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「エネルギー基本計画」(4/11閣議決定)と『脱原子力政策大綱』(4/12原子力市民委員会)とを読み比べ、自ら考えよう

 今晩(2014年4月13日)配信した「メルマガ金原No.1695」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
「エネルギー基本計画」(4/11閣議決定)と『脱原子力政策大綱』(4/12原子市民委員会)とを読み比べ、自ら考えよう
 
 日本の将来のエネルギー政策は誰が決めるのでしょうか?
 エネルギー政策基本法の第12条1項が、「政府は、エネルギーの需給に関する施策の長期的、総合的かつ計画的な推進を図るため、エネルギーの需給に関する基本的な計画(以下「エネルギー基本計画」という。)を定めなければならない。」と規定していることから、一応は「政府」が決めるということになっているようなのですが、こんな大事なことを、私たち国民は、政権与党や官僚に「一任」などした覚えはないはずなのですが。
 一昨日(2014年4月11日)、政府が新たな「エネルギー基本計画」を閣議決定したという報道に接して私の脳裡を去来したのはそういうことでした。
 
毎日新聞WEB版 2014年4月11日 11時44分(最終更新 同日 12時55分)
エネルギー基本計画:「原発に回帰」閣議決定
(抜粋引用開始)
 政府は11日午前、中長期的なエネルギー政策の方向性を示す「エネルギー基本計画」を閣議決定した。原子力発電を「重要なベースロード電源」と位置付け、将来的原発稼働を継続させる方針を明記。東京電力福島第1原発事故を踏まえ、民主党政権が策定した「原発ゼロ」政策を転換した。太陽光や水力など再生可能エネルギーの導入推進も盛り込んだが、電源別の具体的な比率は「速やかに示す」と結論を先送りした。
(略)
 基本計画は、原子力規制委員会の安全審査をクリアした原発の「再稼働を進める」と明記。原発が立地する地元の理解を得るために「国も前面に立つ」と再稼働を国が後押しする姿勢を強調した。総発電量に占める原発の割合は、原発事故への「深い反省」から「可能な限り低減させる」とした。一方で「原発の新増設は行わない」とした前政権の原則は盛り込まず、将来的な新増設や建て替えに含みを残した。
(略)
 基本計画はエネルギー政策基本法に基づき3年ごとに改定され、今回は3回目の改定にあたる。【中井正裕、木下訓明】
(引用終わり)
 
 この問題については、私もブログで2度取り上げました。
 
原発推進を明記する「エネルギー基本計画(案)」を許さない!
あと3日(1月6日まで)!新しい「エネルギー基本計画」策定についてパブコメを送ろう
 
 後者のブログに、私が送ったパブコメを掲載しましたが、そこで私が一番言いたかったこと部分を引用します。
 
(引用開始)
 福島第一原発事故の後、今後の我が国のエネルギー政策の中で原子力発電をどのように位置付けるかにつき、2012年夏に大規模な「国民的議論」が行われ、9万件近く寄せられたパブリックコメントの実に87%が原発ゼロシナリオを支持したこと、その結果を受けて「革新的エネルギー・環境戦略」(2012年9月)に2030年代に原発稼働ゼロとする方針が示されたことについてどのように評価するかにつき、「意見(案)」に全く言及がないのはいかなる理由からか。
 たしかに、2012年12月の総選挙によって政権は交代したかもしれないが、わずか半
年にも満たない期間で、「国民的議論」の結果(国民の多数の意向)が大きく変わることなどあり得ない。
 新政権が新たな「エネルギー基本計画」を検討するにあたっては、まさに2012年夏の
「国民的議論」の結果をこそ出発点としなければならないはずであって、これを完全に無視して進めた検討作業は、根本的に正当性を欠いており、到底容認できない。
(引用終わり)
 
 とにかく、閣議決定されてしまった「エネルギー基本計画」を確認しておきましょう。エネルギー政策基本法制定以降、今回の基本政策は第四次の計画にあたります。
 
エネルギー基本政策(平成26年4月11日)
 
