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オバマ米大統領の来日による“成果”と安倍首相の“反米度”は比例する

 今晩(2014年4月23日)配信した「メルマガ金原No.1705」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
オバマ米大統領の来日による“成果”と安倍首相の“反米度”は比例する
 
 日本、韓国、マレーシア、フィリピン4カ国歴訪の最初の訪問国として、今晩(4月23日)日本に降り立ったオバマ米大統領を、東京都中央区の三つ星「寿司店」に招待した安倍首相ですが、これが首脳間の信頼関係醸成に役立つとは、首相自身、いくら何でも信じていないでしょう(普通の神経の持ち主ならそれ位分からないはずがない)。
 
 本来なら、明日の首脳会談の成果は、共同記者会見(いくら何でもあるのでしょうね?)やステイトメントの発表を待つべきなのでしょうが、フライングというか何というか、今日の読売新聞が、オバマ大統領への書面インタビューとその回答全文を掲載してしまったため、「もう首脳会談をするまでもないのでは?」と正直思いますよね。
 
読売新聞 2014年4月23日
オバマ米大統領 書面インタビュー全文
 
 ざっと一読しましたが、特段目新しいこともありません。
 例えば、「中国と尖閣」についての回答は以下のとおりです。
 
(引用開始)  
 中国に関して言えば、我々両国の間で模索する新しいタイプの関係は、地域的にも世界的にも共通の利益にかかわる課題で共に取り組むことができるという私の信念、そして、回避できなくはない紛争に陥る危険を食い止めねばならないという信念に基づいている。例えば米中は双方とも世界経済の回復、北朝鮮の非核化、気候変動への対処に利益を有する。言い換えれば、我々は、安定的で、繁栄し、平和的で、世界的な問題に責任ある役割を果たす中国の台頭を歓迎する。そして、中国との関与で、今もこれからも日本や他の同盟国が犠牲になることはない。
 同時に、米国は、人権問題のように見解の異なる問題について、中国と直接かつ率直に
取り組んでいく。私は習近平国家主席に対し、東シナ海も含めた海洋の問題に建設的に対処することに全ての国が利益を有するとも話した。紛争は、脅しや威圧ではなく、対話と外交で解決する必要がある。米国の政策は明確であり、尖閣諸島は日本の施政下にあり、それ故に、日米安全保障条約第5条の適用範囲内にある。そして我々は、これらの島々の日本の施政を阻害するいかなる一方的な試みにも反対する。
(引用終わり)
 
 アンダーラインを引いた箇所は、米国政府のかねてからの「公式見解」であり、そこから一も出るものではありません(出る気など毛頭ないでしょうが)。つまり、「尖閣が日本の領土である」などとは決して明言することはありません。日米地位協定に基づいて尖閣諸島の内の2島(久場島大正島)を「射爆撃場」として施設提供を受けていてもです。
 ちなみに、米軍は、この2島を何十年も射爆撃場として全然使用していないようですが、日本に返す気はさらさらないようですね。本来ならそのこと自体が問題ですが、尖閣をめぐる状況に鑑みれば、少なくとも安倍内閣が存続する限り、この2島が米軍の管理下にあり続ける方が、相対的に「紛争回避」の可能性が高まるだろうという逆説的状況が生じています。
 
 あと1つ、集団的自衛権についての回答を見ておきましょう。
 
(引用開始)  
 日本の憲法に対する決断は、当然日本の国民と指導者が行うものだ。私は、ただ、自衛隊の活動とプロ意識の高さに米国が最大の敬意を抱いているとだけ言いたい。
(略)
集団的自衛権の行使に関する現在の制限を見直すことなどで、自衛隊の強化と米軍との連携を深める努力を行っている安倍首相を称賛する。自衛隊が日米同盟の枠内でより多くの役割を担うことが、両国の利益にかなうと信じている。同様に、国連の平和維持活動も、日本の参加拡大により恩恵を受けるだろう。
(引用終わり)
 
 それはそうでしょう。日本が米国からの「自立」などを考えず、忠実な「ポチ」であり続けるり、日本が集団的自衛権の行使ができることになっても、当面、米国に不利益はなく、利益だけがあるのですから、「称賛」もするでしょう。
 もっとも、米軍のオペレーションの下で自衛隊員の戦死が相次ぐようになり、日本の国民世論が「日米安保条約破棄」に傾くようなことがあれば別ですが。そうか、そういうことにならないように「特定秘密保護法」を作ったのかもしれないな。
 
 オバマ大統領への書面インタビューはこれ位にしておきましょう。
 オバマ来日に合わせて読売新聞は上記インタビューを掲載した訳ですが、毎日新聞は、夕刊の「特集ワイド」において、「安倍首相の『反米度』測ると」という、まことに時宜に適った記事を掲載しました。是非「ウエブ会員登録」をして全文お読みいただきたいと思います。
 
