wakaben6888のブログ

憲法を大事にし、音楽を愛し、原発を無くしたいと願う多くの人と繋がれるブログを目指します

広河隆一さんの大きな懸念と『自発的隷従論』

 今晩配信した「メルマガ金原No.1670」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
広河隆一さんの大きな懸念と『自発的隷従論』
 
 今年(2014年)1月、公募していた次期編集長が丸井春さんという、昨年、編ッフとなったばかりの若い女性に決まったフォトジャーナリズム月刊誌「DAYS JAPAN」ですが、現在は、新編集長に引き継ぐまでの移行期ということで、表紙には「広河隆責任編集」の文字がまだ掲げられています。
 その「DAYS JAPAN」4月号が今日届いたのですが、「10周年記念号」と銘打たれており、3.11直前から定期購読者となった今出来の読者なので、10年間の歴史を鳥瞰する特集を精読するのが楽しみです。
 
 さて、「DAYS JAPAN」4月号で、是非ご紹介したいと思ったのが、広河隆一さんが書かれた「編集後記」です。
 その後半部分のみ引用します。
 
(引用開始)
 DAYSでは今回、総務・経理の職員募集の広告を大手ネットの人材募集会社に出した。大勢の応募があり、スキルや経験が申し分ない人たちを選んで面接をした。面接の最後に念のため質問をした。「ところで原発については、どういう考えを持っていますか」。ここで驚いたことにほぼ全員が判で押したように、「すぐに原発を廃止すれば経済が立ち行かなくなるので、徐々に減らすほかない」と答えた。私が「でも今原発は一基も動いていないですね。それなのに経済が立ち行かないどころか、安倍首相は好景気を確信していますが」というと皆さんが沈黙してしまった。
 考えることもなく信じ込んでいるこの姿は、見事な政府や電力会社の広報の勝利だろう。これが佐藤優氏たちの「反知性主義」という言葉で表される現象なのか。それともこの現象こそ「自発的隷従」と呼ぶものなのか(本誌42ページの西谷修氏の文をご覧いただたい)。とにかく、思考停止というほかはない現状に唖然としてしまった。DAYSで働きたという人でもこうなのだ。「考えない」ことを選んだ人々に、何を訴えるか。10年目のDAYSはむつかしい時代に直面している。
(引用終わり)
 
 いかに「総務・経理」社員募集とはいえ、「DAYS JAPAN」を一度も手に取らずに面接を受けに行った者ばかりだったのだろうか?というのが疑問であり、編集スタッフの募集であれば、ここまで悲惨な結果にはならなかったかもしれませんが、私にとっては、相当衝的な文章であったので、ご紹介することとしました。

 「DAYS JAPAN」応募者にしてこうだとすると、この問題は相当に根深いと思わざる
得ません。
 そして、このような状況は、安倍晋三首相が就任以来維持し続けている高支持率「謎」も必ず通底しているのだろうという直感は働くのですが、それをどう読み解いたらよいのか?という難問に対する明確な答えの持ち合わせが残念ながら私にはないのです。

 ただ、上記広河さんの「編集後記」で言及されている西谷修氏(東京外国語大学
授/「DAYS JAPAN」4月号に京都外国語大学と表記されているのは誤記でしょう)の論考「今の時代を読み解く言葉①自発的隷従-人々の『絆』がいま、一人の権力者とその追従者によって『鎧の鎖』に変えられようとしている」(4月号42、43頁)を読み、
それに導かれて、昨年の11月に発行された1冊の文庫本にたどりつきました。

自発的隷従論 (ちくま学芸文庫)
エティエンヌ・ド・ラ・ボエシ
筑摩書房
2013-11-08
 
 
 一部では非常に注目を集めている翻訳書(原文が18才のフランス人によって書かれのは何と16世紀!)であり、AMAZONに掲載された出版社コメントにはこう書かれてます。
いつの世にも圧政がはびこり、人々が隷従に甘んじているのはなぜか――16世紀フランスの若き俊秀による稀有の考察は、支配・被支配の社会関係にひそむ本質的構造を容赦なく喝破して世を震撼させた。圧政は、支配者のおこぼれに与るとりまき連中が支え、民衆の自発的な隷従によって完成する、という鮮やかな分析は、近・現代の思想にも大きな影響を与えている
 
 「これは読まない訳にはいかないだろう」と思い、遅ればせながらではありますが、すぐに注文しました。
 買おうかどうしようかと迷われる方は、雁屋哲さんがブログに書かれた本書の熱き紹介を読んでから判断されてはどうでしょうか?
 「最近、目の覚めるような素晴らしい本に出会った」という書き出しで始まる雁屋さんの長い紹介文を最後まで読めば、「買わずにはいられない」か、「買わずとも読んだような気になる」かのどちらかだとは思いますが。
 
 いずれ入手して読了したら、またその感想を書いてみたいと思います。 
 

 (付録)
NPO法人 沖縄・求美の里』