 「原子力」についての基本的な方向性を掲げた部分を抜粋して引用します。
 
(抜粋引用開始)
第2章 エネルギーの需給に関する施策についての基本的な方針
第1節 各エネルギー源の位置付けと政策の時間軸
1.一次エネルギー構造における各エネルギー源の位置付けと政策の基本的な方向
(2)原子力
①位置付け
 燃料投入量に対するエネルギー出力が圧倒的に大きく、数年にわたって国内保有燃
料だけで生産が維持できる低炭素の準国産エネルギー源として、優れた安定供給性と効率性を有しており、運転コストが低廉で変動も少なく、運転時には温室効果ガスの排出もないことから、安全性の確保を大前提に、エネルギー需給構造の安定性に寄与する重要なベースロード電源である。
②政策の方向性
 いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ、国民の懸念の解消に全力を挙げる前
提の下、原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める。その際、国も前面に立ち、立地自治体等関係者の理解と協力を得るよう、取り組む。
 原発依存度については、省エネルギー・再生可能エネルギーの導入や火力発電所
効率化などにより、可能な限り低減させる。その方針の下で、我が国の今後のエネルギー制約を踏まえ、安定供給、コスト低減、温暖化対策、安全確保のために必要な技術・人材の維持の観点から、確保していく規模を見極める。
 また、東京電力福島第一原子力発電所事故の教訓を踏まえて、そのリスクを最小限
にするため、万全の対策を尽くす。その上で、万が一事故が起きた場合には、国は関係法令に基づき、責任をもって対処する。
 加えて、原子力利用に伴い確実に発生する使用済燃料問題は、世界共通の課題
であり、将来世代に先送りしないよう、現世代の責任として、国際的なネットワークを活用しつつ、その対策を着実に進めることが不可欠である。
 さらに、核セキュリティ・サミットの開催や核物質防護条約の改正の採択など国際的な
動向を踏まえつつ、核不拡散や核セキュリティ強化に必要となる措置やそのための研究開発を進める。
(引用終わり)
 
 「安全性の確保を大前提に」「重要なベースロード電源である」と言われても、そもそも「安全性の確保」など誰も責任をもってできないということが福島原発事故の最大の教訓でしょうが。
 「いかなる事情よりも安全性を全てに優先させ」「原子力発電所の安全性については、原子力規制委員会の専門的な判断に委ね、原子力規制委員会により世界で最も厳しい水準の規制基準に適合すると認められた場合には、その判断を尊重し原子力発電所の再稼働を進める」にしても、あたかも原子力規制委員会原発の「安全性を保障する機関」(などであるはずがない)であるかのような著しい虚妄を振りまいて国民を欺き、政府自らの「責任」などどこにあるのか分からないという、とんでもない「基本計画」です。
 その上、「万が一事故が起きた場合には、国は関係法令に基づき、責任をもって対処する」に至っては、この基本計画の起案者の神経がどうなっているのか、論評する言葉もありません。
 誰の目にも明らかな福島原発事故の二つめの教訓は、「この国には原発事故に責任を負う者など誰もいない」ということではないですか。「万が一事故が起きた場合」って、もう一度、福島並の過酷事故が起きれば、日本は破滅ですよ。
 
 なお、より具体的な「原子力政策」については、「第3章 エネルギーの需給に関する長期的、総合的かつ計画的に講ずべき施策」「第4節 原子力政策の再構築」(41~48頁)に記載されています。
 核燃料サイクルについては、「これまでの経緯等も十分に考慮し、関係自治体や国際社会の理解を得つつ、再処理やプルサーマル等を推進するとともに、中長期的な対応の柔軟性を持たせる」とされ、具体的には、「安全確保を大前提に、プルサーマルの推進、六ヶ所再処理工場の竣工、MOX燃料加工工場の建設、むつ中間貯蔵施設の竣工等を進める。また、平和利用を大前提に、核不拡散へ貢献し、国際的な理解を得ながら取組を着実に進めるため、利用目的のないプルトニウムは持たないとの原則を引き続き堅持する。これを実効性あるものとするため、プルトニウムの回収と利用のバランスを十分に考慮しつつ、プルサーマルの推進等によりプルトニウムの適切な管理と利用を行うとともに、米国や仏国等と国際協力を進めつつ、高速炉等の研究開発に取り組む。もんじゅについては、廃棄物の減容・有害度の低減や核不拡散関連技術等の向上のための国際的な研究拠点と位置付け、これまでの取組の反省や検証を踏まえ、あらゆる面において徹底的な改革を行い、もんじゅ研究計画に示された研究の成果を取りまとめることを目指し、そのため実施体制の再整備や新規制基準への対応など克服しなければならない課題について、国の責任の下、十分な対応を進める」としているのですから、要するに、「福島事故前への回帰」そのものと言うしかありません。
 
 先のパブコメに書いたように、民主党政権が、内容的には満足できないものであはあれ、「国民的議論」を経た上で作成した「革新的エネルギー・環境戦略」(2012年9月)を弊履のごとく捨てて顧みないというのですから、これに対抗する究極の手段は「政権交代」しかないのでしょうね。国民が、根本的に「エネルギー基本計画」を作り直す政権を誕生させるまでに、第二の原発過酷事故が起きないことを祈らねばならないような事態を回避するためにも、原発再稼働を許さない国民運動がまさに必要とされているのだということを再認識しました。
 
 ところで、私のメルマガ(ブログ)で、こういう記事を書いたことをご記憶の方はおられるでしょうか?
 