毎日新聞 2014年04月23日 東京夕刊 特集ワイド
:安倍首相の「反米度」測ると 歴史修正主義的発言次々、近い支持者の極論に同
調、信頼回復狙い親米的政策
※WEB版で全文読むためには「ウエブ会員登録」(無料)が必要です。
 
(抜粋引用開始) 
 「親米・反米という軸を安倍さんが意識しているかは分かりません。ですが行動は極めて反米的に見えます」と指摘するのは、政治学が専門の三浦まり上智大学教授だ。「小泉純一郎氏は首相在任中に6回も靖国参拝したのに、米政府は反応しませんでした。しかし昨年末の安倍首相の参拝では異例の『失望』が表明された。なぜか。小泉さんは靖国神社と関係の深い日本遺族会の支持票を獲得するため、という政治的な動機が明らかでした。でも安倍さんは違う。思想に基づく参拝と見られています」
 小泉元首相は、靖国神社に合祀(ごうし)されているA級戦犯について「戦争犯罪人」と国会答弁した。安倍首相は著書「新しい国へ」(2013年)で「東京裁判は事後法で人を裁いた。国内的には犯罪者ではない」と主張し、東京裁判を否定する意見も紹介している。これは単なる「見解の相違」では片付けられない。
(略)
 米タイム誌は特集記事の中で、安倍首相を「歴史修正主義者のコレクター」と呼んでいる。作家、百田尚樹氏もその取り巻きの一人と考えられている。百田氏は、安倍首相との対談本「日本よ、世界の真ん中で咲き誇れ」で、「南京大虐殺は米軍の原爆投下などの戦争犯罪をごまかすためにでっち上げた」「(広島の原爆慰霊碑に)本当は『アメリカ許すまじ』と書きたい」と記している。その百田氏、安倍内閣の肝煎りでNHK経営委員に就任している。
 こうした「反米」の根はどこにあるのだろうか。「親米と反米-戦後日本の政治的無意識」などの著書がある吉見俊哉東大教授(社会学)は「戦中・戦前的な思考と完全に決別できなかったことが大きい」と見る。戦中、日本は天皇をいただく大日本帝国臣民という「特権意識」でアジアを侵略した。戦後は覇権国・米国と最も親しい国という「特権意識」で、アジアへの優越感を抱き続けた。
 だが冷戦後、米国の存在感が薄くなると日本はアジア諸国と正面から向き合わねばならなくなる。1990年代「日本は戦争を本当に反省しているか」という声が上がり始めた。「米国の傘の下にいたからこそ、日本は過去を直視せずに済んできた。それが認識できない人たちは、アジア諸国に批判されると『米国だって東京大空襲をしたり原爆を落としたりした』『東京裁判で日本がいわれのない悪行をしたことにされた』と逆上する。百田氏はその一例でしょう」と吉見さんは話す。
(略)
 とはいえ、少なくとも政策的には安倍内閣は極めて親米的に映る。これについて内田樹・神戸女学院大名誉教授は「のれん分けの発想です」と解説する。のれん分け?
 「商人や職人、武将が親方や殿様に忠義を尽くすと、いずれ独立させてもらえる。戦後の自民党はずっとそう信じてきました。吉田茂や安倍首相の祖父、岸信介といった戦争当事者は、対米従属して懸命にゴマをすり、地力がついたら対米自立する、という戦略を採用したんです」。もっとも米国にとっての日本は「自国の利益になる使い勝手のいい国との認識しかない。永久に『よく忠義を尽くした、本日から独立してよろしい』などと言いません」と内田さんは見る。
 「安倍首相らは『昔から続けてきた』との理由で親米政策を採用していますが、そもそもの狙いが分かっていないから時折、反米意識が表に出て米国の不信感を招いてしまう。その不信感を払拭(ふっしょく)しようと、例えばオスプレイの飛行を許したり、集団的自衛権行使を認めようとしたりと、さらに親米政策に走る。次は日本にとって不利な条件でのTPP加盟でしょうか。結果として米国の国益にしかなっていない」
 09年に来日し、天皇陛下と握手したオバマ大統領は実にいい笑顔だった。今回、安倍首相にはどうか。
(引用終わり)
 
 自分がオバマ大統領の立場であればどう考えるだろうかと想像してみましょう。
 私はこう思います。
 「歴史修正主義者」(少なくともそのコレクターであることは間違いない)である安倍晋三する個人的信頼感など皆無でしょう。同席することすら不快かもしれません。
 こうなれば、米国にとって利益となる「果実」を1つでも多く吐き出させるために利用するだけと考えるでしょうね。
 内田樹さんの意見や、以下にご紹介する天木直人さんの意見を、私なりの理解で言い換れば、安倍政権は過去のどの政権よりも多くの「貢ぎ物」を米国に献上して我が国の国益なうだろうということです。
 そのオバマの「成果」が、間もなく発表されることでしょう。
 
天木直人のブログ 2014年4月23日
オバマ・安倍首脳会談を吹っ飛ばした読売のオバマ単独インタビュー

 


(付録)
『For a Life』 作詞:中川五郎 作曲:PANTA 歌:中川五郎