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立憲デモクラシーの会が設立されました!

 今晩(2014年4月18日)配信した「メルマガ金原No.1700」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
立憲デモクラシーの会が設立されました!
 
 昨日の東京新聞の報道に接し、「立憲デモクラシーの会」が設立されることを初めて知ったのですが、東京新聞も書いているように、憲法学・政治学の分野の呼びかけ人は、ほぼ昨年設立された「96条の会」と共通するメンバーですが、「立憲デモクラシーの会」は、さらに呼びかけ人の層を幅広くしています。
 
東京新聞 2014年4月17日 朝刊
「立憲デモクラシーの会」あす設立 解釈改憲にノー 学者50人が連携
(抜粋引用開始)
 集団的自衛権の行使を憲法解釈の変更で認めようとする安倍晋三首相の姿勢に危
機感を抱く学者たちが十八日、「立憲デモクラシーの会」を設立する。法学や政治学、社会学、哲学など幅広い分野から約五十人が呼びかけ人になり、安倍政権憲法と民主主義を変質させかねないと国民に警鐘を鳴らす。
 共同代表は奥平康弘東大名誉教授(憲法学)と、山口二郎法政大教授(政治学)
の二人。呼びかけ人には、上野千鶴子立命館大特別招聘(しょうへい)教授(社会学)、金子勝慶応大教授(経済学)、内田樹(たつる)神戸女学院大名誉教授(哲学)らが名を連ねた。
 設立趣意書では「一時の民意に支持された為政者が暴走しないよう、歯止めを組み
込んでいるのが立憲デモクラシーだ」と強調。解釈改憲への動きを「安倍政権憲法民主政治の基本原理の改変に着手した」と批判して「われわれは運動しなければならない。後の世代に対する責務だ」と表明している。
 呼びかけ人の約半数は、改憲手続きを定めた憲法九六条の要件緩和に反対する学
者らが昨年五月に結成した「九六条の会」にも参加。九六条改憲を目指す首相を「立憲主義の破壊だ」などと批判したことで、九六条改憲に反対する世論も強まり、首相が要件緩和に言及する機会は減った。
 九六条の会は法律や政治の学者中心だが、「デモクラシーの会」はさまざまな視点から
首相の問題点を追及するため幅広い分野の専門家に参加を呼びかけた。(後略)
(引用終わり)
 
 「立憲デモクラシーの会」の「設立趣旨」と「呼びかけ人」は以下のとおりです。
 
(引用開始)
 決められる政治を希求する世論の中で、安倍政権は国会の「ねじれ」状態を解消しのち、憲法と民主政治の基本原理を改変することに着手した。特定秘密保護法定はその序曲であった。我々は、戦後民主主義の中で育ち、自由を享受してきた者して、安倍政権の企てを明確に否定し、これを阻止するために声を上げ、運動をしなればならないと確信する。それこそが、後の世代に対する我々の責務である。
 実際、安倍政権は今までにない手法で政治の基本原理を覆そうとしている。確かに、
代議制民主主義とは議会多数派が国民全体を拘束するルールを決める仕組みである。しかし、多数を全体の意思とみなすのはあくまで擬制である。一時の民意に支持された為政者が暴走し、個人の尊厳や自由をないがしろにすることのないよう、様々な歯止めを組み込んでいるのが立憲デモクラシーである。それは、民主主義の進展の中で、民衆の支持の名の下で独裁や圧政が行われたという失敗の経験を経て人間が獲得した政治の基本原理である。しかし、安倍政権は、2つの国政選挙で勝利して、万能感に浸り、多数意思に対するチェックや抑制を担ってきた専門的機関――日本銀行、内閣法制局、公共放送や一般報道機関、研究・教育の場―――を党派色で染めることを政治主導と正当化している。その結果現れるのはすべて「私」が決める専制である。この点こそ、我々が安倍政権を特に危険だとみなす理由である。
 安倍首相の誤った全能感は、対外関係の危機も招いている。2013年末に靖国
に参拝し、中国、韓国のみならず、アメリカやヨーロッパ諸国からも批判、懸念を招いた。日本は満州事変以後の国際連盟脱退のように、国際社会からの孤立の道を歩もうとしている。
 万能の為政者を気取る安倍首相の最後の標的は、憲法の解体である。安倍首相
は、96条の改正手続きの緩和については、国民の強い反対を受けていったん引っ込めたが、9条を実質的に無意味化する集団的自衛権の是認に向けて、内閣による憲法解釈を変更しようとしている。政権の好き勝手を許せば、96条改正が再び提起され、憲法政治を縛る規範ではなくなることもあり得る。
 今必要なことは、個別の政策に関する賛否以前に、憲法に基づく政治を取り戻すこ
である。たまさか国会で多数を占める勢力が、手を付けてはならないルール、侵入しはならない領域を明確にすること、その意味での立憲政治の回復である。そして、議を単なる多数決の場にするのではなく、そこでの実質的な議論と行政監督の機能を復することである。
 安倍政権の招いた状況は危機的ではあるが、日本国民の平和と民主主義に対す
愛着について決して悲観する必要はない。脱原発を訴えて首相官邸周辺や各地街頭に出た人々、特定秘密保護法に反対して街頭に出た人々など、日本にはま市民として能動的に動く人々がいる。この動きをさらに広げて、憲法に従った政治を復するために、あらゆる行動をとることを宣言する。
 
呼びかけ人
 
 
政治学関係
石田憲 千葉大学・政治学
伊勢崎賢治 東京外国語大学・平和構築
遠藤誠治 成蹊大学・国際政治学
大竹弘二 南山大学・政治学
岡野八代 同志社大学・政治学
齋藤純一 早稲田大学・政治学
坂本義和 東京大学名誉教授・政治学
白井聡 文化学園大学・政治学
杉田敦 法政大学・政治学
千葉眞 国際基督教大学・政治学
中北浩爾 一橋大学・政治学
中野晃一 上智大学・政治学
西崎文子 東京大学・政治学
三浦まり 上智大学・政治学
柳沢協二 国際地政学研究所
山口二郎 法政大学・政治学
 
