今晩(2014年4月7日)配信した「メルマガ金原No.1689」を転載します。
なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
集団的自衛権に反対する地方議会の“声”
昨日のメルマガ(ブログ)で、特定秘密保護法が成立した昨年(2013年)12月6日以降、全国で156もの地方議会が、同法の廃止や見直しを求める意見書を採択していることを、驚きをもってご紹介したばかりですが、今日は、集団的自衛権の行使に反対する地方議会の“声”をご紹介しようと思います。
まず、本日付の東京新聞(朝刊)の記事がWEB版で読めますのでご一読ください。
2014年4月7日 東京新聞(朝刊)
解釈改憲に危機感 59地方議会が意見書
(抜粋引用開始)
札幌市など少なくとも五十九の市町村議会が昨年九月以降、集団的自衛権の行使を認める解釈改憲に反対するか、慎重な対応を求める意見書を可決し、政府や国会に提出したことが分かった。意見書に法的な拘束力はないものの、国民に身近な地方議会で動きがさらに広がれば、解釈改憲に意欲を示す安倍晋三首相にプレッシャーとなる可能性がある。(関口克己)
札幌市など少なくとも五十九の市町村議会が昨年九月以降、集団的自衛権の行使を認める解釈改憲に反対するか、慎重な対応を求める意見書を可決し、政府や国会に提出したことが分かった。意見書に法的な拘束力はないものの、国民に身近な地方議会で動きがさらに広がれば、解釈改憲に意欲を示す安倍晋三首相にプレッシャーとなる可能性がある。(関口克己)
意見書を可決した市町村議会は長野県の二十七市町村が最も多く、北海道から福岡県まで及んでいる。本紙が三月末時点の状況を調べた。意見書が国会に届き始めたのは昨年九月。首相が行使容認派とされる小松一郎氏を内閣法制局長官に起用した直後だ。
(略)
意見書の三分の二に当たる約四十件は二~三月に可決された。集団的自衛権の行使容認をにらんだ国家安全保障会議(日本版NSC)設置法や特定秘密保護法が成立した後だ。北海道本別(ほんべつ)町議会は、行使容認は「海外で戦争できる国づくりの第一歩」と批判。東京都小金井市議会も「民主政治の前提である立憲主義を否定する」と訴えた。愛知県扶桑(ふそう)町議会は「日本が攻撃されていなくても武力で協力する集団的自衛権の行使容認は、日本を戦争への道に引き込む」と危機感を示した。
新潟市議会は「国民的議論なしに憲法解釈の変更がなされないよう強く要望する」と要請。自民党所属の議員が加わる複数の保守会派も賛成した。保守会派の議員は「地方議会にもイデオロギーの違いはあるが、おかしいものはおかしいと思い、野党と足並みをそろえた。安倍政権の動きは、市民の常識では認められないという意思表示だ」と話した。
全国の市町村数(五日現在)は千七百十八。
(略)
(引用終わり)
東京新聞調べによる意見書採択市町村は以下のとおりです。
2013年9月
北海道 函館市
福島県 石川町
2013年10月
神奈川県 葉山町
2013年12月
神奈川県 座間市
2014年2月
長野県 松川村
2014年3月
埼玉県 鳩山町
東京都 小金井市
神奈川県 大和市
福岡県 中間市
秘密保護法についても、長野県と北海道が突出していましたが、以上の市町村名を一つ一つ書き写すに際し、正確を期すために、長野県WEBサイトの中の「市町村一覧」を閲覧していて気がついたのですが、長野県って「村」が多い!