原発ゼロ社会への道──新しい公論形成のための中間報告』(原子力市民委員会)について
 
 昨年(2013年)の4月15日に発足した「原子力市民委員会」が、当初から発足1周年をめどに公表することを目指し、昨年10月発表の中間報告を基にした意見交換会を重ね、昨日(2014年4月12日)、奇しくも政府の「エネルギー基本計画」閣議決定翌日、『原発ゼロ社会への道――市民がつくる脱原子力政策大綱』を公表しました。
 表紙を含めてPDFファイルで全240頁が公式サイトで公開されています。
 
原発ゼロ社会への道――市民がつくる脱原子力政策大綱』
 
 4月12日(土)に日比谷図書文化館スタジオプラスにおいて開かれた記者会見で配布されたプレスリリースが公式サイトに掲載されていますので、やや長文となりますが全文ご紹介します。
 
原発ゼロ社会への道―市民がつくる脱原子力政策大綱』発表記者会見を開催しました
(引用開始)
原子力市民委員会『原発ゼロ社会への道――市民がつくる脱原子力政策大綱」を発表
―民意をふまえた政策形成の実現に向け、立場を超えた討論の必要性を訴える―
2014年4月12日 原子力市民委員会
 原子力市民委員会(東京・四谷)は、12日、『原発ゼロ社会への道――市民がつく
る脱原子力政策大綱』(A4判237ページ、以下『脱原子力政策大綱』)を発表した。
 原子力市民委員会は、2013年4月に発足、同年10月7日、『原発ゼロ社会への道――新しい公論形成のための中間報告』発表、原発のない社会を目指す政策案を提案し、一般市民や原発立地自治体住民、専門家、自治体関係者や政治家などから広く意見を求めた。今回の『脱原子力政策大綱』は、この「中間報告」に対して、各地で開催した意見交換会やWEBサイトなどで寄せられた多数の意見を取り入れ、大幅に加筆・修正したもの。
 東京電力福島第一原発事故から3年余、事故原因の究明は進まず、汚染水対策など事故収束の目途もなく、被災した地域社会や人々の生活再建も見通せない中で、国や福島県は、除染の不十分な地域への「帰還」政策を「復興」の名のもとに推進している。一方、昨年9月16日の大飯原発4号機停止で「原発ゼロ」が実現、各種世論調査でも、国民の過半数の「脱原発」支持が示されている。他方、原発の再稼働を進めようとする政府の「エネルギー基本計画」が、11日に閣議決定された。川内原発などいくつかの原発では、再稼働に向けた申請と審査も進んでいる。
 『脱原子力政策大綱』は、このような現状を踏まえ、脱原発のための法制や政治体制の整備を通じて「現実上の原発ゼロ」から「法律に基づく原発ゼロ」に進むことを主張している。また、汚染水対策や事故炉の管理、被害者の支援や賠償、放射性廃棄物の処理・処分、国際政治などに関して、前回の『中間報告』よりさらに進んだ具体的な政策を提言している。
 「序章」では、政府が原子力発電のメリットとしてあげてきた「供給安定性」「経済性」環境保全性」(いわゆる3E)における優位性が、福島第一原発事故によりことごとく否定されたことを指摘。一方で、福島第一原発事故後の現実からしても、今後の日本社会のエネルギー需給構造の変化からしても、原発ゼロ社会の実現は難しくないと強調する。
 「第1章」は、放射線リスクを過小評価しがちな政府や福島県などの姿勢を批判し、「被ばくを避ける権利」は憲法に保障された基本的人権であり、避難指示の解除にともなう賠償の打ち切りなどを含む、「帰還」の強要が許されないとの立場を再確認。人々の健康と福祉、生活再建などを目的とした「人間の復興」こそが「復興政策」のあるべき基本とする。そして、避難先にとどまるか、帰還するかを被災者自身が自由に選択できるよう、国が賠償と生活支援に責任を持つべきだとしている。
