」が4箇所(12条、13条、21条、2
9条)で使用している「公益及び公の秩序」という概念である。とりわけ、総則的規定である12条及び表現の自由を制限する21条が重要である。
「草案 第十二条 この憲法が国民に保障する自由及び権利は、国民の不断の努
力により、保持されなければならない。国民は、これを濫用してはならず、自由及び権利には責任及び義務が伴うことを自覚し、常に公益及び公の秩序に反してはならない。」
「草案 第二十一条 集会、結社及び言論、出版その他一切の表現の自由は、保
障する。
2 前項の規定にかかわらず、公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない。
3 検閲は、してはならない。通信の秘密は、侵してはならない。」
 自民党が「天賦人権思想」にあからさまな反感を抱いていることは、同党が公表した
「Q&A」や草案作成に関わった議員の発言などから明らかである。もとより、天賦人権思想発祥の地である西欧においては、キリスト教の神観念と密接に関連づけて理論的根拠が主張されたことは間違いないが、だからといって、現代の我々が人権の重要性を議論する際、その歴史的経緯の故に、人権を「生まれながらに人として当然保有している侵すこのできない権利」と考える妨げとなるものではない(日本国憲法11条、12条、97条)。
 ところが、「草案」は、12条において国民の「自由及び権利」が「常に公益及び公の
秩序に反してはならない」として、さらにだめ押し的に、全ての人権の中で優越的地位を認めるのが憲法学界における通説となっている「表現の自由」に対し、あろうことか、「公益及び公の秩序を害することを目的とした活動を行い、並びにそれを目的として結社をすることは、認められない」という信じがたい制限規定を設けている。
 我々は、昨年12月6日、「草案」21条2項を先取りする法律(特定秘密保護法
の制定をこの目で見たことを決して忘れてはならない。まだ、日本国憲法21条は「改正」されていない!憲法の規範力を取り戻すということが、特定秘密保護法廃止運動の理論的・思想的根拠であることをしっかりと自覚しよう。
(3)立憲主義の否定
 前項、前々項のような思想で作成された当然の帰結として、「草案」は立憲主義
をあからさまに否定している。
 頻出する「国民の義務」規定がその現れであることは言うまでもないが、最も端的
立憲主義を否定した条項は、第11章「最高法規」(現行憲法の第10章)である。
「現行憲法 第九十七条 この憲法が日本国民に保障する基本的人権は、人類
の多年にわたる自由獲得の努力の成果であつて~ を全面削除」
「草案 第百一条 現行第98条とほぼ同文」
「草案 第百二条 全て国民は、この憲法尊重しなければならない。
2 国会議員国務大臣、裁判官その他の公務員は、この憲法を擁護する義務を
負う。」
(参考 現行憲法99条 天皇又は摂政及び国務大臣国会議員、裁判官その
他の公務員は、この憲法尊重し擁護する義務を負ふ。)
 憲法は、「誰を名宛人とする規範なのか?」について、根本的なパラダイムの転換
を図ろうとしているのが「草案」第十一章である。
 昨年の学習会レジュメでも紹介したが、もう一度引用させていただくのは、明治21
年(1888年)6月、明治憲法を審議していた枢密院における伊藤博文の発言である。「そもそも、憲法を創設するの精神は、第一君権を制限し、第二臣民の権利を保護するにあり。ゆえに、もし憲法において臣民の権利を列記せず、ただ責任のみを記載せば、憲法を設くるの必要なし」(原文は旧字・カタカナ・句読点なし)
 明治憲法が天賦人権思想に立脚していたとか、伊藤博文が民権論者であった
主張するつもりはないが、フランス革命から99年後という時代において、当時の日本の政治指導者の有していた見識が、現在の自民党主流派をはるかに凌駕するレベルであったことだけは指摘しておきたい。
(4)自民党の考える「国体」
 既にご紹介した「草案」前文第1段落冒頭に、「日本国は、長い歴史と固有の文
化を持ち、国民統合の象徴である天皇を戴く国家であ」ると宣言し、さらに本文に以下のような規定を設けている。
「草案 第一条 天皇は、日本国の元首であり、日本国及び日本国民統合の象徴
であって、その地位は、主権の存する日本国民の総意に基づく。」
「草案 第三条 国旗は日章旗とし、国歌は君が代とする。
2 日本国民は、国旗及び国歌を尊重しなければならない。」
 他方、天皇のなし得る国事行為には変更を加えず(式典への出席などの公的行
為を追加)、内閣の「助言と承認」を「進言」と言い換えている。
 これを素直に読めば、大日本帝國憲法における天皇のような統治権の総覧者と
位置付けるつもりはさらさらないが、その「権威」は高められるだけ高め、それを内閣が自分たちに都合の良いように利用しようというのが、「草案」の考える新たな「国体」であるということになる。
 しかも、安倍政権は、これについても、既に改憲を先取りする先例を積み重ねてい
る。2013年4月28日に挙行した「主権回復・国際社会復帰を記念する式典」に天皇・皇后両陛下の出席を求めたことがそれであり、宮内庁の懸念にもかかわらず、オリンピック招致活動に皇族を利用したことなどもその一例に挙げられよう。
 以上のとおり、自民党「草案」は、国民とともに皇室をも国家(より端的に言えば時
の政権)に従属させようとしているとの評価が可能だろう。
 
5 まとめ
 「日本国憲法は、いま、大きな試練にさらされています。」という「九条の会」アピー
ルが発表されてから、間もなく10年が経とうとしている。
 10年後の現在の状況は「試練」どころではなく、まだ明文改憲されていないという
だけのことで、実質的に憲法を無視した様々な「実績」が政府によって積み重ねられており、その総仕上げとしての国家安全保障基本法案が控えている。
 私が、今回の演題を考えるに際し、「憲法立憲主義を守るために」というサブテー
マを付けたのも、「9条改憲に賛成か反対か」だけが結集軸の基準になるのではだめだ、という現状認識があるためだった。
 現在は、早急に安倍政権の暴走に危機感を抱く国民各層を結集することが何よ
りも大切である。そして、そのための基盤となり得る動きも、昨年来様々に見られたところである。
① 憲法96条(改正規定)先行改憲論が立憲主義の根幹を揺るがすものである
として、いわゆる改憲派の学者も加わって圧倒的な批判の世論を盛り上げたこと。
② 結果として国会通過を阻止できなかったとはいえ、特定秘密保護法案について、
読売、産経を除くほぼ全ての主要紙(日経を含む)が反対の論陣を張り、学者、文化人の多くが反対の意思表示を行い、多くの市民と連帯したこと。
③ 米海兵隊新基地建設を絶対に受け入れないと表明する稲嶺進市長を再選
させた沖縄県名護市長選挙をはじめ、国が強引に推進しようとする反動的政策に、地方からNOの声を突き付ける動きが顕在化していること。
 3(3)で述べたことを繰り返すことになるが、私たちは、たとえどんなに困難であって
も、以上のような勇気づけられる動きを結びつけ、戦後築きあげてきた国の在り方を根本的に破壊しようとする企てを阻止するための統一戦線を展望しなければならない。

 


(付録)
『Don't mind(どんまい)』 ヒポポフォークゲリラ 作詞作曲:ヒポポ大王