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地方議会における改憲促進「意見書」採択の動きを阻止するために

 今晩(2014年4月29日)配信した「メルマガ金原No.1711」を転載します。
 なお、「弁護士・金原徹雄のブログ」にも同内容で掲載しています。
 
地方議会における改憲促進「意見書」採択の動きを阻止するために
 
 先月(3月)26日付で共同通信が配信した以下の記事にうっかり気がついていなかったのですが、とんでもない事態が地方議会で進行していたようです。
 
2014年3月26日 共同通信
自民、改憲へ意見書採択を要請 各県連に
(引用開始)
 自民党が各都道府県連に、憲法改正の早期実現を求める意見書を県議会や市町村議会で採択するよう文書で要請していたことが26日、分かった。地方から声を上げさせ、改憲への機運を高める狙い。これまでに、富山県議会などが採択した。党関係者が明らかにした。
 文書は、竹下組織運動本部長と吉野地方組織・議員総局長の連名で都道府県連の会長、幹事長宛てに13日付で送付された。「党は『憲法改正原案』の国会提出を目指し、憲法改正に積極的に取り組んでいる」とした上で「憲法改正運動には大規模な国民運動が不可欠だ」と強調した。
 通達後は、富山、香川、愛媛の各県議会などが意見書を可決。 
(引用終わり)
 
 上記共同通信の記事では、富山、香川、愛媛の3県議会が挙げられていましたが、県議会に限っても、3月中だけでかなりの数の議会が同趣旨の意見書を可決したようです。
 
 共同通信の記事に先立つ3月19日、憲法会議(憲法改悪阻止各界連絡会)が、「地方議会で相次ぐ『憲法改正促進』意見書の採択の動きについて」という声明を出していました。憲法会議サイトからワードファイルをダウンロードすることも可能ですが、「上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場」に掲載されたものが読みやすいのでリンクしておきます。
 
上脇博之 ある憲法研究者の情報発信の場 2014年3月20日
憲法会議「【声明】地方議会で相次ぐ「憲法改正促進」意見書の採択の動きについて」の紹介
 
 憲法会議「声明」の一部をご紹介します。
 
(抜粋引用開始)
1.3月の石川県議会で「憲法改正の早期実現を求める意見書」が採択され、富山、香川、愛媛などの県議会では、自民党が意見書案を提出しています。
 それらは「施行以来一度も改正が行われておらず、外交、安全保障、大規模災害など内外の情勢の劇的変化に対応する憲法がもとめられており、憲法審査会が設置されている今早期に憲法改正を実現するよう要望する」という共通する内容です。
 自民党は今年度の運動方針「日本を取り戻す」で、「わが党の憲法改正草案への正しい理解を深め、かつ、国民全体として憲法改正に向かう機運を高めていくために、…党是である憲法改正の実現にむけて、党全体として積極的に取り組む」として、宇都宮での講演会開催などとあわせ、その具体化とも思われ、自民党改憲草案(2012年4月27日決定)を解説した「日本国憲法改正草案Q&A」の記述と酷似しているのが特徴です。
 憲法改正権を有しない自治体の議員が、改憲を促進する決議を行うことは、憲法尊重擁護義務(憲法第99条)に違反する違憲行為であり、もし、それを知らないなら、軽率のそしりを免れません。いずれにせよ、改憲策動の一つとして看過できない問題です。
(引用終わり)
 
 また、直近のこの動きに警鐘を鳴らす記事をご紹介しておきます。
 
澤藤統一郎の憲法日記 2014年4月27日 
自民党日本会議の地方議会改憲決議運動に警戒を
(抜粋引用開始)
 ところで、俵さん(注:「教科書ネット21」の俵義文さん)の話が教科書・教育から離れて、改憲問題に及んだ。
安倍政権やこれに連なる保守勢力は、明文改憲に失敗して解釈改憲路線を走ってい
るとされているが、決して明文改憲をあきらめたわけではない。地道に草の根の改憲運動が続けられている。その中で、最も警戒すべきが日本会議の地方議連による地方議会決議運動だ。既に、8県議会が3月議会で『憲法改正の早期実現を求める意見書』を採択している。今後警戒して、この動きを封じる工夫をしなければならない」
8県議会とは、石川、千葉、富山、兵庫、愛媛、香川、熊本、鹿児島。
(引用終わり)
 
 なお、澤藤さんのブログで「憲法改正の早期実現を求める意見書」を採択したとされる「8県議会」の内、少なくとも「兵庫県議会」については、請願こそ採択されたものの、地方自治法に基づく意見書の採択は回避されたようです。その間の経緯については、前記上脇博之さんのブログに引用された神戸新聞(3月1日付)の記事をお読みください。事の一部を引用します。
 