 「第2章」では、事故対策と原因究明が進まない現状を前に、東京電力を破綻処理したうえで、廃炉業務を一元的に担う<福島第一原発処理公社>を設立し、公社がこの作業にかかわる雇用体制、労務政策、被ばく管理に直接責任を持つことを提案。また、1~3号機の溶融炉心(デブリ)冷却を水冷から空冷に切り替えて汚染水問題を根本的に解決し、作業員の被ばくを軽減、廃炉は「石棺」化して人類の「負の遺産」とすべきだとしている。
 放射性廃棄物の処理・処分を扱う「第3章」は、1)プルトニウムから低レベル放射性廃棄物まで、原子力発電に関連するすべての核物質を廃棄物とみなし、2)廃止された核施設および廃棄物の管理・処分を一元的に実施する<日本原子力廃止措置機関」(JNDA)>を政府の元に設置し、3)廃棄物の管理・処分施設は、「負担の公正・公平化」の原則に立って国民的協議を行った上で決める――ことを提案。また、核燃料サイクルおよび関連事業・施設は全廃するとしている。
 当面の課題となっている原発再稼働については、「第4章」で議論、「信用されない電力会社や原子力規制委員会原子力規制庁という組織のもとでは論外」だとする。再稼働を容認できない技術的根拠としては、①住民の被ばく防止に不可欠な従来の「立地審査指針」が無視され、②既存の原発は大きな地震津波に耐えられず、③基本設計の見直しがないため、過酷事故を避けることができず、④事故が起きた場合に地域住民を速やかに避難させる防災計画に、まったく実効性がない――ことなどを指摘。規制委員会は、原発の審査に当たり、避難計画の現実性を含むべきことを提言。また、「世界一厳しい規制基準」だと自賛する田中俊一原子力規制委員長の発言は、全く事実に反するもので「安全文化の醸成・堅持に反している」と批判する。
 「法律に基づく原発ゼロ」の具体化への行程を提示したのが、「第5章」。ここでは、首相を長とする<脱原子力・エネルギー転換戦略本部>を開設、<脱原子力基本法と<エネルギー転換基本法>を制定、その下に<脱原子力庁>を置くなど(p.181図5.1)、原発推進の法制度を根本から改革する。電源開発促進税を廃止し、これにともない電源三法交付金も廃止することを提案。代わって<脱原子力・エネルギー転換税>と、それを原資とする<エネルギー転換交付金>を創設し、脱原発、再エネ普及、エネルギー効率化の取り組みと、既存の原発立地地域の経済的自立につなげる。福島原発事故を起こした東京電力の破綻処理に当たっては、役員の経営責任、株主責任、金融機関の責任を取らせ、被害者補償や雇用確保、電力供給の確保などには国が責任を持つ。新制度のもとで、全電力会社の原発日本原燃などの所有する核燃施設は全廃される。
 「終章」では、政・官・業・学・メディアなどからなる「原子力複合体」(p.212)の強大な支配力が国の電力・エネルギー政策を主導し、ついに福島第一原発の過酷事故をもたらしたことを指摘。政策決定と民意の乖離を克服するための民主的な政策決定について論じる。
 「おわりに」では、あの惨事を経験した日本こそが脱原発を世界に広げる役割を果たすべきである強調している。
 原子力市民委員会は、この政策大綱が広範な人々に読まれ、原発廃止に賛成・反対、その他さまざまな考えを持つ人々から、さらなる声が寄せられることを期待している。
(引用終わり)
 
 政府の「エネルギー基本計画」の閣議決定原子力市民委員会の『脱原子力策大綱』の公表がほとんど同一時期になったのは、突然の都知事選挙の実施という偶然の事情によるもので、別に原子力市民委員会が意図したものではないはずですが、明らかに民意から乖離した政府の暴走に国民がどう対峙すべきかについて考える上で、このタイミングで『脱原子力政策大綱』が公表されたことは、非常に有意義だったのではないかと思います。
 この2つの文書にじっくりと目を通すことにより、1人1人が理想とする将来のエネルギー政策のあるべき姿について自ら考えることができればと期待します。
 
(参考映像)
ビデオニュース・ドットコム ニュース・コメンタリー(2014年4月11日収録)
エネルギー基本計画に見る安全神話の復活

(付録)

『BABY 3.11 JAPAN』 はちようび