ざっと算えてみたところ、35も「村」がある。私の住む和歌山県など、平成の大合併で自治体の数が激減し、県下の市町村を全部合わせても30しかないし、「村」にいたっては、飛地の北山村1つだけになってしまいましたからね。
参考までに(?)長野県の「村」だけ抜き出したリストを作ってみました。
上小地域 青木村
諏訪地域 原村
長野地域 高山村、小川村
秘密保護法や集団的自衛権について、地方自治法99条「普通地方公共団体の議会は、当該普通地方公共団体の公益に関する事件につき意見書を国会又は関係行政庁に提出することができる。」との権限を活用し、積極的に意見表明すべきだと考える議会が多いのも、多くの「村」が「村」として存続していることと決して無関係ではないと思いました。
以上の59議会の「意見書」をWEB上で探し出し、その全部にリンクがはれれば良いのですが、さすがにそれだけの時間的余裕はないので、ここでは、道県庁所在地である3市議会の「意見書」にリンクをはっておきますので、是非ご一読ください。
青森市議会 2013年9月27日
(抜粋引用開始)
国の安全保障政策は、立憲主義を尊重し、憲法前文と第9条に基づいて策定されなければならない。
憲法前文や第9条によって禁じられている集団的自衛権の行使を、時々の政府や国会の判断で解釈を変更することによって180 度転換し、また、集団的自衛権の行使を認める新たな法律を制定し、法の下克上によって根本的に変更することは、立憲主義に違反する極めて危険な動きである。とりわけ集団的自衛権をめぐる議論は、これまでに立法府において積み重ねられてきており、これを無視して強引に解釈を変えようという試みは、国会答弁をも形骸化させるものであり、立法府の立場からも決して許されるものではない。
したがって、政府に対し、下記の事項について誠実に対応するよう強く求める。
1 集団的自衛権に関するこれまでの政府見解を堅持し、集団的自衛権行使に道を開く憲法解釈の変更を断じて行わないこと。
2 集団的自衛権の行使を容認する国家安全保障基本法案の国会提出を行わないこと。
憲法前文や第9条によって禁じられている集団的自衛権の行使を、時々の政府や国会の判断で解釈を変更することによって180 度転換し、また、集団的自衛権の行使を認める新たな法律を制定し、法の下克上によって根本的に変更することは、立憲主義に違反する極めて危険な動きである。とりわけ集団的自衛権をめぐる議論は、これまでに立法府において積み重ねられてきており、これを無視して強引に解釈を変えようという試みは、国会答弁をも形骸化させるものであり、立法府の立場からも決して許されるものではない。
したがって、政府に対し、下記の事項について誠実に対応するよう強く求める。
1 集団的自衛権に関するこれまでの政府見解を堅持し、集団的自衛権行使に道を開く憲法解釈の変更を断じて行わないこと。
2 集団的自衛権の行使を容認する国家安全保障基本法案の国会提出を行わないこと。
(引用終わり)
札幌市議会 2013年12月12日
(引用開始)
内閣法制局長官は、国会で憲法や法律の政府統一見解について答弁してきたが、集団的自衛権については、「行使ができないのは憲法9条の制約である。わが国は自衛のための必要最小限度の武力行使しかできないのであり、集団的自衛権はその枠を超える」(1983年4月、角田内閣法制局長官)とし、憲法上許されないとしてきた。
また、これまで政府は、憲法9条2項があるため、自衛隊を「軍隊ではない」「自衛のための必要最小限度の実力組織である」と説明し、「そういった自衛隊の存在理由から派生する当然の問題」(1990年10月、工藤内閣法制局長官)と
また、これまで政府は、憲法9条2項があるため、自衛隊を「軍隊ではない」「自衛のための必要最小限度の実力組織である」と説明し、「そういった自衛隊の存在理由から派生する当然の問題」(1990年10月、工藤内閣法制局長官)と
して、武力行使の目的をもった部隊の海外派遣、集団的自衛権の行使、武力行使を伴う国連軍への参加の3点について「許されない」という見解を示してきた。
よって、政府においては、日本の「自衛」とは無関係で、なおかつ海外で戦争をする国となる集団的自衛権行使を容認する憲法解釈の見直しは行わないよう強く要望する。
よって、政府においては、日本の「自衛」とは無関係で、なおかつ海外で戦争をする国となる集団的自衛権行使を容認する憲法解釈の見直しは行わないよう強く要望する。
(引用終わり)
新潟市議会 2014年3月20日
(抜粋引用開始)
これまで歴代の政府は,従来からの集団的自衛権の行使を認めないという憲法解釈に立って,体系的な議論を維持してきました。
(略)
(略)
時の政権によって憲法解釈の変更が安易になされてよいとするのであれば,憲法の国家権力を規制するという最高規範としての存在意義すら危ういものとなると考えます。
よって,政府においては,集団的自衛権をめぐる憲法解釈に関しては,国民的議論なしに政府による憲法解釈の変更がなされることがないよう強く要望します。
よって,政府においては,集団的自衛権をめぐる憲法解釈に関しては,国民的議論なしに政府による憲法解釈の変更がなされることがないよう強く要望します。
(引用終わり)