(抜粋引用開始) 
 請願文書では、国会の憲法審査会で憲法改正案を早期に作成し、国民投票の実現を求める意見書を国に提出するよう要望している。
 自民は「わが国が直面する諸課題へ的確に対応するため、国会において憲法改正
関する検討を早期に進めていくことが必要だ」と採択を求めた。
 一方、民主は「国民的議論が必要であり、時間をかけて慎重に議論されるべきだ」と
主張。公明も「憲法改正案の作成を現時点で具体化することは拙速であり、国民意識にそぐわない」とした。共産党は「憲法を変えるべきではない」と不採択を求めた。
 多数決の結果、賛成多数で採択となったが、反対の委員が、採択した請願を意見
書として提出するには「全会派一致の原則という取り決め(慣例)がある」などと主張し、意見書の提出を見送ることで決着した。
 自民の委員は「(提出見送りを)了承はするが、必ずしも全会一致にならないこともある」と、ほかの会派をけん制した。
(引用終わり)
 
 澤藤さんのブログで名前の挙がっている8県議会の内、兵庫を除く7県議会について調べてみました。
 
2014年2月21日 石川県議会
2014年3月17日 熊本県議会
2014年3月19日 千葉県議会
2014年3月19日 愛媛県議会
2014年3月20日 香川県議会
2014年3月24日 富山県議会
2014年3月26日 鹿児島県議会
 
 どれも同じような内容ですので、ここでは富山県議会の「意見書」を引用します。
 
(引用開始) 
                                   平成26年3月24日
提 出 先
 衆議院議長
 参議院議長
 内閣総理大臣  あて
 総務大臣
 法務大臣
 内閣官房長官
                          富山県議会議長 高 平 公 嗣
 
             憲法改正の早期実現を求める意見書
 
 昭和22年5月3日に現行憲法が施行して以来、66年余りが経過し、軍事技術の進歩大量破壊兵器の拡散などによる外交・安全保障上の問題、東日本大震災により提起された緊急事態に対応できる国のあり方の問題、さらに、環境権などの新しい人権、地方自治の確立など、現行憲法施行時に想定できなかった課題や新たな時代に対応できる憲
法が求められている。
 これまで、政府、国会においては、平成12年に国会の衆議院及び参議院憲法調査会
を設置し、また、平成19年には国民投票法の成立や衆参両院に憲法審査会を設置するなど、憲法改正への法整備などを実現してきた。
 憲法は国家の根本規定であり、その改正については、主権者である国民の理解が得られ
るよう、国民自らが幅広く参加し、十分な国民的議論を尽くしたうえで進めていくべきものである。
 よって、国会及び政府におかれては、日本国憲法の改正について、国民に対しての丁寧
な説明や国会の場における幅広い議論を尽くし、国会の賛成・発議、国民投票を行い、早期に憲法改正を実現するよう強く要望する。
 以上、地方自治法第99条の規定により意見書を提出する。 
(引用終わり)
 
 それにしても、いかに自民党本部や日本会議からの「要請」とはいえ、これらの各自民党連の議員たちは、このような意見書を採択することに何の疑問も抵抗も感じていなかったのでしょうか
 上記富山県議会の「意見書」でも、「憲法は国家の根本規定であり、その改正については、主権者である国民の理解が得られるよう、国民自らが幅広く参加し、十分な国民的議論を尽くしたうえで進めていくべきものである」と、ここまでは一応まともな前提を書きながら、「よっ」「国会及び政府におかれては、(略)国会の賛成・発議、国民投票を行い、早期に憲法改正を実現するよう強く要望する」というのは、何が「よって」ですか?
 この「意見書」に賛成した(自民党及び同調した)議員は、ごく普通の日本語を読み書きする能力すらないと判定せざるを得ません。
 国民主権を基本原理とする日本国憲法の下において、国民的議論と国民投票の結果、憲法改正案が可決されることもあれば否決されることもあるのが当然であるのに、国会及び政府に対して「早期に憲法改正を実現するよう強く要望する」とは、国民の意思など結局どうでもよく、自民党が良しとする改憲案を早期に実現するよう「強く要望する」ということでしょうこんな「意見書」を採択して恥ずかしくはないのでしょうかね?
 
 いかに論理性のかけらもないひどい「意見書」であろうと、議決がなされるということ自体による政治的影響は無視し得ません。各地における監視を強め、「意見書」採択阻止のための取組が必要だと思います。