経済学関係
金子勝 慶應義塾大学・経済学
中山智香子 東京外国語大学・社会思想
水野和夫 日本大学・経済学
諸富徹 京都大学・経済学
 
 
人文学関係
内田樹 神戸女学院大学名誉教授・哲学
桂敬一 元東京大学教授・社会情報学
國分功一郎 高崎経済大学 ・哲学
小森陽一 東京大学 ・日本文学
佐藤学 学習院大学・教育学
島薗進 上智大学・宗教学
高橋哲哉 東京大学・哲学
林香里 東京大学 ・マス・コミュニケーション
西谷修 立教大学・思想史
三島憲一 元大阪大学教授・ドイツ思想
 
理系
池内了 名古屋大学名誉教授・宇宙物理学
(引用終わり)
 
 そして、今日(4月18日)行われた設立記者会見を報じたマスメディアの内、NHKニュースを引用しておきます。
 
NHKニュースWEB 2014年4月18日20時30分
「立憲デモクラシーの会」発足
 集団的自衛権を巡って安倍総理大臣が憲法解釈を変更することに意欲を示すなど、今の政治状況は憲法が権力を縛る「立憲主義」の考えとかけ離れているとして、憲法学や哲学などさまざまな分野の学者たちが、憲法と政治の在り方を考える会を発足させました。
 この「立憲デモクラシーの会」は、憲法学や哲学などさまざまな分野の学者50人が参加するもので、18日、都内で発足式が開かれました。
 この中で、共同代表で憲法学が専門の奥平康弘東京大学名誉教授が「今の政治
状況は、去年の“憲法96条改正論議”で一般にも浸透した、憲法が権力を縛る“立憲主義”の考え方からかけ離れている」と指摘しました。
 続いて政治学が専門の杉田敦法政大学教授が設立趣旨を読み上げ、「安倍総理
大臣は集団的自衛権の行使容認に向け憲法解釈を変更しようとしているが、今必要なことは憲法に基づく政治を取り戻すことだ」と訴えました。(後略)
※金原注 以下に紹介する映像(16分~)を観れば分かりますが、「設立趣旨」を読み上げたのは小森陽一氏でした。NHKの記事を書いた記者は、本当に記者会見に出席していたのだろうか?
(引用終わり)  
 
 記者会見の模様は、FmA(自由メディア)によって YouTube にアップされています。
 
立憲デモクラシーの会記者会見(1時間50分35秒)
 
 私もまだ全部は視聴できていませんが、21分~の石川健治東京大学教授(憲法学の発言は一聴の価値があると思いました。憲法学の泰斗であった宮沢俊義氏が主張した「自由がない民主主義は民主主義とは言えない」を例に引いた上で、「立憲デモクラシー」とは何かを説明する手際はあざやかで、非常に分かりやすいです。
 また、26分~の三浦まり上智大学教授(政治学)が語る「民主主義の停止の危機」も実感を持ってうなずけます。
 その後の、30分~齋藤純一早稲田大学教授(政治学)、34分~西谷修立教大学教授(思想史)、40分~中野晃一上智大学教授(政治学)、46分~石田憲千葉大学教授(政治学)、51分~杉田敦法政大学教授(政治学)もそれぞれ聴くべきところが多いと思いました。
 
 ところで、上智大学の中野晃一先生が発言冒頭に引用した自民党2010年綱領とこういうものでした。当時の総裁だった谷垣禎一氏は、一体今何を考えているのでしょうね?彼も一応弁護士なのですが。
 
(抜粋引用開始)
 我々が護り続けてきた自由(リベラリズム)とは、市場原理主義でもなく、無原則な政府介入是認主義でもない。ましてや利己主義を放任する文化でもない。自立した個人の義務と創意工夫、自由な選択、他への尊重と寛容、共助の精神からなる自由であることを再確認したい。従って、我々は、全国民の努力により生み出された国民総生産を、与党のみの独善的判断で国民生活に再配分し、結果として国民の自立心を損なう社会主義的政策は採らない。これと併せて、政治主導という言葉で意に反する意見を無視し、与党のみの判断を他に独裁的に押し付ける国家社会主義的統治とも断固対峙しなければならない。
(引用終わり)
 
 最後に、立憲デモクラシーの会による最初のイベントが、来る4月25日に開催されますので、その開催概要をご紹介しておきます。
 
「私が決める政治」のあやうさ:立憲デモクラシーのために
主催: 立憲デモクラシーの会・法政大学現代法研究所
日時: 2014年4月25日(金) 午後6時~8時
会場:法政大学 富士見キャンパス 58年館3階834教室
内容
開会挨拶 奥平康弘(憲法学
基調講演
 愛敬浩二(憲法学名古屋大学)「立憲デモクラシーは『人類普遍の原理』か?」
 山口二郎(政治学・法政大学)「民意による政治の意義と限界-なぜ立憲主義とデモ
クラシーが結び付くのか?」
シンポジウム「解釈改憲をどうとらえるか」
 毛里和子(中国政治・早稲田大学
 青井未帆(憲法学学習院大学
 大竹弘二(政治学・南山大学
 シンポジウム司会 阪口正二郎(憲法学一橋大学
閉会挨拶 杉田敦(政治学・法政大学)
総合司会 齋藤純一(政治学・早稲田大学)
 
 「立憲デモクラシーの会」が日本中の心ある学者から圧倒的な支持を集める状況を作り上げて欲しいと思います。